ピロリ菌を知っていますか?
ピロリ菌という名前を聞いたことがありますか?正式な名前はヘリコバクターピロリといって、人の胃の中に住み着いて悪さをする細菌です。
胃の中には、強い酸性の胃酸がありますが、ピロリ菌は酸から胃を守っている粘液層の中に住みつくことで胃酸の影響を避け、更に自らウレアーゼという酵素を出して胃液の中の尿素を分解し、アルカリ性のアンモニアを作り出して自分の周りの胃酸を中和して生き延びています。
この、ピロリ菌が作り出すアンモニアや、人側のピロリ菌をやっつけようとする免疫の働きで胃の中に炎症が起こります。
ピロリ菌は、多くは5歳以下の子供のときに感染して、治療しない限り胃の中に住み続けて炎症を起こすのがほとんどですが、最初のうちあまり症状はありません。
炎症が長く続くと胃の表面が薄くなってきて、(萎縮といいます)萎縮が進むと胃もたれや胃痛の原因になったり、癌の原因になったりするといわれています。
大人になってからピロリ菌に感染した場合、激しい胃の痛みなどの症状が出ることがあります。
ピロリ菌の感染については衛生環境が大きく影響していると考えられており、現在の40代よりも上の年代では感染率が高く、その下の年代では感染率が下がってきています。
胃カメラなどでピロリ菌に感染している疑いがある場合は、検査をして陽性であれば内服薬による治療が出来ます。
抗生物質を2種類と胃酸を抑える薬を1週間内服するのですが、きちんと飲まないとうまく治療できないことがあります。
また、抗生物質に対して抵抗性の菌であった場合、きちんと薬を飲んでもピロリ菌がうまく消えないこともあります。
そのときは薬の種類を変えてもう一度、治療にチャレンジすることが出来ます。
ピロリ菌の検査方法は、胃カメラで調べる方法や、血液や便で検査する方法、呼吸中の尿素を調べる方法などがありますが、人によって出来ない検査もあるので、お近くの病院で相談してみてください。
ピロリ菌を除菌したあなたに
今年の2月より慢性胃炎についてもピロリ菌の除菌治療の保険適用が認められました。
ピロリ菌を除菌すると胃がんの発生は3分の1になるといわれています。
また、若い方が除菌すると、さらに胃がんの発生率が低下することも分かってきました。
胃がんの一次予防は、ピロリ菌の感染予防・除菌です。
2次予防は、早期発見、早期治療です。除菌後の問題点は何でしょうか?
それは除菌しても、胃がんがゼロにならないことです。
除菌して安心した結果、検診を怠り、発見が遅れてしまうこともあります。
ピロリ菌の除菌後の胃がんの発生について、除菌後に新しく出来た癌と除菌後に認識可能になった癌があります。
後者は除菌後2~3年後の早期に発見されるタイプで、除菌するときカメラで見えないくらいの小さな癌があり、その後2~3年でようやく見えるサイズになったものと考えられます。
このようなこともあるので、除菌後も胃カメラによる検査が必要になります。
では、どのくらいの頻度で検査を行うべきでしょうか?
これについては、除菌後も胃粘膜が萎縮(老化)した状態が続いているなら、1年に1度は継続して行うべきです。
また、ピロリ菌の除菌により、胃粘膜が正常になってくるようであれば、癌化の確率は減るはずなので2~3年に1度の検査でよくなると思います。
当院でも、ピロリ菌の除菌後に癌が見つかった方がいます。
毎年受けられている方は1センチ大の早期胃がんで見つかり、おなかにメスを入れることなく、胃カメラで治癒切除ができました。
逆に除菌後5年以上経過して久しぶりに胃カメラを行った方は、残念ながら進行がんになっていました。
ご本人には胃の症状はありませんでした。
このようなことがあるので、除菌後も 主治医の先生に確認して、胃カメラでの経過観察を行ってくださいね!
さて、来年は何月に胃癌検診を行いますか?
隠れたサインに早めの治療を
血液内科をご存知でしょうか? 馴染みの少ない診療科目ですが、1番よく耳にする『貧血』についてのお話をさせていただきます。
症状としては動悸、息切れ、眩暈、ふらつきなどがありますが、その原因は様々です。
鉄不足による鉄欠乏症貧血、ビタミン不足による悪性貧血、造血障害による再生不良性貧血などが代表的です。
また一方で白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫といったような血液悪性疾患が隠れている場合もあります。
疾患によっては化学療法、造血幹細胞移植を行うことによって治癒の可能性が高くなります。
血液疾患を疑う具体的な症状として
①特にぶつけた覚えがないのに身体にいくつもあざができる
②歯ぐきの出血が止まらない
③毎日のように鼻血がでる
④首のまわり、脇のした、鼠径部に腫れもの、グリグリがいくつも出来てきてだんだん大きくなる
⑤検診などで白血球が多い、あるいは少ないと言われた
⑥貧血、多血症と言われた
⑦血小板が少ない、あるいは多いと言われた
⑧身体のたんぱく質が多いと言われた等々。
思い当たることがあれば迷わず血液内科を受診することをお勧めします。
どんな疾患でも早期発見や早期治療がその後のお身体を大きく左右します。
また、慢性的な疾患等により長期にわたって治療をしなくてはならない場合や退院後などの経過の観察、さらにはその間のご家族のご負担を軽減することも当院では大切な要素と考えております。
当院は血液専門治療の一方で、在宅療養支援診療所として24時間365日の往診体制を実施しています。
併設しているデイケア・ショートステイでは当院の特性を活かして医療依存度の高い方もご利用いただいております。
診療、往診はもちろん専門的なリハビリはデイケア、ご本人・ご家族の互いの息抜きや経過観察ができるショートステイ等々、各専門スタッフを配置しておりますのでお気軽にお問い合わせ・ご相談お待ちしております。
咳でおこまりではないですか?
咳は長引くとつらい症状です。
友人とおしゃべりをしていてもしゃべろうとすると咳こんでしまうとか、授業中や演奏会の最中に咳が出て止まらず退席を余儀なくさせられるとか。
経験のある方もいらっしゃると思います。
咳をひき起こしている原因疾患を診断し、治療していくためには症状の持続期間が重要な手掛かりのひとつになります。
咳がではじめてから3週間以内のものを「急性の咳」、3~8週間ものを「遷延性の咳」、8週間以上を「慢性の咳」と定義されています。
「急性の咳」の多くは風邪などの急性の呼吸器感染症が原因です(ただしマイコプラズマ感染や百日咳感染ですと咳は長引きやすい傾向があります)。
持続時間が長くなればなるほど、原因に急性感染症が占める割合は少なくなってきて、8週間以上続く「慢性の嗽」では急性感染症以外の原因があると考えられています。
長引く咳の主な原因疾患はアトピー咳嗽・感染後咳嗽・咳喘息・気管支喘息・薬の副作用の咳・胃食道逆流症(逆流性食道炎)・喉頭アレルギー・間質性肺炎・心因性咳嗽・肺結核・副鼻腔炎・気管支拡張症・肺癌・肺気腫など多岐にわたります。
たとえばエアコンの風や冷たい飲食物・会話などで誘発され喉がイガイガする咳はアトピー咳嗽であることが多く、風邪の後に咳だけが残ってしまう時は感染後咳嗽を疑います。
また、ぜろぜろする感じを伴う場合は気管支喘息や副鼻腔気管支症候群・肺気腫などを第一に疑います。
体力の消耗が著しい場合は結核や癌・間質性肺炎なども疑われます。
一部の降圧薬・漢方薬・免疫抑制薬などの副作用でも咳が出ることがあります。
呼吸器内科医は患者さんの自覚症状・聴診所見・レントゲン所見・全身状態など詳細に観察し咳の原因を突き止めそれぞれの病態にみあった治療をおこなっていきます。
しつこい咳は専門家に相談しましょう。
油断できない胃・十二指腸潰瘍~鎮痛剤の服用にはご注意を~
発熱・風邪・頭痛・腰痛・膝関節痛・生理痛などに広く用いられている抗炎症解熱鎮痛剤(NSAIDs)は、病院でも処方されますが、最近では市販薬として、簡単にドラッグストアなどで購入できるようになりました。
NSAIDsは、プロスタグランジンという物質の合成を阻害することで痛みをブロックします。実は、このプロスタグランジンは胃の粘膜で常に作られ、粘液の分泌を増やしたり、粘膜の血流を良くするなど胃粘膜を保護する働きも担っているため、NSAIDsを飲むと胃腸が荒れてしまう人もいます。
胃・十二指腸潰瘍の原因のほとんどがピロリ菌ですが、2番目に多い原因はこのNSAIDsです。特に、50歳以上の中・高齢者では、胃・十二指腸潰瘍、胃がんの原因となるピロリ菌の感染率が高いため、よりリスクが高まります。
また、鎮痛剤以外でも、脳梗塞や心筋梗塞を治療・予防する抗血栓薬・抗血小板薬(血液をさらさらさせる薬)や、風邪薬、咳止め、自律神経薬、降圧剤、ステロイド薬などでも注意が必要です。胃・十二指腸潰瘍は、必ずしも痛みを伴うわけではなく、軽い胃もたれ、吐き気程度の症状しか起きないことがあり、時には、自覚症状もなく、突然、吐血や下血したり、さらには、深い潰瘍の場合は、胃に穴が開いてしまうこともあります。前述の薬に含まれる鎮痛成分は胃の痛みさえも隠してしまうので、そのため発見が遅くなることが多いのです。頭痛、腰痛など一過性の症状であれば、薬を使用せず、身体を冷やしたり、湿布などの外用剤を使用するなどで対処できますが、痛みや炎症の程度によっては、鎮痛剤を服用せざるを得ない場合もあります。その場合、胃薬の併用や定期的に胃カメラ検査を行い、胃腸障害に注意すること、また、ピロリ菌が陽性である場合、多くは胃炎を合併しているため、ピロリ菌の除菌も有効な方法です。ピロリ菌の除菌により、将来の胃がんの発生の確率も低下させることも期待できます。また、頭痛・腰痛は、痛みの原因となる他の病気が隠れていることがあるため、専門医の診療を受けてから、必要最低限の鎮痛剤の使用を心がけましょう。
あなたの肺年齢は大丈夫ですか?
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは中年以後に発症し、タバコを吸う方に多くみられる疾患です。
初期症状は、カゼをひいているわけではないのに咳や痰が出る、カゼをひきやすく治りにくい、ちょっとした運動で息切れを起こしやすい、などです。
進行すると平地を歩いても呼吸が苦しくなります。
COPDは肺がんとともにタバコが最も悪さをする肺の病気で、息切れが起こる主な原因は気管支が狭くなるためです。一度狭くなった気管支は元に戻らず、禁煙しなければ徐々に進行していきます。
さらに、肺活量は加齢現象の一つとして徐々に低下していきます。
1秒間に吐き出すことのできる空気の量を1秒量といい、これは非喫煙者の場合でも一つ年をとるごとに30mL前後減りますが、喫煙者では70mL前後減ります。
20歳代で1秒量が同じでも、50歳になると喫煙者と非喫煙者では1000mL近く差が出る計算です。
COPDは放置していると日常生活を送ることも困難になることがあります。
あなたの肺年齢は大丈夫ですか?
前述のような症状がある方は、診察をおすすめします。
ピロリ菌をやっつけろ!(慢性胃炎編)
朗報です!
ピロリ菌の除菌治療の対象が拡大して、慢性胃炎の方も健康保険で除菌治療が行えるようになりました。
今までは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・早期胃癌の胃カメラ治療後・他の特殊な病気だけが、除菌治療を保険で行うことができました。
それ以外の方は、ピロリ菌がいても自費で除菌を行っていたのです。
ところが、ピロリ菌と慢性胃炎の発癌の問題が、より明らかになったため、厚生労働省も重い腰を上げて除菌治療を慢性胃炎にも適応拡大したのです。
胃癌とピロリ菌について述べますと、ピロリ菌陰性者からは、ほぼ胃癌は発生しません。
ピロリ菌陽性であるだけで1000人に1人、そして慢性胃萎縮性胃炎の所見があれば400人に1人の割合で胃癌が発見されます。
また、萎縮性胃炎が進行するとついにはピロリ菌も胃の中に住めなくなります。
この時期には、ピロリ菌がいないにもかかわらず80人に1人の割合で胃癌ができます。怖いですね!
そうなる前の除菌治療ということです。
除菌治療とは、抗生物質2種類と胃酸を抑えるお薬を1週間飲むだけです。
初回の治療=1次除菌は約70%の除菌率です。
もしうまくいかなければ、2回目の治療=2次除菌を行います。
2次除菌は約90%の除菌率です。
ともに主な副作用は下痢・軟便です。
1次除菌ではまれに味覚障害が起こりますが、除菌治療後元に戻ります。
2次除菌は、薬の作用でアルコールが分解でピロリ菌の除菌後しばらくして胃酸の逆流症状が強くなる方もいます。
除菌治療により発癌リスクは減りますが、癌にならないわけではありません。
ここを間違わないでください。
除菌後も胃癌検診は必要ですよ!
除菌したので胃癌検診を行わず、残念ながら進行胃癌になっている方もいますので除菌後も胃癌検診は怠らないようにしましょうね!
検査の間隔は除菌後の胃炎の改善状態にもよります。
除菌して安心しきっているあなた! 次の胃癌検診はいつですか?
ちゃんと主治医に確認してくださいね!
減塩について
塩分の摂りすぎが高血圧を引き起こすことは、多くの研究や統計などで指摘されています。
高血圧は脳卒中や心臓疾患などを発症させますので、毎日の食事の減塩は、血圧が高めの人が健康に生活するために必要なことです。
日本人の1日塩分摂取量は、平成7年の13g/日から、平成22年の10.6g/日へと徐々に減少してきてはいますが、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」の中で、食塩摂取目標値を男性9g/日未満、女性7.5g/日未満としています。
また日本高血圧学会では、高血圧の人に対しては6g/日未満とさらに厳しい目標値を定めています。
もともと塩分摂取量の少ない欧米では、3.8g/日を最終目標値と考えており、日本においても、前述の目標値は暫定目標値とし、本来はもっと少ない値に設定すべきだというのが専門家の意見のようです。
私たちの通常の食生活ではまだまだ塩分を摂りすぎているとは解っていても、梅干し1個の塩分が2g、ほっけ焼き1切れで3.8g、みそラーメンで6g、握りずし一人前で4gなどととても多くの塩分を含んでいる日本の食卓で、一食当たりの塩分量を2gや3g未満にすべきと言われても、それはやさしいことではありません。
急激に減塩食へ切り換えて、食欲をなくし栄養障害になっては本末転倒でしょう。
上手に減塩するには、まずは薄味に慣れて食材本来の味を楽しめるようになることが大事です。
だしや香辛料で味を調え、汁物は具を多くし汁量を減らし、ラーメンや蕎麦はスープやつゆを残し、醤油やソースはかけるのではなく付けて食べるようにするなども良いです。
最近の食品栄養成分表には、食塩相当量の記載があるものも多く、またナトリウム量(g)の記載があれば、それを2.5倍すると塩分含量(g)になりますので、食事前に食塩含有量を確認してみることが良いと思います。
まずは、次の食事から減塩に意識を持つことからはじめてみましょう。
お腹とストレス
新年度が始まりました。学校や職場など、新しい環境でストレスを感じることもあるでしょう。
中には、お腹の調子が悪くなる人もいるかもしれません。
胃腸はストレスの影響を受けやすい器官です。
脳にある神経と同様の神経が腸にも分布しており、脳と腸の神経は自律神経を介して結びついているため、脳で感じたストレスが腸へ伝わり、腸の動きに異常を来すと考えられています。
腸に直接的な異常はないのに、腸の動きが過剰になったり、動きが悪くなることで、下痢したり便秘したり、お腹がすっきりしない、痛くなるなどの症状が出ます。
これを過敏性腸症候群といい、ストレスの関与がいわれています。
ただし、腸に炎症が起きて腹痛や下痢などを繰り返す病気もありますので、まずは病院できちんと診断を受けましょう。
大人の喘息って?
成人喘息は過去30年間で約3倍にも増加しているといわれ、都市部に多い傾向にあるため文明病とも呼ばれています。
小児喘息から持ち越す人や再発する方もいますが、40~60代で発症する方も少なくありません。
実は成人喘息の発症パターンのうち最も多いのは成人になってから初めて発症するケースなのです。
小児喘息の9割以上でアレルギーの関与が認められるのに対し、成人の喘息においてアレルゲン(アレルギーの原因物質)を発見できるのは5割程度で残りの5割はアレルゲンを発見できない非アトピー型です。
しかし気管支の慢性的な炎症、ぜん鳴(呼吸のたびにぜいぜいする症状)が出て息苦しくなるという点では小児喘息と変わりありません。
成人喘息の悪化の原因はひとによってさまざまです。
以下に主なものをあげます。
①ダニはやペットの抜け毛やフケ、花粉、カビの胞子など(これらをふくむ室内埃をハウスダストといいます)。
②消炎鎮痛薬を飲んだり注射をした後で非常に重篤な喘息発作を起こされる方も成人喘息の約1割に認められ、これをアスピリン喘息とよびます。
③ストレス
④運動誘発喘息といって運動によって短時間喘息発作を起こすことがあります。これは発作が起きたからといってスポーツをやめる必要はなく適切な投薬でコントロールができます。
⑤室内空気汚染物質(たとえば石油暖房器などから発生する窒素酸化物や一酸化炭素、建材などから発生するホルムアルデヒドなど)が発作の誘因になることがあります。大気汚染も同様です。最近ではPM2.5なども問題になっています。
⑥たばこの煙。
⑦かぜや気管支炎などの気道感染。長引く咳や痰で悩んでいらっしゃる方はもしかしたら成人喘息かもしれません。適切な治療で驚くほど症状が改善することもありますので、そのような方はぜひ専門医を受診してください。










