子宮頸がん予防ワクチンの(ヒトパピローマウイルスワクチン)安全性と効果が日本でも証明されました
子宮頸(けい)がんの発症は、ヒトパピローマウイルスの感染に密接に関連しています。他にも咽頭がんや尖圭(せんけい)コンジローマ、子どもの気道にできる再発性呼吸器乳頭腫症などもヒトパピローマウイルスが原因とされています。
2000年代に入り20歳代の子宮頸がん罹患(りかん)率の増加が問題になっています。ヒトパピローマウイルスは感染しても多くは自然に排除されますが、感染した1割程度が前がん病態となり、そこから子宮頸がんが発症します。20歳代の女性に多くなったために、妊娠を途中で諦めたり、妊娠できなくなったりと子どもを産むということがかなわない人が増える結果となりました。
子宮頸がん予防ワクチンは6年前から定期接種となりましたが、副反応が報告されて、現在は積極的勧奨を中止している状態です。2015年から始まった名古屋市でのワクチン副反応に関する調査の結果が昨年発表され、ワクチン後に起こるとされた副反応のすべてで、接種による増加が認められませんでした。これは、WHOが報告しているのと同様で、安全性に関する懸念が払しょくされています。すなわち、ワクチンの副反応と言われていた症状はワクチンが原因で起こったものではないということです。
またワクチンの効果についても昨年新潟大学から論文が出され、ワクチンに含まれるウイルスのタイプについては91.9%の有効性が報告されています。
日本以外の先進国ではすでにより多くのヒトパピローマウイルスに対応したワクチンが開発され、女性ばかりではなく男性にも打ち始めるところが出てきました。
今年4月から道南一部市町村では子宮頸がん予防ワクチンの接種券の配布を再開しています。
ワクチンの接種をおすすめします。
健康寿命を延ばしましょう
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」です。「平均寿命」と「健康寿命」との差は日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味します。厚労省の統計では、男性は約9年、女性は12.5年と発表されています。この年月が、自分で歩けなかったり、要介護だったり、寝たきりの状態だったりと自由な生活ができなくなる平均の期間です。
健康的な生活を送ることができなくなる原因は、主に脳卒中、認知症、高齢による衰弱、骨折です。転倒や骨折により身体活動が低下すると更に認知症、うつ病、肺炎など2次的な病気のリスクも上がります。骨密度は、男女共に加齢によって減少します。特に女性の場合は、20歳代に骨密度がピークを迎え、その後徐々に減少し40歳頃から加速します。また20~30歳代の女性でも過度なダイエットによる栄養不足や運動不足により、骨量が低下することもあります。年齢を重ねるにつれて骨量が低下することは避けられないため、若いうちから骨量のレベルを高くしておくことも重要です。特に女性の方は年に1回は骨密度を測定し、自分の骨の状態を把握しておきましょう。
骨を丈夫に保つには、カルシウムが必要だとよく言われます。カルシウムを多く含む食品は、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、イワシやちりめんじゃこなどの小魚類、納豆、ごま、小松菜などです。カルシウムの他にもビタミンDやビタミンKも一緒に摂取することでカルシウムの吸収を促します。ビタミンDを多く含む食品は、サケ、サンマ、サバ、マグロ、きのこ類です。ビタミンKは、納豆、緑黄色野菜に多く含まれています。ビタミンDは、食事から摂取する以外に、日光に当たることで、体内でも産生されます。
食事以外でも、骨への刺激を与える運動も有効だという報告もあります。ゆっくりとかかとを上げた後、力を抜いてストンと落とす衝撃を与えると骨芽細胞を活性化することができるという説です。ですから日光を浴びながらのウオーキングも有効な方法です。
食事・運動療法も継続することで骨の健康を保つだけではなく、転倒を予防する体のバランス力を鍛え、生活習慣の予防にも繋がります。平均寿命と健康寿命の差を縮めることができれば、より幸せな生活を送ることができるのです。
目に液体が入った時
洗剤や漂白剤、仕事で扱う薬品などが目に入ると、液体中の化学物質により目がやけどします。具体的には目の表面やまぶたの裏がただれ、炎症が起こります。化学物質のなかには、眼表面のバリアーを壊して深くまで浸透し、視力障害を残す物もあります。
どの化学物質も、接触時間が長くなればなるほど傷害が強くなる点がポイントです。そのため、運悪く目に液体が入ったときは、すぐ病院に行くのではなく、できるだけ早く流水で目を洗いましょう。水道水でかまいません。できれば10分以上洗眼して下さい。目をつぶっていては意味がないですよ!実際に行うと10分は長く感じると思いますが、その後を左右しますのでがんばって下さい。洗眼を終えた後に、眼科を受診しましょう。
目に液体を入れた本人は慌てていますから、周りにいる人がぜひアドバイスしてあげて下さい。
間違ったコンタクトレンズの使い方
最近は、多種多様なコンタクトレンズ(以下CL)が発売され、装用開始する年齢も若くなってきました。CLは、メガネに比べて視界も広く、見た目も自然で大変便利な物ですが、使い方を間違うと重症な感染を起こし、失明につながる怖い一面もあります。以下のNG項目をチェックして安全に装用しましょう。
NG①「装用時間は適当、使い捨てタイプも期限を守らず使っている」
1日10時間位で外しましょう。CLに覆われている角膜(黒目)は、酸素不足になりやすいのです。ましてや期限を過ぎたCLは汚れがいっぱい!汚れが原因で角膜に傷がついたり、アレルギー性結膜炎になったり、病気になることばかりです。
NG②「外れたハードCLは、ちょっとなめて目に入れる」
口内にはいろいろな雑菌が存在しています。それを目に入れてしまうことになり、感染のもとです。
NG③「外すのが面倒で、つけっぱなしで寝ている」
角膜の酸素不足が続くと角膜が剥げたりします。本当に痛いです。その傷から感染すると、重症な眼内炎となり、急激な視力低下を引き起こします。失明の危険性もあります。絶対にやめましょう!
NG④「CL外したら、すぐにケースに入れている」
洗った清潔な手で、ケースの保存液も取り換え、CLもよく洗ってからケースに入れます。つける時に洗うのではなく、外した時に洗うのです。外した後に洗わないと、ケースの中は細菌だらけ。細菌に浸されたCLをつけていることになります。
NG⑤「使い捨てコンタクトはもっぱらネットで購入している」
CLは心臓に埋め込むペースメーカーと同じ「高度管理医療機器」です。CL購入時には毎回必ず医師の診察後の処方が必要とされています。眼鏡との大きな違いは直接目の表面に触れるのでいろいろな危険性も伴います。眼科医の診察を定期的に受け、自分の目の形、サイズ、度数など適したものを選んでもらって下さい。
一家に一台血圧計~自宅で血圧を測りましょう
春の健康診断も終わり、血圧に注意とされているあなた!2019年4月に高血圧治療のガイドラインの改訂がありました。より血圧を下げ、健康で長生きをしましょうという趣旨です。そもそも血圧の正常値って?
病院の診察室では、上の血圧(収縮期血圧)が120未満かつ下の血圧(拡張期血圧)が80未満です。自宅では、115/75未満です。結構厳しい数字ですよね。特に病院や検診施設での血圧測定は、緊張しますので高くなる方も多いです。でも本当にそうでしょうか?
病院で高く自宅で正常な方を白衣高血圧と呼びますが、この方々も血圧測定を続けていくと徐々に本当の高血圧症になりやすいと分かってきました。己を知ることが大事です。血圧は、測ってみなければ高いか低いか分かりません。自覚症状が出ている時はかなり高くなっている時で、それこそ倒れる寸前かもしれません。
自宅の血圧測定の意味は? なんと家庭での血圧測定値の方が、病院での血圧より、その後の脳梗塞や心筋梗塞等の合併症への関連が高いのです。ただし、血圧は変動しますので条件を決めて測定することが必要です。特に血圧計を買ったばかりの1週間は、器械の測定に慣れていませんので高くなる方が多いです。また、測定値も2回連続して測定した時には、1度目が高く2度目に少し下がります。
基本は
①家庭での測定は、1日2回。朝は起床後1時間以内、排尿後、朝ごはんの前。そして寝る前です。但し、飲酒後と入浴後は、血管が拡張するので血圧は下がります。そのため、寝る前といっても、入浴前かつ、夕食に晩酌をされる方は夕食前の測定になります。
②測定は、2回測定し、その平均値をその機会の血圧とします。
③高血圧かどうかの判定は、朝の血圧と夜の血圧を7日間測定しその平均値を見て決めます。家庭では 「血圧が130超えたら…」黄色信号ですよ!
母の日・父の日・敬老の日、血圧計のプレゼントはいかがですか?
40歳を過ぎたら、眼底検査を!!
「目を見ればその人が分かる」と言いますが、これは本当で、目は体の中で血管を直接観察できる唯一の臓器です。身体がメタボならば、目にも高血圧・高脂血症・糖尿病による合併症が出現する可能性があるのです。 イギリスの若者対象の調査によれば、肺がんや脳卒中よりも失明が一番恐怖という結果が出たそうです。瞳孔を広げる点眼薬をつけて眼底検査を行えば、目の重要な病気を早めに見つけることができます。
また、40歳以上の日本人の5%は緑内障で、疑いの人を含めると100人中13人もいることが分かっています。緑内障は進行性で日本の失明原因1位の病気ですが、早めに発見し眼圧を下げる治療を行えば、進行を遅くすることができ、老後も身の回りのことができる視野を保てます。緑内障も眼底検査と視野検査・眼圧測定で見つけることができます。早期発見のために気軽に眼科を受診しましょう。
大腸がんで死なないために
がんは決して人ごとではありません。今は2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代です。
わが国で罹患(りかん)が多いがんは、男性で胃(16・4%)、前立腺(15・8%)、大腸(15・8%)、肺(14・8%)の順で、女性では乳房(22・1%)、大腸(16・0%)、胃(9・8%)、肺(9・7%)、子宮(6・6%)です。
男女合わせて多いがんの順位は①大腸②胃③肺でした。
北海道のがん患者数は全国4位で男女とも高水準にあります。
また、わが国の大腸がん死者数は上昇を続け、今では年間5万人を超し、2・5倍の人口を有する米国の大腸がん死者数を上回ったことは衝撃です。
中でも函館市は大腸がん死亡が飛び抜けて高いのです。標準化死亡比は全国平均を100として、各地域のがん死の割合を示しますが、函館市の大腸がんの標準化死亡比は137・8です。函館市では大腸がんで死亡する人が全国平均より約40%位多いということになります。
大腸がん死を防ぐには、便潜血検査による大腸がん検診を毎年受けること、大腸内視鏡で大腸ポリープをすべて切除することです。
便潜血検査による大腸がん検診が大腸がん死を約60~80%減らし、大腸内視鏡で大腸ポリープをすべて切除することで大腸がん死を約50%減らすことが明らかとなっています。大腸がん患者のうち大腸がんで死ぬ割合は37%です。このことは大腸がんを早期に発見して治療すれば、完治できることを示しています。
自覚症状がなくても40歳になれば、毎年大腸がん検診を受けることが重要で、便潜血陽性の場合には大腸内視鏡を必ず受けて、発見された大腸ポリープはすべて切除してもらってください。大腸内視鏡機器の改良と挿入技術の進歩で、ほとんど苦痛なく検査が受けれるようになりました。不安感が強い人や開腹術の既往がある人などには、鎮静薬で眠らせて検査することもできます。
大腸がん死を防ぐことは自分でできることを知っていただきたいです。
子供の目の病気を見つけてあげましょう
生まれたばかりの赤ちゃんの視力はまだ非常にわずかです。生まれたばかりのときの視力は0・01ぐらいで、1年後には0・1前後に育ちます。その後4~5歳で1・0となり視力の発達が完成します。
この視力の発育段階に、なにかの理由で網膜にはっきりと像が写らず刺激が加わらなかった場合、視力が育ちません。
この時期を逃すとあとで病気を発見し治療しても、遅れた分は失われたまま追いつけないことが多いのです。これを「弱視(じゃくし)」と言います。
3歳児検診では簡単な絵視標を使った視力検査が含まれています。この時期視力はまだ0・6くらいでも正常です。検診のあと眼科で精密検査を受けた場合、1・0のような良い視力が出るかどうかではなく、きちんと目に病気がないかどうかをこの段階で発見してあげることが重要です。
視力を測るまでもなく、白内障などの目の病気がないかどうか、視力異常による斜視がないかどうかなどを発見するために、子供の日常生活の癖から読みとってあげる方法がありますのでご紹介します。
◆目の大きさが左右で違う、目の表面が濁っていたり、瞳の中が広く光って見える。
◆両目が寄って見えたり、逆に片目が外側に向いている。目が細かく振るえて見える。
◆ものを見るときに片目を細めて見る。本やテレビを極端に近づいて見る。
◆顔を傾けて見たり、片方の目を隠すと極端に嫌がる。
小さなお子さんの場合、目が内側に寄っている〈内斜視〉を疑って来院される方も多く見られますが、目頭のまぶたの形のせいで内斜視に見える場合も多くあります。そういう状態を「偽斜視(ぎしゃし)」と言います。
赤ちゃんやお子さんの目つきなどが気になるようならば、念のため眼科を受診してみてはいかがでしょうか。
傷痕の思わぬ色素沈着(黒ずみ)
春になると屋外で活動することが多くなり外傷が増加します。外傷には切創、挫創、擦過傷(擦り傷)などがあります。
その中で傷の周囲や辺縁が挫滅(外圧で皮膚が損傷を受けること)した挫創、擦過傷の場合には傷をきれいに洗浄して必要であれば縫合しますが、一般的に傷が治っても創周囲は、数カ月、赤みや色素沈着を起こします。
この時期に日に当たると(紫外線を浴びること)色素沈着を長期化させる原因になります。
また、注意しなければならないことは顔面など露出部のちょっとした擦過傷(擦り傷)や人や猫などの引っかき傷の時など傷を洗浄しないで雑に傷を処置していると、その後に線上や帯状の思わぬ色素沈着(黒ずみ)が起こることになります。
このような小さい傷の場合は流水洗浄した後に清潔なガーゼで拭き、保湿性のあるジェル基材の絆創膏(ばんそうこう)でカバーするようにしましょう。毎日交換する必要はありません。不安を感じた時や痛みや腫れが出てきたときは専門医を受診して下さい。
咳(せき)について
「気管支炎ですね」「咳喘息(ぜんそく)ですね」「鼻炎が原因ですね」「気管支喘息の気がありますね」
「咳がなかなか止まらない」と話すとこのようにさまざまな返答が先生方から返ってくるものです。
しかし、薬を飲んでも一向に症状が良くならず、咳に悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
「精神的なものだ」「もう高齢だから仕方ない」そう言われて半ば諦めつつ、暮らしている方もいらっしゃいます。
なぜそうなってしまうのか…。
理由の一つとして、咳の原因を特定しにくいということがあげられます。
下気道(気管・気管支)や肺だけでなく、上気道(鼻腔など)や食道などさまざまな臓器や器官が咳に関係します。
また、外来では気管や気管支、さらには肺の奥を直接目で見て観察することもできないため、どれくらいの炎症が起きている(荒れている)のかを視覚的に把握することが困難です。
日常的に吸っている空気が澄んでいるのかよどんでいるのか、花粉やほこりが多いのか多くないのかなど患者さんを取り巻く環境を目で見て確認することが難しいことも要因です。
「症状の程度」も「治るまでの期間」も患者さんそれぞれで千差万別です。
百日咳なんていう何とも咳が止まらなそうな名前の感染症もあったりします。
長年患っていた咳の原因が、胃酸の逆流(逆流性食道炎)だったということもよく聞く話しです。
後鼻漏と言って、鼻水が鼻の後ろから喉に流れ落ちることが原因の咳もあります。
治療をしていく過程でじっくりお話しを聞くと、ご自宅をリフォーム(壁紙の貼り替えなど)してから咳が出始めたことが分かり、調べるとハウスダストアレルギーをもっていたということもあります。
これからの季節は、花粉やPM2・5、黄砂なども咳の原因となります。
副流煙を含めた喫煙ももちろんのことです。
こうした物質が含まれた空気を吸い込むことで気管や気管支の粘膜が刺激を受け、むくみ、空気の通り道が狭くなることで、咳や痰(たん)が出てしまいます。
いくら治療をしたとしても、刺激を受け続けることで症状が完全に治まらないこともあります。
繰り返しになりますが、咳の原因はさまざまです。
何のきっかけもなく咳が出始めたり、咳が長引くようなときには、周囲の環境を見返してみるのも一つです。










