夜のトイレ、年のせいだとあきらめていませんか?
毎日たくさんの方が夜間頻尿を主訴に泌尿器科外来を受診されています。しかし受診されているのは困っている方の一部に過ぎません。残る多くの人達は年のせいだとあきらめていたり泌尿器科受診に抵抗を感じてためらっていたりする現状があります。
最近では、夜間頻尿は原因を正しく調べることで症状を改善させることができるようになってきました。また医学や医療技術の進歩とともに診断に必要な検査もより簡単で侵襲の少ないものになってきています。
夜間頻尿で受診された場合、まずは問診により原因や病態を分類します。膀胱など下部尿路の異常なのか、腎臓機能など上部尿路が関わっているものなのかは問診内容から推測することができます。診断を確定させるために検査が必要となることもあります。主に行うのは腹部超音波やCТ撮影による画像評価です。他には腎臓機能を調べるために採尿検査や採血検査を行う場合もあります。これらの検査とは別に排尿日記をつけてもらい頻尿の種類を分類して、それぞれの場合にあった治療方法が選択できるような工夫もしています。
夜間頻尿は眠りを妨げる以外に体の健康状態にも悪影響を与えることが知られています。現在は原因や症状に合わせた様々な薬が治療に使えるようになりました。また頻尿の原因によっては普段の排尿習慣を少し変化させたり、飲み物や塩分管理、足のむくみを抑える運動や靴下を利用したりすることで症状をやわらげることもできます。
夜のトイレは年のせいだとあきらめないで、気軽にいつでも医療機関へご相談ください。
心不全について
日本では、がんが死因のトップです。しかし、高齢者では心臓病・脳卒中で亡くなる人の数は、がんとほぼ同じで、超高齢者になると、心臓病・脳卒中で亡くなる人の方が、がんより多くなります。
男性の平均寿命は81歳、女性では87歳と、世界2位の高さです。介護を受けずに、元気に生活できる健康寿命は、男性で9年、女性だと12年、平均寿命より短くなります。人生の最後に、10年近く、誰かの介護を受ける必要があるのですが、その原因の第一位は脳卒中で、心臓病と合わせると、要介護になる原因の4分の1を占めています。
心臓病が悪くなると、(元の病気は心筋梗塞、弁膜症、心筋症などいろいろですが)心不全になります。心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。全国で、心不全のために入院する人は、2017年には年間26万人でした。35年には、132万人になると推計されています。日本の人口は減少していますが、超高齢化が進むために、心不全の人は増えていきます。心不全の治療は進歩しているのですが、5年生存率は60%程度で、良くならない種類の病気です。
心不全は、4段階のステージに分類されています。
(A)危険因子はあるが、心臓病のない人
(B)心臓病はあるが、心不全症状のない人
(C)心不全症状がある人
(D)軽い動作で心不全症状が出る人。
ステージCやDでは、息苦しさや疲労感などの症状が軽くなることを目指すので、治癒するということはありません。
AやBの段階で、病気が進むのを予防するのが、心不全の治療としては良い方法です。危険因子とは、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満などです。普段からかかりつけ医とよく相談しながら、減塩をする、体重を管理する、適度な運動習慣を身に付ける、適切な薬の処方を受けることが肝心と思われます。
重い病気になると、治療は難しくなりますが、予防的な治療は、毎日根気よく続ければ、重病になるのを防いでくれます。
「実際にあった不整脈の時の胸の内」
これはドキュメンタリーです。同じようなことが起こったら、貴方も同じ病気かもしれません。
土曜日の朝、咳払いをした途端に、不整脈になった。「どくっ、ドクドクドク」って、不規則に心臓が打つのがわかった。急に咳き込んでしまう。左心室から左房に向かって、血液が逆流したようだ。収まることを期待して、つかの間、安静にしているが、今回はダメだ。尿意がしてきて、トイレで排尿した。心房性ナトリウム利尿ペプチドが、一気に心臓から血液中に放出される結果だ。発作が15分程度では止まってくれないので、仕事に行くことにする。朝に起こる心房細動だから、安静にしていた方が止まりやすいと思うが、そうもいかない。
仕事中は、ぼやーっとして、集中力がない。心排出量が15%低下して、脳血流が減少しているのを感じる。倦怠感もあるが、なんとか昼まで働いた。心電図では、136拍/分の頻脈性心房細動になっていた。昼食は動悸をこらえながら、普通に食べた。不整脈が止まるように抗不整脈薬、それと脳梗塞予防のための抗凝固薬を飲む。心房細動で怖いのは、左房の中でできた血栓が脳の血管を詰まらせておこる脳梗塞と、心臓の働きが十分でなくなる心不全の2種類の合併症だ。
夕食まで安静にしていた。静かにしていると動悸は収まるが、階段を上るときに、また、ドキドキする。くそっ、食事をしようにも、体がこわくてテーブルに覆いかぶさるようになる。息は上がり、ボタボタ汗が出る。冷や汗か!こんなことが30時間続き、あきらめて浴び始めたシャワー中に動悸が止まった。
しめしめと思い、ゴルフの打ちっぱなしに出かける。不整脈は止まったが、心臓はまだ疲れていたようだ。クラブを振り回そうとしたが、息が切れて、汗が吹き出す。心不全の症状が残っていた。クソッ。タウリン配合のドリンクを探したが、ここには売っていなかった。帰って安静にするしかないな。
健康保険が適用される皮膚レーザー治療
レーザー治療は特定の単一波長のパルス光線を設定した非常に短い照射時間(1/100万〜数億秒程度)で皮膚に当てる治療法です。
医療用のQスイッチレーザーは非常に正確緻密強靭な機器で、1秒間に数百万から数億回繰り返し照射する治療機器ですので、一般に言われている光治療とは規格が異なります。
レーザー治療は自費の治療が多いのですが、皮膚疾患で単純性血管腫、苺(いちご)状血管腫、毛細血管拡張症では『色素レーザー治療』、また、太田母斑、外傷性色素沈着症などは『Qスイッチアレキサンドライトレーザー、Qスイッチルピーレーザー、Qスイッチヤグレーザー』、扁平母斑の治療では『Qスイッチルピーレーザー』が保険治療の対象になっています。
これらの治療方法は1回の治療では改善せず、改善に要する治療期間が数年かかることもあります。まず、形成外科、皮膚科を受診して相談して下さい。
新型コロナウイルス対策
道内外の移動解除となり、第2波、第3波も予想される中、新型コロナウイルス感染を不安に感じている方も多いと思います。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)等の肺の病気、心臓病、糖尿病など基礎疾患のある方は、コロナウイルスに感染しやすいということはありませんが、重症化するリスクが高いと言われています。肺の病気であるCOPDは、喫煙により肺の細胞が壊れ、呼吸ができなくなる病気です。COPDの方がコロナウイルスに感染すると死亡率が3倍になるという報告もあります。肺の細胞の表面には、ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)と呼ばれるたんぱく質があり、新型ウイルスは、このACE2に付着して細胞内に入り込むことが、最近わかってきました。タバコを吸うと、ACE2が肺の表面に増えるため、喫煙によりウイルスの侵入を助け、感染しやすくなる可能性があります。まだ機能している残された肺を大切にするためには、今からでも遅くはありません、禁煙しましょう。また、最近の研究では、新型コロナウイルス感染は、肺炎だけではなく心臓などの全身の血管にも炎症をおこすことがわかってきました。
新型コロナウイルスに感染するとウイルスにより血管が傷つき、それを直そうと血小板が傷ついた血管の壁に集まります。それは徐々に大きくなり血栓と呼ばれる塊を作り、血流が悪くなりいずれ血液の流れを止めてしまいます。それが心臓を取り巻いている栄養血管の冠動脈に起こると心筋梗塞となります。予防するためには、日常生活の中で、心臓への負担を減らすことが大切です。
バランスのいい食生活、規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動などです。自粛生活で運動不足の方も多いと思います。特に足の筋肉は、「第2の心臓」と呼ばれ、重力に反して抹消の血液を心臓に戻るのを助ける働きをします。足の筋肉を維持することは、心臓を守ることにもつながります。これからの時期、気分転換に3密を避け外を散歩することもお勧めですが、自宅でも朝晩つま先立ち運動や足のストレッチなどの軽い運動をするだけでも十分効果があります。私たちでさえ、今は不安とストレスを感じて生活しています。高齢であれば尚更でしょう。離れて暮らしているご家族に、いつもよりこまめに電話やテレビ電話をしてあげてください。自分ではわからない些細な変化を周囲の人が気が付いてあげることが大切ですし、なにより声を聴くだけでもきっととても喜んでいただけるでしょう。
子どものワクチンは不要不急ではありません
新型コロナウイルスの流行もようやくひと段落したようですが、病院に行くと感染が心配でとワクチンまで遅れ気味になってしまっている子どもたちが増えてきています。
ワクチンは公費で賄われるものですが、接種時期を外れてしまうと、公費にはならなかったり、回数がしっかり打てなかったりなどの弊害が出ますので、注意が必要です。四種混合ワクチンで問題になるのは百日咳です。昭和40年代後半から副反応が問題となり、昭和50年にいったん中止となりました。接種年齢を変更して、ワクチンを再開しましたが、接種率の低下が止まらず、百日咳での死亡が増加したことがあります。現状のワクチンでも、ワクチン効果を上げるために接種回数を増やす議論がされているくらいなので、接種の遅れで百日咳の流行が懸念されます。2020年1月から北海道全体で131件、市立函館保健所管内で4件、渡島保健所管内で2件の百日咳の報告があります。
ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンで予防できる細菌性髄膜炎は5カ月以降にその頻度が増えるといわれていますので、2カ月、3カ月、4カ月で3回の接種を終了することが肝要です。この2つのワクチンによって、ワクチンで予防できるタイプの細菌性髄膜炎はほぼゼロとなりました。
MRワクチン(麻しん風疹混合ワクチン)の1期は1歳から2歳未満。2期は小学校入学前の1年間とされていて、接種遅れに対する救済措置はありません。麻しんの流行があると一定の割合で死亡例が出ますし、風疹の流行があると先天性風疹症候群の発生が懸念されます。
多くの子どもたちがしっかりとワクチンを打つことで、流行がなくなり、安心して生活できます。コロナの影におびえて、予防できる感染症で子どもが不利益にならないようにお願いいたします。
結膜下出血
「結膜下出血」という病気をご存じでしょうか。結膜(白目を覆う透明な膜)の下の細い血管が切れて出血し白目の部分が真っ赤に染まる状態のことです。症状としては軽い痛みや異物感を訴える方もいますが無症状のこともあります。原因は、せきやくしゃみ、目の周りのケガなどさまざまですが思い当たる誘因がない場合も多いです。治療としては目薬などをつけるといったことはせずに血液が自然に吸収されるのを待つことになります。1〜2週間ほどで出血は引きますが、出血量が多いと時間がかかる場合があります。
基本的に眼科にかかる必要はない状態ですが、①強い痒みや痛み、目やになどの症状が強いもの。②外傷によるもの。③頻繁に出血を繰り返すもの。これらに当てはまる場合は眼科での診察を受けてください。
体重、計っていますか?
コロナウイルス感染症により、外出自粛、そして気がついたら体重が・・・。 そう!俗にいう「コロナ太り」の方が外来でも増えています。スポーツジムも休業、かといって外出は何となく気が引けるし、テレビでは毎日コロナウイルスの恐い番組ばかり。気がつくと、テレビを見ながら何かを食べて・・・食生活での憂さ晴らしをしていませんか?
まずは現実を直視して、体重計に乗りましょう。1日2回がおすすめです。決まった時間・決まった状態(食後・寝る前など)で測定しましょう。これで少しでも体重が増えると、気になって食生活を見直すきっかけになります。そして、さらに太らないように考えることができます。体重は、計らなければ思ったより簡単に増えていきますよね。そこで、おやつについての8つの提案があります。
①3食の中でのバランスを考え、そのなかでおやつを食べましょう。カロリーの高いものを食べた日は、そのおやつ不要ですよね?
②食べる時間は、午前中からお昼過ぎまで!できるだけ活動する前の時間が理想です。
③おやつは、そのとき食べる分だけを出して食べましょう。大袋から食べると食べ過ぎます。
④1口で食べてしまわず、ゆっくりと味わって食べましょう。
⑤商品の成分表示を チェックしましょう。100g当たり何カロリー? 糖質量は?じゃあ、実際食べる分は、重さを量れば、自分の食べたカロリー、糖質量もわかりますよね。できるだけ、カロリー・糖質の少ないものにしましょう。見た目より高カロリーのおやつがいっぱいあります。
⑥お腹がすいているときに、おやつは買わない! お腹がすいていると、何でもおいしく見えて買い過ぎます。そしてもったいないからと理由をつけて全部食べる羽目になりますよね。
⑦おやつを何となくの習慣にしない!3時になったら必ずおやつにするなどはやめて~ご褒美にするとかルールを決めましょう。
⑧罪悪感にとらわれ、隠れて食べて、食べなかったことにするのではなく、ちゃんと楽しんでおやつを食べましょう。さあ、今日から体重計に乗りましょう!
眼瞼下垂と白内障を治して明るい視界を!
眼瞼下垂とは、上まぶたが下がり視界が狭くなり、物が見づらくなる状態をいいます。先天性と後天性があり、後天性では、加齢により上まぶたの皮膚が下がってかぶさってくる場合や、まぶた上げ下げに関係する神経・筋肉・腱膜の異常でおこります。若いころから長年ハードコンタクトレンズを装用していた方や、アトピー・逆さまつげ・花粉症・長時間のパソコン使用・女性のメイクやエクステ装着などで目をこする人に早く現れます。
症状が悪化すると、おでこの筋肉を使ってまぶたを上げようとするため、おでこに横しわが目立つようになります。また、首から肩にかけての筋肉も緊張し、頭痛・肩こり・吐き気・めまいなどもおきてきます。下がり具合がひどい場合は 手術が必要となることがあります。手術は局所麻酔薬を使って行うことができま す。手術後約1週間で傷も落ち着き、まぶたが自然に上がるようになり、視界が明るくなります。チェック方法として、目をつぶり、両人さし指で両方の眉毛の上を強く押さえて、まぶたがうまく開かなければ、加齢性の眼瞼下垂の可能性があります。
また、白内障もカメラで言えばレンズの部分が白色や茶色に濁ってくる加齢性の変化で、60歳過ぎたら誰でもあります。まぶしさを感じるようになったり、夕方に見づらくなった方は、視力が良くても白内障の可能性があります。白内障の手術をすると、見違えるように世の中が明るくなったと皆さん喜ばれます。
情報の90%は目から入ると言われています。
白内障を取り、眼瞼下垂を治せば、見え方も明るくなるし視界も広がります。ある意味、この2つの手術は、アンチエイジングの手術とも言えます。
白内障・目の周りの形成手術に対応している眼科に、是非お気軽に相談してみて下さい。
単純疱疹を繰り返す方へ
単純疱疹は、ヘルペスウイルスによって、口、鼻、眼、陰部に痛みを伴う水ぶくれが出現する疾患ですが、中には何度も繰り返す方がいらっしゃいます。再発性単純疱疹の治療は再発時すぐに行うことが望ましいのですが、すぐに受診できない方がほとんどです。そのため、今までの抗ウイルス剤を1回4錠で1日2回分を事前に処方を受けて、自己判断で再発治療ができるようになりました。
ただこの処方には、①同じ病型を年3回以上繰り返していること②再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、瘙痒感(そうようかん)等)をご自身で判断が可能であることが条件で、1回目は初期症状発現後6時間以内に内服し、2回目は1回目の内服から12時間後(計18時間以内)に行わなければいけません。少し煩わしいですが、再発時すぐに薬を内服できる安心感につながると思います。










