ビスフォスフォネート系薬剤を服用しての注意点~顎骨壊死について~
医科で処方されますビスフォスフォネート系薬剤は、悪性腫瘍(癌)の骨への転移、悪性腫瘍による高カルシウム血症、骨粗鬆症に用いられています。
近年、これが顎骨壊死に関わっているとの報告が相次いでいます。
この顎骨壊死はビスフォスフォネート系薬剤を投与されている患者様にまれに起こり、顎の骨が部分的に腐った状態になり、口の中の細菌が感染します。
その場合、
①口の中の痛みや腫れ、膿が続いている
②歯茎に白い硬いものを感じる
③歯がグラグラする
④下唇のあたりがしびれる
などの症状が現れます。
こういったビスフォスフォネート系薬剤による骨壊死は顎の骨以外では見られなく、特に下の顎に起こりやすいと言われています。
口の中の粘膜は傷つきやすく、口の中の細菌が顎の骨に感染する可能性が他の骨に比べ高いためだと考えられています。
また、ビスフォスフォネート系薬剤を投与されている患者様が抜歯などの口の中の外科治療をした場合も顎骨壊死が生じる原因に挙げられています。
ビスフォスフォネート系薬剤は、悪性腫瘍、骨粗鬆症の治療に非常に有用です。
こういった顎骨壊死のリスクがあるので、服用されている患者様はかかりつけの歯科医にあらかじめ伝えておくことが必要です。
そして、どうしても抜歯などの治療が必要であれば、ビスフォスフォネート系薬剤を処方している医師と薬剤師と歯科医が連携を取った上で治療を進めてもらった方が良いでしょう。
先ほども述べましたとおり、この顎骨壊死は頻度としてはまれに起こるものですが、ビスフォスフォネート系薬剤を投与されている患者様はそのリスクを減らすためにも、口の中を清潔に保ち、定期的な歯科クリニックでの口腔清掃をすることをお勧めします。
ノンクラスプデンチャーについて(Ⅱ)
失った歯を補う方法としては、従来よりの方法であるブリッジ、デンチャー(入れ歯)、インプラント等ありますが、前回はその中でも審美性(見た目に入れ歯とは分かりにくい)という付加価値をもったノンクラスプデンチャー(金具を使わない入れ歯)についてお話ししました。
今回もこの入れ歯についてのお話しですが、今まで作製してきて感じたことや、前回の記事の補足、別の材料について付け加えたいと思います。 まず、今までいろいろな患者様の希望を聞き、それに対して説明をし、また実際作製してきて感じることは、この入れ歯は保険外のため自由に設計ができ、設計に制約のある保険の入れ歯より食事ができるように思います。
食事ができるというほかに、やはり他人に入れ歯だと気付かれたくないという付加価値を求めた入れ歯だということです。
したがって、残っている歯の治療も必要になる場合もあります。
また、この入れ歯はあくまで部分入れ歯なので、全く歯のない患者様には総入れ歯(金属床等)の扱いなります。
ともあれ金具が見えて気になる患者様、ブリッジのように健康な歯を削りたくない患者様、金属アレルギーのある患者様には適した方法だと思います。 次に材料についてお話しします。
前回は国内で薬事認可されている材料は4種類あるということを書きました。
その中でポリカーボネートという材料を使っていることを書きましたが、最近はポリアミド系(ポリエチレンテレフタレート:略してペット)の材料、ペットボトルの材料を使っています。
この材料の利点は樹脂の特徴として柔らかいため破折がしにくく、そのため厚みも薄くできて違和感が少ないという点にあります。
材料も日進月歩ですが、最近では国外生産のものも出回っていると聞きます。
もしこの入れ歯を希望するようなら、国産の安全な製品を作ってもらって下さい。
ロービジョンケアについて
皆さんは「ロービジョン」という言葉をご存知でしょうか?
さまざまな原因で通常のメガネやコンタクトレンズによる矯正、手術などの治療を行っても見え方の改善が難しい状態を言います。
私たちの眼は、視力や視野などのさまざまな視機能で物を見ています。
先天的あるいは後天的に角膜や水晶体、網膜、視神経から脳に至るどの部分が障害されても物が見えにくくなり、日常生活に不自由を生じてしまいます。
具体的には角膜疾患や白内障、糖尿病網膜などによりまぶしくて歩きにくい、かすんで字が読めない、テレビが見にくい、人の顔が判別出来ないなどの症状があります。
また加齢黄斑変性などの網膜中心部の疾患では視野の中心が暗い、ゆがむなどにより読み書きができにくくなります。
緑内障や網膜色素変性などでは視野が狭くなり歩きにくい、物を探せない、人や物にぶつかるなどの症状で生活しづらくなります。
このような治療の困難なつらい症状をさまざまな方法で少しでも緩和させる事を「ロービジョンケア」といいます。
まぶしさには遮光眼鏡、字の読みにくさにはルーペや拡大読書器、視野の狭さにはアイムーブメントトレーニングなど患者さん一人一人のニーズに合わせてケアを行います。
これらは全て健康保険で受けることが出来ます。
また、さらに視覚障害の強い患者さんに対するケア方法として音声時計、音声パソコン、音声図書などの音声を使ったケアもあります。
場合によっては見えにくい眼を酷使し疲弊するよりも音声を使う方が良い事もあります。
今後日本は超高齢化社会を迎え、医療の進歩によって見えやすくなる患者さんばかりではなく、残念ながら「ロービジョンの方」も増加すると言われています。
既に前記の症状などでご本人やご家族にお困りの方がいらっしゃいましたらぜひ「ロービジョンケア」を受けて下さい。
日常生活の改善や諦めていた趣味や生きがいが再び見つかるかもしれません。
アンチェイジングのための中高年の肥満とダイエット
中高年の加齢に伴う代謝の特徴は腹筋量が減少して基礎代謝が低下すること。
(汗をかかなくなる)内臓脂肪が蓄積されること。(お腹が出てくる)インスリンに対する反応が悪くなることです。(糖尿病になり易くなる)
一般に生活習慣病やメタボリックシンドロームという病態としていわれ、この病態の中で肥満対策は大事な予防方法です。
では、肥満対策として、ただダイエットを行うとよいのでしょうか。
もし、運動を行わないでダイエットを行った場合、大きい確率でリバウンドが起こります。
ダイエットを行う場合には適切な運動を行う必要があります。
私たちの体の中の遺伝子の中に『倹約遺伝子』という遺伝子があり、人工的にダイエットなど飢餓状態をつくると摂取したカロリーを素早く脂肪に変換するようになります。
このような流れを予防するためには筋肉を維持して筋肉で燃焼させる必要があるので、ダイエットをしているとき、またダイエットをやめた後も運動する習慣を作り、筋肉量を減らさないようにする必要があります。
現在、よく行われているジョギングやウォーキングを中心にした低強度の有酸素運動は生活習慣病には有効であることは間違いないことですが、このような運動をするためには丈夫な骨と筋肉が必要です。
筋肉トレーニングやウエイトトレーニングは何となく硬派なイメージがありますが、レジストトレーニングは軽いダンベルやゴムのチューブなど身近な負荷素材で筋肉に負荷をかけるトレーニングです。
5〜10分程度の軽いストレッチの後、20分程度の筋力トレーニングを行い、20〜30分のウォーキングを週に3〜4回体調に合わせて徐々に行うことを勧めます。
運動を行わないダイエットはかえって、乾いたスポンジに水を含ませるように、体重の増加を引き起こします。
適切な運動を行いながらダイエットを行いましょう。
私たちは『貯金』はなかなかできませんが『貯筋』はできます。
インフルエンザが流行中です
秋口からの例年にない手足口病や伝染性紅斑の流行の後、インフルエンザの流行が早々とやってきました。12月にこれだけの規模で流行がみられるのは、2009年の新型インフルエンザが流行して以来のことです。
感染症情報センターや札幌市衛生研究所などの情報を見ると、現在、北海道の多くのところで流行しているのはA型H1pdmといういわゆる新型インフルエンザと同じタイプのウイルスです。簡易的に調べるものを使っても、函館近郊では流行の始まりから一貫して同じタイプのものがはやっているようです。
今年のインフルエンザの症状の特徴は? とよく言われますが、実際にはあまり違いを見ることは少ないものです。急な発熱とぐったりした様子、発熱のあとに咳や鼻水が出てくるのが一般的なインフルエンザの経過です。今年は、12月になってから胃腸炎の症状を伴う方がちらほら見えていますが、型が違ってそのような症状が出ているというわけでもないようです。
ワクチンに勝る予防法はありません。今年はワクチンを1回接種したり、ワクチン接種ができないでいたりする間にインフルエンザに罹(かか)ったお子さんが多くいます。インフルエンザワクチンには4つのタイプのインフルエンザに効く成分が入っていますので、たとえ1回罹ったとしても、予定しているワクチンはそのまま受けるようにお願いします。インフルエンザに罹った後、すぐにはワクチン接種ができないことが多いので、予定している病院とよく相談の上、ワクチンを続けるようにしてください。
流行を止めるためには熱が出た日から5日間(熱が出た日に5を足した日まで)は仮に熱が下がったとしても家にとどまっていることです。保育園・幼稚園の登園は熱がない日を3日間、小学生以上の登校は熱がない日が2日間ないとできません。この期間は必ず守ってください。
浅いシミ、深いシミの治療アプローチ
シミには皮膚の浅いところにあるシミと深いところにあるシミとに分けられ治療方法が異なります。
治療方法を間違えるとかえって色素が濃くなりますので、注意深い診断と適切な治療が必要です。
浅いところの代表的シミには老人性色素斑、脂漏性角化症など、深いところのシミには肝斑などがあります。
シミの深さによって様々な治療法があり、かかる費用も様々です。大切なことは個々の治療方法について専門医と十分に相談したうえで、治療を受けていただくことです。
また、その補助的な方法として、ビタミン、アミノ酸、ミネラルをバランスよく摂っていただき、肌の栄養環境を整えることがキーポイントです。
例えば、栄養環境の悪い砂漠で、植物に光りを照射しても変化がないように、環境をオアシス化してから照射すれば、芽も葉も生えて来ます。
肌のためにはバランスのとれた食事と規則正しい生活が必要であることは言うまでもありませんが、サプリメントの摂取など、皮膚の栄養環境を整えるためビタミン、アミノ酸、ミネラルをより積極的に摂っていただくための方法もアドバイスできますので、医師にご相談ください。
おしっこのトラブルは、気軽に泌尿器科へ
・おしっこをしても、またすぐトイレに行きたくなる。
・急に尿意をもよおして我慢ができない。
・夜中たびたびトイレに起きる。でも恥ずかしくて泌尿器科には行けない。
このようにおしっこのことで困っているけど、泌尿器科ではどんな検査が行われるのか不安でなかなか受診ができない方も多いと思います。
でも心配いりません。
問診と腹部超音波など苦痛の少ない検査で簡単に診断することができます。
そして原因を正しく調べることで症状を改善させることができます。
病院での検査に加えて、ご自宅で排尿日記をつけてもらい頻尿の種類を分類することで、それぞれの場合にあった治療方法が選択できるような工夫もあります。
治療を受けた方の約95%で排尿回数が減少、約90%で治療結果に満足との回答も得られています(※)。
・おしっこのことが気になって乗り物に乗れない。
・買い物の途中でしたくなったらどうしよう。
・夜中何度もトイレに起きるので昼間眠くてたまらない。
頻尿は日常生活に大きな支障を来します。
そして夜間の頻尿は体の健康状態にも悪影響を与えることが知られています。
現在は原因や症状に合わせたさまざまな薬が治療に使えるようになりました。
また薬以外にも普段の排尿習慣を少し変えてみたり、むくみを抑える靴下を使うことで症状を和らげることもできます。
年齢や性別を問わず、おしっこのトラブルでお困りの方は、気軽にいつでも泌尿器科へご相談ください。
(※)西日本泌尿器科学会発表による
男性の性(19)
「日本人は元々、草食系男子が多かったのでは?」ということは、以前(2006年)このコラムで、W杯サッカー日本チームが予選リーグでオーストラリアに負けた試合を観て『精子時代まで遡っても勝てないのではないか?』などという珍説を披露しましたが(この説は今年のW杯日本チームの活躍で一部覆されました)、原始時代から食生活が穀物中心で他人との争いごとや収奪を嫌う草食系が日本人には多いということならば、仕方ないかな、と思います。 ところで、草食系にも良いこともあって、例えば前立腺癌は欧米人に多くアジア系では少なく、10万人あたりの前立腺癌の患者数は日本、中国(北京、香港)、台湾と欧米を比べると5〜20倍欧米で多く、人種的には同じ日本人のハワイ在住日系人でも日本人とハワイ在住白人の中間の患者数で約5倍でした。(Cancer Incidence in Five Continents Vol.IIIより) 米国では男性癌患者数の1位、死亡者数は肺癌に次いで2位が前立腺癌ですが、日本では近年患者数が増加しているものの、それでも米国のほぼ10分の1です。
また、世界癌研究機関・米国癌研究協会より発表された栄養と癌に関するレビューによると、前立腺癌の危険因子として可能性のあるものとして、総脂肪・動物性脂肪・肉類・牛乳・乳製品が挙げられています。
生活習慣(特に食生活、性生活)や人種、近親者に前立腺癌に罹った人がいるかどうかは前立腺癌の発生率と関連が深いといわれていますが、草食系男子はこの点で有利といえます。 ただ高度成長期〜バブル期を経てこれから高齢者になろうとしている年齢層の、日本人には稀有な肉食系男子(筆者の年代がそれに当たります)が今後どうなるか、自分自身も含め注意深く見て行きたいと思っています。(続く)
歯周病について
歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯にとって大切な土台となる歯茎や、顎の骨の周りの組織を破壊する病気のことをいいます。
歯と歯の間の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し、歯肉の周りが炎症を帯びて赤くなったり、腫れたりします。
進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり歯を支える土台が溶けて動くようになります。
歯周病は食習慣、歯磨き習慣、喫煙なども関連があるので、歯科医院の治療のみではなく、個人の生活習慣の改善も大きく関与します。
歯や口は消化器官の一部の役割と同時に体全体ともつながっているため、慢性化することによって細菌が血液中に入ったり、心臓や肺などの病気を起こす可能性もあります。
歯周病を予防することは、歯や口の健康のみならず全身の健康にもつながります。
高齢者って、何歳?
世界保健機構WHOの定義では、65歳以上を高齢者と呼びます。近年、日本の高齢における心身の健康調査からは、20年前と比較して、加齢による衰えが、5~10年遅くなった「若返り」現象がみられました。世論調査でも、70歳以上を高齢者と考えると言う意見が多かったそうです。
そうは言っても、寄る年波には勝てませんから、身体が次第に弱っていくのは避けようがありません。「要介護」状態に陥る原因としては、第一位が「認知症」、「脳卒中」、「高齢による衰弱」、「転倒・骨折」、「関節疾患」と続きます。脳卒中のように、突然、健康寿命が終わってしまう場合もありますが、「いくつかの病気が重なって、次第に不調がつのり、だんだん要介護になっていく」という場合が多いと思います。
「要介護」の前段階と言える心身の弱った状態をフレイル(脆弱・もろい)と言います。フレイルには、三つのタイプがあります。①加齢と運動不足で、筋力が衰えて転倒しやすくなる「身体的フレイル」。②うつ病や認知症による「精神・心理的フレイル」。そして、③社会的問題等で、引きこもり、ストレスに弱くなった「社会的フレイル」です。
身体的フレイルのチェックは、体力テストです。世界17ヶ国15万人を4年間追跡調査した結果では、握力の弱い人で死亡リスクが大きくなるそうです。握力が5㎏低下する毎に死亡リスクが16%上昇すると言うことです。握力計がなければ、簡単にできるのは、開眼片足立ち検査でしょう。目を開けて、片方の足で立ちます。挙げた足を着いたり、ケンケンしたりすると終了です。2回やって、良い方が自分の記録です。65歳の平均は、50秒です。足の筋力とバランスを同時にテストできます。握力も片足立ちの時間も、トレーニングで変えられます。自分の未来や寿命を変えられるのかもしれないのです。まずは、けがをしないように、周りを片付けて、片足立ちしてみてください。









