機能性ディスペプシア
胃の痛みや胃もたれなどの症状が長く続いたり、しつこく繰り返したりするのに、胃カメラなどの検査をしても、特に異常ありませんと言われたことがあるという方は、少なくないのではないでしょうか。
実際、ピロリ菌が原因で起こる萎縮性胃炎や、胃液の逆流による食道炎などが見つかる事もありますが、見た目には全く異常がないこともあります。
血液検査やほかの検査をしても異常がないのに、慢性的に胃の痛みや胃もたれなどの腹部症状を呈する病気を、機能性ディスペプシアと言います。
この病気にはいろいろな要因が関係していると言われています。
私たちが食べたものは、一旦胃の中に貯められて、そこから少しずつ腸へ流れていくようになっているのですが、食べた物がうまく貯められなかったり、逆に貯めた食べ物が腸へスムーズに流れていかなかったり、胃の感覚が敏感になりすぎていたり、胃液がたくさん出すぎていたりで症状がでることもあります。
さらに、ストレスや不安などの心理的なものや、アルコールや喫煙などの生活習慣、細菌感染症、胃の形なども関係しており、これらの要因がからまりあって症状が出ていると思われます。
また、逆流性食道炎や過敏性腸症と合併していることもあります。
その人によって原因も様々なので、治療方法も様々です。胃酸を抑える薬や胃腸の動きを改善する薬などがよく使われますが、最近では漢方薬でも高い効果があることが示されています。
また、飲酒や喫煙、食生活の乱れなど、生活習慣を見直して改善していくことも大事です。
ピロリ菌の検査で陽性だった場合には、除菌の治療をしただけで症状が改善することもあります。ストレスや不安などが関係しているときは抗不安薬や抗うつ薬などが効く場合もあります。
ただし、胃癌や食道癌、胃潰瘍が原因になっていることもありますから、症状があるときにはまず、胃の検査をすることをお勧めします。
検診結果が引き出しに入れたままになっていませんか?
食生活の欧米化などにより、右肩上がりで患者数が増加している生活習慣病。あまりにも身近な存在になりすぎて、脳梗塞や心筋梗塞といった命を脅かす病気の原因になることもある、怖い病気であることを忘れてはいませんか?
「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」「高血圧」は、患者数の多さから3大疾患と呼ばれる生活習慣病の代表格です。その他心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脳出血、がんなども生活習慣病に入ります。
心臓病や脳卒中(脳梗塞・脳出血)は、私たち日本人の死因の3分の1を占める病気であり、これらの大きな引き金になるのが「動脈硬化」です。
生活習慣病になると、自覚症状がないまま、この動脈硬化が急速に進行し、血液の流れが悪くなるだけではなく、重症化すると血栓(血のかたまり)ができて血管をふさいでしまうことがあります。
その結果、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞を起こすといった、最悪の事態を招きかねないのです。
そこで重要なのが検診です。
働いている方は職場での検診、退職後や働いていない方は「特定検診」を利用するのも1つの方法です。
40歳以上が対象の特定検診は、生活習慣病予備軍といわれる「メタボリックシンドローム」の発見を目的としたものです。
また、検診を受けた方も、検診結果をきちんと読み解くことが大切です。
毎回の結果に一喜一憂するのではなく、過去の結果と比較して、数値がどのように変化してきたかを観察することです。
また、もう1つ忘れてはならないことは、検診で全ての異常が見つかるわけではないということです。
例えば、検診では空腹時の血糖値を調べますが、糖尿病には「隠れ糖尿病」と呼ばれる、食後にのみ血糖値が上昇するタイプがあります。
ほかにも、検診時の血圧は正常でも、家庭や職場で測ると高くなる「仮面高血圧」があり、いずれも検診で発見することはできません。
また、様々ながんも進行がんにならない限り、検診だけでは発見できない場合も多々あります。
自分の健康状態にマッチした、より実践的なアドバイスを求めるなら、検診結果を持参して、かかりつけ医に相談してみましょう。
春からのダイエット
冬が終わり、春物の服を着た時に「あっ」と思ったあなた!
サンサン(3・3)運動を知っていますか?
「体重3kgの減量・3cmのウエスト短縮」。
2006年の日本肥満学会の宣言です。
この妥当性は、メタボリックシンドロームからの脱出率の差で理解することができます。
3kgの減量ができた方はメタボから76%脱出(未達成は46%)、ウエスト3cm短縮達成者は73%(未達成者は45%)です。
また、血圧・血糖・脂質の併存疾患ゼロへの改善は、3kg達成群で46.9%(未達成群13%)3cm短縮達成群では44%(未達成群では11%)とかなり良いデータを示しています。
医学では、BMI値25以上を肥満といい、そのうえで健康障害(高血圧等)を合併しているときに肥満症と呼びます。
BMIとは、体格指数(Body Mass Index)といい、体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったものです。
体重68kg、身長1.65mでは、68÷(1.65×1.65)=25となります。
食事療法については、主にエネルギー制限食と糖質制限食があります。
エネルギー制限食とは、バランスの良い食事を全体的に量を減らして食べる方法です。
BMIが25~30では25Kcal×標準体重、BMI30以上なら20Kcal×標準体重で摂るべきカロリーを求めます。
糖質制限食とは、最近注目を集めている食事療法で、ごはん・パン・うどんといった炭水化物(糖質)を非常に少なくしてタンパク質・脂質を主体にして食事をする方法です。
たとえば、食事量に制限をせずに糖質を制限しただけの方が、脂質を少なくカロリーも制限した食事よりも体重減少に成功したという報告もあり、短期的には効果が良い報告が多いようです。
しかしながら、いまだに脂質異常の悪化や長期的なデータについては懐疑的な部分が多く、極端な糖質制限は現時点では勧められません。
私見としては、一時的に糖質制限を利用し、少し減量できたらカロリー制限に移行するのが良いのかもしれません。
3kg・3cmと数字を聞くと、なんとなく達成できそうな気がしますね。
いずれにしてもダイエットに王道なし!
今日からがんばりましょう!
血液内科をご存知でしょうか?
馴染みの少ない診療科目ですが、1番よく耳にする「貧血」についてのお話を伺いました。
症状としては動悸、息切れ、めまいなどが一般的ですが、それ以外にも舌の痛み、知覚異常、歩行障害、異食、不眠、食欲不振といった一見貧血症状とは違う形で現れることもあります。
貧血の原因により症状も異なります。鉄不足による鉄欠乏性貧血の他にもビタミン不足による悪性貧血、造血障害による再生不良性貧血などです。
悪性貧血は胃の術後菜食主義、アルコール多飲の人に起きる可能性があります。
貧血=鉄不足という訳はでなく、原因は多種多様であり、その原因を見極めて治療することが重要です。
また、貧血が良くなっても、その原因改善のための長期的な治療が必要な場合もあります。
逆に漫然とした治療の継続により、内蔵に負担をかける場合もあるため定期的な診察が必要になります。
また、単なる貧血だけでなく、血液悪性疾患が隠れていることもあります。
その場合は貧血だけでなく正常な免疫力が低下し、感染症状を繰り返すようになります。血液疾患を疑う具体的な症状として
①ぶつけた覚えがないのに身体にいくつもあざができる
②歯肉の出血が止まらない
③毎日のように鼻血がでる
④首のまわり、脇の下、鼠径部に腫れものができだんだん大きくなる
⑤検診などで白血球数、赤血球数、血小板数の異常を指摘された
⑥身体のタンパク質が多いと言われたなど
が挙げられます。
血液疾患をはっきりした自覚症状がない場合も多いので、思い当たる事があれば迷わず血液内科を受診することをおすすめしたいと伊達院長。
『飯田内科クリニックいしかわ』では血液専門治療の一方で在宅療養支援診療所として24時間365日の往診体制を実施しています。
併設しているデイケア・ショートステイでは医療依存度の高い人の利用もあるようです。
本稿は本紙記者が『医療法人社団善智寿会飯田内科クリニックいしかわ』に取材し執筆しました。
季節性アレルギーと喘息の話
ここ数年積雪量が多くなってきた函館ですがようやく雪解けの季節を迎え、春が近づいてきているのを実感します。
しかしながらこの時期から徐々に花粉症(鼻炎や結膜炎)に悩まされる方が増えてきます。
また、喘息をお持ちの方も季節の変わり目になると症状がひどくなる方が多く認められます。
春・秋の季節の変わり目や、気候の不安定な時期に喘息発作が出やすいことは古くからよく知られています(季節の変わり目に喘息が悪化する原因は、気温、湿度、気圧などの物理的要因と、気候・気象の変化に伴うダニ、カビ、花粉などのアレルゲン、および大気汚染物質を始めとする大気成分の量的・質的変化などが考えられています)。
この季節の道南地区のアレルギー症状はスギ・ハンノキ・シラカバなどの花粉によっておこされることが多いです(道南地区は北海道内で唯一スギが自生しています)。
以前スギ花粉症はアレルギー性鼻炎や結膜炎の原因にはなっても、喘息を起こすことはあまり多くないと言われていましたが必ずしもそうとは言い切れないことがわかってきています。
実は喘息の方でアレルギー性鼻炎を合併している頻度が約50~70%と非常に高率です。
アレルギー性鼻炎の方から見ても、喘息を合併している頻度が約10~20%あるといわれています。
従って、スギ花粉症の患者が喘息になるのはもともと喘息体質があって、気管支が過敏な人がスギ花紛やそれ以外のアレルゲン(ダニ、ペット、カビ)に対して喘息になると考えられます(喘息の主たる原因はダニとハウスダウトといわれています)。
春が過ぎ夏になるとカモガヤ、秋にはブタクサ・ヨモギの花粉が飛散します。
季節性アレルギーをお持ちの患者さんはその時期に合わせて適切な治療を受けることが必要です。
大腸カプセル内視鏡
年輩の方なら1966年公開のSF映画「ミクロの決死圏」をご存知の方も多いと思います。
医療チームを乗せた潜航艇を縮小して体内に注入し、脳の内部から治療を行うという当時大変話題となった米国の傑作映画です。
しかし今、実際に人間は乗っていないなどの大きな違いこそあるものの、当時は夢物語であった技術が現実のものとなりつつあります。
カプセル内視鏡といって、薬のような形をした小型のカプセルを飲み、便と共に排泄されるまでの間に胃腸の中をくまなく撮影し、体表に装着した装置に送信するものです。
送信された画像をモニターで確認して診断します。
小腸用には2007年に実用化され保険認可もされていましたが、今年1月に大腸でも保険適用となりました。
適用症例に条件がついているためすべての方に使えるわけではありませんが、小腸と比べると大腸は疾患人口が大変多いため、日常の大腸診療は大きく変貌すると思われます。
これまでの肛門からの大腸内視鏡検査は痛みを伴うこともあり、また恥ずかしいなどの理由で進んで受けたいと思う方 が少ないのが現状でしたが、カプセル内視鏡の場合はそのような問題を克服できることになり、大腸がん死亡率の低下を目指して検診への応用なども期待されています。
もちろんまだ開発されて日の浅い検査法なので、洗浄機能がないので下剤の量が多く必要となる、国内の治験では6%ほどの見落としがある、カプセルは使い捨てなので検査費用が高くなる、などの問題点もあります。
また何か病変が発見された場合はまだ映画のように治療はできませんので、ポリープの切除などは、これまで通り肛門から内視鏡を挿入して治療する必要があります。
SF映画もいつの日かは現実のものとなるという見本のような技術といえますが、今後はさらに診断も治療も可能な超小型医療ロボットへ進化していくことでしょう。
医療は日進月歩で患者さんの体の負担の少ない方向へと進んでいるのです。
高齢者の家庭血圧降圧目標値
「先生、いったい血圧はどのくらいまで下がれば安心なのですか?」と、高血圧で通院中の80才のAさんはとても不安な顔をして聞いてきました。
どうやら、家庭血圧計を買って家族で測ってみたら、息子や嫁よりいつも高いので心配になったとのことでした。
血圧を何処まで下げるべきか…とは、高血圧の治療において最も重要なテーマです。
脳卒中や心臓疾患などを予防できて健康的な生活を送るために丁度良い血圧値を知ることは患者さんにとってもとても大事なことです。
日本高血圧学会は過去から現在までの様々な高血圧研究を十分に解析検討し、「高血圧治療ガイドライン」としてまとめ、5年毎に改訂しています。
今年の4月にも、改訂された新しいガイドラインが発表される予定です。
今回の改訂案では、高齢者の家庭血圧降圧目標値にも大きな変更があります。
①前期高齢者(65~74歳)は今までと同様に135/85mmHg未満ですが、②後期高齢者(75歳以上)は145/85mmHg未満に緩和され、降圧による悪影響が無ければさらに積極的に135/85mmHg未満を目指すこととなります。
また、糖尿病や慢性腎臓病(蛋白尿陽性)のある高齢者は、まずは上述の値①②を第1目標とし、降圧による悪影響が無ければさらに積極的に125/75mmHg未満を目指すこととなります。
しかしながら、高齢者はひとり一人が様々な病態を呈していますので、とくに持病を多くもった虚弱高齢者や85歳以上の超高齢者などは、主治医が個別に判断して降圧目標値を慎重に設定しなければならない場合もあります。
一方、65才未満の中年若年者にも変更があります。今までは125/80mmHg未満でしたが、新ガイドラインでは135/85mmHg未満(前期高齢者と同値)へ緩和されます。
このように、家庭血圧降圧目標値は一様ではなく年齢や個々の病態によって違いがありますので、Aさんのように若い人達と比べて不安に思わずにもう一度主治医から説明を受けてみることがよいでしょう。
ただいま流行中! 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌の感染が原因となって、吐き気や嘔吐、腹痛・下痢などの急性の胃腸炎症状を引き起こす、いわゆる「お腹にくる風邪」です。
主に、冬場にみられる胃腸炎は、ノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスなどが原因となります。
特に、大人の感染性胃腸炎の大半を占めるノロウイルスは、比較的熱に弱いため、食品の中心まで十分に熱を通す(中心温度85℃で1分間が目安)ことが大切です。
予防には、うがい・手洗いはもちろんですが、まな板、包丁、ふきんなども熱湯や塩素系漂白剤で殺菌しましょう。
感染している可能性のある方の便や嘔吐物は直接触れず、汚れた衣類は他の衣類と区別して85℃以上の熱湯に10分以上浸すか、塩素系漂白剤に30分以上浸して下さい。
症状がなくなった後も、2週間は便中にウイルスを放出し続けるとされているため、周囲への感染は要注意です。
ウイルス性胃腸炎は、インフルエンザ等と異なり、有効な抗ウイルス薬はありません。
腹痛・下痢症状があるうちは、食事を控え、十分な水分の補給が必要です。
飲水が困難な時は、点滴治療が必要となることもありますので、その時は、医療機関の受診をお勧めします。
肺炎の原因? 逆流性食道炎
日本人の死亡原因は2年前、3位の脳卒中が4位に下がり肺炎が3位に上がりました。
脳卒中の治療が進歩し死亡率も減少しましたが、一度は脳卒中等から救命されてもその後免疫力の低下やおう吐時に吐いた物が気管に入ってしまうこと等で肺炎を繰り返し、悪化することによって、肺炎の死亡率が増加したとも考えられます。
初回の肺炎は、抗生剤などにより治癒することが多いのですが、他の病気を合併している肺炎は、一度治癒しても肺炎を繰り返して寿命を縮めることがあり、逆流性食道炎もその原因となります。
逆流性食道炎とは、強い酸性の胃液や、胃で消化途中の食物が食道に逆流しておう吐等をするため、食道が炎症を起こし、びらん(粘膜がただれること)や潰瘍を生じる病気です。
若くて元気なうちは、逆流性食道炎があっても酸分泌抑制剤を毎日内服し続けることでほとんどの症状は改善しますが、一度症状が消失しても再発が多くみられます。
それは、内服だけでは逆流性食道炎を起こしやすい状態を治すことは難しいため服薬を中止すると症状が再び悪化するのです。
また、逆流性食道炎が重症であれば、もちろん長期間薬を飲み続けなければなりません。
しかし、薬でも治らず、再発が繰り返される場合には、手術が必要になります。
以前は開腹手術が中心でしたが、最近はお腹を開けない、腹腔鏡による手術が普及しています。
この方法では腹部に開けた小さい穴から腹腔鏡を入れ、モニターに映し出された映像を見ながら、食道と胃のつなぎ目を逆流しないように閉めなおすのです。
この方法であれば、一週間ほどの入院で完治し、長期間服用していた薬を中止しても症状の再発を防ぐことも可能になります。
逆流の重症度は、胃カメラだけでは正確に判定できない場合が多く、その場合、食道内の酸性度(pH)や食道に胃酸が逆流しているときの時間や、頻度を測定することが大切になります。
治療が遅れて重症になる前に、今後肺炎を繰り返すことになる前に、胃カメラ検査を行い食道のpHで重症度を判定し、適切な治療を行いましょう。
睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に何度も呼吸が止まった状態(無呼吸)が繰り返される病気です。
本人の自覚がなく周りの人から大きないびきや無呼吸を指摘され本人が気付くことが多いといわれています。
多くの場合は空気の通り道である気道が部分的あるいは完全に閉塞してしまうことにより起こります。
SASの代表的な症状はいびきです。
また、良質な睡眠がとれず日中の眠気や物覚えが悪くなるなどの精神的な症状も出てきます。
高血圧や心筋梗塞や脳卒中などを併発することもあります。
SASの検査はご自宅にて行っていただくことが可能です。
SASの治療法はいくつかあり、個々の患者さんにあった治療法を決定することになります。
心当たりの症状がある方は是非医療機関を受診してください。










