怖い充血
朝起きて、鏡を見たら目が真っ赤に充血していた…誰しも一度は経験があると思います。前の日の夜更かし、目がかゆくてこすっていた、昨日の屋外作業など心あたりがあることも多いでしょう。充血は目の血管が拡張することによって起こりますが、白目の内側、外側、深い部分といった充血の場所ごとに原因が異なり、また白目の細い血管が破裂しての出血も家庭で見る際には強い充血に見えるでしょう(結膜下出血といいます)。
充血の主な原因として細菌・ウイルスによる結膜炎やドライアイ、アレルギーが多いです。しかし中には、ぶどう膜炎といって目の中に強い炎症を生じ、視力が低下する病気もあります。ぶどう膜炎は全身の病気が原因となることもあり、眼科に限らず内科でも詳しく調べてもらう必要があります。多くの病気で出てくる充血は目の不調のサインであり、中には緊急に治療が必要な病気もあるため、おかしいな、と思ったら一度眼科の受診をお勧めします。
遠近コンタクトレンズと老眼
僕が眼科クリニックを開業したのがまだ30歳代頃になりますが、そのころから遠近両用コンタクトレンズ(以下CL)はこれから使う方が増えてくるだろうと考えていました。ですが、いかんせん、その当時は自分はまだ老眼ではなかったものですから、テストレンズをつけてみてもよく見えているのかどうか実感がありませんでした。ところが、45歳にもなってくると自分でも急に老眼になってきました。
そこで自分でもCLの老眼対策をしなくてはならないこととなり、もう一度遠近両用CLを試してみました。するとどうでしょう。今度は遠くはもちろん近くも見やすくなっているではありませんか。改めて遠近CLを見直してみました。
遠近両用CLはあの小さいコンタクレンズの中に、遠くが見える度数と近くが見える度数を並べています。そこで、遠くにピントのあう光と近くにピントのあう光の常時二つの光が目に入ってくるのですが、遠くを見ようと思った時、近くを見ようと思った時、それぞれに目的の光情報を頭の中でピックアップして、いらない光情報を半分カットしています。それゆえ逆にピントの合っていない光情報も、常に目の中に入っているためちょっとずつにじんだ感じを感じられてしまいます。ですからレンズの大きな普通の眼鏡に比べて全てがすっきりというわけにも行かないのが実情です。
それでも、普通のCLから遠近両用CLに替えたときにCLを付けた時以上に感動しました。
最近はゴルフをするのに初めてCLを使いたい、近くを見るとき老眼鏡を鞄から取り出して掛けるのが恥ずかしいなど、遠近両用コンタクトを最初から希望しますという、50代になってCLを初めて使う方も増えてきました。
冬に気をつけたいやけど ~熱傷~について
寒くなると様々な病気の発症頻度が上がり、気候の良い時期以上に体調管理が重要となります。冬季には病気だけでなく外傷も増えますが、やけどもその一つです。暖を取るために熱いものと接触する機会が多く、衣服の厚さも重傷になりやすい要因です。
家庭内で多いのは調理中の熱湯や油、コンロの火による熱傷です。熱傷の治療で一番大切なのはすぐにしっかり冷やすことです。水道水やシャワーで15分以上患部を流します。軽いものならこれで赤みや痛みはかなり治まりますが、翌日以降に悪化する熱傷もあるので注意して下さい。安易に自己流の治療を続けずに専門科を受診しましょう。また、広範囲であったり特殊な部位の熱傷では入院や手術が必要になることもあります。範囲が広い場合、顔面や外陰部、薬品を含む液体での受傷、乳幼児などであれば救急外来を受診して下さい。手指の重度の熱傷も機能に関わる場合があるので早期の受診が必要です。
そして寒い時期に気をつけていただきたいのが暖房器具による熱傷です。特に湯たんぽでの熱傷は要注意です。これはいわゆる低温やけどで、45~50℃程度の少し熱めの物体に皮膚が長時間接触することで起こります。ゆっくりと深部まで組織の損傷が進むため見た目よりも傷が深いのが特徴で、適切に対処しないと数か月治らないこともあります。治癒に時間がかかると目立つ痕が残るので治りが悪いと感じたら形成外科を受診して下さい。早くきれいに治すためには手術が望ましい場合もあります。形成外科では患者様それぞれの希望やライフスタイルに合わせて最善の治療を行います。傷が塞がって終了ではなく、きずあとの経過フォローも治療期間に含まれます。
やけどに限らず、体のあらゆる部位の形態異常を美しく、かつ機能的に治すのが形成外科の仕事です。お気軽にご相談下さい。
にきび痕を残さないために
にきびは青春のシンボルと言われていますが、男性では40%、女性では50%以上が20歳以降にも思春期後ざ瘡(そう)として継続しています。
にきび痕で悩む人が多くなりましたが、残念ながらにきび痕に保険適用がある薬はなく、その前の段階で治さないといけません。現在の治療はお母さん世代が学生だった頃とは違って、予防のための外用薬が日本でも使用できるようになり、にきびがかなりコントロールできるようになりました。
繰り返すにきびは自分で治せませんし、皮膚科を受診しても一度で治るわけでもありません。にきび痕を残さないためには、皮膚科での治療を継続することをお勧めします。
にきびで悩んでいる方は、漫画『にきびって自分で治すんじゃないの?』を、下記の二次元バーコードからご覧になっていただきたいと思います。
※漫画の閲覧にはデータ通信料を通常より消費しますのでご注意ください。

リンク:https://lab.kijima-p.co.jp/web/zasou-manga/
耳鳴りへの対処の仕方
耳鳴りは患者さんにとって、大変つらい症状ですが、医者泣かせの症状でもあります。いろいろ検査しても、原因を特定することはできず、治療薬も全くないと言ってもいいでしょう。何件も医療機関を受診したけど、何処へ行っても原因は分からず、処方された薬を飲んでも、さっぱり改善しないという声をよく聞きます。
最近、テレビ番組でも取り上げられていましたが、耳鳴りへの対処方法は、耳鳴りを忘れることに尽きます。耳鳴りのある方は、そのために眠れないと訴えますが、耳鳴りがうるさくて眠れないのではなく、「何か悪い病気ではないか」という不安のために眠れないのです。MRI検査を受けたことのある方は御存じでしょうが、MRIの装置はかなり大きな音を出します。初めての方はびっくりしますが、慣れるとその騒音の中でも寝入ってしまう方が多いです。実は、人間は完全な静けさの方が苦手で、寝付けないものです。静かすぎると神経が研ぎ澄まされて敏感になり、眠れないのです。
一方、耳鳴りに悩まされている方は、耳鳴りの音に気持ちが集中してしまい、気になって仕方がないのですが、そういう方でも、多くの場合、日中、何かに集中している時には耳鳴りを忘れています。世間には色んな音が溢れていますが、それらの音全てに気を使ってはいません。人は、自分が聞きたい音に集中することができます。或いは何かに気を取られると周囲の音は忘れていたりします。これが究極の耳鳴りに対する治療です。つまり、寝るときには耳鳴り以外の音を聴くようにして、耳鳴りから注意を逸らすのです。もしくは、音でなくても、何か別なことに注意を向けて、耳鳴りを忘れることです。
ただし、此の対処方法は、耳鳴りの原因になる明らかな病気がないことを確認した後の話です。例えば、音を聴く神経に腫瘍があると、耳鳴りを伴うことがあります。そういった病気がないと診断されてからの対応だということを付け加えておきます。
手足のゆびの色調異常
血管には動脈と静脈があり、動脈は赤く静脈は青く描かれることがありますが、流れている血液の色が違うわけではありません。しかし手や足のゆびの色が変わることがあります。主な色は白、赤、紫です。この色は局所の血の巡り(循環状態)を表しています。
白色は動脈に血液が流れなくなった状態で「血の気がない」「虚血」と言い、赤色は動脈に急激に血液が流れ込んだ状態で「紅潮」、そして紫色は静脈に血液が滞っている状態で「チアノーゼ」です。
時間と共に複数の色に変化することをレイノー現象と言います。レイノー現象は寒冷刺激や精神的なストレスによって微細な血管がけいれんすることで起こりますが、その原因については不明のものが多く一次性レイノー現象、「レイノー病」と名付けています。
一方二次性レイノー現象は病気のひとつの症状として色調異常を来すもので「レイノー症候群」と言います。例えば動脈硬化によって血管が細くなり血流が乏しくなる閉塞性動脈硬化症、免疫の異常によって起こる膠原病(こうげんびょう)、肩口の血管が圧迫される胸郭(きょうかく)出口症候群などがあります。いずれも安静にすることで自然に軽快したり、マッサージをしたり温めたり、手や足の高さを変えると元の色に戻ります。何故ならば血流障害が改善されるからです。
このような色の変化が繰り返し起こる場合や元の色にもどらなくなった場合は医療機関で相談されることをお勧めします。専門科はリウマチ科、心臓血管外科、循環器内科などです。
メガネがくもるのでコンタクトにしたい
コロナ禍でマスクが日常的になり、メガネがくもり不便な為CL(コンタクトレンズ)を希望する方が来院されます。直接、角膜にのせるCLは感染やトラブルに注意が必要で、それらを避ける為に気をつけてほしいことをいくつか上げます。
【CLを扱う前に石鹸(せっけん)をつけて手を洗う】
今や手洗いは習慣だと思いますが、石鹸を使ってしっかりと行います。洗った後は手に残っている水分を十分ふき取ってからCLを扱うようにして下さい。
【こすり洗いを必ず行う】
2週間交換CLの一般的なケア(MPS使用)では、CLのこすり洗いを必ず行います。液につけておくだけでは汚れは落ちません。
【レンズケースも清潔にする】
レンズケースが汚れているとCLの汚染原因に繋がります。レンズケースは流水で洗った後、しっかりと自然乾燥させてから使用して下さい。汚れやトラブルが原因でCLの見え方がくもっては意味がなくなります。
※ハードおよびソフトCLともにこのアドバイスは適用されます。
感染性胃腸炎に注意しましょう
感染性胃腸炎はウイルスや細菌などの微生物が原因となって起こる感染症で、発熱、腹痛、嘔吐、下痢が主な症状です。食物が原因の場合は「食中毒」とか「食あたり」などともよばれますが、嘔吐で空気中に飛散したり人の手への付着を介して微生物が口から入って起こる場合もあります。原因微生物としては黄色ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、ウエルシュ菌、ロタウイルスなど多くの種類がありますが、中でも感染力の強いノロウイルスはウイルスの数が10~100個という少数でも感染が成立するとされておりしばしば食中毒の集団発生の原因となります。最近では新型コロナウイルスも原因の一つにあげられます。報告により差がありますが概ね新型コロナウイルス感染者の5%程度が胃腸炎症状を呈すると考えられ注意が必要です。
どの微生物が原因であるかは、食べた物の内容や摂取から発症までの時間などの情報からある程度推定できる場合もありますが、確定するには便から微生物を検出する必要があります。しかしほとんどの感染性胃腸炎は自然に治る傾向が強く数日で治癒する場合が多いので、特に成人の場合多くは実際には検査は行われていません。
治療は整腸剤の内服や水分補給・点滴など対症治療が基本となります。胃腸炎における嘔吐や下痢は生体の防御反応でもあるので、無理にそれらを止める治療は行わない方が良いとされています。抗菌薬が有効な細菌が原因の場合でも全例で投与するわけではなく、小児や高齢者のような悪化しやすい方や重症例で必要に応じて投与を検討することになります。なおウイルスに有効な薬剤は今の所ありません。
夏は感染性胃腸炎が多い季節です。予防のために手洗いは石鹸でこまめに行い、食品の衛生管理には十分気をつけましょう。
屈折と調節
眼はよくカメラに例えられます。実際に眼球は角膜と水晶体というレンズによって光を曲げて、網膜というフィルムで光を受け取り、脳に映像を送っています。カメラには焦点距離というものがあり被写体との距離が合わなければフィルムに光が集まらずピンボケしてしまいます。人間の眼にも同様にレンズの屈折によって網膜に光が集まる焦点距離があります。網膜に焦点を結ばないとカメラと同様にピンボケした映像しかみることが出来ません。しかし、水晶体を厚くすることで光の曲がり方を変える調節という機能が人間の眼には備わっています。
調節をしない状態で遠方からの光が網膜に焦点を結ぶものが正視、5mより近い所からの光が焦点を結ぶものを近視、どの距離からの光も網膜上に焦点を結ばないものを遠視と呼びます。乱視とは、光の入る場所によって光の曲がり方に差ができる為に焦点距離にブレが出ることを言います。
健康な眼であっても、成長期や加齢によって、屈折と調節も変化していきます。成長と共に近視になっていけば遠くは見えづらくなり、加齢による調節力の低下で老眼になれば手元が見えづらくなって来ます。光が網膜に集まりにくいために起こる見えづらさは、眼鏡やコンタクトレンズで光の曲がり方を矯正すれば 改善することがほとんどです。しかし、年齢とともに変化するのでレンズ作成後も自分の眼とあっているのか定期的にチェックしていただくことをお勧めいたします。また、眼鏡などで屈折を矯正しても見えづらさが改善しにくい場合、白内障や網膜の病気などによって見えづらくなっていることもありますので、そのような時には一度眼科を受診してください。
眼瞼下垂(がんけんかすい)を治して明るい視界を!!
眼瞼下垂とは、上まぶたが下がり視界が狭くなり、物が見づらくなる状態をいいます。先天性と後天性があり、後天性では神経・筋肉・腱膜の異常で起こります。アトピー・逆さまつげ・花粉症・長時間のパソコン使用・女性のメイクなどで目をこする人に早く現れます。
症状が悪化すると、額の筋肉を使って、まぶたを上げようとするため、額のしわも深くなるし、首から肩にかけての筋肉も緊張し、頭痛・肩こり・吐き気・めまいなども起きてきます。
視界を邪魔するほどの下がり具合の場合は手術が必要となることがあります。手術後1週間で傷も落ち着き、まぶたが自然に上がるようになり、視界が明るくなります。
チェック方法として、目をつぶり、両人さし指で両方の眉毛の上を強く押さえて、まぶたがうまく開かなければ、眼瞼下垂の可能性があります。眼瞼下垂手術を行っている眼科を気軽に受診し、相談して下さい。










