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ゴールデンウイークで やっちゃった人へ

内科2017/05/29

春の健康診断の時期ですね。お花見・ジンギスカン・ゴールデンウイークの旅行!大丈夫でしたか?
体重は増えませんでしたか?
どきっとしたそんなあなた!生活習慣セルフ チェックをしてみませんか?
以下の8項目で自分の生活に合うものがあったらチェックしてみましょう。

①あまり食べていないつもりなのに太ってしまう。

②料理は大皿に盛りつける。

③1日1食もしくは2食になることが多い。

④夕食を食べ終えてから寝るまでの時間は2時間以内である。

⑤暇があると何かを食べている。

⑥果物やお菓子がいつもそばにある。

⑦お酒を毎日飲む

⑧お酒を飲み過ぎてしまうことが多い。何個当てはまりましたか?

①②にチェックの入った方は、食事の量・バランスに問題があります。
食事量の適量が分かるランチョンマット法がお勧めです。
ランチョンマットに、主食1、主菜1、副菜2、果物/乳製品1で茶碗やお皿を並べて食べてみましょう。
この時に主菜・副菜で油の量や栄養配分、今食べているのは糖質なのか?タンパク質なのか? 油脂なのか? を考えます。
例えば、ごはん1膳、副菜に肉じゃがとコーンサラダ。これって、ごはんが糖分、肉じゃがのジャガイモもコーンサラダのコーンも糖分です。
結局、糖分しか摂っていないことになりますね! このように食材を考えるきっかけになります。

③④にチェックが入った方は、食事時間に問題があります。
食事の間隔が8時間以上空くと基礎代謝が低下します。
ご飯を食べると少し汗をかきますね。
これは、体から熱が出る反応です。(カロリーを消費する反応)朝の時間に多く、夕方には反応が少なくなります。
ですから、朝はちゃんと食べて、夕食を少なめにすべきですね。

⑤⑥にチェックの入った方は、間食習慣に問題があります。
空腹感に対して肯定的な考えを持つ・衝動を何かに置き換える・何かにそらす、といった心理的なアプローチが必要です。

⑦⑧にチェックの入った方は、言わずもがな、お酒との付き合いを考えましょう。
休肝日をつくるか、毎日飲むなら適量(日本酒1合、ビール中ビン1本、焼酎0・6合)を守りましょう。

さあ、これからがんばりましょう!


Text by はら内科クリニック 原 信彦( 2017年5月29日 「北海道新聞夕刊」掲載)

ゴホンといえば・・・

内科2017/05/23

 みなさんは咳が続いて心配になったことはありませんか。咳は、持続期間によって3つに分類されています。3週間未満の急性咳嗽(がいそう)、3週間以上8週間未満の遷延(せんえん)性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽です。

 また、痰を吐く喀痰(かくたん)を伴うか否かによっても2つに分類されており、喀痰を伴うものを湿性咳嗽、喀痰が少量もしくは全く伴わないものを乾性咳嗽といいます。一般に持続期間が短いほど風邪症候群や気管支炎、肺炎などの急性感染症よるものが多く、感染の終息とともに自然に改善します。

 一方、持続期間が長いほど感染症以外の疾患の可能性が高くなります。ここでは3週間以上咳が続いている場合について、病院ではどのような疾患を心配し、どんな検査が必要であるかをご紹介します。

 最初に施行するのは、胸部レントゲン検査と胸部の聴診です。これは咳嗽診療の原則で、胸部レントゲンを施行する事によって、肺炎や肺癌、肺結核、気管支拡張症、重度の肺気腫、間質性肺炎などの疾患を除外することができます。また聴診では胸と背中の呼吸音を聞くことで、気管支喘息発作や間質性肺炎などを見つけることできます。

 これらの検査で問題ない場合は喀痰検査を施行し細胞成分や細菌感染の有無を調べたり、呼吸機能検査や血液検査が必要なときもあります。

 咳の症状において季節や1日の中で変動があるか、温度変化などの影響があるか、アレルギー体質かどうかなどの情報もとても大事です。咳が続いて心配な方は、是非一度病院を受診して下さい。症状は一見同じように見えても急性、慢性によっていろいろな原因ありますので 適切な治療をうけることをお勧め致します。


Text by 桐花通り呼吸器内科 髙橋 隆二(  「函楽2017年6月号」掲載)

『NASH』(ナッシュ)という用語を聞いたことはありますか? 〜脂肪肝との違いは?

内科2017/02/20

 「NASH」という用語を聞いたことはおありでしょうか。
「非アルコール性脂肪性肝炎(non alcoholic steato hepatitis:頭文字でNASH)」のことで、これはアルコールによらない脂肪肝が肝炎に進展した状態です。
これまで、普通の肥満や糖尿病などのメタボリック症候群で起こる単純な脂肪肝は、それ以上進行しないとされていましたが、その中で10人に1〜2人はナッシュを引き起こし、さらには肝硬変・肝がんへと進行する例があることが分かってきました。
単純な脂肪肝では肝臓の細胞に中性脂肪が貯まっているだけで、肝細胞の壊死や炎症、線維化は見られず、原因が無くなれば改善し元に戻ります。
一方ナッシュではアルコール性肝炎と同様の肝炎が起き、一部は肝硬変・肝がんへ進行する例も出てくるわけです。
単純な脂肪肝の1〜2割が、どういう場合にナッシュに進展するのか、まだはっきりとは分かっていませんが、脂肪の沈着に続き内蔵脂肪細胞から分泌される「サイトカイン」と呼ばれる因子や肝細胞での活性酸素の発生、さらに鉄蓄積などが加わった場合に発症するのではないかと推測されています。

 診療において具体的に単純性脂肪肝からナッシュへの進展を疑うのは、肝機能のAST/ALT比の上昇(AST優位)に加え血小板の減少やヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲンなどの線維化マーカーの上昇があります。
さらに専門的には、超音波により肝臓の硬さ・線維化を測定するエラストグラフィー(硬度画像診断)も開発されています。
治療としてはインスリン抵抗性改善薬や肝庇護剤、坑酸化作用のあるビタミンE、高脂血症治療薬などが試みられています。
日常的には適正体重の維持、メタボリック症候群の是正が重要です。


Text by 山城消化器科内科クリニック 山城 雅明(  「」掲載)

健康診断の結果を確認していますか?

内科2017/01/30

 健康診断などで、血液検査や尿検査を行うと、普段あまり見慣れない検査項目の羅列で、見どころが分からない、と思ったことはありませんか?
 腎臓の病気は、比較的ゆっくりと経過する場合があり、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、検査をして初めて発見されることもあります。
 検査方法は腎臓病の種類によっても異なりますが、一般的な健康診断で行われる尿検査や血液検査は、慢性腎臓病(CKD)の早期発見のきっかけになり、隠れている腎臓病を見つけることができます。
 尿検査では主に尿中にたんぱく質や血液が漏れ出ていないかを検査します。
通常、正常な腎臓であれば、尿中にタンパク質が出ることはありませんが、腎臓に何らかの障害があると、体に必要な成分であるタンパク質が尿中に排泄されてしまいます。
 また尿中に血液が混ざっている場合、腎臓や尿管、膀胱(ぼうこう)などに何らかの病気があることが疑われます。
運動等でたんぱく尿や血尿が誘発されることがありますので、再検査が必要です。
 血液検査では、「血清クレアチニン」をみます。「血清クレアチニン」は、血液の中にある老廃物の一種です。本来であれば、尿中に排出されますが、腎臓の働きが悪くなると、尿中に排泄されずに血液中にたまっていきます。そのため「血清クレアチニン」の値が高いということは、腎臓がうまく働いていないと判断できます。
 この「血清クレアチニン」の値を年齢と性別で補正した値がeGFR(推定糸球体濾過量)です。
eGFRは腎臓が体に必要ない老廃物を尿中へ排泄する能力を示していて、このeGFR値が低いほど腎臓が悪いということになります。
 尿検査でタンパク質や血液がみられたり、血液検査でクレアチニン値やeGFR値に異常を認めるような場合は、症状はなくとも腎臓の病気が隠れている可能性がありますので、最寄の医療機関にご相談ください。


Text by 北美原クリニック 秋濱 寿賀子( 2017年1月30日 「北海道新聞夕刊」掲載)

思春期の貧血

内科2017/01/10

 思春期のお子さんが慢性的な疲労や集中力低下を起こしていることはないでしょうか。

 また中学に進学してから学力が伸び悩んでといったことも・・・。
その場合は貧血が隠れている可能性も考えなくてはなりません。

 思春期は心も体も大きく成長する時期です。
そのため、酸素を全身に供給するために血液もこれまで以上に増やさなくてはなりません。
ところが女の子は月経も始まりますから出血により鉄分を失ってしまいます。
しかも不適切なダイエットなどをすると更に貧血も進行してしまいます。
思春期の女性のおよそ10%が治療を必要とする貧血、注意が必要な予備軍は20〜30%にものぼると考えられています。
思春期の貧血は意外と多いのです。
鉄分はもともと体内に吸収されにくい栄養素です。
鉄分は2種類あり、肉類や魚介類に含まれているヘム鉄と野菜類に含まれている非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は吸収力がよく食べた量の15〜25%が吸収されます。
非ヘム鉄は吸収率は5%と低いのですが、ビタミンCと一緒にとると吸収されやすくなります。
ほうれん草などの青菜類やブロッコリーなどは鉄とビタミンCを両方多く含むのでお勧めです。

 また思春期の貧血では「スポーツ貧血」というものがあります。
これは運動によって何度も繰り返し激しい衝撃が加えられることで、赤血球が破壊されて起きる溶血性貧血という状態です。
何度も足の裏に強力な衝撃が加えられるスポーツと言えば長距離走や剣道、バスケットボールやバレーボールなどです。

 思春期にある中高生は部活動での運動も活発になるためにスポーツ貧血も考慮しなくてはなりませんし、その場合は運動の休止をすることが貧血の改善につながることがあります。
運動を休みたくないという気持ちもあるかもしれませんが、貧血を改善することで結果としてスポーツの記録向上につながるかもしれません。


Text by 飯田内科クリニックいしかわ 伊達 基( 2016年11月15日発行号 「青いぽすと」掲載)

脱メタボ宣言

内科2016/11/28

 これからの季節、忘年会・クリスマス・お正月と行事が満載です。
また雪が降ってくると外での運動もできなくなります。
今年も懲りずに年末脱メタボ宣言しましょう。

①運動 脈拍が100~120回/分、10~30分程度の運動がオススメです。
②減塩 味噌汁をのむ時は漬け物を食べない。漬け物を食べたときは味噌汁を飲まない。
いずれも3食のうち1回だけにしましょう。
③お酒 日本酒なら1合、焼酎半合、ビールは中瓶1本、ワイン2杯、ウイスキーダブル1杯程度で我慢我慢。
④体重管理 まずは毎日測りましょう。
1日1~2回の測定を毎日続けることにより、自分の体重の把握・体重の増減が分かり、その時に食事を見直す機会ができます。1日で1㎏増えたら「何で? どうして?何食べた?」自問自答を繰り返すことにより自分の食事の問題点がわかります。同様に、毎日食べたものを寝る前に思い出してメモしてみましょう。意外に朝からの食事を全て間食も含め思い出すのは難しいものです。若い方なら食べるたびに写メを撮ってみましょう。1日に意外に食べ過ぎていることに気がつきます。現体重の3%の低下で血糖値・中性脂肪・血圧の低下が認められます。60㎏なら1.8㎏です。
また5.5%の体重減少では、なんと糖尿病予備軍の方の糖尿病発症率が58%低下します。60㎏の方で3.3㎏。決して不可能な数字ではありません。
⑤喫煙 5年間の禁煙で心筋梗塞・脳梗塞になる確率が下がります。また、受動喫煙の悲劇もあり、当院の患者さんにも数名、ご主人がヘビースモーカーで、奥さんが肺がんになっています。その時に「私は何も悪いことをしていないのに何で?」と皆さんが仰っていました。

 最後に、メタボリックドミノという言葉を知っていますか?
ドミノ倒しのように内臓肥満というドミノが倒れることから始まり、高血圧・高血糖・高脂血症→動脈硬化→糖尿病発症・慢性腎臓病→糖尿病性腎症・網膜症・神経症とドミノが倒れ、総崩れて、心筋梗塞・心不全・脳卒中・下肢切断・失明へと進んでいく危険性があります。最初はたかが内臓肥満なのですが、その後は取り返しのつかないたくさんの病態につながっていくのです。さあ今日から始めましょう。脱メタボ宣言!まずは実践あるのみ。


Text by はら内科クリニック 原 信彦( 2016年11月28日 「北海道新聞夕刊」掲載)

いよいよピロリ菌の撲滅へ

内科2016/08/29

 今年の4月から函館市内の中学生を対象にしたピロリ菌検診が始まっています。全国的にはすでに多くの自治体で実施されていましたが、いよいよ函館でも開始となりました。ピロリ菌は胃の中に住んでいる細菌で、粘膜に炎症や萎縮などの変化を引き起こして最終的には胃がんの原因となることが分かってきました。
そのため日本では2013年から胃カメラで慢性胃炎などの異常が確認された場合に健康保険でピロリ菌の検査や除菌が可能となっています。ピロリ菌は衛生環境との関連が深く、上下水道などの衛生設備が未整備な時代に生活歴のある高齢者では感染率が高くなっています。例えば1970年代における60歳のピロリ菌感染率は80%以上でした。衛生環境の改善と共に陽性率は低下してきており、現在の10歳代の感染率は5%前後とされています。もしピロリ菌に感染している場合は胃粘膜が発がんの準備状態に入る前、つまり若年のうちに除菌するのが望ましいということで学校でのピロリ菌検診が実現することになりました。具体的にはまず学校で行う一次検査(尿の抗体検査)で感染の可能性のある人を見つけ、医療機関で二次検査(尿素呼気試験などの精密検査)を受け、陽性が確実であれば除菌治療を検討するという内容です。除菌治療については成人に比較して若年者では薬が効きづらいとされており、1回目の除菌成功率が50%程度にとどまるという問題点が残っています。しかし2回目の除菌治療を行えば最終的にはほとんどの方が除菌に成功するので、将来的には胃がん発生率の大きな低下が期待されます。

 日本の胃がん対策はこれまではバリウム検診のようにできてしまったがんの早期発見・早期治療が重視されてきましたが、これからは最初から胃がんを発症させない予防策に大きく舵(かじ)をきっていくことになります。さらに除菌治療が今後進歩していけば、ピロリ菌の撲滅も視野に入って来ることでしょう。


Text by Array( 2016年8月29日 「」掲載)

C型肝炎をやっつけろ!

内科2016/05/30

 以前のC型肝炎の治療は、インターフェロンと内服薬の併用療法で、24~48週間インターフェロンの副作用[発熱・全身倦怠(けんたい)感・食欲不振・貧血など]を耐えて治療していました。しかしながら、現在とても良い薬が開発され、内服薬を服用するだけで12~24週でC型肝炎が治る時代になってきています。非常に副作用も少なく、その程度の軽いものばかりです。C型肝炎は遺伝子型で、1型・2型に分けられます。

 日本人のC型肝炎の70%は、1b型というインターフェロンの効きにくいウイルスでした。2014年7月にインターフェロンを使用しない内服治療薬①アスナプレビル・ダクラタスビルの併用療法が認可され、さらに2015年6月には、第2世代の②ソホスブビル・レジパスビルの併用療法、さらに2015年9月には③パリタプレビル・オムビタスビル・リトナビルの併用療法が認可されました。一方、遺伝子型2型に対しては、2015年3月に④ソホスブビル/リバビリン併用療法が認可されました。

 各々の国内臨床試験におけるSVR率(ウイルスの消失率)と薬剤の特徴を示します。
①の薬剤は、投与期間は24週・治療終了時92%、24週後84・7%、ウイルスの変異に弱い
②の薬剤は、投与期間は12週・治療終了時100%のウイルス消失率。
高度腎機能障害者には使用できない。副作用も軽微で、最も高頻度の副作用は鼻咽頭炎の29%であり、他には頭痛が7%、全身倦怠が5%、皮膚掻痒(そうよう)が4%程度です。その為、現在の主流のお薬です。
③の薬剤は、12週の投与期間、治療終了時91~98%の消失率。ウイルスの変異に弱い
④の薬は2型ウイルスに対する唯一の内服治療薬です。投与期間は12週間。治療終了時のウイルス消失率95~98%。高度腎機能障害者には使用できない、といった特徴です。治療の対象も、以前はインターフェロンが効かなかった人など条件がありましたが、現在では非代償性肝硬変(進行した肝硬変の状態)を除くすべてのC型肝炎症例がこれらの抗ウイルス療法の治療対象となりました。
いままだ治療に二の足を踏んでいる方は、一度肝臓専門医を受診してはいかがでしょうか?

[出典]日本肝臓病学会C型肝炎治療ガイドライン(第5版)2016年5月より抜粋


Text by はら内科クリニック 原 信彦( 2016年5月30日 「北海道新聞夕刊」掲載)

貧血をあなどらないで

内科2016/04/26

 貧血という病名を聞いたとき、みなさんはどのような症状を思い浮かべるでしょうか?

 貧血は血色素(ヘモグロビン)の値が何らかの原因で減ってしまい、赤血球をうまく作れなくなった状態です。
一般的には10〜40代の女性に多い鉄欠乏性貧血がよく知られています。
立ちくらみやめまいの症状を貧血と思っている方が多いと思いますが、これは起立性低血圧などの血圧の調整障害の症状であり、貧血の症状ではありません。
受診される鉄欠乏性貧血の患者さんの多くは、健康診断で貧血を指摘されたり、指摘されていたのに自覚症状がなかったので放置していた方がたくさんいます。
慢性的に進行する鉄欠乏性貧血は、身体が順応してしまい、自覚しにくいのかもしれません。
また、自覚症状であってもそれを貧血の症状と思っていないこともありえます。

 鉄剤投与で貧血が改善すると、「身体がらくになった」「ぐっすり寝られるようになった」「集中力が戻ってきた」という方が実は多いのです。自覚症状がないからといって身体に負担がかかっていないというわけではありません。
赤血球は身体全体に酸素を運ぶ役割を果たしているので、貧血の時には体中が酸欠となってしまい、じわじわと身体を苦しめているのです。
身体からSOSサインは出ているはずなのですが、「軽い貧血だから」とか、「貧血くらいで受診してられない」と無視している方が少なくありません。
貧血を決して、あなどってはいけません。


Text by 飯田内科クリニックいしかわ 伊達 基( 2016年5月17日発行 「青いぽすと」掲載)

内視鏡による胃がん検診

内科2016/02/29

 日本では年間4万8千人が胃がんで死亡しており、悪性腫瘍による死亡率の臓器別で第2位を占めています。
全てのがんに共通ですが、医療がこれほど進歩した現在においても、がんで命を落とさないためには早期発見・早期治療が最も重要です。
日本では昭和57年度から胃バリウム検診が広く行われてきましたが、ここにきて変革のきざしが見えてきました。
昨年9月に厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」が「従来の胃バリウム検査に加え、胃内視鏡検査(胃カメラ)による胃がん検診を新たに推奨する」との報告書を出しました。
バリウム検査に比べて内視鏡検査の方がより早期のがんを発見しやすいことは臨床現場の消化器科医なら昔から肌で感じていたことですが、内視鏡検査による胃がんの死亡率減少効果を証明した最近の研究結果を根拠の一つとして今回の提言となりました。
今後これを基に検診のガイドラインが改正され、それに従って各市区町村が検診方法を見直していくことになります。
もともとバリウム検査には放射線被ばくの問題もあるため、今後は内視鏡検診への移行を目指す自治体が増えるものと予想されます。
ただし内視鏡検査は費用の問題、検査を実施する医師の確保、検査に伴う合併症に対応できる体制作り、など検診を適切に実施するための課題を解決する必要があるため、早い自治体でも来年度からの実施となりそうです。
当面は胃バリウム検査もこれまで通り行われるため、胃内視鏡検査と両方の実施体制が整う自治体では、受診者がどちらかを選べるようになるかもしれません。

 がん検診をお勧めすると「症状がないから」とか「自分は大丈夫」と言って検診に消極的な方を時々お見かけしますが、がんは症状が出るころにはある程度進行していることが多いのです。
今後検診方法が変わっても、日頃からの生活習慣の管理と適切ながん検診の受診が大切であることに変わりはありません。


Text by 弥生坂内科クリニック 渡辺 雅男( 2013年2月29日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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