マイボーム腺
こんにちは。今日は“マイボーム腺”についてお話をさせていただきます。
マイボーム腺という名称はあまり聞き慣れないかもしれませんが、ドライアイを引き起こす原因の一つとして考えられています。
上下のまつ毛の内側にあり、涙成分のうち脂質を出しています。
しかし、加齢等の影響により機能異常を起こした場合にドライアイを引き起こす原因になる事があります。
出口付近で脂質が固まり蓋(ふた)を作ってしまうと、マイボーム腺梗塞という状態で眼の不快感の原因にもなります。
しかし肉眼では分かりにくいため、眼科での診断が必要です。
治療はホットアイマスク等により1日2回程度温める事で脂質を溶かす方法が有効ですが、やり方次第で逆効果になる事もあるため注意が必要です。
眼の不快感やドライアイ等気になる方は、まずお近くの眼科へ一度ご相談下さい。
災害に備えて
東北大震災から6年経ちました。
あの時の危機感が薄れてきてはいませんか?
読者の中には、たくさんの薬を飲んでいる方も少なくないと思います。
そういう皆さんは、災害に備えて薬を準備しているでしょうか?
大きな災害では、いつも通っている病院や薬局が被災した場合、薬が手に入らなくなります(最近の、大災害で実際に起きています)。
薬がないことが、生命の危険に直結することもあります。
血圧は、すぐには命に危険が及ばないと思いますが、災害のような状況では、普段より血圧が高くなります。
そのため、日頃から少し(数日分)余分に薬を手元に置いておく習慣や、自分の薬の情報が分かるようにしておくといいでしょう。
薬の情報とは、何という薬を、どのように(どれだけの量を、いつ、何回)使用するかです。
薬局からお薬を入手している方は、「お薬手帳」を手渡されることがあります。
その中に、必要な情報が記載されているか、薬局で薬の内容が印刷されたシールが渡され、自分で手帳などに貼るよう指導されていると思います。
また、薬の一覧表が、薬局から発行されることもあります。
これには、薬の名前や使用方法だけでなく、副作用の説明や使用上の注意も記載されていることが多いです。
自分で覚えているという方もいらっしゃるでしょうが、薬の名前には、よく似たものがあり、間違いが重大な結果になる恐れもあります。
正確な情報を保管することをお勧めします。
携帯電話のカメラで撮った処方箋を見せてくれた方がいました。
とても良い方法だと感心しました。
さらに、薬の情報を、家族にも持っていてもらうと、二重の安心につながるでしょう。
身近に家族がいない方は、遠方の家族に写真をメールで送っておくという手もあります。
最後に、東北の方たちだけではなく、あらゆる災害の全ての被災者の皆さんにエールを送ります。
「最高の栄光は、一度も倒れないことではなく、倒れるたびに、立ち上がることにある!」
(オリバー・ゴールドスミス)
汗管腫(かんかんしゅ)
汗管腫というのは眼の周りに多発するブツブツとした発疹です。
女性に多く、主に思春期以降にできてきます。
大きさは米粒くらいで、数個からもっとたくさん集まってできることもあります。
色は皮膚と同じ色です。
眼の周り、特に下のまぶたに多く見られますが、額や頬にできることもあります。
特に痛みやかゆみなどの症状はありませんが、自然に治ることもありません。
悪性ではないですし、悪性化することもほとんどないので治療しなくてもよいのですが、多発して細かいブツブツになるため、整容的な面で問題になることもあります。
治療法は、焼いてしまうという方法があります。
ただ、麻酔が必要になりますし、1回で取れないこともあります。
広い範囲の場合には何回かに分けて治療することもあります。
焼いてしまった場合、2週間くらいカサブタになって取れますが、しばらく赤みは残ります。
化粧はできますのである程度隠すことはできます。
汗管腫に似たものとしてエクリン汗嚢腫(のうしゅ)というものがあります。
これは、女性に多く、やはり眼のまわりに米粒くらいの大きさのブツブツがたくさんできます。
でも、汗管腫は一年中変化しませんが、エクリン汗嚢腫は冬は良くなりますが、夏になると出てくるという特徴があります。
エクリン汗嚢腫は、焼いてもまた出てきたりして、汗管腫よりも治療は困難な事が、多いようです。
やはり似たものとして、稗粒腫(はいりゅうしゅ)というものもあります。
これも女性の眼の周りに多く見られますが、単発していることが多いようです。
これは、小さく切開して、中の袋を出してしまうと取れます。
麻酔をしなくてもできます。
まだまだ、しもやけの季節です
しもやけは寒さによる末端の血行障害で、厳冬期よりも昼夜の温度差が10度以上ある初冬と初春に多いといわれています。
特に足指や耳、頬が赤く腫れ、時に水疱(すいほう)となり、温めると痛みや痒(かゆ)みが強くなります。
治療は血行を促す外用剤を優しくマッサージしながら、1日に数回塗布します。
炎症が強い場合には、ステロイド剤を使用することもあります。
重症の場合はビタミンEや漢方薬を内服することもありますが、症状が出る前の秋から始めると、予防効果があるといわれています。
手洗いや発汗後の水分が蒸発することで熱が奪われ、しもやけになりやすくなりますので、タオルで水分をしっかり拭き取ったり、靴下を交換することが大切です。
発熱や関節痛を伴ったり暖かい時期でも症状が続く場合には、他の疾患のこともありますので、その時は皮膚科受診をお勧めします。
大腸がんを予防しよう
2012年の北海道の男性大腸がん死亡率(人口10万人あたりの死亡者数)は全国平均より高く、さらに道南は北海道の中でも死亡率がひときわ高い地域です。女性も函館市を含む南渡島では全国・全道平均より高くなっています。では、大腸がんで命を落とさないようにするにはどうすればよいでしょうか?
がんの予防は、がんにならないよう食事や環境を整える1次予防と、がんになっても早期に発見して治す2次予防に分けられます。まず1次予防ですが、大腸がんのリスクを高めるといわれているものには、加工肉(ソーセージなど)、脂質(油物)、過度の飲酒、喫煙、肥満、が挙げられています。反対に、食物線維、野菜、果物、牛乳を適切に摂取すること、適度に運動すること、これらはリスクを減らすといわれています。一般に食事の欧米化が進むと大腸がんが増加しますが、食事の内容から特定の食物や成分を評価することは困難な場合も多く、必ずしも全ての研究で同じ結果が得られているわけではありません。しかし可能性を考えて日頃これらに気をつけることが大切です。次に2次予防、つまりがんになっても治せる段階のうちに発見するには検診を受けることです。大腸がんの発見には肛門からカメラを入れる大腸内視鏡検査が最も優れていますが、前処置(下剤をかけるなどの検査の準備)が大変だったり、検査中の苦痛の度合いが大きい場合もあり積極的に受けたいと思う方が少ないのが難点です。そのため大腸がんの検診としては便に血が混じっていないかを調べる便潜血反応検査が第一段階の検査として全国的に採用されています。検査で陽性の場合は内視鏡検査に進むことになります。便潜血反応検査は毎年受けることにより大腸がん死亡を60%以上減らすことが証明されています。函館市の場合は年1回40歳以上の方は低額の自己負担で、70歳以上の高齢者の方等は無料で受けることができますので積極的に活用しましょう。
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)
- ものや景色がゆがんだり小さく見えたりする(変視症・小視症)
- 最近視力が落ちた気がする
- 色の感じ方が以前と違う、色の違いがわかりづらい(色覚異常)
このような症状を自覚したことはありませんか?
もしかしたらそれは「加齢黄斑変性」の初期症状かもしれません。
加齢黄斑変性とは網膜の中心部に異常が起きる疾患で、加齢や酸化ストレス、喫煙などさまざまな因子が発症に関わっていると考えられています。
放っておくと視力低下することもある怖い病気で、世界的には視覚障害の上位に位置します。
実際に視力が低下するまで進行した人の割合は人口の約1%程度ですが、網膜に前駆病変を持つ予備群は人口の実に約10%に及ぶと報告されています。
検査は視力検査、眼底検査、視野検査、光干渉断層計検査、蛍光眼底造影検査等、個々の患者の状態に合わせて検査を行います。
眼底検査は瞳孔を広げる薬を点眼するため、薬の効果で数時間程度見づらさが出現します。
そのため来院時は車の運転を控え、他の交通手段で受診することをお勧めします。
外来での治療は眼の中に薬剤を注射したり(硝子体注射)、病変部にレーザー治療を行ったりします。
タバコは病気を悪化させるため、禁煙をお勧めしています。
また加齢黄斑変性の予備群と考えられる方には、予防のための薬(サプリメント)の内服を勧めることもあります。
少し前までは有効な治療が少なかった疾患ですが、現在はいい薬が日本でも導入されたため薬剤のみで病気の進行を抑制し、失明を予防できる機会も増えてきました。
しかし早期発見、早期治療が大事なのはどの疾患も共通ですので、冒頭に挙げた症状に心当たりがある方はお近くの医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
いつもどのようにして目薬をさしていますか?
まず目薬をさす前にしっかり手を洗いましょう。汚れた手や指で容器の先に触れてしまうと、目薬の汚染の原因になります。そして目薬をさす時は下まぶたを引いて目薬を目の中に入れましょう。目やまつ毛に容器の先が触れるのも汚染の原因になります。
1回に入れる量は1~2滴でも大丈夫です。その後はしばらく目を閉じるか、目頭を押さえましょう。目薬が目にとどまる効果があります。
目からあふれた目薬は清潔なガーゼやティッシュで拭き取りましょう。その他にも目薬を貸し借りしない、2種類以上さすときは5分以上間隔をあける、開封後の使用期限はほとんど1カ月なので気をつけるなど注意事項はいろいろとあります。
今後目薬を使う際に参考にしていただき、目の健康のお役にたてればと思います。
『NASH』(ナッシュ)という用語を聞いたことはありますか? 〜脂肪肝との違いは?
「NASH」という用語を聞いたことはおありでしょうか。
「非アルコール性脂肪性肝炎(non alcoholic steato hepatitis:頭文字でNASH)」のことで、これはアルコールによらない脂肪肝が肝炎に進展した状態です。
これまで、普通の肥満や糖尿病などのメタボリック症候群で起こる単純な脂肪肝は、それ以上進行しないとされていましたが、その中で10人に1〜2人はナッシュを引き起こし、さらには肝硬変・肝がんへと進行する例があることが分かってきました。
単純な脂肪肝では肝臓の細胞に中性脂肪が貯まっているだけで、肝細胞の壊死や炎症、線維化は見られず、原因が無くなれば改善し元に戻ります。
一方ナッシュではアルコール性肝炎と同様の肝炎が起き、一部は肝硬変・肝がんへ進行する例も出てくるわけです。
単純な脂肪肝の1〜2割が、どういう場合にナッシュに進展するのか、まだはっきりとは分かっていませんが、脂肪の沈着に続き内蔵脂肪細胞から分泌される「サイトカイン」と呼ばれる因子や肝細胞での活性酸素の発生、さらに鉄蓄積などが加わった場合に発症するのではないかと推測されています。
診療において具体的に単純性脂肪肝からナッシュへの進展を疑うのは、肝機能のAST/ALT比の上昇(AST優位)に加え血小板の減少やヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲンなどの線維化マーカーの上昇があります。
さらに専門的には、超音波により肝臓の硬さ・線維化を測定するエラストグラフィー(硬度画像診断)も開発されています。
治療としてはインスリン抵抗性改善薬や肝庇護剤、坑酸化作用のあるビタミンE、高脂血症治療薬などが試みられています。
日常的には適正体重の維持、メタボリック症候群の是正が重要です。
腸内細菌叢〈そう〉(腸内フローラ)とプロバイオティクス
最近「腸内細菌叢(腸内フローラ)」や「プロバイオティクス」などの話題が、健康との関わりからメディアなどでよく取り上げられるようになりました。
医療の世界でも、腸内細菌叢と炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)や大腸がん、さらに脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)などとの関わりが明らかにされつつあり、プロバイオティクスの有用性が報告されています。
ヒトの腸内には約1000種類、100兆個の実に多くの細菌が生息しているとされ、これらは植物が群生している様子に例えられ、腸内フローラ(植物群、叢〈そう〉)とも言われます。
これらの腸内細菌のうち、善玉菌と呼ばれる乳酸菌とビフィズス菌は、乳酸や酢酸などを作り腸の働きを整えます。
さらにビタミン類を作ったり、免疫細胞を活性・協調化させアレルギーを軽減する作用も知られています。
一方、悪玉菌と呼ばれる大腸菌やウェルシュ菌は腐敗物質を産生し、さらに発がん性を有する胆汁酸やニトロソアミンを作り出します。
さて「プロバイオティクス」とはなんでしょうか。プロバイオティクスとはアンチバイオティクス(抗生物質)の反対の用語で、“共に”(pro-)“生きる”(-biosis)、つまり「共生」という意味からきています。
定義としては「腸内細菌叢のバランスを改善し、人体に良い影響を与える微生物またはそれらを含む食品」のことです。
具体的には動物の乳を発酵させる「乳酸菌」や「ビフィズス菌」などがあり、その食品がヨーグルト、乳酸菌飲料などです。
さらに植物性乳酸菌が作る漬け物、納豆(納豆菌)などもプロバイオティクス食品とされます。
また、食事では善玉の腸内細菌の栄養になる食物繊維(水溶性および不溶性)や、果物などに含まれるオリゴ糖(小糖類、プレバイオティクス)を摂取して、腸内細菌叢のバランスを整えることが健康にとって大切です。
健康診断の結果を確認していますか?
健康診断などで、血液検査や尿検査を行うと、普段あまり見慣れない検査項目の羅列で、見どころが分からない、と思ったことはありませんか?
腎臓の病気は、比較的ゆっくりと経過する場合があり、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、検査をして初めて発見されることもあります。
検査方法は腎臓病の種類によっても異なりますが、一般的な健康診断で行われる尿検査や血液検査は、慢性腎臓病(CKD)の早期発見のきっかけになり、隠れている腎臓病を見つけることができます。
尿検査では主に尿中にたんぱく質や血液が漏れ出ていないかを検査します。
通常、正常な腎臓であれば、尿中にタンパク質が出ることはありませんが、腎臓に何らかの障害があると、体に必要な成分であるタンパク質が尿中に排泄されてしまいます。
また尿中に血液が混ざっている場合、腎臓や尿管、膀胱(ぼうこう)などに何らかの病気があることが疑われます。
運動等でたんぱく尿や血尿が誘発されることがありますので、再検査が必要です。
血液検査では、「血清クレアチニン」をみます。「血清クレアチニン」は、血液の中にある老廃物の一種です。本来であれば、尿中に排出されますが、腎臓の働きが悪くなると、尿中に排泄されずに血液中にたまっていきます。そのため「血清クレアチニン」の値が高いということは、腎臓がうまく働いていないと判断できます。
この「血清クレアチニン」の値を年齢と性別で補正した値がeGFR(推定糸球体濾過量)です。
eGFRは腎臓が体に必要ない老廃物を尿中へ排泄する能力を示していて、このeGFR値が低いほど腎臓が悪いということになります。
尿検査でタンパク質や血液がみられたり、血液検査でクレアチニン値やeGFR値に異常を認めるような場合は、症状はなくとも腎臓の病気が隠れている可能性がありますので、最寄の医療機関にご相談ください。










