爪水虫の内服治療には、抵抗がありますか?
爪水虫の内服薬で肝機能障害が起きることがあることを多くの方がご存じのようで、外用薬での治療を選択される方が圧倒的に多いのですが、果たしてそれでよいのでしょうか。 爪水虫が外用薬で治るかどうかは、爪水虫の程度、毎日きちんと塗れるか、そして爪の伸びる速度がかかわります。
症状が軽度であれば治る確率は高いのですが、重症なものではなかなか難しく、数年外用してもほとんど変化がない方もいらっしゃいます。そして毎日の外用は、塗る爪の本数が多くなったり、また高齢で腰が曲がらなくなると難しくなっていきます。特に爪が厚くなっている場合は、薬が浸透するように爪を薄く削るというひと手間も加わります。
爪の伸び方は個人差がありますが、やはりご高齢の方ほど爪の伸びが遅く、治りが遅い傾向があります。 水虫の原因は真菌(かび)で、爪の下に多くいます。内服薬だと爪と接する皮膚から薬が浸透しますので効果が高いのですが、外用薬の場合は、爪の状態により薬が下まで届かないこともあり効果が不安定です。
もし内服薬で肝機能障害が起きたとしても、軽症が多く、ほとんどが内服薬の中止により回復していきます。最近は3か月だけ内服し、内服薬終了後も爪に薬が留まるため、内服終了後は2か月に一度程度の診察だけで経過をみていく薬もあります。
爪水虫は以前よりも治る疾患になりましたが、内服薬と比較すると外用薬の効果は遅く完治する可能性も低く、そして塗る手間や通院回数を考えると、内服治療を最初から除外するのではなく、どちらが自分の生活に合っているかで検討してみてもよいのではないでしょうか。どうしても内服薬に抵抗があるという方は、最初は外用薬から開始して、効果がなければ内服薬に切り替えるという方法もあります。
ドライスキンのお子さんに、スキンケアはとても大切です。
アトピー性皮膚炎は慢性的に湿疹を繰り返す疾患で、皮膚の乾燥とバリア機能異常があり、そこへ様々な刺激が加わって生じると考えられています。以前は妊娠中の母親や出生後の子供の食事制限が行われることもありましたが、現在は経口よりもドライスキンや湿疹のある皮膚から経皮的にアレルゲンが入ることで、段階的にアレルギー(アトピー性皮膚炎→食物アレルギー→喘息→アレルギー性鼻炎)になりやすいことがわかり、ドライスキンのあるお子さんは早くからスキンケアが必要と考えられるようになってきました。
スキンケアを行う上で重要な点が3つあります。一つ目は、保湿剤はティッシュが軽くつくくらいたっぷりと塗ることです。できれば保湿剤は、エモリエント(ワセリンなど)より保湿効果の高いモイスチュアライザー(ヘパリン類似物質、尿素、セラミドなど)を選択してください。炎症を起こすので擦り込まずに、皺に沿って均一に伸ばして下さい。もう一つは、炎症があるところは抗炎症剤を使用することです。赤いところや痒いところだけではなく、鳥肌のように毛穴に一致した固い丘疹があるところも、皮膚の下には軽い炎症があると言われているので、そこにも抗炎症剤を外用しましょう。抗炎症剤の代表的な薬はステロイド剤ですが、最近は2歳以上でも使用できる薬も出てきていますので、軽い炎症ならばそちらを使用することもできます。そして最後が最も大事な点ですが、すぐに抗炎症剤を止めないことです。同じ場所に炎症を繰り返すことが多いので、同じ場所に少しずつ期間を開けながらでも抗炎症剤は継続して下さい。
現在の痒みそして将来のアレルギーを避けるために、ドライスキンのお子さんは早めに外用治療を受けていただきたいと思います。
皮膚症状は全身の鏡 ~発疹から隠された病気を見つける~
皮膚は全身を覆い包む一つの臓器です。その面積は1.6㎡(畳1畳分の大きさ)、重さは9㎏もあり、内臓で最も重い肝臓の2倍に相当します。そして皮膚は免疫機能を持つ細胞(リンパ球と称される細胞)が最も集まってくる臓器でもあります。よって体内で起こる現象(病気)に対して、皮膚の中で免疫反応が生じ、発疹を生じることがあります。ゆえに注意深く皮膚を診察すると、隠された内臓の病気を発見できたりします。
私が30年の臨床の場で経験したケースをいくつか記します。
足底一面にぶ厚い鱗屑がある酷い水虫の方、足底が固くなり深い亀裂がなかなか治らないと受診された方、下肢全体が丸太のように腫れた方(蜂窩織炎)は、重度な糖尿病をみつけました。何度も身体に痛みを伴う発疹が出る帯状疱疹を経験した方には血液のガンである悪性リンパ腫をみつけ、早期治療につながりました。治療にてこずった慢性湿疹の方をよく調べると胃癌が見つかり、胃癌治療後には湿疹が消失したケースも経験しました。
また、脱毛と手の爪がもろくなったことを訴えて受診された方の原因を腸の病気と疑い内科で大腸の内視鏡をしたところ、クロンカイト・カナダ症候群(胃や大腸にポリープが無数に広がって生じる難病)と言う非常に稀な病気をみつける貴重な経験もしました。
このように皮膚症状は、まさに全身の鏡です。
発疹から、その背後に隠されている重大な病気を見つけ出し、それぞれの専門医にコンサルトすることも皮膚科医、特に総合病院に勤務する者としては大切な責務です。
皮膚病でお困りの方、また通院中でも満足な治療効果を得られていない方がいましたら、遠慮なく当科を受診してみて下さい。
にきび痕を残さないために
にきびは青春のシンボルと言われていますが、男性では40%、女性では50%以上が20歳以降にも思春期後ざ瘡(そう)として継続しています。
にきび痕で悩む人が多くなりましたが、残念ながらにきび痕に保険適用がある薬はなく、その前の段階で治さないといけません。現在の治療はお母さん世代が学生だった頃とは違って、予防のための外用薬が日本でも使用できるようになり、にきびがかなりコントロールできるようになりました。
繰り返すにきびは自分で治せませんし、皮膚科を受診しても一度で治るわけでもありません。にきび痕を残さないためには、皮膚科での治療を継続することをお勧めします。
にきびで悩んでいる方は、漫画『にきびって自分で治すんじゃないの?』を、下記の二次元バーコードからご覧になっていただきたいと思います。
※漫画の閲覧にはデータ通信料を通常より消費しますのでご注意ください。
リンク:https://lab.kijima-p.co.jp/web/zasou-manga/
単純疱疹を繰り返す方へ
単純疱疹は、ヘルペスウイルスによって、口、鼻、眼、陰部に痛みを伴う水ぶくれが出現する疾患ですが、中には何度も繰り返す方がいらっしゃいます。再発性単純疱疹の治療は再発時すぐに行うことが望ましいのですが、すぐに受診できない方がほとんどです。そのため、今までの抗ウイルス剤を1回4錠で1日2回分を事前に処方を受けて、自己判断で再発治療ができるようになりました。
ただこの処方には、①同じ病型を年3回以上繰り返していること②再発の初期症状(患部の違和感、灼熱感、瘙痒感(そうようかん)等)をご自身で判断が可能であることが条件で、1回目は初期症状発現後6時間以内に内服し、2回目は1回目の内服から12時間後(計18時間以内)に行わなければいけません。少し煩わしいですが、再発時すぐに薬を内服できる安心感につながると思います。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤はニキビの大きくなったようなもので、炎症がないときは皮下にコロコロしたしこりができる皮膚の病気です。ときに細菌によって炎症が起き赤く、熱を持って腫れてきます。治療方法は小さければ、炭酸ガスレーザー、大きくなったときは切除です。
初期症状でしこりに白い内容物があり、ニキビをつぶす感覚で、自分で内容物を取り出す方がいます。このようなことを繰り返すと細菌が繁殖して大きな膿瘍(膿の塊)を形成して痛みが出現して、治療に時間がかかり、日常生活に支障をきたします。治った後も赤黒い外見上支障のある傷跡を残したりします。
もし、「粉瘤かな」と思ったら、病院を受診することをお勧めします。手術になることもありますが、薬で治めることもあります。
家族にうつす前に爪水虫を治しませんか
爪水虫は真菌というカビで起きる病気で、運が悪ければ、他の爪や皮膚、毛にもうつってしまいます。特に、糖尿病やがんの人、ご高齢者のような免疫力が下がっている人はうつりやすく、他の人に感染させてしまうことも多くなります。
爪水虫は非常に治りにくい疾患でしたが、現在3種類の内服薬と2種類の外用剤があり、以前よりは治りやすくなりました。内服薬は肝機能が悪くなることがありますが、外用剤よりも治るまでの期間が半年から1年と短く、ひどい爪水虫でも治りやすいというメリットがあります。3カ月で内服が終了となる薬もあり、もし肝機能が悪くなったとしても重篤になる前に内服薬が終了となりますので、以前よりも使用しやすくなりました。大切な家族にうつしてしまう前に、ご自身の爪水虫を治してしまいませんか。
水いぼは取った方がいいのでしょうか? 取らない方がいいのでしょうか?
水いぼはウイルス感染なので、うつります。直接水いぼに触れたり、タオルやビート板を共用することでうつると考えられ、水浴びやプールなどに入る前に治療を求められることが多くなりました。
しかし、水いぼは半年から2年程度で免疫ができて自然に取れるので、基本的には治療は必要ありません。でも、水浴びやプールに入るためには、数個のうちに治療をおすすめします。
かわいそうなのは、様子を見ているうちに増えてしまい、水いぼを取りに病院に連れてこられたお子さんです。
一般的な治療法はピンセットで1個ずつ取る方法で、痛みがあります。麻酔のテープもありますが、貼って1時間程度待たなければならず、たとえ痛くなくても恐怖で泣くお子さんもいらっしゃいます。
水いぼは、「数個のうちに取る」か「増えたら自然に取れるのを待つ」をおすすめします。
やけどをしたら
やけどは、深くなればなるほど治りにくく、傷跡が残ってしまいます。
やけどをしたら、自宅にある軟こうを塗ったりアロエを貼るのではなく、すぐに冷やしましょう。
流水で15分から30分程度冷やすことで、痛みが軽減し、やけどが深くなることを防ぎます。
衣服は脱がさずに、服の上から冷やしましょう。
その方が水疱(すいほう)は破れず、痛みが少なくてすみます。
傷跡が残ると困る顔や、動きが悪くなると困る手足などの関節部のやけど、そして後から深くなることがある湯たんぽなどの低温やけどは、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。
浅いやけどでも、細菌感染や不適切な治療で深くなり、傷跡が残ってしまうことがあるからです。
やけどをしてしまったことは仕方がありませんが、その後の対処を正しくすることで、傷跡が残らずに済むかもしれません。
帯状疱疹は、早期治療と予防が大切です
帯状疱疹(ほうしん)は、体の抵抗力が落ちると、自分の体の中に残っている水ぼうそうのウイルスが神経を通って、左右どちらかの皮膚に痛みや水疱(すいほう)が出現する疾患です。
今年の夏は寒暖差が激しく、体調を崩されたためか、帯状疱疹で受診される人が多くなっています。
現在の帯状疱疹の内服薬はウイルスの増殖量を抑える効果が期待できますが、早期に治療を行わないと効果が出づらく、神経痛が残ってしまうことや、水ぼうそうにかかっていない人に水ぼうそうとしてうつしてしまうことがあります。
もし、左右どちらかの皮膚に帯状に痛みや水疱が出てきたら、早目に皮膚科を受診してください。
また50歳以上の方は帯状疱疹の予防に水ぼうそうのワクチンが接種できるようになりました。
こちらは自費であり、行っていない病院もありますので、受診前に電話でご確認ください。