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コラムを読む

災害に備えて

脳神経外科2017/03/27

 東北大震災から6年経ちました。
あの時の危機感が薄れてきてはいませんか?

 読者の中には、たくさんの薬を飲んでいる方も少なくないと思います。
そういう皆さんは、災害に備えて薬を準備しているでしょうか?
大きな災害では、いつも通っている病院や薬局が被災した場合、薬が手に入らなくなります(最近の、大災害で実際に起きています)。
薬がないことが、生命の危険に直結することもあります。
血圧は、すぐには命に危険が及ばないと思いますが、災害のような状況では、普段より血圧が高くなります。
そのため、日頃から少し(数日分)余分に薬を手元に置いておく習慣や、自分の薬の情報が分かるようにしておくといいでしょう。

 薬の情報とは、何という薬を、どのように(どれだけの量を、いつ、何回)使用するかです。
薬局からお薬を入手している方は、「お薬手帳」を手渡されることがあります。
その中に、必要な情報が記載されているか、薬局で薬の内容が印刷されたシールが渡され、自分で手帳などに貼るよう指導されていると思います。
また、薬の一覧表が、薬局から発行されることもあります。
これには、薬の名前や使用方法だけでなく、副作用の説明や使用上の注意も記載されていることが多いです。
自分で覚えているという方もいらっしゃるでしょうが、薬の名前には、よく似たものがあり、間違いが重大な結果になる恐れもあります。
正確な情報を保管することをお勧めします。
携帯電話のカメラで撮った処方箋を見せてくれた方がいました。
とても良い方法だと感心しました。

 さらに、薬の情報を、家族にも持っていてもらうと、二重の安心につながるでしょう。
身近に家族がいない方は、遠方の家族に写真をメールで送っておくという手もあります。

 最後に、東北の方たちだけではなく、あらゆる災害の全ての被災者の皆さんにエールを送ります。
「最高の栄光は、一度も倒れないことではなく、倒れるたびに、立ち上がることにある!」
(オリバー・ゴールドスミス)


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2017年3月27日 「北海道新聞夕刊」掲載)

コレステロールの薬、使うべきか?

脳神経外科2016/09/26

 最近、雑誌などで「飲んではいけない薬」とかいう記事が話題になっているようです。
患者さんたちは少なからず不安になっていると思います。
薬の有用性について、私自身も疑問を感じることはあります。
たとえば、コレステロールを下げる薬の効果は証明されています。
検査の数値として悪玉コレステロールだけでなく、中性脂肪や善玉コレステロールも明らかに改善されることが分かっています。
問題は、それで病気が減るのかということです。

 例えば、脳梗塞の正確な発症率は分かっていませんが、一般的に人口10万人あたり100~200人と言われます。
0.1%~0.2%になります。
ある薬が、この発症率を「50%低下させます」と謳っているとします。
発症率が0.1~0.2%が0.05~0.1%に減るということでしょうか。
一方、その薬に何か重大な副作用が0.1%の頻度で現れるかもしれない時、この薬は使うべきでしょうか?

 このことから思い出すのは、「南海トラフ地震の発生確率は今後30年以内に70%程度」に対して、熊本地震震源の布田川断層帯の地震発生確率は「ほぼ0~0.9%」と言われ、専門家は発生確率を「やや高い」と見ていたのに、熊本市のハザードマップでは「きわめて低い確率」と記載していたという話です。
薬の話とは違いますが、通じるものを感じます。
地震の場合、活断層型と海溝型という機序の違うものを比べることから間違いがあるのだそうです。
薬の話に戻りますが、脳梗塞や心筋梗塞といった病気の発症には、年齢や性別、喫煙や高血圧など他の病気の有無により、リスクが随分違うことも分かっています。
心筋梗塞などの冠動脈疾患では、高血圧、喫煙、性別、コレステロールの値で、10年間の死亡率の差は0.5%から、5%以上10%未満まで幅があります。
いろいろな記事で心配になった方は、人口何人あたりという一括(くく)りにした話ではなく、個人の話として、自分のリスクをかかりつけ医や健康診査などで評価してもらった上で、薬が必要かどうか相談した方がいいでしょう。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2016年10月26日 「北海道新聞夕刊」掲載)

スポーツと頭部外傷

脳神経外科2015/09/28

 スポーツにケガはつきものですが、頭部外傷は、時に命を奪ったり、重い障害を残したりします。
特に、脳振盪(しんとう)には注意が必要です。

 脳振盪を起こした後、短い間に二度目の衝撃が加わると、致命的な出血が起きることがあります。
セカンドインパクト症候群と呼ばれ、世界中で問題となっています。
日本では、柔道の練習中に指導者に投げられた後、頭痛を訴え、元気がなくなっているのに、練習を続け、再び投げられた結果、 頭蓋内出血で生徒が亡くなった事件を覚えていらっしゃる方もいるでしょう。
脳振盪とは、頭部への直接的または間接的な外力によって引き起こされた脳の機能障害で、頭痛や体の不安定性、意識の混乱、行動の異常などを示し、多くの場合、意識消失は伴わない、と定義されています。

 頭を強く打った後、一時的に意識を失ったとか、動きがノロい、ぎこちない、バランスが悪い、記憶が途切れている、表情がおかしい、といった症状 を一つでも認めたら、すぐに運動を止め、医療機関を受診して下さい。
脳振盪から1~2日が最も危険と言われており、この期間は傍に誰かが付き添い、急な変化に備えましょう。
さらに、競技への復帰は段階的に行い、最低でも1週間近い時間を掛けるようにします。

 とても慎重な対応に見えますが、脳の回復には、かつて考えられていたより、はるかに時間がかかることや、中高校生位の年齢の脳は、成長途中でデリケートなことも分かっています。
選手は、重要な試合(勝ち抜き方式の大会など)で、途中退場はしたくないでしょう。
復帰に時間がかかることも受け入れ難いかも知れません。
でも、選手生命、あるいは競技を辞めた後の長い人生を考えるなら、生命や重い後遺症の危険は避けなければいけません。

 FIFAやIOCなどの国際スポーツ機関が共同で、「SCAT3」という脳振盪への対処の手引きを公表しています。
スポーツを指導する方たちは、是非一度「SCAT3」をご覧下さい。インターネットで見ることができます。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2015年9月28日 「北海道新聞夕刊」掲載)

脳波検査の復権

脳神経外科2015/03/30

 以前、この欄の「脳を鍛える」話で、脳を鍛えるには繰り返すしかないと書きました。
実は、「鍛える」目的でなくても、「繰り返す」ことで「身に付いてしまう」ことがあります。

 脳は何億という神経細胞が電気信号を伝える回路の塊です。
脳の神経細胞の回路は、繰り返し電気信号が流れることにより、信号が流れやすくなります。
これが「繰り返す」ことで、知識や技術が身に付く基本原理です。
ところが、厄介なことに都合の悪い事まで身に付いてしまいます。
その代表が「てんかん」です。
「てんかん」の発作は、脳の一部から異常な電気信号が生じ、それが広がることで、けいれんを起こしたり、意識を失ったりします。
発作を繰り返すほどに出やすくなってしまいます。
この広がりを抑えるのが薬の働きです。
「てんかん」には、ネガティブなイメージがついて回りますが、新薬が次々に開発されている上に、一生薬が必要とは限らないことも、これまでの経験で分かっています。
時には、異常な信号の発生源が特定できて手術で完治することもあります。

 脳の電気活動を見る目的で行われるのが脳波検査ですが、「てんかん」の異常な電気信号を見るのに、この検査が大変役に立ちます。
しかし、近年は、断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)といった形を見る検査方法が発達してきた一方、脳波は判読が難しく、重症の頭部外傷や脳卒中の後遺症を除けば、成人してからの「てんかん」の発症は少ないと考えられていたため、脳波を検査することが減ってきていました。
ところが最近、脳波計もデジタル化して見やすくなり、再び注目されています。
特に成人、それも高齢者では想像以上に、「てんかん」発作が起きていることが分かってきています。
一時的な意識障害、一過性のまひなど、脳卒中の前触れを疑わせるものの中に「てんかん」が潜んでいるらしく、脳疾患急性期の脳波検査が再び注目されています。

CT、MRIで脳の形は見やすくなりましたが、働きを見るには、古くからの脳波検査がまだまだ必要です。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2015年3月30日 「北海道新聞夕刊」掲載)

ユマニチュード

脳神経外科2014/09/29

 最近、注目されている、認知症患者さんのお世話の仕方に「ユマニチュード」というのがあります。
テレビでも紹介されましたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
基本的には、看護や介護を仕事とする方たちのための「技術」ですが、考え方の基本は、誰にでも役に立つと思います。
柱となるのは、「見る」「触れる」「話す」「立つ」の四つですが、紙面の関係で「見る」「触れる」についてお話します。

 まず、「見る」とは、互いの視線を合わせて、存在を認め合うということです。
世話をする人が患者さんの存在を認めているというメッセージを送ることです。
具体的には、患者さんの正面に回ることが基本です。
こちらを向いていないときには、声を掛けて振り向かせたり、壁を向いて寝ている人にはベッドを動かしたり、座っている人にはひざまずいて目線の高さを合わせるなどして、とにかく視線を合わせます。
お世話を始める最初の段階です。

 次に患者さんに「触れる」ときは、赤ちゃんに触れるように、広い面積で、ゆっくり、優しく触れます。
いきなり顔や手に触れないように、上腕や背中といった鈍感な所から始めます。
「つかまない」ように、親指を閉じて手のひらで触れます。
使う力は、せいぜい小学校低学年の子供程度です。

 このユマニチュードの方法論から、馬の世話の話を思い出しました。
馬の世話をする時には、必ず声を掛けて、こちらに気付かせてから近づき、体に触る時、最初からデリケートな場所には触れず、離れたところから、徐々に目的の部位を触れます。
さもないと蹴飛ばされるそうです。
馬は臆病なので、安心させるためにこういう注意が必要だといいます。
認知症患者さんも、不安の中、警戒心が強くなっています。
スムーズなお世話には安心、信頼が大切です。

 動物と人を一緒に語ることに批判的な方もいるでしょうが、近年、動物と人間には共通点が多いことから、動物と人間の病気を一緒に見るという考え方があります。
これについては別の機会にお話しましょう。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2014年9月29日 「北海道新聞夕刊」掲載)

認知症の方との付き合い方

脳神経外科2014/03/24

 認知症の家族への接し方をよく聞かれます。
明快なお答えが出来ませんが、認知症の人が特別なのではないと考えるよう勧めています。

 たとえば、徘徊と聞くと、やみくもに歩き回る姿を思い浮かべがちです。
ご本人が言葉で説明できないことも多いのですが、出かけた後をつけて行くと、その目的が分かることがあります。
また、「徘徊」しているところを警察に保護された時、その発見場所にヒントがあることもあります。
かつての職場を目指していたり、子供時代を過ごした、今はない実家を探していることがあります。
認知症では、過去から切り離され、未来への見通しもつかない全くの暗闇の中、足元を照らす光だけが残っている状態です。
「今」がとても不安なために、安心できた過去に戻ろうとして家を飛び出すことも多いといわれます。
ただ、途中で道が分からなくなり、「徘徊」という姿になってしまいます。

 排泄に失敗したとき、「私はやっていない」と言い張り、汚れた下着を箪笥の奥に隠し、介護者を驚かせます。
これらは「身内に格好悪いところを見られたくない」という、誰にでもある当たり前の気持ちから出たと考えられます。

 一見、理解しがたい行動も、よく観察すると理由があることが分かります。
また、患者さん自身が語った言葉に対して、「ゆっくり話してください」、「何を話したかより、どのように話したかということが大事です」というのがあります。
患者さんは、早口で幾つもの事柄を話されると付いていけません。
同じ言葉でも、喋り方、声の調子、顔の表情などで受ける印象が変わります。
この聞いた時の気持ちは記憶に残るようです。
したがって叱るような話し方ばかりしていると、患者さんとの関係が壊れ、後々のお世話が困難になるという悪循環に陥ります。

 どんな時でも人と話す時には、相手を傷つけない話し方、態度というものがあると思います。
認知症だからと「構える」のではなく、自分と同じ一人の人間として、ちょっと相手のことを大切に思って接することをお勧めしています。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2014年3月24日 「北海道新聞夕刊」掲載)

再生医療とリハビリテーション

脳神経外科2013/09/30

 京都大学山中教授のノーベル賞受賞以来、iPS細胞による再生医療に対する期待が高まっています。
一部の病気で臨床試験が間もなく開始されるという報道もあり、いよいよ現実味が出て来ました。
こうした状況を受けて、患者さんの中には「もうすぐ再生医療が実用化されて、自分の脳卒中後遺症は細胞を移植すれば治る。だから、リハビリなんか止める」という人が出て来ました。
果たして、iPS細胞から作った神経細胞(正しくは神経幹細胞)を移植すれば、脳の病気は何でも治るのでしょうか? リハビリは不要になるのでしょうか?

 答えは「ノー」です。
脳は、よくコンピューターに例えられます。
脳卒中で脳が大きく壊れた時、これに再生医療技術を用いるのは、いわば、パソコンを「リカバリー」して、買ってきた時の状態に戻すことに似ています。
実際には、買ってきたパソコンは色々なプログラムが入って、初めて使えるようになります。
例えば、脳梗塞で脳の一部が障害された状況を思い浮かべます。
病気の範囲が小さくて、パソコンでいえば「回路の一部が切れた」程度ならば、細胞移植だけで回復する可能性は大きいでしょう。
しかし、病気に侵された範囲が広い場合、事は簡単ではありません。
神経回路が回復しても、それまでの人生で身に付けたこと(プログラム)は、もう一度脳に覚えさせなければなりません。

 別の例えで言えば、体が自動車で、脳がドライバーだとします。
ドライバーが病気になったなら、ドライバーを交代させれば良いはずですが、交代ドライバーとして移植された細胞は、まだ運転の仕方を知らない子供のようなものです。
手足は自在に動かせますが、運転操作は練習で身につけなければなりません。
この練習こそ、リハビリテーションです。

 残念ながら、再生医療が実現しても、何の努力もなしに元通りになるということは期待しない方がいいでしょう。
むしろ、リハビリは益々重要になってくると思われます。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2013年9月30日 「北海道新聞夕刊」掲載)

魔法の注射?

脳神経外科2013/03/25

 突然ですが、ボールを投げる動作を思い出してください。
投げる方の腕は円を描くように伸び、反対側の腕は肘を曲げて折りたたまれています。
このようにある動きをするとき、左右の手足は無意識にバランスを保った動きをします。
さらに、関節の曲げ伸ばしにも、曲げる筋肉と伸ばす筋肉が同時に働きます。
肘を曲げる時には、脳は「曲げろ」という命令を腕の前側(力こぶを作る筋肉)に出す一方、腕の後ろ側には「伸ばせ」という指示を出します。
これにより動きがスムーズになります。このように脳が、左右のバランスや、曲げ伸ばしのように相反する動きの調整をしています。

 多くの脳卒中では、体半分が動かなくなる障害(片麻痺といいます)が残ります。
このとき、単に片側の手足が動かないだけではなく、左右のバランスや、曲げ伸ばしの調節も変化して、片麻痺からの回復に影響します。
典型的には、病気になった腕は肘が曲がり、足は伸びて突っ張ったような形になり、アチコチの筋肉は固くなります(痙縮[けいしゅく]といいます)。
痙縮は、その後の回復を妨げ、日常生活にも差し支えます。

 片麻痺は、リハビリテーションにより改善しますが、発症から半年を過ぎると回復の速度は鈍り、ほとんど回復が止まります。
この原因の一つが痙縮です。
半年以上経った脳卒中後の麻痺が、ボツリヌス菌という細菌から作った注射薬で再び改善していく様子がテレビで放送され、その「注射」についての問い合わせが増えました。

 テレビでも、薬の作用は説明していましたが、「改善」が「治る」というように解釈され、あたかも注射だけで片麻痺が治ると考えられているようです。
注射は「痙縮」には有効ですが、麻痺を治す「魔法の注射」ではありません。
固くなった手足を伸ばし、リハビリを行うことで、再び改善する可能性が出て来ます。
注射とリハビリの組み合わせが大切です。
この注射をどこで受けられるかはインターネット上で調べられますので、「脳卒中後遺症、痙縮」で検索してみてください。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2013年3月25日 「北海道新聞夕刊」掲載)

脳動脈瘤の自然歴

脳神経外科2012/09/24

 病気の「自然歴」とは、その病気を放っておいたらどうなるかということです。
病気は、何でもかんでも治療するわけではなく、自然に治るものや、治らなくても生活に支障なく、寿命を全うできると思われるものもあります。
一方、治療にも危険が伴うことがありますので、放っておいた場合の危険と、治療に伴う危険とを天秤にかけて治療するかどうかの判断をします。

 脳動脈瘤は破れると半数の方が命を落とすとも言われる恐ろしい病気です。
また命が助かっても、多くの方が障害を残します。
その恐ろしさ故に、かつては検査で偶然見つけた動脈瘤に対して、積極的に手術する傾向がありました。
しかし、治療には危険が伴いますから、そのような姿勢に対する批判の声も多数ありました。
また、MRIなどの診断機器の発達に伴い、動脈瘤が発見されることが増えてくる一方で、昔から動脈瘤の自然歴が不明でした。
そうした中、1998年に発表された欧米の研究結果では、脳動脈瘤の破裂の危険性が、年率0.05%と予想外に低かったため、大変な議論となりました。
そこで日本脳神経外科学会が中心となって、2001年から新しく研究を開始しました。
その研究結果が、つい最近発表されました。
全体としての破裂リスクは年率1%程度と、実際に破裂脳動脈瘤を扱っている脳外科医の実感と一致する結果でした。
さらに動脈瘤の場所や大きさ、形による危険性の違いも示されました。

 これまで脳ドックなどで動脈瘤が見つかった場合、治療をどうするか相談するのに、しっかりした根拠に基づくデータがなかったために、脳外科医も困っていました。
今回の研究方法には、まだまだ議論の余地があります。
しかし、その判断を下すための材料として、今までの研究報告よりもしっかりとした根拠が示されたものと考えます。

 個々の患者さんについては、個別の状況から治療方針を決めなければなりませんが、医師として、患者さんに説明するとき、これまでよりも自信をもってお話ができるようになりました。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2012年9月24日 「北海道新聞夕刊」掲載)

長生きの秘訣

脳神経外科2012/03/26

百歳以上の方を百寿者と呼びますが、日本におけるその数は、1990年には4千人程でした。
当時、老年医学が専門の友人から「百寿者は、生まれつき(遺伝的に)強い人で、長寿の研究には適当でない」と聞きました。
その後2000年にはおよそ1万5千人、2011年9月には、4万7千人に達しました。
たった20年の間に、遺伝的に強い人たちが4万人以上も増えたのでしょうか?
長寿に対する遺伝の関与は30%程度と言われます。
したがって、寿命の伸びは、遺伝子以外の要素の影響が大きいということです。
生活環境として、紛争や戦争がなく平和であること、大きな災害がないことは勿論大切です。
ちなみに、第二次世界大戦直後の百寿者は四百人程でした。
もっとも重要な要素は、国民の保健衛生に対する関心の高まりと、医学・医療技術の進歩の貢献が大きいと考えます。

百寿者の統計データを教えてくださった先生は、長寿を100m走にたとえておられました。
かつて10秒を切ることは夢のようでしたが、10秒の壁を破った後も記録は少しずつ伸び続けています。
この伸びには選手の素質だけでなく、シューズやトラックなどの道具の改良、科学的なトレーニングの成果も大きく貢献しています。

人間の寿命も、まだ伸びると予想されています。
百寿者の研究から長寿の秘訣は見つけられていません。
しかし、105歳以上の方たちの特徴から、「よく食べ、風邪をひかない」という共通点が発見されました。
簡単なようですが、食べるためには、日頃から歯磨きを欠かさず、丈夫な歯を保つことが必要です。
風邪をひかないために、手洗いとうがいの習慣も大事です。

結局、「これをやれば大丈夫」という便利な話はありません。
100m走の選手と同じで、自ら毎日努力することが必要です。
人生は、100m走よりマラソンと言うべきかもしれません。
コーチ(医師)の助言を聞き、道具(先進医療技術)を上手に利用して、人生マラソンを完走しましょう。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税(2012年3月26日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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