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コレステロールの薬、使うべきか?

脳神経外科2016/09/26

 最近、雑誌などで「飲んではいけない薬」とかいう記事が話題になっているようです。
患者さんたちは少なからず不安になっていると思います。
薬の有用性について、私自身も疑問を感じることはあります。
たとえば、コレステロールを下げる薬の効果は証明されています。
検査の数値として悪玉コレステロールだけでなく、中性脂肪や善玉コレステロールも明らかに改善されることが分かっています。
問題は、それで病気が減るのかということです。

 例えば、脳梗塞の正確な発症率は分かっていませんが、一般的に人口10万人あたり100~200人と言われます。
0.1%~0.2%になります。
ある薬が、この発症率を「50%低下させます」と謳っているとします。
発症率が0.1~0.2%が0.05~0.1%に減るということでしょうか。
一方、その薬に何か重大な副作用が0.1%の頻度で現れるかもしれない時、この薬は使うべきでしょうか?

 このことから思い出すのは、「南海トラフ地震の発生確率は今後30年以内に70%程度」に対して、熊本地震震源の布田川断層帯の地震発生確率は「ほぼ0~0.9%」と言われ、専門家は発生確率を「やや高い」と見ていたのに、熊本市のハザードマップでは「きわめて低い確率」と記載していたという話です。
薬の話とは違いますが、通じるものを感じます。
地震の場合、活断層型と海溝型という機序の違うものを比べることから間違いがあるのだそうです。
薬の話に戻りますが、脳梗塞や心筋梗塞といった病気の発症には、年齢や性別、喫煙や高血圧など他の病気の有無により、リスクが随分違うことも分かっています。
心筋梗塞などの冠動脈疾患では、高血圧、喫煙、性別、コレステロールの値で、10年間の死亡率の差は0.5%から、5%以上10%未満まで幅があります。
いろいろな記事で心配になった方は、人口何人あたりという一括(くく)りにした話ではなく、個人の話として、自分のリスクをかかりつけ医や健康診査などで評価してもらった上で、薬が必要かどうか相談した方がいいでしょう。


Text by 函館西部脳神経クリニック 小保内 主税( 2016年10月26日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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