『ART(生殖補助医療)の現状』(2025年12月 ハコラク掲載)
年々減る出生者数は、函館は元より札幌、北海道、ひいては全国的な問題となっています。ですが、その一方で、お子様をぜひにと望まれるご夫婦も増えており、現在では9人のお産に1人がARTで妊娠が成立した人達です。
かつてARTは最終的な手段として、自分たちの蓄えから費用を工面して行う医療でした私がARTを始めたのは今から35年前です。当時は北海道でも北大、斗南病院だけが取り組んでおり、道南では当院だけでした。その頃は培養液も既存の培養液を基に化学天秤でカルシウム、マグネシウムなどを計って加えて作っていました。水も自分たちで作った超純水を使用していました。それが今では最良といわれる人の卵管内の環境に最も慣れた培養液を、高価ですが市販で手に入れることができます。培養器もタイムラプスという培養状態が胚一つ一つをTVカメラで継続して映され、私たちはその映像を見て培養を行えるようになりました。卵子と精子を受精させるICSIという方法は倒立顕微鏡が格段に進歩し、卵子の一個一個に確実に精子を注入できるようになりました。培養した胚は液体窒素の中に保存すれば、理論的には半永久的に保存が可能で、その技術もコロンブスの卵のように簡便な方法が開発されています。
かくのごとく、あらゆる機器、技術が進歩し、25年前では妊娠率が15%であったものが近年では50%を超えるまでになってきました。それに加え3年前からARTが保険診療に認められ、希望すればどの年齢のご夫婦でも可能になりました。また 高額医療の適用により支払う費用も収入により上限が決まり、若いご夫婦でもARTへの道はハードルが低くなりました。
これらの機会を突破口に、お子様を望まれる多くの人達はARTをもう一度見直し、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。奥様の年齢は1歳でも若い方が、妊娠率が高く流産率が低いという現実も踏まえてお考えになられるべきです。







