高齢者って、何歳?
世界保健機構WHOの定義では、65歳以上を高齢者と呼びます。近年、日本の高齢における心身の健康調査からは、20年前と比較して、加齢による衰えが、5~10年遅くなった「若返り」現象がみられました。世論調査でも、70歳以上を高齢者と考えると言う意見が多かったそうです。
そうは言っても、寄る年波には勝てませんから、身体が次第に弱っていくのは避けようがありません。「要介護」状態に陥る原因としては、第一位が「認知症」、「脳卒中」、「高齢による衰弱」、「転倒・骨折」、「関節疾患」と続きます。脳卒中のように、突然、健康寿命が終わってしまう場合もありますが、「いくつかの病気が重なって、次第に不調がつのり、だんだん要介護になっていく」という場合が多いと思います。
「要介護」の前段階と言える心身の弱った状態をフレイル(脆弱・もろい)と言います。フレイルには、三つのタイプがあります。①加齢と運動不足で、筋力が衰えて転倒しやすくなる「身体的フレイル」。②うつ病や認知症による「精神・心理的フレイル」。そして、③社会的問題等で、引きこもり、ストレスに弱くなった「社会的フレイル」です。
身体的フレイルのチェックは、体力テストです。世界17ヶ国15万人を4年間追跡調査した結果では、握力の弱い人で死亡リスクが大きくなるそうです。握力が5㎏低下する毎に死亡リスクが16%上昇すると言うことです。握力計がなければ、簡単にできるのは、開眼片足立ち検査でしょう。目を開けて、片方の足で立ちます。挙げた足を着いたり、ケンケンしたりすると終了です。2回やって、良い方が自分の記録です。65歳の平均は、50秒です。足の筋力とバランスを同時にテストできます。握力も片足立ちの時間も、トレーニングで変えられます。自分の未来や寿命を変えられるのかもしれないのです。まずは、けがをしないように、周りを片付けて、片足立ちしてみてください。
健診のススメ
コロナの影響で、昨年は、職場の健康診断や、特定検診、または、定期的に受けていた検査が延期や中止になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特定検診は、指定された病院やクリニックで、国民健康保険に加入されている40歳以上の方であれば、無料で受けることができます。
健康診断で必ず行われる身長・体重測定。そこから「BMI」を計算することができます。
「BMI」とは、成人の肥満や低体重の指標です。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
厚生労働省では、BMIの目標値を、18歳~49歳で18.5~24.9、50歳~64歳で20.0~24.9、65歳歳以上、21.5~24.9と定めています。
日本人での平均寿命を調査したデータでは、最も寿命が短いのが18.5未満のやせ型の人であったという発表もあります。もちろん、肥満は生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)のリスクが高まりますので注意が必要ですが、やせすぎも問題になりますので食事や生活習慣を見直すことも大切です。
人間の身体は、体内で起こっている変化をなるべく表に出さないようにする性質があります。これを「ホメオスターシス(恒常性の維持)」といいます。身体の様々な臓器の変化も、初期の状態では、身体のホメオスターシスが働き、症状を感じることはありません。症状が出てきたということは、症状が隠し切れない程、病状が進んでいる可能性があるということです。
がんの治療で、最も大切なことは、「早期発見・早期治療」です。そして、早期発見のためには、症状が何もない時こそ、健康診断を受けておくことが大切です。
最近でも、自覚症状のない芸能人の方たちが、テレビの特番での健診で、がんや様々な病気の早期発見をされて無事に早期に治療に進めたというニュースもありました。
確かに、レントゲンや採血だけで、病気の全てが見つけられるわけではありません。
しかし正常範囲であっても、昨年よりは悪化していたりすることで、次回の検査まで、生活習慣の改善を考慮するきっかけとなるでしょう。
また、普段、定期通院されていない方も、健康診断の医師との問診時に、日頃気になっている症状を相談することによって、不安が解消されたり、隠れていた病気を見つけることができるかもしれません。
腸内細菌のお話
ヒトの腸の中には、100兆個の細菌が生きています。重さでいうと1㎏あります。いろいろな菌がいるのですが、野原によって生えている草花が違うように、ヒトによって腸内の細菌は種類が違います。「どんな菌が多いか」で、くさむらの特徴が決まるため、腸内細菌叢(ソウ=くさむら)と呼びます。便の中には、多くの種類の菌がいますが、乳酸菌、大腸菌、ビフィズス菌は、腸にいる有名な菌です。
腸内細菌は、人間に寄生しているだけではなく、人体が作れない必須アミノ酸(タンパク質のもと)やビタミンを作って、栄養を与えてくれています。また、糖尿病・メタボリックシンドロームにおいても、腸内細菌が重要な役割を果たしていることがわかってきました。炎症やがんの発症に関係している菌もいます。狭心症の人では、バクテロイデス菌が減っているという報告があります。この菌は、肥満や認知症の人で減少しているとも言われています。
病気を良くするタイプの菌を植え付けたり、善玉菌が産生する良い物質を薬のように作ったりすることは、将来、可能になるかもしれません。それまで、今できる体に良いことは、善玉菌を増やすように努力することです。腸内細菌叢の2割が善玉菌、1割が悪玉菌、7割が日和見(ひよりみ)菌と言われています。日和見菌が悪玉になったりして、善悪のバランスが変化します。なるべく善玉菌が多くなるように増やしたいものです。
善玉菌を増やす食品は、食物繊維、植物性タンパク質、野菜果物、母乳などです。赤ちゃんが3歳になるまでの間に、母乳、兄弟の有無、住んでいる地域などの影響を受けながら、安定した腸内細菌叢のタイプが出来上がります。そうした中で、できるだけ、日和見菌を善玉に変身させたいので、納豆や根菜などを食べるとよいようです。反対に、悪玉菌を増やすのは、高脂肪食、動物性タンパク質、糖分、塩分、ストレスなどです。参考にしていただけると幸いです。
心地よい見え方をしていますか?
スマホやノート型パソコンの普及により、いつでもどこでも労働時間を超えて目を酷使する機会が増えています。
そのせいで、目の疲れを訴えて受診する患者さんは多く、眼精疲労(疲れ目)は国民病の1つになりつつあります。
疲れ目が原因で、肩こり、頭痛、吐き気、眼痛、イライラや不安感、ひどい場合は抑うつ状態になることもありますし、夜寝る前にスマホを見すぎると、不眠症になることもあります。
メガネやコンタクトレンズを装用している場合、「よく見える」と「装用して疲れない」ことは別の問題です。「よく見えるメガネ」は、過矯正(強すぎ)なことがあります。
眼鏡店に行く前に、眼科で他の病気がないかどうか確認のうえ、「疲れないメガネ」を処方してもらいましょう。また、日本で約2000万人といわれているドライアイの患者さんの70%以上が疲れ目を訴えており、疲れ目とドライアイは密接な関係があります。
通常まばたきは、1分間に約20回ですが、読書で半分、VDT作業やゲームでは4分の1まで減少するのです。まばたきが減ると目の表面が乾き、目の痛みが出てくることもあります。
パソコンのディスプレイを真正面ではなく、少し下の方に置くことで、目の表面の露出が減り、乾燥感が減ります。ヒアルロン酸の点眼液も乾燥予防に有効です。
また、目の周りがかゆい時、顔につけるステロイド軟膏では強すぎて、かえって赤みが増すことが多いので、目に入っても大丈夫な眼軟膏を眼科で処方してもらいましょう。
「疲れない・痛くない・かゆくない」というような心地よい見え方こそが快適な生活につながりますので、お気軽に眼科で相談して下さい。
コロナウイルスワクチン接種について
いよいよ65歳以上の方のワクチン接種がはじまりました。ここで、現在使用されているワクチンについておさらいしましょう。まず、接種間隔は、3週間が基本です。2回目を打ちそびれた場合はできるだけ早く打ちましょう。1回目の接種と2回目の接種では、副反応の発生頻度に差があります。先行接種の全年齢集計では①37.5度以上の発熱について、1回目3.3%2回目38.4%(中には38度以上の方もいます)と高率でした。発熱する場合は、翌日が一番多く3日目にはほぼ解熱しています。②接種部位の痛みについて、1回目2回目ともに90%程度と高率です。これも接種翌日が、最も多く3日目には改善してきます。③疲労感・倦怠感については、2回目で全体で7割。④頭痛は、2回目で5割の頻度となります。若年・女性に頻度が多くみられました。65歳以上の2回目接種時は、副反応は発熱9%・頭痛20%・全身倦怠感38%となりました。
これらの副反応はワクチンが免疫をつけるための反応といわれています。発熱については、当日から翌日にかけて上がり通常数日以内で治ります。一人暮らしで心配な方は、発熱・疼痛に備えてかかりつけの先生や薬局で熱冷ましや痛み止めを処方・購入し、食欲低下等に備えレトルトパックの食材やスポーツ飲料等をあらかじめ購入しておき脱水を予防しましょう。
医療機関もがんばっています。通常外来・発熱外来・ワクチン接種は、院内で15分待機・病院内を混まないよう等努力していますので、接種予定がまだの方も今しばらくお待ちいただくようお願いします。
原稿を書いている5月15日現在、最新の話題は、横浜市立大学医学部の発表で、このワクチンは、現時点での変異ウイルス英国型・南アフリカ型・ブラジル型・インド型に対しても中和抗体ができるそうです。期待して待ちましょう。
春の眼科検診での視力と色覚検査
新学期を迎え、我々眼科医も学校健診のため小・中学校を訪れます。視力検査を含め、目の病気が疑われれば専門医を受診するようにと、健診の結果用紙を子供達は学校から頂いてきます。その中で特に注意しなければならないのが小学校一年生の視力検査の結果でしょう。小学校一年生にとって視力という検査は初めての経験で、やり方も良く理解できないかも知れません。そのため本来の視力より低く出ただけということもあります。
しかしながらその年齢で結果が悪い場合、遠視や乱視のお子さんも多く見受けられます。そして、遠視や乱視の場合、弱視(じゃくし)や斜視(しゃし)を伴っている場合があり、この時期を逃すと後でメガネをかけたとしても視力が回復できなくなってしまうこともある、目にとってラストチャンスの時期だとも言えます。
簡単に言うと、強い遠視や乱視の場合は近くも遠くもピントがあわず、常にぼやけています。いつもはっきりしない画像しか見えていないため、放置するとメガネで矯正しても視力がでない弱視になってしまったり、また、斜視を来すこともあります。
色覚検査は現在希望者のみ行われています。念のため一人ひとりが別々に検査を受けられるようになっています。先天性色覚異常は男児だと、おおよそクラスに1名いる換算になります。
小学校に上がると消防車の写生を全員でしたりと色使いにも色覚異常の生徒ははっきりと現れることになります。
美術以外の教科でも先生が黒板に書いた字が見づらい・学校の掲示物が読みづらいなどの不具合が出ることもあります。小学生のうちにぜひ色覚検査も受けてみることを勧めます。
健康診断で視力の結果が悪いときには放置せず、必ず専門医の精密検査を受けましょう。
がん治療と放射線治療
がん治療には手術、化学療法、放射線治療の三種類があり、それぞれの特徴を生かして使い分ける、あるいは組み合わせて行われています。このうち放射線治療には体の奥にある病気を切らずに治療でき、身体への負担が比較的少ないという特徴があります。
放射線によってDNA=細胞の設計図が傷つくことがわかっています。正常細胞は少し損傷しても一部は自己修復され実害は出ませんが、がん細胞はDNAが傷つきやすく修復されにくいという性質があります。これを応用したのが放射線治療です。毎日治療を続けることにより先にがん細胞が弱っていき正常細胞が生き残る、これが基本原理になります。いわば細胞どうしの我慢比べです。
平日1日1回ずつ、2週間から数週間かけて行っていきます。治療一回にかかる時間は数分から数十分です。初回治療時は皆緊張されますが、痛みも何も感じず負担がないのですぐ慣れてきます。
2〜3週経過すると照射された部分に急性期の副作用が出現することになります。皮膚に作用すれば日焼け類似症状、喉に作用すれば風邪のような咽頭痛が出てきます。日光が身体の奥にまで届いたと想像すればわかりやすいと思います。終われば数日〜数週で回復していきます。範囲、強さ、回数を増やせば効果が高くなりますが、負担が過ぎると辛いので、事前に評価し慎重に決めています。
最近は手術、化学療法との協業が発展し放射線治療で根治を狙えるケースが増えています。乳がん手術後は再発予防のため放射線治療がよく選択されています。根治治療でなくとも、進行の一時阻止、縮小が得られればその後の症状は全く違ってきます。特に随伴症状の痛みに対しての効果は絶大です。
もし放射線治療を勧められ迷ったときは一度放射線治療担当医の説明を聞いてみてはいかがでしょうか。
一般社団法人日本口蓋裂学会認定師について
岩手医科大学 歯学部を、1975年に卒業。直後に札幌医科大学口腔外科に、スキー部の先輩の伝手で、入局。その当時、佐々木元賢教授のもとで晩学に励んでいました。
佐々木教授は、九州大学医学部を卒業し、1950年に九州大学医学部を、1953年に東京医科歯科大学歯学部を卒業され、その当時大変難しかった、小児全身麻酔を研究され九州大学医学部助手、講師、助教授を経て、1961年札幌医科大学口腔外科教授。そのご、長崎大学歯学部部長。になられた方です。そのころ、1歳未満の麻酔ができる方はいなかったようで、手術はもっぱら洗濯板に縛り付押さえつけてしていたとのことでした。笑い話で、げんこつ麻酔という言葉があり、子供をげんこつで殴り気絶している間に手術をしたなどの話を聞きました。したがってそのころは札幌医大でも、小児麻酔ができる方が来られたことは大変スクなかったのではなかったと想像します。佐々木元賢先生が唇顎口蓋裂の手術を手掛けたのは、ながれとしては自然だと思います。
私が、札幌医科大学口腔外科に入局したころは、全道からたくさんの患者さんが来られ、月曜木曜が手術日でしたが、3例、週に6例が、唇顎口蓋裂関係の手術でした。ほとんどすべての手術が、教授が執刀されました。我々新入医局員は、手術介助や外来担当でした。当時の記憶では、新卒の私のような歯科医に、40歳前後のお父さんが、「私の子供をよろしくお願いします。」と手術前に必死にお願いされました。あまり大きな声では言えませんが、手術の順番が早くなるようにいろいろなことをした記憶があります。そのころ、函館からもたくさんの患者さんが来られていました。また、いずれは函館に帰り、開業しようと考えていましたので函館に帰ってからこの子らのために、何かできないかと思っていました。またこのころ、苫小牧の口蓋裂の子供と、親が青函連絡船で身投げ自殺をし、記事になりました。そのころは、手術は健康保険適応でしたが、その後の治療の矯正歯科治療は、保険外で、そのころでも2-30万かかる治療のため、ほとんどの子供が受けることができませんでした。毎日新聞、北海道版で「谷間の口蓋裂児ーこの子らに健保を」のキャンペーン記事が連載されました。そのことが、当時の参議院議員コロンビアトップが取り上げ、矯正歯科治療の保険導入が決まりました。私自身は、口腔外科に4年勤務し、佐々木元賢先生が、長崎大学歯学部創設のため、転出された後東京医科歯科大学より来られた小浜先生の元、口蓋裂児の言語を勉強しました。その当時、言語治療室では、、お茶の水女子大出身の伊藤静代先生が、言語治療室を担当していて、一緒にx線テレビ室で、軟口蓋の動きを自作の装置を用いて、観察したことをなつかしく思い出されます。その際、伊藤先生の知識をもっと新人医局員に理解してもらったいいとお話ししたところ、歯科医ではない自分が、歯科医のみんなに説明しても、興味を持っていくれる方がいないと、私に寂しく話されたことを、記憶しております唇顎口蓋裂児の治療は、多くは1歳6カ月まで形成外科医と一部の口腔外科医が手術を担当しており、発語が始まる1歳半以降に言語治療と、乳歯を含めた歯科治療が始まります。また、生後3カ月頃、口唇の部分の手術が必要ですが、顎裂が大きく変位していると、生後1週より、PNAM(術前鼻歯槽形成)が開始されます。現在では当院が担当しております。また、口蓋裂の言語についても、札幌医科大学で一部手掛けておりました。手掛けていないのは、矯正歯科分野でした。このため、矯正歯科の治療技術を得るため北海道医療大学(旧東日本学園大学)歯学部矯正歯科に入局。5年勤務後、函館市立病院歯科の科長として、先代の山田先生の後釜として勤務しました。その当時山田先生の下で、北海道大学歯学部小児歯科出身の渡辺郁也先生【現在花園町で開業)が勤務されており、函館中央病院小児科の医師から、小児歯科治療のため、口蓋裂患者が函館市立病院歯科に紹介、通院されていました。なお、その小児科医の奥様が、北海道大学歯学部小児歯科で、渡辺先生と一緒に勤務されていたとのことです。札幌医科大学で口唇の修正術を希望して受診した担当した10歳の函館の女の子のお母さんが、「この子が私を責めるんです。」と訴えていました。当時の耳鼻科の科長が、岩手医科大学医学部で同期であった、金子先生から、見てほしい患者さんがいると言われ、耳鼻科外来に行くと札幌医科大学で受け持った患者さんでした。矯正治療を終えたことを記憶しております。またみはら歯科矯正クリニックを開業して10年後くらいに、函館中央病院口腔外科に勤務されている札幌医科大学口腔外科出身の辻先生から、当院に軽度の口唇裂の子の矯正歯科治療を、紹介されて女の子が来院しました。すると、その子のお母さんが、札幌医科大学で担当した女の子でした。おばあちゃんも、元気だとのことで、当時のことを思い出されます。いまでも通院しております。なにか、強い運命を感じております。
私が市立函館病院に勤務したと同時期に口蓋裂矯正歯科治療の保険導入が決まり、また、日本矯正歯科学会での認定医審査も始まりました。この間、米国カナダに短期ですが。口蓋裂関係の7施設の見学をしましたが、まだまだ知識不足で、また、日本の口蓋裂の医療レベルも大変低いものでした。私がみはら歯科矯正クリニックを開業した際に函館中央病院形成外科科長 浜本先生が、北大形成外科助教授からこられました。中央病院で面会した際、浜本先生は以前北海道大学k歯学部口腔外科の助教授の経験があり、札幌医科大学口腔外科、旭川医科大学口腔外科3科で、年に数回合同カンファランスをして、いろいろな症例を検討していました。私も何度かスピーチして、浜本先生とお会いしていました。このため、浜本先生は口蓋裂治療に熱心で、中央病院に言語治療室を開設、早坂先生が担当されました。その際、浜本先生は、形成外科と矯正歯科との連携が口蓋裂治療は、非常に大切で、形成外科医と矯正歯科医は、ある意味で結婚するような付き合いになると話されていました。その時に、まだまだ未熟な私を、チームアプローチのメンバーに認めいただけたことは、この面でのすべての始まりだったと感謝しております。その後中央病院の科長は木村先生に交代し、木村先生は、平成2年から浜本先生の後を引き継ぎ、唇顎口蓋裂の面を深く勉強されました。また当時、日本で最も進んでいた東北大学、形成外科、矯正歯科(幸地先生)の治療法の、顎裂部への腸骨海綿骨移植を、提案し、取り入れていただけ、治療した患者さんについて報告しました。この治療法はそのころは北海道では大学を含めても、函館のチームアプローチだけでした。現在は、この治療法が全国的にもルーティンとなっております。また、私の発想で、骨移植した顎裂部に、日本で初めて下顎前歯を歯牙移植した報告を、日本口蓋裂学会に共同で発表しました。それ以降類似の報告が、他機関より多数され、一般化しております。いままで、大学病院がない函館で、大学より早く優れた治療法を手掛け、函館在住の口蓋裂患者により安心していただこうと努力してきました。医療は、最終的には信頼感だと考えております。このため、全国的に認めていただけるよう、10数年にわたり学会報告をしてきました。また、医学博士も勉強の一つとして授与していただくことができました。
また、日本矯正歯科学会認定医および道南地区で唯一の日本成人矯正歯科学会専門医、指導医と認められました。この度、日本口蓋裂学会が、いろいろな科の認定師の制度を作り、昨年募集しました。私も卒業後、45年、口腔外科を経て、矯正歯科に携わり、41年たち、70歳となりました。症例提出、その他の審査を受け、この4月に認定されました。おそらくは唇顎口蓋裂患者さんのほとんどは、大学病院に通院しており、地方都市では、手掛ける矯正医は全国的には少ないと思います。現時点では、矯正歯科分野では全国で134名、北海道では私1名です。いままで、口蓋裂の児に教えられ、治療を続けることができた勲章かなとおもい、いままでお世話になった方へ深く感謝しております。また、唇顎口蓋裂児は、体表の先天異常ではも頻度が高く、知的な問題を持つ子が少ない障害です。函館の人口は現時点で、26万人ほど、周辺をわせて30万人ほどですので、唇顎口蓋裂児の発生頻度0.0018をかけると540人ほどの方がおられることが予想されます。当院に来ていただいている子は、200名以上ですので、ほとんどの方が当院に来ていることになります。市内で出産された唇顎口蓋裂の赤ちゃんのほとんどは、中央病院形成外科を紹介受診し、多くの方々が、チームアプローチ一員としての当院をこの30年にわたり受診しております。15年前には、形成外科科長木村先生より、PNAM(術前鼻歯槽形成)について相談されました。その患者さんは、重い心臓の障害のため、全身麻酔が受けることが出来なかったため、1歳を過ぎるまで口唇顎口蓋裂の手術を受けることが出来なく経管栄養のみで栄養補給をされていました。CTを撮影し、そのデータをもとに。北海道工業技術センターの協力を頂き、当院の上野技工士長とともに、顎の模型を作成し、全道で初めて患者さんに装着したところ、今まで経管栄養だけでミルクを飲んでいた児が、哺乳瓶を吸い始めたことを、喜んだことを思い出しました。その子は、現在問題なく、高校生活を歩んでいます。口蓋裂による障害は、口唇部。から硬口蓋にかけての、骨及び軟組織の欠損と鼻の変形ですが、遺伝的な問題や知的な障害が少ない疾患です。現在では、治療技術も上がり、外見的にも満足できる結果が得られます。しかし、出生時に、母親が受ける心理的な影響や、治療が長期になる、その他、本人の心の問題が一生続きます。このため、一番最初に手掛けた研究は、親と子供の心理についてでした。その結果、この函館ですべての治療が提供できることは、この面で大きな安心を与えることが出来たことがわかりました。出生時の親の落ち込みを、地元で、生後1週でPNAMの装置を入れることが出来、今後の医療体制に安心を、感じる。大学のような大きな組織であれば、担当の医師が変わり、変わるごとに不安をかんじるが、函館では担当が変わらず、通院も楽で、安心感を与えていた。しかし、地方で継続的に医療を提供するためには、最新の治療技術の習得を、継続的に続けなければ、安心感を与えることはできません、この面でも、学会その他などから、知識の継続的な習得が必須です。従いまして、この疾患について継続するには、担当する医療従事者の継続的な努力が不可欠です。これからも可能な限り、努力をしていきたいと考えております。
また、2006年に「谷間のこう蓋裂児ーこの子ら健保をー 再発行 (2006.0224掲載分)」を、当時の5名の歯科衛生士により、発刊できたことを思い出し、うれしく感じております。函館中央病院の方々には、いろいろな面でご協力いただきました。退職された初代言語治療室の早坂先生には、教えて頂ながら、発音補助装置を作成したり、特に形成外科科長の木村 中先生には30年間にわたり、お世話になりましたことを深く感謝しております。
昭和58年、市立函館病院に勤務したと同時期に口蓋裂矯正歯科治療の保険導入が決まり、また、日本矯正歯科学会での認定医審査も始まりました。市立函館病院に赴任する前に、米国カナダに短期ですが。口蓋裂関係の7施設の見学する機会を得ました。医療技術、システムすべての面で、その素晴らしさに感動し、日本に帰って地方都市函館で実現してみようとの思いを持ちました。私がみはら歯科矯正クリニックを開業した際に函館中央病院形成外科科長 浜本先生が、北大形成外科助教授からこられました。浜本先生は以前北海道大学歯学部口腔外科の助教授の経験もあり、その当時、札幌医科大学口腔外科、旭川医科大学口腔外科3科で、年に数回合同カンファランスをして、いろいろな症例を検討していました。私も何度かスピーチして、浜本先生とすでに面識がありました。このため、浜本先生は口蓋裂治療に熱心で、中央病院に言語治療室を開設、早坂先生が担当されました。中央病院で面会した際、浜本先生は、形成外科と矯正歯科との連携が口蓋裂治療は、非常に大切で、形成外科医と矯正歯科医は、ある意味で結婚するような付き合いになると話され、矯正医の立場を、非常に理解していただいておりました。その時に、まだまだ未熟な私を、チームアプローチのメンバーに認めいただけたことは、この面でのすべての始まりだったと感謝しております。その後中央病院の科長は木村先生に交代し、木村先生は、平成2年から浜本先生の後を引き継ぎ、唇顎口蓋裂の面を深く勉強されました。また当時、日本で最も進んでいた東北大学、形成外科、矯正歯科(幸地省子先生)の治療法の、顎裂部への腸骨海綿骨移植を、提案し、取り入れていただけ、治療した患者さんについて報告しました。この治療法はそのころは北海道では大学を含めても、函館のチームアプローチだけでした。現在は、この治療法が全国的にもルーティンとなっております。また、骨移植した顎裂部に、下顎前歯を歯牙移植した報告を、全国の他の機関に先駆けて日本口蓋裂学会に共同で発表しました。それ以降、類似の報告が、他機関より多数され、一般化しております。いままで、大学病院がない函館で、大学より早く優れた治療法を手掛け、函館在住の口蓋裂患者により安心していただこうと努力してきました。医療は、最終的には信頼感だと考えております。このため、全国的に認めていただけるよう、10数年にわたり学会報告をしてきました。また、勉強の一つとして医学博士も授与していただくことができ、日本矯正歯科学会認定医および道南地区で数少ない日本成人矯正歯科学会専門医、指導医と認められました。私も卒業後、45年、口腔外科を経て、矯正歯科に携わり、41年たち、70歳となりました。昨年、日本口蓋裂学会が、いろいろな科の認定師の制度を初めて設立しましたので、よい機会だと考え、昨年、申請しました。症例提出、その他の審査を受け、この4月に認定されました。おそらくは唇顎口蓋裂患者さんのほとんどは、大学病院に通院しており、地方都市では、手掛ける矯正医は全国的には少ないと思います。現時点では、矯正歯科分野では全国で134名、北海道では私1名です。いままで、口蓋裂の児に教えられ、治療を続けることができた勲章かなとおもい、いままでお世話になった方へ深く感謝しております。
また、唇顎口蓋裂児は、体表の先天異常ではも頻度が高く、知的な問題を持つ子が少ない障害です。函館の人口は現時点で、26万人ほど、周辺をわせて30万人ほどですので、唇顎口蓋裂児の発生頻度0.0018をかけると540人ほどの方がおられることが予想されます。当院に来ていただいている子は、200名以上ですので、ほとんどの方が当院に来ていることになります。市内で出産された唇顎口蓋裂の赤ちゃんのほとんどは、中央病院形成外科を紹介受診し、多くの方々が、チームアプローチ一員としての当院をこの30年にわたり受診しております。15年前には、形成外科科長木村先生より、PNAM(術前鼻歯槽形成)について相談されました。その患者さんは、重い心臓の障害のため、全身麻酔が受けることが出来なかったため、1歳を過ぎるまで口唇顎口蓋裂の手術を受けることが出来なく経管栄養のみで栄養補給をされていました。CTを撮影し、そのデータをもとに。北海道工業技術センターの協力を頂き、当院の上野技工士長とともに、顎の模型を作成し、全道で初めて患者さんに装着したところ、今まで経管栄養だけでミルクを飲んでいた児が、哺乳瓶を吸うことが出来るようになり、喜んだことを思い出しました。その子は、現在問題なく、高校生活を歩んでいます。
また、2006年に「谷間のこう蓋裂児ーこの子ら健保をー 再発行 (2006.0224掲載分)」を、当時の5名の歯科衛生士により、発刊できたことを思い出し、うれしく感じております。函館中央病院の方々には、いろいろな面でご協力いただきました。退職された初代言語治療室の早坂先生には、教えて頂ながら、発音補助装置を作成したり、特に形成外科科長の木村 中先生には30年間にわたり、お世話になりましたことを深く感謝しております。
いま一度感染予防の徹底を
新型コロナウイルスの感染が中国で確認されてからすでに1年以上が経ちました。
いまだに感染収束の兆しも見えず、みなさんも心労の多い日々が続いていると思います。
この1年でわかったことと言えば、「感染がすぐに広がり、いわゆるクラスターを容易に発生させてしまうということ」「感染しても無症状の方がたくさんいるということ」だけです。
日本でも、ようやくワクチンの接種段階にまでこぎつけましたが、いまだ治療法も確率していないのが現状です。
風邪と一緒だから恐れる必要はないとメディアで持論を展開している有識者も多数おりますが、味覚・嗅覚障害や脱毛、全身倦怠感などが長期間にわたって続くといった後遺症に悩まされる方も多く、一般的な風邪とは一線を画す感染症ではないかと思っています。
もちろん高齢者だけではなく、小さなお子さんにも感染してしまいます。
そのため、大切なものは感染予防の継続と徹底です。
1年以上にわたる長期間の感染予防の精神的な疲弊や自粛疲れといわゆる「コロナ慣れ」により感染対策が疎かになってきていないか、いま一度考えてもらいたく、今回このテーマで話しをさせていただきます。
大半の方々が徹底して行っているマスクですが、中には鼻がマスクから出ていたり、顎にマスクをかけていて全く感染予防の意味を成していない方や、嫌がるからという理由なのかもしれませんが、マスクをされていない小さなお子さん、街中でマスクすらせずに談笑している中・高校生などがいまだに見受けられます。
全国的には高校の部活動クラスターや保育園クラスターなども起こっており、いかにお子さんにきちんとマスクをさせ感染予防を行うかも大切なことの1つです。
「自分が無症状の感染者かもしれない」と考え方を切り替えていただき、「感染するのを予防する」だけではなく「、感染させないように予防する」よう心がけてください。
また、ドアノブを介してクラスターが発生したと報道されたこともありました。「商業施設などに入るとき」だけではなく「その場所から出るとき」「ご自宅に戻られたとき」にもきちんとアルコール消毒を行っていただきウイルスを家庭内に持ち帰らないようにしてください。
1日も早い「コロナ感染者ゼロ」を目指し、いま一度感染予防の徹底をお願いいたします。
わたくし自身もみなさまとともに感染予防に努めてまいります。
生活習慣病、メタボリック症候群
「生活習慣病」や「メタボリック症候群」という名前は、ご存知でしょう。医療者は病気に色々名前をつけますが、診断された人は気持ちの良いものではありません。診察の際に「メタボですから」と恥ずかしそうに、苦笑いを浮かべる人がいます。どうして苦笑いなのでしょう。
「スティグマ」という言葉があります。ギリシャ語で、奴隷や犯罪者に付けられた「印」の意味です(日本でも「島流し」から戻った犯罪者の腕に入れ墨が入れられました)が、現代では、身体的な障害や宗教など、周りとの違いが好ましくないとして区別する「印」として使われます。さて、「生活習慣病」や「メタボ」と診断されると、自身も、周囲の人間も「乱れた生活から、病気になったダメ人間」のレッテルを貼ってしまいます。この「レッテル」がスティグマです。結局、心配なので毎年、健診は受けますが、健診結果を隠し、医師には相談しません。「ダメ人間」のレッテルを見せたくないのです。
最近、糖尿病学会の偉い方の講演をオンラインで聞きました。糖尿病に対する「スティグマ」を取り除きましょうというお話でした。現在、世界中がコロナウイルス感染で苦しんでいますが、糖尿病などの病気を持っている人の死亡数が多いという報道がされています。そのため、糖尿病患者さんの中には「私なんか、コロナにかかったら、一発でお終いですヨネ」などという人がいます。今回聞いた講演によると、これまでに分かっているデータからは、糖尿病でも血糖コントロールが良好な人達では、糖尿病でない人達と死亡率に差はないということでした。
結局、病気であることが悪いのではなく、それをほったらかしにするのがいけないのです。病気は誰かのせいではなく、まして本人の責任でもありません。恥ずかしがることはありません。「生活習慣の悪い人」のレッテルを剥がしましょう、生活習慣病とは、生活習慣の改善でコントロールできる病気だと考えましょう。










