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唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)と歯科のかかわり

矯正歯科2012/03/19

 唇顎口蓋裂は、胎生期に癒合するはずであった上あごの真ん中部分が離れたままで生まれてくる疾患で、最近では手術や矯正歯科治療の進歩により、治ってしまえば誰も気づかないこともあります。
私が札幌医科大学の口腔外科に勤務していたころは、この疾患を持つ子どもたちが北海道各地から集まっておりました。
しかし、現在ではほとんどが北海道各地方都市の総合病院にいる形成外科医から治療を受けられます。
その中でも、この疾患についてトレーニングを積んだ医師のみにより手術されております。

最近では、出生直後のホッツ床(口蓋裂があるため哺乳が困難な場合に口と鼻を遮断し哺乳を助ける柔らかい樹脂で作った入れ歯のような上顎にはめるプレート)の使用から始まり、歯列矯正治療を終えるケースで考えると、歯科医とは17年間ほどの長い期間付き合うことになるため「こころ」の管理をふくめて、長期の取り組みが必要となります。
この疾患の発生原因は不明で、おおよそ5、6千人に1人の割合で生まれます。
函館の人口は約28万人ですので統計上500名程の患者がいると考えられるということになります。

 一昨年、日本口蓋裂学会に当院の統計について報告させていただきましたが、それによると23年間に受診した唇顎口蓋患者さんは、225名でした。
人生80年とすると、23年間の受診者数から算出すると統計上考えられる500名を上回るので函館地区のほとんどの方が当院を受診していることになります。
この疾患へは、言語治療士やその他の医療従事者によるチームアプローチによる取り組み治療がされております。
この疾患の影響により、上あごの発達が悪くなりやすく、反対咬合や乱杭(ラングイ)歯が生じ、矯正歯科を含めた歯科治療が必須のものとなります。
矯正歯科の保険導入については、コロンビアトップ議員の国会質問がきっかけとなり、1982年にようやく保険導入が開始され、まだ30年しかたっておりません。

 函館でも良い医療を提供するため、歯科医は頑張っております。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂( 2012年1月30日 「北海道新聞夕刊」掲載)

歯並びを悪くする癖

矯正歯科2011/07/25

 赤ちゃんがおっぱいを吸う姿は、かわいいものです。
赤ちゃんでは、歯が無いことにも関係しておりますが、舌を丸めながら、突き出し、乳首を包むように飲んでいます。
しかし、大人の場合には水を飲むときには、一度口の中にためて、唇を閉じ、歯をかみ締めて舌と上あごの間を絞り込むように、のどまで運びます。
赤ちゃんの飲みかたは、弱い力でも可能ですが、大人のように飲むには、ある程度、口からのどにかけての筋力と調和した動きを習得しなければできません。
それだけ高度な機能ともいえます。
しかし、大人でも幼児のような、舌の使い方をする人も、たまに居ます。つばを飲み込むときに、上と下の前歯の間に、舌を挟んだり、タ行の音を出すときに、英語で言うTHの発音になってしまう方や、舌っ足らずといわれるようなしゃべり方をされる方には、このような可能性があります。
このような癖を持つ方の場合には、奥歯をかんでも、前歯が開いてしまう開咬(かいこう)と呼ばれる不正咬合(こうごう)が起きます。

●舌訓練法(タングトレーニング) 歯は、硬い骨の中から生えてきますが、最初から、位置が決まっているわけではありません。
口の中に出てから、舌やほっぺたなどの筋力の強さによって、その位置が決まってきます。
また、上の歯とぶつかることにより、その位置が安定して収まります。
つまようじや、パイプなどにより、位置変化を起こすことも良く見られることです。
変な癖が付いている場合には、舌の訓練をして、よりよい口の動きの調和を促す方法も良くとられます。
舌やほっぺたなどの弱そうな筋肉を反復練習して鍛えます。
こうすることにより発音が良くなったり、口から食べ物をこぼすことが少なくなったりしますし、前歯がかみ合わない開咬も直ってきます。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂( 2011年7月25日 「北海道新聞夕刊」掲載)

摩擦と矯正装置

矯正歯科2011/05/23

 医学の進歩についての話をよく耳にしますが、歯科矯正装置もいろいろな工夫により大きな進歩を遂げています。 一例をあげれば、以前のものでは、ブラケットといわれる歯に装着する装置に歯を並べるための金属線をくくりつけるために細い線や小さな輪ゴムを使っていましたが、矯正装置に強い摩擦が生じるため歯が移動しにくくなるという側面がありました。
しかし、最近ではキャップのように装置自体にくくりつける仕組みを組み込むものが増えています。 この装置ですと摩擦が少なくすべりがよいため、痛みが減り、歯の動きがスムーズになり、結果的に治療期間が短くなります。
また、くくりつける時間が削減されるため、チェアタイム(座っている時間)も短くなるなど「削減効果」が顕著に現れます。
また電力会社や、自動車産業などに比べれば非常にわずかなものですが、金属線をはずすときに捨てる部分がでないのでエコという面でも効果があります。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂( 2011年5月23日 「みなみ風」掲載)

『しあわせ』な矯正歯科治療

矯正歯科2011/01/31

昨年今年と、当院で矯正歯科治療を受けた口蓋(こうがい)裂患者さんの資料を整理して某大学の大学院生と一緒に指導を含めて論文にまとめており、昨年は1編、今年も3月に提出予定です。一応わたしもその大学の非常勤講師となっておりますが、若い院生と一緒に論文を書いていると、自分も本当に勉強している感じがしております。矯正歯科の技術は、その人独自のものであるという面もあることから、矯正歯科に携わる歯科医の中には自分の技術を「芸術」とか「アート」と表現する人も少なくありません。
しかし「医学が科学の一分野である」ということは、万人が認めるところであり、矯正歯科学を含めた歯科学も当然科学の一分野です。
最近EBM(Evidence Based Medicine)という言葉が良く使われ ています。
聖路加国際病院の福井次矢先生は「〝適切な診療〟とは、つまるところこれまで行われてきた研究についての質の高いエビデンス(検証結果)を医療従事者が知っているかどうかにかかっている。
治療効果・副作用・予後の臨床結果に基づき医療を行うというもので、専門誌や学会で公表された過去の臨床結果や論文などを広く検索し、時には新たに臨床研究を行うことにより、なるべく客観的な疫学的観察や統計学による治療結果の比較に根拠を求めながら、患者とも共に方針を決めることを心がけるべきだ」と述べております。矯正歯科の分野のなかで、口唇顎口蓋裂児(こうしんがくこうがいれつじ)の治療は、15年以上にわたり歯科医と患者さんが関わりあう治療ですので、医学の進歩の把握やEBMの実践、高度な治療技術の習得が当然必要です。
しかし治療により得られた結果が、患者さんおよびその周りの家族の方々に喜んでもらえたか、その患者さんの「しあわせ」に関与できたかどうかを数値で測ることは不可能ですが、謙虚に考え、受け止め、考え続けなければならない問題です。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂( 2011年1月31日 「北海道新聞夕刊」掲載)

私の血管は何歳?…

「先生、血管年齢って何ですか? 私の血管は何歳ですか?」と、Aさんは聞いてきました。どうやら、健診を受けた夫の血管年齢が実際の年齢より10歳も高かったので、とても心配になったとのことでした。

 ウィリアム・オスラーの「ヒトは血管とともに老いる」という名言があるように、人の血管は年齢を重ねるごとに老化していきます。その老化現象はいわゆる動脈硬化と言われ、自分では気づかないうちに静かに進行し、血管の壁が硬くなり弾力性も失い、内腔は狭くなり詰まることもあります。

 老化=動脈硬化の進展度を評価診断するには、いくつかの方法があります。血管造影による狭窄(きょうさく)度評価、血管内視鏡や血管内超音波による血管壁の質的評価、頚(けい)動脈超音波法による頚動脈硬化の量的、質的評価などです。また造影CTにより、冠動脈の狭窄を簡便に検出することも可能です。Aさんの夫が受けたのは脈波検査といわれるもので、動脈の波動が心臓から動脈の末梢へ伝導する速度を検出することで、動脈硬化の度合いを血管年齢としても評価できます。これは仰向けになって5分間ほどで測定できるとても簡便な検査で、下肢動脈の狭窄も同時に評価できます。非侵襲的な検査ですので年1回の測定による経年変化の観察が可能で、これにより老化の速度を評価することができます。

 日本人の死亡原因の三分の一は脳卒中や心疾患などの動脈硬化と強く関連する疾患です。その動脈硬化の原因には遺伝の要素もありますが、他の大きな要因には喫煙、肥満、運動不足、睡眠不足、ストレス、高血圧、糖尿病、脂質異常症(LDL=コレステロールや中性脂肪が高値)などの生活習慣病があります。これらの要素を複数併せ持っている人は、何も持っていない人の数倍も心血管病(脳卒中や心筋梗塞)を発症しやすいと言われています。

 Aさんのように自らの血管年齢を知ろうとすることは、日常の食習慣や運動習慣の是正に心がけるようになることにつながるので、とても良いことだと思います。


Text by 関口内科 関口 洋平( 2010年12月20日 「北海道新聞夕刊」掲載)

矯正歯科とサル

矯正歯科2010/09/21

 サルは人間に似ており、サルのような人間は、外見面や心理面から考えて見ると少なくないかも知れません。
人間とオラウータン、ゴリラ、ニホンザルの歯の数は同じです。
単雄群である、つまり一夫多妻制のゴリラはオスの犬歯が異常に大きい形をしておりますが、数は同じです。
ニホンザルは、大きさや形のオスメスの差がわずかで、人間に近いのかもしれません。 外見についてみれば、サルは目より唇が前にあり、脳の発達している人間は口元が下がっています。
欧米系の顔は下あごが大きく口の位置が後ろにあり、日本人やモンゴル系の顔では下あごが小さく口元が出ているように見えます。
欧米人は、どちらかといえば口元が出ている顔を嫌い、下あごが出ている反対咬合(こうごう)はあまり気にしません。逆に日本人は、反対咬合を嫌います。 日本における美しさの感覚は変化しており、現在の矯正歯科治療の多くは前歯を後ろの方に下げ口元を引っ込めることが目標の一つになってきております。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂( 2010年9月21日 「みなみ風」掲載)

矯正歯科治療のQOL

矯正歯科2010/07/26

 以前私が勤務していた市立函館病院では、交通事故などで顔面に外傷を負った患者さんの治療を、脳神経外科や関係する科の医師が一つのチームとなって担当していました。 その頃は患者さんの家族は、命が助かっただけで一緒に喜んでくれたものですが、現在では、当然のことですが、できるだけ治療中の侵襲をおさえ、回復を早め、治療後もよい状態を得ることが要求されています。
このように医学の進歩が進み、質の点、QOL(Quality Of Life)が、重要とされてきております。

「歯が顎の中で動く仕組み」
 歯並びを治すマルチブラケットという普通用いられている矯正歯科治療法について考えてみましょう。
歯は歯ぐきの中にある骨に埋まっております。
骨と歯の根は、歯根膜という骨膜に似た軟組織で着いています。
歯に力を加えると、力がかかった側の骨は減り、その反対側では骨ができてきて、結果的に歯は、押された方向に移動します。
これが矯正治療で歯並びが治っていく仕組みですが、月に1㎜動くことがさまざまな研究により知られております。
著しく歯並びが悪くても、小さな口の中ですので、矯正治療で良い歯並びになるための一本の歯の根の移動距離は、5㎜以内です。
従って効率的に歯の移動が起きれば、5ヶ月で良い歯並びが得られると考えられます。
しかし、一般的には2年あるいはそれ以上治療期間が必要とされています。「矯正歯科のQOLについて」
 矯正歯科の分野においては、治療結果は当然のことですが、快適な治療経過を得るために、歯の裏側に装着するリンガルオルソドンティックスなどの矯正装置、痛みを軽減するための滑りのよい装置、患者さんの協力や努力の量を低減し、目標の位置まで歯を動かす期間を出来るだけ短くするインプラントアンカー治療法などにおいて改良が進んでおります。
このように現在の矯正歯科における進歩は、治療中のQOLの向上という方向に進んでおります。
5年前と比較してみると、大きく進歩し、より患者さんにとって「よりやさしい」環境となってきております。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂( 2010年7月26日 「北海道新聞夕刊」掲載)

インプラントアンカー矯正

矯正歯科2010/01/25

 インプラントというと、歯のないところに埋め込む人工歯根を思い浮かべる方もいますが、「インプラントアンカー矯正」は矯正歯科治療において歯茎に小さなネジのような装置を埋め込み、この装置を抵抗源として矯正したい歯やあごを引っ張る治療法のことです。

 一般的な矯正歯科治療において治療が終り、装置をはずす瞬間は本当に患者さんには喜んでもらえます。
いつも「ゴムを二十四時間使ってください」「ヘッドギアは毎日使ってください」などと、患者さんに矯正歯科治療に協力してもらうため、嫌われそうになる言葉を一生懸命理解してもらえる様に来院ごとに伝えていますが、この患者さんの装置をはずした瞬間の喜ぶ笑顔が見られたときは、お互いに努力したんだなと私自身にとっても最高にうれしい瞬間です。
しかしそのままゴムを使ってくれないような協力的でない患者さんの場合は予定通り治療が進まず、長引いてしまうこともあります。
最悪の場合は治らないこともあるでしょう。

 近ごろでは、患者さんに大きな負担をかけることなく治療効果の上がるいろいろな治療法が考えられております。

 「インプラントアンカーシステム」もその一つの方法で、患者さんへの負担が小さい治療法です。
その上、いろいろな方向への歯の移動が今までよりも容易になる可能性があります。

 ゴムやヘッドギアなどの代わりに口の中に抵抗源となるインプラントアンカーを治療開始時に入れます。
歯を動かしたい方向に応じて挿入する場所も考慮し、動的治療終了時に撤去します。
この方法だと患者さんの協力がなくても、予定通りに歯が移動しやすくなります。
今のところ主に成人が対象で欠点ももちろんありますが、術者と患者さん双方にとって利点をもった治療法の一つです。

 この方法により矯正歯科治療の短期間化や以前は不可能であった左右非対称な歯の移動、患者さんの協力が得られない場合でも治療が可能となり、顔ぼうの改善を含めた患者さんの希望が、より得られやすくなります。
もちろん丁寧な歯磨きなどの協力は不可欠です。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂(  「」掲載)

喜んでもらえる矯正歯科治療

矯正歯科2009/07/23

 ”輝く笑顔”は、若さと健康の象徴として、周りの人たちにも多くの幸せを与えてくれます。
ちなみに八月八日は、笑い声「ハ(8)ハ(8)ハ」の語呂合わせから、日本不老協会が中心となって発足した「笑いの日を作る会」が一九九四(平成六年)に制定した「笑いの日」です。
日本医科大学リウマチ科の吉野槇一教授のお書きになった論文では、「笑い」の前後一時間で採血し、痛みの変化、炎症を悪化させる物質インターロイキン6(IL―6)やストレスホルモンのコルチゾールの変化を調べてみたところ、全員の状態が改善し効果が見られたと医学的にも報告されているようです。
このように「笑い」は大切で、我々歯科医は、歯並びをよくする矯正歯科治療を通じて患者さんと一緒になり、輝く笑顔を獲得し心も体も健康になるよう努力しております。

矯正歯科を受ける方の心理

 子供の歯並びを治したいと、相談される方の保護者の多くは、「このような歯並びは、治した方が良いのでしょうか?」とか「治さなければいけないのでしょうか?」と、よく私にお尋ねになります。
まるで、私が裁判官、患者さんが、被告の立場で、患者さんが有罪と言われるのではないかという恐怖心をもって私の話を聞いているような錯覚に陥ってしまいます。
医療を受けるか受けないかは患者さんの自由意志であり、交通事故などで患者さん自身が判断力がないときや緊急な場合など以外は、特に患者さん自身が決めるべき事です。
もちろん、治療の効果については、今までに治療した患者さんの例などを一緒に見ながら説明しますが、治療法、治療結果についてはそれぞれ違いが出てくることもお話します。
患者さんと私たちが、良好な治療結果に向かってお互いに努力することが大切です。
矯正歯科治療を受けられている方の割合は、10年前の報告ですが大阪地区では「矯正が必要」と思われる人の三~四割程度にすぎず、私が受け持っている中学校では全生徒の10%以下ですので、受けていない方が大半です。
患者さんが治療を自ら「喜んで」始め、当然ですが、治療後に「喜んで」いただけるよう信頼感をお互いに築くよう努力することが最も重要です。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂(  「」掲載)

前歯の位置と笑顔の関係

矯正歯科2009/05/18

 笑顔が素晴らしいポスターでは、上唇(うわくちびる)が、大きなU字型をしており、歯ぐきは見えず、歯のカーブは唇よりはやや小さいU字型をしています。顔を横から見ると、鼻の先端とあごを結んだ直線(E―ライン)より唇が接するか、やや後退しております。

 矯正歯科治療で歯並びを直す場合、かみ合わせを治すのはもちろんですが、口の周りの組織の調和を考えた治療目標を立てます。

 この歯の位置を目標位置まで動かすため、従来はヘッドギアやチンキャップなどを使用しておりましたが、インプラントを利用して、以前よりも目的の位置に動かすことへの本人の負担も軽減され、早く治療が終えられるようになってきています。老化を含めた歯槽膿漏や、骨や筋肉の変化などから矯正歯科治療後、歯は安定したところをさがして自然に移動し、さらに安定します。従いまして、歯と周りの調和がとても大切なのです。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂(  「」掲載)

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