皮膚の悪性腫瘍
皮膚の悪性腫瘍(皮膚のガンです)として代表的なものには次の3つがあります。
基底細胞癌(きていさいぼうがん):多くは光沢のある青黒い腫瘍です。
潰瘍状にジクジクすることもあります。顔に多く特に目や鼻の周囲に多く見られます。
皮膚癌の中で最も多く見られますが、悪性度は低く、転移はほとんど見られません。
有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん):比較的多く見られます。
紫外線、慢性の刺激や炎症、放射線などが原因となったり、ヤケドの跡や傷跡から発生してくることもあります。
潰瘍を作ってジクジクしたりします。悪性度は中等度で、転移することもあります。
悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ):黒い色をしている皮膚の癌で、ホクロとの区別が難しい事もあります。
頻度としては少ないのですが、悪性度は高く、進行が早くて転移することも多く致命的になることも多い癌です。
ホクロなどが悪性化してくるとき、その変化の指標となるのは、
①形がイビツで左右対称でないこと。
②境界が不規則であること。
③色が均一でないこと。(濃い部分や薄い部分がある)
④短期間のうちに大きくなってくること。
などです。
その他に多いものとして日光角化症があります。
これは正確には悪性腫瘍ではありませんが、有棘細胞癌の前駆症状(そのままにするとガンになる可能性のあるもの)です。
日光によってできるため、顔、耳、手、腕によく見られます。
ほとんどが中高年の方で、日焼けをすると赤くなる人に多いといわれます。
赤や褐色の斑で表面がざらざらして少し硬くなっています。
角のように伸びてくることもあります。
これは焼いて取ったり、軟膏で治療したりできます。
みずむしのお話
暖かい季節になると足の裏や指の間がムズムズとかゆくなってきたり、皮がむけてきたりすることはありませんか?
今回はみずむしのお話です。
みずむしは白癬菌というカビが皮膚に寄生することによりおこる感染症です。
この菌は高温多湿の環境で活発になるため今の時期に目立ってくるのです。
『足の裏や指の間の皮がジクジクしてめくれてくる』、『カサカサして皮が厚くなる』、『爪が変色してくる』などが代表的な症状です。
かゆみは無いこともあり、また上記の症状があってもみずむし以外の皮膚病であることもあり、診断は顕微鏡検査で行います。
治療はタイプよって異なり、外用剤だけの場合、飲み薬を併用する方法、専用の機器で爪を削るなどさまざまです。
治りにくいと言われていた爪みずむしに効果のある治療法も出て来ました。
白癬菌自体の感染力は強くはありませんが、みずむしの人が素足で使用したスリッパや浴室の足ふきマット、カーペットなどは感染源となります。
スリッパは共用しない、マットやカーペットはこまめに取り替えたり掃除機をかけるなど、感染を広げない注意が必要です。
足以外にも手や股、体や頭にみずむしが出ることもあります。
自分の足からだけではなく、飼っている動物や、最近では格闘技などのスポーツ中に試合相手から感染する外国からきた白癬菌もあります。
近年では女性のみずむしも増加しています。
温泉やスポーツクラブに行ったり、ブーツを履いたりなど、ライフスタイルを反映してのことと推察します。
みずむしは放置すると傷口から雑菌が入り足が腫れてしまったり、爪みずむしの場合では歩きにくくなったりなど生活に支障がでることが少なくありません。
感染するかどうかは白癬菌に対する免疫力の違いによるもので、みずむしイコール不潔ということではありませんので恥ずかしがる必要はありません。
疑わしい症状のある方はお早めに検査、治療を受けられることをお勧めします。
脂肪種(しぼうしゅ)
「脂肪のかたまり」とよく言われますが、通常「脂肪のかたまり」というと粉瘤を指していることが多いようです。
脂肪腫は粉瘤よりは頻度は少ないのですが、比較的よく見られる良性皮膚腫瘍です。
脂肪腫は本当の脂肪組織が腫瘍として大きくなってくるものです。
脂肪腫は皮膚の下にやわらかい「かたまり」として触れますが、境目ははっきりしないことも多いようです。
顔だと額にできることもあります。
普通は痛みもなく、粉瘤とは違って化膿したりすることもありません。
何年もかかってゆっくりと大きくなってきますし、皮膚の色も普通ですので、触らないと気づきません。
特に背中は自分では見えないので気づきにくく、かなり大きくなってから気づく事が多いようです。
首や肩にできたものでは、まれに肩こりや重い感じがすることはあるようです。
通常は一個だけですが、時にたくさん出てくることもあります。
たくさん出てくるものでは、血管が含まれていて、押すと痛いこともあります。
脂肪腫は本来、良性腫瘍ですが、ごくまれに悪性の脂肪肉腫というもののこともあります。
5cm以上の大きなものや、急に大きくなってきたものは悪性の可能性があると言われています。
その場合には手術で切除して検査した方が良いと思います。
脂肪腫自体は症状がなく、目立たなければ手術しないで様子を見ていても良いのですが、自然になくなることはなく、徐々に大きくなってきます。
治療法は手術による切除です。
皮膚を切開して切除しますが、脂肪腫は皮膚のすぐ下ではなく筋肉の中に入り込んでいたりすることもあります。
そして、切除したものは必ず病理検査をします。
リンゴ病は子供だけの病気ではありません
リンゴ病はヒトパルボウイルスB19というウイルスの感染です。
2~12歳くらいの子供に多く、両頬の赤み、四肢のレース状の赤みが特徴的です。
発熱などの全身症状が出ることは殆どありませんが、赤血球が壊されることがありますので、貧血の人や妊婦が感染した時には注意が必要です。
発疹が出て気が付いた時には感染力はありませんので、隔離や出席停止は必要ありませんが、予防ができないことにもなります。
最近多くみられるのが、両親など大人への感染です。
大人の場合は、頬が赤くなることはありませんが、手足の腫れが強く出て、痛みを伴い関節が動かせなくなることがあります。
その時は、腫れを治す内服薬がありますので、早目に病院を受診して下さい。
お子さんがリンゴ病になってから1週間前後は、症状が出ないか気を付けましょう。
熱傷(やけど)
熱傷(やけど)は日常的に多く見られる外傷の一つです。
熱傷は高温のものが皮膚に一定時間以上付いて起こるものです。
付いたものの温度と付いていた時間によって深さが決まります。
高温のものだと一瞬で深い熱傷になります。
低温のものでも付いている時間が長ければやはり深い熱傷になります。
これは低温熱傷といわれるもので、深い熱傷のことも多いものです。
そして、熱傷はその深さによって1度、2度、3度に分けられます。1度は最も浅いものです。
赤くなるだけで数日で治まります。
日焼けなども1度の熱傷です。2度の熱傷は水疱(水ぶくれ)ができます。
2度の熱傷は深さによって浅いものと深いものとに分けられます。
浅いものは1〜2週間で傷あとにならずに治ります。
2度の熱傷の深いものは治るのにもっと時間がかかり、肥厚性瘢痕というケロイドのように盛り上がった傷あとになることもあります。
2度の浅いものでも炎症が強くなったり、化膿したりすれば深くなることもあります。
3度になるとさらに深くなり皮膚が黒くなったりします。
また、痛みは浅い熱傷の方が強く、深い熱傷になると痛みは弱くなってきます。熱傷を受傷した時は、大切なのは冷やすことです。冷やすことで深いやけどになることを防ぐことができます。
また、痛みも和らげることができます。
水疱(水ぶくれ)がある場合には、できるだけ破らない方が痛みも少なくてすみます。
破れてしまった時には、創傷被覆材といって特殊なシートで覆うことによって痛みを軽減し、早く治すこともできます。
2度の深いもの以上の熱傷になると、治るのに時間がかかりますし、傷あとになったりすることも多く、専門的な治療が必要になります。
疥癬(かいせん)はこわくない
疥癬はヒゼンダニが皮膚の最外層である角質に寄生する疾患です。
主に指間や脇の下、陰部などの軟らかい皮膚に感染し、その後アレルギー反応により他の部位にも皮疹が出現し、夜間強いかゆみを感じるようになります。
ほとんどが病院や高齢者施設で発生し、看護や介護する人に感染してしまうことがあります。
診断のために、皮疹をとって顕微鏡で虫・卵・糞を確認しますが、どこに虫がいるのかを考えて検査をすることがとても重要です。
他の病気を媒介することはありませんが、肌が触れると感染することがあり、知らないうちに家族に感染させてしまうこともあります。
現在、内服での治療ができるようになり、簡単に治るようになりましたが、治療が遅れると虫がいなくなっても、痒みだけが長期間残ってしまうこともあります。
早目の治療をお勧めします。
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)
脂漏性角化症は、あまり聞いたことのない病名かもしれませんが、良性の皮膚腫瘍でかなりよくある疾患です。
多くは褐色で表面がやや脂っぽく見えザラザラしています。
老人性イボなどと呼ばれることもあります。
形は円形に近く、褐色で皮膚から盛り上がっています。原因は紫外線の影響や皮膚の老化と言われています。
発生する年齢は男性では40歳代以上、女性では30歳代以上です。
大きさは数㎜のものから3〜4㎝位のものまでいろいろです。
色は薄い茶色から黒色に近いものまであります。
発生する部位は手のひら、足の裏以外はどこでもできますが、多いのは顔、頭、背中などです。
皮膚からの盛り上がり方は、わずかに盛り上がったものから硬くしこりのように盛り上がったものまであります。
表面はザラザラしたり、毛穴のような点々がたくさん見られることもあり悪性を心配して来院される方もいます。
1個だけあったり、多発していたりすることもあります。
また頭にある場合は、クシなどで傷つけて出血することもあります。
平らなシミ(老人性色素斑)と混在することもあり、シミが盛り上がってきて脂漏性角化症になることもあります。
本来は良性で悪性化することはないと言われていますが、悪性のものとの区別が難しいこともあります。
その場合には検査が必要なこともあります。治療は、かゆみがあったり大きいなど不便がある場合は取ることになります。
取るには手術で切除したり、電気メスやレーザーで焼いてしまったり、液体窒素で凍らせて取ったりします。
悪性の心配がある時は一部を取って検査に出すこともあります。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは
幼い頃に水ぼうそうにかかるのは珍しいことではありませんが、この原因となるウイルスは治ったあともその人の身体の神経節に潜んだままでいます。
そして疲労、ストレスや加齢など抵抗力が低下すると、再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に現れ発症します。 症状は初め、身体の左右どちらか片方にピリピリと刺すような痛みや違和感が生じ、4〜5日後にその部分が赤くなり、やがて小さな水ぶくれが帯状に現れます。
それがかさぶたになってから3〜4週間で治ります。痛みは眠れないほどのものから鈍いものまで人によりさまざまで、皮疹が治る頃には消えることが多いのですが、治った後も長期間にわたって続くことがあります。 昔は体を一周したら命にかかわるといわれていましたが、この病気はそのようなことはほとんどありません。
治療はできるだけ早いうちに始めることが大事です。
市販薬や専用化粧品でもなかなかニキビが治りません。 病院を受診したほうがいいですか?
ニキビは立派な皮膚病です。種類によって薬も使い分けが必要。
きれいな肌を保つためにも専門医で正しい治療を受けましょう ニキビには、毛穴の出口の角質が厚くなって毛穴が塞がれ、皮脂が詰まってできる白ニキビや、毛穴の中身が増えて毛穴が開いた黒ニキビ、もともと毛穴にいるニキビ菌が皮脂を栄養源として増殖し、炎症が起きて赤く痛みを伴う赤ニキビがあります。
これらのニキビは体の中の白血球とニキビ菌が闘うようになると、皮膚の下に膿を持つようになり、毛穴の壁自体が壊れて毛穴の周囲にも炎症が及び大きく腫れるようになります。
これを嚢腫(のうしゅ)、硬結といいます。その後、炎症が治まるとニキビの膿は皮膚の外に排出されたり、中で吸収されていきますが、炎症の程度、体質によっては瘢痕(はんこん)、クレーターなどのニキビ痕が残ってしまいます。
ですからニキビの治療は、白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビの段階で治してしまうことが大切です。 またニキビには、乳幼児と思春期、大人ニキビがあります。乳幼児では出生以後27日以内に発症する新生児ニキビと生後28日以降に発症する乳児ニキビがあります。
乳児ニキビはまれですが、症状が強くなることが多く、長期間持続すると瘢痕として残ったり、思春期ニキビが発症する確率が高く、3歳を過ぎても軽快しなければ内分泌異常の可能性もあるため検査をお勧めします。
思春期ニキビは平均的に13歳前後で発症し、90%以上の人が経験するといわれています。
ニキビの原因は、主に男性ホルモンの量や男性ホルモンに対する感受性の亢進の影響が大きいと考えられますが、ストレスが皮脂を増加させるというデータもあり、大人ニキビはストレスや疲労、不規則な生活習慣による体内バランスの乱れが原因と考えられています。
現在はフルタイムで働く女性が多くなってきたためか、20代、30代だけでなく、40代のニキビが増えていることも、そういったことが背景にあると思われます。 治療は、新生児ニキビでは基本的に石鹸で優しく洗うこと、思春期や大人でも生活指導が中心ですが、それ以外にはニキビに適した抗生剤の内服や外用、漢方薬を使った治療なども行います。
このほか保険外診療ですが、当院ではケミカルピーリングや高濃度ビタミンCのイオン導入、フォトフェイシャルでの治療も行っており、よい治療効果が得られています。 よくニキビ予防や適切なケアについて聞かれますが、一番大事なことは、正しい方法で1日2回洗顔をすることです。
1日に何回も洗顔する人がいますが、ニキビ菌は皮膚の常在菌で皮膚表面のバランスを正常に保つ善玉菌なので、1日2回の洗浄で十分です。 現在、ニキビ用化粧品が多くみられますが、ニキビにはいろいろな種類や、状態によっても薬を使い分ける必要があり、すべてのニキビに効果があるものはありません。
ニキビは立派な皮膚病です。
将来もきれいな肌でいたいのであれば、皮膚科専門医をぜひ受診してほしいです。
ニキビ
最近、化粧品を使用してから受診されるニキビの方が多くなりました。 ニキビには白ニキビ、赤ニキビ、ニキビ痕、皮下の塊などの症状が混在し、それぞれの症状に応じた治療が必要で、オールインワンの化粧品で解決するのはかなり困難です。
特にニキビ痕や皮下の塊には保険診療内で効果的な治療法がないので、白ニキビ・赤ニキビの早い段階で正しい治療を開始することが将来の肌を左右します。 現在、白ニキビに対しては新しい外用剤が発売され、赤ニキビに対しても抗生剤の外用や内服、補助的にビタミン剤や漢方薬の内服などを使用して治療効果をあげています。
ニキビは90%以上の人が経験すると言われていますが、病院で受診する人はその10%にすぎません。ニキビは立派な皮膚病です。 後悔しないためにも、早目に皮膚科専門医を受診してみて下さい。