男性の性(19)
「日本人は元々、草食系男子が多かったのでは?」ということは、以前(2006年)このコラムで、W杯サッカー日本チームが予選リーグでオーストラリアに負けた試合を観て『精子時代まで遡っても勝てないのではないか?』などという珍説を披露しましたが(この説は今年のW杯日本チームの活躍で一部覆されました)、原始時代から食生活が穀物中心で他人との争いごとや収奪を嫌う草食系が日本人には多いということならば、仕方ないかな、と思います。 ところで、草食系にも良いこともあって、例えば前立腺癌は欧米人に多くアジア系では少なく、10万人あたりの前立腺癌の患者数は日本、中国(北京、香港)、台湾と欧米を比べると5〜20倍欧米で多く、人種的には同じ日本人のハワイ在住日系人でも日本人とハワイ在住白人の中間の患者数で約5倍でした。(Cancer Incidence in Five Continents Vol.IIIより) 米国では男性癌患者数の1位、死亡者数は肺癌に次いで2位が前立腺癌ですが、日本では近年患者数が増加しているものの、それでも米国のほぼ10分の1です。
また、世界癌研究機関・米国癌研究協会より発表された栄養と癌に関するレビューによると、前立腺癌の危険因子として可能性のあるものとして、総脂肪・動物性脂肪・肉類・牛乳・乳製品が挙げられています。
生活習慣(特に食生活、性生活)や人種、近親者に前立腺癌に罹った人がいるかどうかは前立腺癌の発生率と関連が深いといわれていますが、草食系男子はこの点で有利といえます。 ただ高度成長期〜バブル期を経てこれから高齢者になろうとしている年齢層の、日本人には稀有な肉食系男子(筆者の年代がそれに当たります)が今後どうなるか、自分自身も含め注意深く見て行きたいと思っています。(続く)
これからは、細いだけじゃない、よく見える内視鏡
ここ数年、特殊光観察による強調画像を用いた胃・大腸カメラが普及してきました。
血液中のヘモグロビンに吸収される波長の光を照射することにより、食道・胃・大腸の粘膜表面の細かい血管構造を描き出し、正常粘膜とがんとをカメラで区別することができるようになりました。 すなわち、いままでの胃カメラや大腸カメラでは、見逃されることが多かった小さな病変が、この新しいカメラを使用することによって見つけやすくなったばかりでなく、がんを含めた腫瘍の大きさの範囲、深さ(進行度)が、詳細にわかるようになってきました。
胃カメラが、直径5~6mm程度の細さになっただけではなく、胃カメラ・大腸カメラの性能もこのように日々進歩しています。 一般のクリニックでもここまで精密な検査ができるようになったことに驚き、感謝しながら診療を続けている毎日です。
ノドの違和感~逆流性食道炎
ノドの違和感はアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、咽頭喉頭炎、感冒などの鼻、ノドの炎症性疾患、咽頭がん、喉頭がんなどの腫瘍性疾患、バセドー病や橋本病などの甲状腺疾患など様々な疾患で起こりますが、具体的な疾患が見当たらず症状のみがある患者さんもいらっしゃって耳鼻咽喉科医泣かせの症状でもあります。
そんな中、最近注目されているのが逆流性食道炎です。
胸焼けや食道病変を伴うのが普通ですがそれらの症状、病変を伴わない例もあります。
咽頭、喉頭などの粘膜は酸に弱く炎症を起こしやすいと言われておりノドの違和感を訴える患者さんに逆流性食道炎が認められ、咽頭や喉頭粘膜に炎症性変化が確認されたことで注目されるようになりました。
鼻やノドに疾患が見当たらずノドの違和感がある場合は逆流性食道炎を疑ってみることも必要と思います。
歯並びを悪くする癖
赤ちゃんがおっぱいを吸う姿は、かわいいものです。赤ちゃんには歯が無いことも関係しておりますが、舌を丸めながら、突き出し、乳首を包むように飲んでいます。
しかし、大人の場合、水を飲むときには、一度口の中にためて、唇を閉じ、歯を噛み締めて舌と上あごの間を絞り込むように、のどまで運びます。
赤ちゃんの飲みかたは、弱い力でも可能ですが、大人のように飲むには、口からのどにかけてのある程度の筋力と調和した動きを習得しなければできません。それだけ高度な機能ともいえます。
しかし、大人でも幼児のような、舌の使い方をする方も、なかにはいます。
つばを飲み込むときに、上と下の前歯の間に舌を挟んだり、タ行の音を出すときに英語で言うTHの発音になってしまう方や、舌足らずといわれるようなしゃべり方をされる方などのような癖を持つ方の場合には、奥歯を噛んでも前歯が開いてしまう、開咬と呼ばれる不正咬合が起きてしまう可能性があります。一部の矯正歯科を診療科目に持つ医療機関HPでも書かれていますが、舌のトレーニングにより改善されることも少なくありません。
つらいですね!ドライアイ!
ドライアイとは、涙の量が減り、涙の質が変化して、目が乾いた結果、さまざまな症状が起きる病気のことです。
日本のビジネスマンやOLの4分の3が潜在的ドライアイ患者で1600万人以上と考えられています。
特に最近は、スマートフォンのゲームの流行により、子供から老人まで、眼精疲労と共に目の渇きを訴える方が増えています。
①本当のドライアイとは
「目の乾き」を俗にドライアイと言いますが、診断名としての「ドライアイ」は、医師がいろいろな検査をしてから診断するものです。
逆に実際ドライアイの人でも「目の乾き」の自覚症状が全くない人もいるのです。
②ドライアイ簡単チェック
10秒間まばたきをせずに目を開けていられますか?
開けていられなくて、「目の乾き」「目の疲れ」「かすみ」の症状があれば、ドライアイを疑います。
③眼精疲労と共通の症状
「かすみ」「まぶしさ」「充血」など眼精疲労と症状がたいへん似ています。
④ドライアイ特有の症状
「ゴロゴロする」「目の乾き」は眼精疲労にはなく、ドライアイの症状です。
⑤ドライアイの原因
いろいろありますが・・・バッチリのアイラインが涙の成分の油の分泌腺をふさいでしまい、蒸発しやすい涙になってしまうことも大きな原因と言われています。
またソフトコンタクトレンズは、自分の涙を吸ってしまうので、「シリコンハイドロゲル」や「ハイパージェル」素材のレンズがおすすめです。
その他、まばたきに影響する眼瞼痙攣(がんけんけいれん)や結膜弛緩症・加齢・ストレス・内服薬の副作用も原因になることがあります。
⑥こんなあなたも要注意
コンピューター作業が多い人(4時間以上)、車の運転が長い人、ゲームや携帯を長くする人、冷暖房のきき過ぎた部屋にいる人などもドライアイになりやすいのです。
⑦まとめ
ドライアイは、その人の状態に合った点眼を使わないと症状が悪化する場合がありますので、必ず眼科医の処方した点眼薬で治療しましょう。
『不安、抑うつ』について
不安、抑うつは本来生体にそなわっていて、危険を察知してそれにそなえるための信号としての役割や、もっと悪い事態にならないように防ぐ安全弁(あんぜんべん)の様な役割を果たしているものです。ですから、不安や抑うつを感じるということは、もともとある意味では必要なことなのです。
しかし、その信号がやたらに発信されたり、強すぎたり、持続したり、あるいは安全弁が閉じなくなったりすると事情は変わってきます。そういう時に不安、抑うつが「症状」と呼ばれることになります。
このように不安、抑うつは最も一般的な症状の一つであり、広く見られる症状です。しかし、もともとの病気やその人それぞれの生活環境、ストレス状況、行動パターン、性格など、様々なものの影響を受けるので、その現れ方や性質は多様であると言えます。治療としてはもともとの病気に対する(うつ病など)、あるいは対症的な薬物療法と心理療法があります。
また、症状としての不安、抑うつの性質の一つとして次のようなこともあります。不安、抑うつが一つの体験として記憶され、あとからその記憶が「ひとりでに思い出される」ということが起こりえます。さらには、気が付かないうちに自分で不安、抑うつを「思い出しやすくしている」ということもありえるのです(これは「気のせい」とか、「気にしすぎる」ということとは違います)。このことが治りにくさの原因の一つとなることがあります(「慢性化」と呼ばれたりします)。そのような事情から、治療に際して、自分である程度のコントロールをこころみるということが必要とされる場合があります。ある程度自己コントロールができるようにお手伝いするということが治療の目標の一つになっているのです。
不安、抑うつがあまりにも強かったり、長く続くというような場合は、一度受診されることをお勧めします。
健康保険が適用される皮膚レーザー治療
レーザー治療は特定の単一波長のパルス光線を設定した非常に短い照射時間(1/100万〜数億秒程度)で皮膚に当てる治療法です。
医療用のQスイッチレーザーは非常に正確緻密強靭な機器で、1秒間に数百万から数億回繰り返し照射する治療機器ですので、一般に言われている光治療とは規格が異なります。
レーザー治療は自費の治療が多いのですが、皮膚疾患で単純性血管腫、苺(いちご)状血管腫、毛細血管拡張症では『色素レーザー治療』、また、太田母斑、外傷性色素沈着症などは『Qスイッチアレキサンドライトレーザー、Qスイッチルピーレーザー、Qスイッチヤグレーザー』、扁平母斑の治療では『Qスイッチルピーレーザー』が保険治療の対象になっています。
これらの治療方法は1回の治療では改善せず、改善に要する治療期間が数年かかることもあります。まず、形成外科、皮膚科を受診して相談して下さい。
刺青
刺青とは入れ墨のことです。
欧米では刺青はかなり一般的で、俳優、歌手、スポーツ選手などにも多く見かけます。
また、日本でも多く見かけるようになりました。
昔のような暗いイメージではなくなってきているようです。しかし、日本ではまだ欧米ほど社会的に認知されてはいないようで、銭湯、温泉、プールなどで、入場を制限されることもあるようです。
入れ墨を消したい方も形成外科の外来に来られます。刺青を取るのは、入れる時ほど簡単ではありません。
刺青はレーザーで簡単に取れると思われがちですが、レーザーが効くのは黒い色だけです。
しかも、1回で取れるものは、自分で入れたような本当に浅いものだけです。
1回レーザーを当てると一度やけどのような状態になるので、次にまたレーザーで治療できるのは2〜3ヶ月先になります。
ですから1年に数回しかできません。
機械で入れたり、彫り師が手彫りで入れたようなものは深いので、何年もかかることがあります。
しかも、黒い色が取れたとしてもまったく普通の皮膚になるわけではなく、白く抜けたりして刺青の形が残ってしまうこともあります。
レーザーで、色だけを消して、きれいな皮膚にするのは難しいのです。レーザーで取れないもの、早く取りたい場合には外科的な方法もあります。
小さいもの、細長いものは切除して、縫い合わせる方法が簡単です。
大きなものは植皮といって皮膚を植える方法もあります。
外科的な方法では必ず傷跡が残りますし、ある程度の時間もかかります。
また、刺青の除去は、基本的に保険の対象外で、治療費は自己負担となります。
夜も高血圧ですか?
血圧には日内変動(にちないへんどう)と言うのがあります。
多くの人では、朝、目が覚める直前から血圧が上昇してきて、昼寝をしたくなるような午後2時から4時ころに少し下がります。
夕食のころに少し上昇して、眠くなったころからまた血圧は低くなります。
ところが、高齢者に多いのですが、夜中寝ている間ずっと血圧が高くて、日中の血圧が低い場合があります。
また、明け方、目が覚めるちょっと前から急激に血圧が上昇する場合(モーニングサージ型)もあります。
いずれも、早朝高血圧と呼ばれています。
脳梗塞や心筋梗塞の原因となりやすい状態です。
心臓突然死の発生時間帯を調べた研究では、午前の時間帯(9時から11時)に突然死のピークがあり、死者の少ない夜間に比べて2倍の人が午前中に突然死していました。
また、サージ型ではない高血圧患者と、サージ型の高血圧患者では、サージ型で脳卒中の発生率が3倍高かったとわかりました。
就寝中の高血圧や早朝の血圧上昇は、心臓病や脳卒中の危険性を高くするのです。
早朝高血圧に気づくきっかけには、朝起きて1時間以内に、排尿して少し安静を取ってから血圧測定をすることです。
家庭血圧では、135/85を超えていると高血圧ですが、これより大幅に高ければ、夜間の血圧上昇が疑われます。
そんなときには、24時間血圧計で就寝中の血圧測定をします。
寝ているときには120/−程度が望ましいのですが、寝ている間中、あるいは、早朝に急に血圧が上がっていることがあります。
変動のパターンによっては、朝1回飲む長時間作用型の降圧薬だけでは完璧な血圧コントロールは難しいので、寝る前に朝とは違うタイプの薬を加えて、朝の高血圧を下げるように試みます。
ときには、異常が見つけにくいところにあることもあります。
また、治療が容易ではない場合もあります。
根気よく付き合ってもらえると助かります。
血圧が高い方は治療が必要です
血圧が高いといわれたけど、今は困っていないからと放置していませんか?
高血圧は自覚症状がない場合も多いですが、放っておくと将来いろいろな病気の原因になります。
もともと血管には弾力があるのですが、高血圧の状態が長く続くと、血管の壁は次第に厚くなり、硬くなります。これが動脈硬化で、脳出血、脳梗塞、大動脈瘤、腎不全、心筋梗塞などの原因になります。
また、心臓は高い血圧に対応して無理をすることになり、心臓の筋肉が肥大し、心不全になります。ある日突然呼吸困難になったり入院が必要になったり、救急車を呼ぶことになったり、最悪の場合は命に関わります。 こうした合併症を予防するには、血圧を正常化することが必要です。
高血圧の治療は、原因に対する治療、生活習慣の是正、薬物療法が中心となります。
高血圧症の約90%は原因の分からないもので、本態性高血圧症と呼ばれています。
遺伝的な因子や、生活習慣などの環境因子が関与しており、生活習慣病といわれています。
過剰な塩分摂取、肥満、過剰飲酒、精神的ストレス、自律神経の調節異常、運動不足、野菜や果物(カリウムなどのミネラル)不足、喫煙などが関わっています。 塩分をどの程度取っているのかは、自分自身では分かりにくいものです。
「薄味にしている」、「減塩調味料を使っている」という方でも、塩分摂取量が思いのほか多いこともあります。塩分摂取量を算出することで現状を把握することができます。
血圧を上昇させる明らかな病気があるときは、二次性高血圧症と呼ばれています。腎動脈狭窄、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など、手術を行うことで高血圧の治療が期待できるものが含まれます。これらの病気が疑われる場合には、血液検査・超音波検査・CT検査などを行う場合もあります。
薬によって血圧が上昇することもあります。代表的なものとしては、鎮痛薬、甘草という成分を含む漢方薬、ステロイド、抗がん剤などが挙げられます。 なかなか禁煙ができない方には禁煙治療を行う場合もあります。
血圧の異常がある方は自己判断で放置せず、内科で相談するようにしましょう。









