大腸がん ― 治すために早期発見
近年、大腸がんが増加しています。平成15年がん死亡統計では、肺がん、胃がんに次ぎ第3位で、男性では4位、女性で1位となっています。
大腸がんの増加は高脂肪食を多く食べる機会が増えた事に一因があります。
大腸は約1.7mの結腸と直腸に分かれていますが、がん発生率は6対4で結腸に多く、また特に下部のS状結腸に多く見られます。
初期は無症状ですが、進行すると腹痛、便秘、下痢、下血、腸閉塞(へいそく)などの症状が見られます。肛門出血の多くは痔核(じかく)ですが、12%に悪性腫瘍(しゅよう)などが見られます。
がんは「早期発見が大切である」と皆さんはご存知かと思います。
大腸がんは手術で治る率が非常に高いがんです。肛門出血があった時は「痔」と思わず、積極的に診察、検査を受ける事をお勧めします。また早期発見のため、年一回は医療機関などで検診する事もお勧めします。
3種混合ワクチンの打ち忘れはありませんか?
3種混合ワクチンは百日ぜき、破傷風、ジフテリアを予防するワクチンです。
現在はそれに不活化ポリオワクチンを加えた4種混合ワクチンとして生後3か月から打つようになっています。
4種混合ワクチンは2年前から接種が始まりました。
不活化ポリオワクチンは2012年9月から接種が始まり、その時期までに3種混合ワクチンをしたお子さんでは、口から飲むポリオワクチンや注射で打つ不活化ポリオワクチンが混在して行われたため、多くの方が混乱したり、分からないまま時が過ぎてしまったりした方もずいぶん多いように感じます。
インフルエンザワクチンを接種するときに母子手帳を見返すと、3種混合ワクチンがちゃんと終わっていなかったり、不活化ポリオワクチンが最後まで終わっていない人がいたりして、その都度勧奨してきました。
しかし、つい先日3種混合ワクチンが供給されないという一報がクリニックに届きがくぜんとしました。
3種混合ワクチンなど不活化ワクチンはきちんと決められた回数を打って初めて効果が出るワクチンです。
特に、1期3回の初回接種の後の追加接種を忘れると、しっかりした免疫ができないといわれています。
母子手帳を見返してお話しする中では、特に1期3回までは行っているけど、追加接種がなされていなかったり、不活化ポリオワクチンが途中で終わったりしている方を多く見かけます。
このようなことがそのまま放置されますと、今ですら問題となっている成人期での百日ぜきの流行が今後増えかねません。
どうかそのようなことが3種混合ワクチンでも起きないように、今一度母子手帳を見直してください。
4種混合で置き換えができる人は4種混合で、できない人は行政機関と相談しながら、わずかに在庫のある3種混合ワクチン供給をお願いするということになるとの予定です。
7歳半までのお子さんは無料で接種できますので、早めにかかりつけ医にご相談ください。
春の健診で視力の結果が悪かったら
新学期を迎え、我々眼科医も学校健診のため小・中学校を訪れます。
視力検査を含め、目の病気が疑われれば専門医を受診するようにと、健診の結果用紙を子供たちは学校からもらってきます。
その中で特に注意しなければならないのが小学校一年生の視力検査の結果でしょう。
小学校一年生にとって視力という検査は初めての経験で、やり方も良く理解出来ないかもしれません。
そのため本来の視力より低く出ただけということもあります。
しかしながらこの年齢で結果が悪い場合、遠視や乱視のお子さんも多く見受けられます。
そして、遠視の場合、弱視(じゃくし)や斜視(しゃし)を伴っている場合があり、この一年生の時期を逃すと後でメガネをかけたとしても視力が回復出来なくなってしまうこともある、目にとってラストチャンスの時期だともいえます。
簡単にいうと、近視は少なくとも近くを見ている時にはきちんとピントがあった画像が目に入るので弱視になることはありません。
それに対し強い遠視の場合は近くも遠くもピントが合わず、常にぼやけてしまいます。
いつもはっきりしない画像しか見えていないため視機能(ものを見る力)が発達することができなくなります。
そのため放置するとメガネで矯正しても視力が出ない弱視になってしまったり、また、斜視を来すこともあります。
用紙に斜視と書かれている時もあります。
斜視は片目が正面を見た時に、もう一方の目が他の方向を向いてしまって視線が外れている場合です。
常に視線が外れている場合や、時々外れている場合、また、疲れた時などにちょっとだけ外れる場合など程度はさまざまです。
視力を矯正するだけで治ることもあり、早期に検査・治療が必要な場合もあります。
健康診断で視力の結果が悪いときには放置せず、必ず専門医の精密検査を受けましょう。
スクラブ洗顔にご注意
スクラブ洗顔というのをご存じでしょうか。
元々スクラブというのは研磨剤のことです。
洗顔石けんの中に入っている細かい粒が、古くなった角質(かくしつ)を落としてくれてさっぱりするということで女性に人気があります。
でもこの細かい粒がくせ者です。
顔を洗う時には目をつぶっているはずですが、その粒が目に入って上瞼(まぶた)の内側に引っ掛かってしまうとなかなかゴロゴロがとれません。
元々目に入ったゴミは上瞼に引っ掛かると自分では瞼をめくることも難しいためなかなかとれませんが、スクラブ洗顔の場合その粒の大きさも極小さい物なので、瞼をひっくり返せたとしても肉眼で見るのは難しいのです。
幸いその粒はツルツルした球形でゴロゴロする割には角膜に傷はつきませんので、検査用の顕微鏡で見ながらとってあげると痛みもすぐに治まり目薬もいらないことが多いようです。朝起きたら突然ゴミが入ったようにゴロゴロして治らない事があります。
目にゴミは入っていないのですが、角膜の表面の皮=上皮(じょうひ)が数ミリ程度丸く剥(は)がれかかっている事があります。
角膜に傷をつけると一度は直るのですが、そのときできるカサブタのように弱い皮が寝て起きる時に上瞼の裏側と引っ掛かって突然剥がれて痛くなるのです。
この状態は繰り返すことが多く、再発性角膜上皮剥離(さいはつせいかくまくじょうひはくり)と言います。
程度が軽い場合にはヒアルロン酸の点眼薬を処方しますが、重度の場合には剥がれてきている上皮をピンセットで完全に取り除いてから手術用のメスで軽く角膜表面にスジを入れてあげると、後で再生してきた上皮がそのスジの中に入り込んでがっちりくっつくようになるので再発しなくなります。
皮を取り除いたときには寝たままでもつけていられる治療用のコンタクトレンズを2日間くらい乗せてあげるとしっかりした上皮が作られ痛みが無くなります。
昼間は大丈夫なのだけど夜が近い
泌尿器科診療をしていると毎日必ず耳にするフレーズです。夜のトイレの話です。
泌尿器科患者さんの受診理由で最も多いのが夜間頻尿です。夜間頻尿にはいくつか原因がありますが半数以上の患者さんに夜間多尿がみられます。夜間多尿とは、夜間につくられる尿量が増える病態です。言い換えれば昼間に効率よく尿をつくることができない病態ともいえます。
主な原因の一つとしてふくらはぎの筋力低下が挙げられます。ふくらはぎは第2の心臓といわれ、その動きで下肢の静脈やリンパの流れを生み出します。筋力低下を来せば流れは停滞して下半身にたまりやすくなり、その分だけ日中の尿量が減少します。
そしてもう一つ、食塩摂取も大きく関わっています。余分な塩分は水分と一緒に尿として排出されますが、夜間多尿では塩分排せつが低下しているため食塩摂取が多いほど日中の尿量が減少します。 昼間に十分な尿をつくれないまま夜眠りに就くと、下半身にたまった水分が上半身へ戻り腎臓を経て尿量が増えます。
また、上半身の体液量が急に増えることで、それを是正するために脳や心臓から利尿ホルモンが分泌されて夜間の尿量がより急速に増えることになります。
では、これを改善させるにはどうしたら良いか。まずは下肢筋力低下を補うため筋肉を積極的に動かすことが必要です。
かかとを上げ下げする体操が効果的です。1分間に20~30回のリズムで上げ下げします。立って行うのが難しい方は椅子に座ったままでも効果があります。
併せて行うのが塩分制限。目安は1日食塩6g未満。食品表示を参考にしながら少しずつ塩分を減らしましょう。
ただし、下肢のむくみや頻尿は夜間多尿と関連しない場合もあります。持病のある方や症状が改善しない場合には、主治医やかかりつけ医に相談してください。
美容外科の肌の若返り治療の変遷
肌のハリを取り戻す若返り治療はシワ取りの手術(フェイスリフト)、コラーゲンやヒアルロン酸の注射、ボトックス注射、IPL(光治療)、RF(高周波)のフォトフェイシャルなど治療方法は年々変化しています。
施術後であっても化粧ができて日常生活に支障がない方法が主流になってきましたが、持続期間が約6カ月であったり、たびたび治療を受ける必要があるため、効果が確かでかつ、効果持続期間が長いシワ取りの手術は今でも行われています。
最近では自分の血液の白血球と血小板を利用した最新皮膚再生治療(セルリバイブ)が注目されています。血液中の各種の細胞成長因子を含んでいる血小板を濃縮して気になる部位に注入する方法で、今までにない自然なふくやかさを再現でき、顔の若返りには最適です。効果持続期間も2~3年と長いことが大きな特徴です。
痛みやシビレとの付き合い方について
この原稿を書いているとき、丁度、東京パラリンピックが閉会しました。日本での開催なので、時差がないため、色々な種目をテレビ観戦できて、大変感動しました。
“失われたものを数えるな。残されたものを最大限に生かせ。”
これは、パラリンピックの創始者とされるグットマン博士の言葉ですが、今まで、この言葉は知りませんでしたが、神経の病気で機能を失った患者さん達を診てきた私も、同様の言葉を患者さん達に掛けてきました。
さて、手足が麻痺して動かせないことだけでなく、痛みやシビレがあることも、機能の喪失と考えられます。つまり、患者さん達は「痛みやシビレのために、○○が出来ない」と訴えます。治療に関わる人間は、様々な方法で、その痛みやシビレを取ろうとしますが、残念ながら、完全に痛みやシビレを取り除けることは多くありません。先日、ある鎮痛薬のパンフレットの言葉に目が留まりました。「痛みがなくなることを治療の目標にせず、痛みはあるけれど、○○ができることを目標にしましょう」というものでした。患者さん達の痛みを無くして欲しいという気持ちはよく分かります。でも、完全に症状が無くなることを目標にすると、得てして不満だけが残り、病気が悪化しているような気になってきます。私は最近、患者さん達に、「痛みやシビレがある」今の状況から、「痛みやシビレはあるけど、○○が出来るようになる」ことを目標にするようにお勧めしています。これはまさしくグットマン博士の言葉と相通ずるものがあるでしょう。
病気で出来なくなった状態を嘆き悲しんでばかりいるのではなく、病気の症状を抱えたままでも、出来ることを増やす努力をしていくことが、充実した生活を送るのに役立つと考えるのですが、どうでしょうか。
皮膚科を受診される時のお願い
皮膚科を受診される時に、いくつかのお願いがあります。
①いつから、どこに、どのような症状があるか、まとめておく:緊張のためか考え込んでしまう方がいらっしゃいます。
②お薬手帳を持参する:薬疹や飲み合わせを気にされても、薬が分からないと判断できません。
③現状のまま受診する:きれいにして受診されると、診断ができません。
④すぐに見せられる服装で受診する:ボタンがある服やボディースーツなど、脱衣しにくい下着や服は避けて下さい。
⑤顔の診察の時は化粧をしない:発疹が隠れて正しい診断ができません。
⑥健康保険証、受給者証を持参する:保険診療や市町村の助成が受けられません。
⑦健康保険証、受給者証の期限切れに注意する:前職の保険証などは使用できません。
診断を正しく診察をスムーズに進めるため、ご協力をお願いいたします。
屈折と調節
眼はよくカメラに例えられます。実際に眼球は角膜と水晶体というレンズによって光を曲げて、網膜というフィルムで光を受け取り、脳に映像を送っています。カメラには焦点距離というものがあり被写体との距離が合わなければフィルムに光が集まらずピンボケしてしまいます。人間の眼にも同様にレンズの屈折によって網膜に光が集まる焦点距離があります。網膜に焦点を結ばないとカメラと同様にピンボケした映像しかみることが出来ません。しかし、水晶体を厚くすることで光の曲がり方を変える調節という機能が人間の眼には備わっています。
調節をしない状態で遠方からの光が網膜に焦点を結ぶものが正視、5mより近い所からの光が焦点を結ぶものを近視、どの距離からの光も網膜上に焦点を結ばないものを遠視と呼びます。乱視とは、光の入る場所によって光の曲がり方に差ができる為に焦点距離にブレが出ることを言います。
健康な眼であっても、成長期や加齢によって、屈折と調節も変化していきます。成長と共に近視になっていけば遠くは見えづらくなり、加齢による調節力の低下で老眼になれば手元が見えづらくなって来ます。光が網膜に集まりにくいために起こる見えづらさは、眼鏡やコンタクトレンズで光の曲がり方を矯正すれば 改善することがほとんどです。しかし、年齢とともに変化するのでレンズ作成後も自分の眼とあっているのか定期的にチェックしていただくことをお勧めいたします。また、眼鏡などで屈折を矯正しても見えづらさが改善しにくい場合、白内障や網膜の病気などによって見えづらくなっていることもありますので、そのような時には一度眼科を受診してください。
自律神経失調症について
身体的な病気が無いのにもかかわらず様々な症状が出現する場合、「自律神経失調症」と言われることがあります。「自律神経失調症」というのは本来正式な病名ではないのですが、自律神経の機能が働き過ぎたり働きが悪かったりでバランスが崩れている、機能的に失調している状態という意味で習慣的に使われています。
基礎となる身体的疾患が無いということは、全く異常が無いとか、気のせいだとかということではありません。これからは次第にそのような症状の発現に関与する病態が明らかになってくるでしょう。
身体的な症状としては頭重感(ずじゅうかん)、めまい、口渇、身体の冷え及び火照り、痛み、動悸、立ちくらみ、息切れ、はき気、心窩部(しんかぶ)の不快感、ふらつき、発汗の異常(過多、冷や汗など)、肩凝り、倦怠感、その他実に様々なものがあります。身体の一部が冷たくて他の部分が熱い、異物感、何か動くような感じがする、といった奇妙な症状が見られることもあります。不安感、注意集中困難、意欲低下、憂うつ感、記憶力低下などが見られることもありますが、これらが目立つ時に は神経症やうつ病などの疾患を考える必要があります。
脈波検査、サーモグラフィ、心電図、などの自律神経機能検査で異常が見られる場合もありますし、それでも異常が見られない場合もあります。
このような状態に対しては、一般的に精神安定剤(抗不安薬とも呼ばれています)、自律神経調整薬が有効ですが、自律訓練法などの自己コントロール法が奏功することもあります。また、心理的な影響を受け易いので、ストレスを減らす工夫によって軽快する可能性があります。
何か知らないうちに負担がかかっていないか、今までの過ごし方で良いのかを見直す時期、あるいは今までの自分が変化していく、言葉を変えれば一層の成長が求められている時期にあるのだという視点も必要かもしれません。
自分でコントロールすることが困難であり、症状が続く場合には気軽に治療を受けるようにして頂きたいと思います。









