妊娠期の口腔ケア
妊娠すると体の変化が起こりますが、そのうちの1つに酸っぱいものが欲しくなるなど、嗜好に偏りが生じることがあります。
これはホルモンバランスや唾液の量の変化が影響を及ぼしているといわれています。
また、つわりはほとんど症状の無い方から、吐くことが多くて脱水症状になり、点滴を受ける方まで個人差があるようです。
つわりがひどければ、歯ブラシを口の中に入れるのが大変困難になります。
妊婦さんの歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)からは、増加するエストロゲン(卵胞ホルモン)を好む歯周病原細菌が多く検出されます。
また、プロゲステロン(黄体ホルモン)も増加することで炎症が起こりやすくなります。
これらは歯肉炎を起こし、妊娠性歯肉炎といわれています。
このような歯肉炎を防ぐために、歯科医院でのメンテナンスを行っていきたいところですが、つわりがひどい場合はなかなか歯科医院まで来院されるのが困難です。
その場合はご自身でのセルフケアが必要になりますが、まずは安静にして体調が良い時間帯に歯磨きをするのがいいでしょう。
歯ブラシは小さめの物を選んで小さく動かし、歯ブラシが舌に当たるのを避け、嘔吐感を少なくします。
歯磨き粉は臭いと味の刺激の少ないものを使い、顔を下に向けて歯磨きし、歯磨きの後はぶくぶくうがいをします。
メンテナンスが十分でなければ、歯肉炎だけでなく虫歯も悪化しがちです。
妊娠していない方に通常処方される痛み止めのお薬は、妊娠中の服用は避ける必要がある場合があります。
痛みが生じて痛み止めのお薬が必要な場合は、歯科医院でご相談の上、処方していただいた方がいいでしょう。
大腸カプセル内視鏡
年輩の方なら1966年公開のSF映画「ミクロの決死圏」をご存知の方も多いと思います。
医療チームを乗せた潜航艇を縮小して体内に注入し、脳の内部から治療を行うという当時大変話題となった米国の傑作映画です。
しかし今、実際に人間は乗っていないなどの大きな違いこそあるものの、当時は夢物語であった技術が現実のものとなりつつあります。
カプセル内視鏡といって、薬のような形をした小型のカプセルを飲み、便と共に排泄されるまでの間に胃腸の中をくまなく撮影し、体表に装着した装置に送信するものです。
送信された画像をモニターで確認して診断します。
小腸用には2007年に実用化され保険認可もされていましたが、今年1月に大腸でも保険適用となりました。
適用症例に条件がついているためすべての方に使えるわけではありませんが、小腸と比べると大腸は疾患人口が大変多いため、日常の大腸診療は大きく変貌すると思われます。
これまでの肛門からの大腸内視鏡検査は痛みを伴うこともあり、また恥ずかしいなどの理由で進んで受けたいと思う方 が少ないのが現状でしたが、カプセル内視鏡の場合はそのような問題を克服できることになり、大腸がん死亡率の低下を目指して検診への応用なども期待されています。
もちろんまだ開発されて日の浅い検査法なので、洗浄機能がないので下剤の量が多く必要となる、国内の治験では6%ほどの見落としがある、カプセルは使い捨てなので検査費用が高くなる、などの問題点もあります。
また何か病変が発見された場合はまだ映画のように治療はできませんので、ポリープの切除などは、これまで通り肛門から内視鏡を挿入して治療する必要があります。
SF映画もいつの日かは現実のものとなるという見本のような技術といえますが、今後はさらに診断も治療も可能な超小型医療ロボットへ進化していくことでしょう。
医療は日進月歩で患者さんの体の負担の少ない方向へと進んでいるのです。
眼精疲労(疲れ目について)
眼精疲労を訴えて眼科を受診する方がたくさんいます。
症状を詳しく聞くと、かすみ、眼の奥や周囲の痛み、ピントが合わない、異物感、まぶしい、首や肩の凝り等さまざまです。
その原因は視力の低下、眼鏡やコンタクトレンズが合わない、老視、不同視、斜視(斜位)、ドライアイなどです。
特に多いのは遠視や乱視があるのに、生活に困らないため眼鏡を掛けず無意識に調節をしている、老眼鏡を掛けずに近くを見続けているケースです。また眼鏡を掛けてはいるもののフィッティングの悪さが原因で眼精疲労が生じるケースもあります。
つまり眼精疲労は“歳のせい”ばかりが原因ではないのです。眼精疲労を主訴に受診され緑内障や網膜疾患等が見つかることもあり、思わぬ原因が潜んでいるかもしれません。
症状のある方は眼科で検査を受けてみてはいかがでしょうか?
寒くなるとトイレが近くなる原因とその対策
体が寒さを感じると体内では、寒さに対応するために様々な反応が起こります。
尿量増加
寒さにより交感神経が刺激されると末梢の血管は収縮します。体温が奪われるのを防ぐ反応です。しかしその結果、体の中心では血液量が増えて腎臓でつくられる尿量が増えます。末消血管が収縮すると汗や水蒸気となって出て行く水分も減るため、さらに尿量が増えます。夏と比べると1日数百ミリリットル以上増えることもあります。
尿意増大
膀胱には尿がたまった時に尿意を感じる神経があります。また、それとは別に膀胱や前立腺が病気の時に異常を感じる神経があります。寒さは後者の神経を刺激することで尿意を引き起こすことが知られており、膀胱の中にあまり尿がたまっていなくても寒いと尿意を頻繁に感じるようになります。
ではどのような対策をとったらよいのでしょう。まず尿量を減らすために末梢血管を拡張させるような運動をしてみましょう。毎日つま先立ちをくり返すことでも末梢血流の改善が期待されます。利尿作用のあるカフェインの入った飲み物を控えるのも効果的です。
尿意を抑えるには、やはり寒さそのものへの対策も必要でしょう。食事はなるべく温かいものをとる。温かいお風呂につかる。暖かい服装を選ぶ。
時には本当の病気により頻尿が引き起こされることもあるので、対策をしても改善しない場合や寒さに関係なく頻尿が続く時には、医療機関への相談がすすめられます。
耳鳴り~仲良く付き合いましょう
2001年に行った厚生労働省による国民生活基礎調査では、慢性的に耳鳴りを感じている人は全体の26.8%で、4人に1人は耳鳴りに悩まされていることになります。
一般的に耳鳴りは難聴を伴っていることが多いので、聴力検査は必ず行う必要があります。
薬物療法ではビタミンB12製剤、代謝賦活剤、微小循環改善剤や漢方薬を処方します。
新しい治療法としてTRT(耳鳴再訓練療法)がありますが、音響療法とカウンセリングからなる治療法です。
耳鳴りを消失させるのが目的ではなく、耳鳴りに慣れてもらうことで耳鳴りに対する苦痛を軽減させる治療法です。
しかし、治療器具を実費負担(4万円前後)していただく必要があるため、普及していないのが現状です。
①致死的な症状ではないこと、
②感じる音の大きさ・高さが変化することは体調の変化によってよく起こることで心配はないこと、
③他の病気の前兆であることは多くはないということなどを理解していただくことも重要です。
認知症の方との付き合い方
認知症の家族への接し方をよく聞かれます。
明快なお答えが出来ませんが、認知症の人が特別なのではないと考えるよう勧めています。
たとえば、徘徊と聞くと、やみくもに歩き回る姿を思い浮かべがちです。
ご本人が言葉で説明できないことも多いのですが、出かけた後をつけて行くと、その目的が分かることがあります。
また、「徘徊」しているところを警察に保護された時、その発見場所にヒントがあることもあります。
かつての職場を目指していたり、子供時代を過ごした、今はない実家を探していることがあります。
認知症では、過去から切り離され、未来への見通しもつかない全くの暗闇の中、足元を照らす光だけが残っている状態です。
「今」がとても不安なために、安心できた過去に戻ろうとして家を飛び出すことも多いといわれます。
ただ、途中で道が分からなくなり、「徘徊」という姿になってしまいます。
排泄に失敗したとき、「私はやっていない」と言い張り、汚れた下着を箪笥の奥に隠し、介護者を驚かせます。
これらは「身内に格好悪いところを見られたくない」という、誰にでもある当たり前の気持ちから出たと考えられます。
一見、理解しがたい行動も、よく観察すると理由があることが分かります。
また、患者さん自身が語った言葉に対して、「ゆっくり話してください」、「何を話したかより、どのように話したかということが大事です」というのがあります。
患者さんは、早口で幾つもの事柄を話されると付いていけません。
同じ言葉でも、喋り方、声の調子、顔の表情などで受ける印象が変わります。
この聞いた時の気持ちは記憶に残るようです。
したがって叱るような話し方ばかりしていると、患者さんとの関係が壊れ、後々のお世話が困難になるという悪循環に陥ります。
どんな時でも人と話す時には、相手を傷つけない話し方、態度というものがあると思います。
認知症だからと「構える」のではなく、自分と同じ一人の人間として、ちょっと相手のことを大切に思って接することをお勧めしています。
手湿疹(てしっしん)
手をよく使う職業の人や主婦に生じる、治り難い皮膚疾患の一つで、手水虫、汗疱(かんぽう)に似ていることもあります。
皮膚が乾燥して皮膚のバリア機能が低下すると、洗剤、石鹸、シャンプー、化学物質、楽器、コンピュータなどによる刺激皮膚炎や、ニッケル、クロム、染毛剤、植物、果物、外用剤、ゴム手袋などによるアレルギー性皮膚炎が起きやすく、赤み、水ぶくれ、皮剥け、亀裂などが出現してきます。
乾燥を防ぐため、保湿剤は頻繁に外用し、原因となり得るものに触れる時にはプラスチック手袋かゴム手袋(中に綿手袋をはめて)を使用して下さい。痒(かゆ)みには抗アレルギー剤内服、炎症症状にはステロイド外用を行います。カットバン(救急ばんそうこう)は皮膚がふやけてバリア機能を低下させるので止めて下さい。病院では傷専用のテープを使用しています。
多汗症・ワキガ症の治療方法
います。一般にデオドラント効果のあるスプレーで解消することが可能ですが、臭いが強かったり、汗の量が多いと日常生活でストレスを感じてしまう事があります。
また、本人が多汗症とワキガ症を混同している事が多いため、診断内容の説明を充分に受けてから治療を受ける事が大切です。
現在、形成外科・美容外科で行われている多汗症とワキガ症の治療方法には(1)絶緑針を使用した電気凝固法(自費適用)、(2)ボツリヌスA毒素による治療方法(自費適用)、(3)剪刀法(保険適用)、(4)クアドラカッターによる吸引法(自費適用)があります。 多汗症・軽度なワキガ症の治療方法で最近よく用いられている方法は、日常生活にまったく支障がきたさず、翌日から入浴ができて、誰にも治療した事が分からない、短時間(10〜30分)で治療可能な方法として、(1)電気凝固法と(2)ボツリヌスA毒素による治療方法です。よく言われているプチ手術的方法なので、改善度や効果期間が限定されます。 重度の手術的多汗症・ワキガ症の治療法の(3)剪刀法、(4)クアドラカッターによる吸引法は手術後の創固定期間がありますが、長期間治療効果が安定している事がメリットです。
(3)の剪刀法は以前より行われている方法でわきに3〜4cmの切開を1〜2ヶ所に入れ、徒手で皮膚の裏側にある汗腺を切除する治療方法です。創の固定期間は10〜14日必要です。 (4)のクアドラカッターによる吸引法はわきに7mm程度の非常に短い切開を入れ、汗腺を切除吸引する方法です。
創の固定期間は7日以上必要ですが、手術跡が小さく、目立たない事が大きなメリットです。 多汗症・ワキガ症の治療方法はいろいろな方法があり、診断を受けた上、日常生活に支障のない方法を選択するか、手術的方法を選択するか、充分な説明と医師とご相談して治療方法を決めましょう。
胃潰瘍にはヘリコバクターピロリ菌を!
今回は4月に厚生労働省の研究班によって作成された胃潰瘍診療のガイドラインについてお話しします。
このガイドラインは多数の論文を検討して得られた結果をもとに、胃潰瘍に対する最 も理にかなった治療の手順を示したものです。このガイドラインの大きな特徴はヘリ コバクターピロリ(以下HP)の除菌療法(抗生物質を2種類とプロトンポンプ阻害剤 という胃酸の分泌を抑える薬の計3種類を1週間内服する)を治療の柱として位置づ けていることです。HPは胃の中に住むことのできる唯一の細菌で、胃潰瘍の重要な原 因のひとつとされ、これまでは、特に潰瘍の再発の予防という観点から、通常の治療 に加えて行われ、その効果が評価されてきました。
しかしこのガイドラインではHP陽性の胃潰瘍患者に対してはHPの除菌療法が第一選択 となっており、除菌療法のみで治癒が可能としています。ということは例えば「胃の あたりががまんできないほど痛くて、検査したら大きな胃潰瘍があった、HPを調べた ら陽性だった、除菌療法をした、その後症状は改善しそれ以後も潰瘍は再発しなかっ た」というような経過が標準的ということになります。使った薬は除菌療法の1週間 分だけなので、非常に効率の良い治療経過です。
HP陰性の場合については次の機会にお話しするとして、HP除菌が今のご時世の「医療 費抑制」に十分貢献できるであろうことは容易に想像できますが、これにはやや不安 を感じる専門医も多いと思われます。除菌療法自体にも下痢その他の副作用があり、 潰瘍の急性期で痛みの強い時期にも除菌療法のみというのは問題があるように思われ るのです。あくまでも除菌療法を主体とする事に異論はありませんが、症状や全身状 態をみながら柔軟に対処したいものです。
最後に、この除菌療法に際し不可欠なことは、まず内視鏡検査(胃バリウムでもよ い)によって胃潰瘍を確実に診断し、あわせてHPをチェックすることです。当院では 鎮静剤を用いて苦痛のないように内視鏡検査を行い、胃潰瘍が認められた場合には、 尿素呼吸法という最も確実なHPチェック法を行い、陽性の場合はほぼ全例に除菌療法 を行っています。
美容外科の肌の若返り治療の変遷
肌のハリを取り戻す若返り治療はシワ取りの手術(フェイスリフト)、コラーゲンやヒアルロン酸の注射、ボトックス注射、IPL(光治療)RF(高周波)のフォトフェイシャルなど治療方法は年々変化しています。
施術後の経過で化粧が出来て日常生活に支障がない方法が主流になってきましたが、持続期間が約6ヶ月であったり、たびたび治療を受ける必要があるため、効果が確かでかつ、効果持続期間が長いシワ取り(フェイスリフト)の手術は今でも行われています。 最近では自分の血液の白血球と血小板を利用した最新皮膚再生治療(セルリバイブ・ジータ)が注目されています。
血液中の各種の細胞成長因子を含んでいる血小板を濃縮して気になる部位に注入する方法で、今までにない自然なふくやかさを再現でき、顔の若返りには最適です。効果持続期間も2~3年と長いことが大きな特徴です。 まず、ご本人の血液を特殊な採血管(米国FDAの承認済み)に採取して遠心分離することで、白血球を含んだ濃縮した血小板を採取することが出来ます。
従来の皮膚再生治療(PRP)に使用された血小板の濃度よりも3~5倍濃度が高く、白血球を混合することで細胞遊走性(細胞を集める性質)を高めるため、従来の皮膚再生治療(PRP)では効果の発現が遅く、成績がまちまちであった問題が改善され、効果出現が速く安定した成績が期待できます。
注入時の痛みはヒアルロン酸、コラーゲン注入より少なく注入は短時間で済みます。
採血から注入までの時間は40分程度です。
細胞成長因子を追加したセルリバイブジータでは洗顔、化粧はでき、軽度の赤味や腫れが7~10日認められますが、その後今までにない自然な外観が再現されます。 これからの肌の若返りの治療は効果持続期間が長く満足度の高い最新皮膚再生治療を行いつつ、日常生活に溶け込むような違和感のない、高出力医療機器でシミ・シワ・肌のきめなど多様な治療予防効果のあるIPL(光治療)RF(高周波)のフォトフェイシャルを選択することになります。
また、細かなニーズにあったマイルドな肌老化予防を気をつけた各種ビタミンの補給と従来から行われている注入方法を選択していく予防治療になって行きます。









