歯は残っていた方が良いのか?
厚生労働省が推進している8020運動は、8020達成者(80歳で20本以上の歯を有する人)を増やそうというものです。
平成23年の歯科疾患実態調査で8020達成者は38.3%であり、平成17年の調査結果の24.1%から増加しています。
これは過去最高の数字であり、歯を残そうとする意識が国民の間に根付いてきていることが裏付けられていると言えます。
しかし、依然として過半数以上の人が達成できていないわけです。歯を無くす2大原因は虫歯と歯周病です。
患者さんの中には「歯が無くなっても入れ歯があるからいいや」「人生長くないから歯を残してもしょうがない」など、おっしゃられる方がいらっしゃいます。
はたして歯は残さなくてもかまわないものなのでしょうか。
興味深い研究(※注1)で、歯の残っている数と栄養との関連を示す報告があります。失った歯の数が多い人ほど、蛋白質、脂質、カルシウム、鉄、カリウム、カロテン、ビタミンA・C・E、食物繊維の摂取量は少なく、逆に炭水化物については摂取量が多いという結果が示されました。
つまり、歯の少ない人は咀嚼しやすい菓子類と米飯類の摂取量がむしろ多かったわけです。
これでは糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まってしまうと考えられます。
一方で残せない歯を無理に残すのはかえって良くない結果となり、その場合は歯科医院で抜歯する必要があります。
そうならないためにもしっかりと歯をケアして、歯を少しでも残すことで病知らずの長寿を目指したいものです。
(※注1)歯の保有状況と食品群・栄養素の摂取量との関連(安藤ほか)
血尿について
今回も身近な話題について書いてみたいと思います。
血尿には、ご自分で見てはっきりと赤いことが分かる肉眼的血尿と、見た目は正常ですが検診や病院の検査でたまたま指摘される顕微鏡的血尿の2種類があります。
肉眼的血尿の色調は、出血の場所や程度により様々です。
鮮やかな赤、赤ワインのような赤、どす黒い赤、茶色など。
高熱時や水分摂取の少ない時の濃い黄色尿や薬剤による着色尿は血尿ではありません。
いずれの血尿も何らかの病気が潜んでいるサインを示していることがあります。
一番注意が必要なのは、痛みや頻尿などの自覚症状がない肉眼的血尿です。
膀胱などの腫瘍によることが多く、いったん血尿が出ても自然に止まるため、病気が治ったと思い、そのまま放置する方もいます。
その間に病気は進行するので、難しい手術や治療が必要になってしまいます。
たまたま尿検査をした時に、潜血反応が陽性で、2次検査を受けるように勧められることもあります。
慢性腎臓病、腎炎などの内科的疾患や膀胱や腎臓の腫瘍の初期症状のこともありますので、どんな血尿の場合でも、ご自分の判断だけでなく、一度はお近くの専門医の受診をお勧めします。
歯の進化について
ときしらずといえば、魚や花を連想するように、「親しらず」は、歯のことだとほとんどの方がわかるほど、一般的に使われている言葉です。
専門的には第三大臼歯あるいは智歯といい、骨の中で形成される時期も遅く、最も進化による影響が出やすい歯です。
進化により顎が小さくなると、最も遅れて出てくる智歯は、その出る場所がなくなり、歯冠の一部のみが頭を出し、その他の歯根は氷山のように歯ぐきの中に深く深く埋ったままになります。
その一部露出した部分に食物がたまり、細菌が繁殖し、智歯の周りの骨にまで拡がると「親しらずがハレタ」という状態になり歯医者さんに駆け込むわけです。
また、歯自体も進化の影響を受け異常な形をしていたり、小さくなってなくなってしまう場合も少なくありません。
映画「ジョーズ」に出てくるあの忌まわしいサメは恐怖映画の主人公にされるほどするどい歯を持っています。
その歯は一生の間、何度も生え替わります。
だから常にとがった鋭い歯でいられるわけです。
その他にもサメは歯に関して別な重要な面を持っています。
サメハダといわれるように、サメの体を包んでいる皮には硬いザラザラ感を持ったウロコ様のものがあります。
このサメのウロコが歯の元祖であるといわれているのです。
よくみますとサメのウロコには、われわれの歯のエナメル質や象牙質に相当する部分があり、動物の歯の大元締であると考えられております。
人間が持っている歯の形は、前歯は切るのに適した肉食のための形、奥歯はすりつぶすための臼(うす)の形をしているため草食に適しております。
しかし、肉食獣に比べると、切るための筋肉も弱く、また、草食動物の牛などに比べると食道から直腸までの消化管の長さが短く、「草食動物」よりは「穀物食動物」といわれています。
人間の永久歯は、サメと違い生え替わりませんので、「親しらず」といえども、できるだけ大切に残しましょう。
食道がんの基礎知識
最近では、指揮者、歌手、役者など食道がんを患ったことが公表されています。
食道がんは、男性では40歳代後半から増え始め、50歳代で急増し、60歳代に多く発生します。
日本では、年間1万人以上がこのがんになるといわれており、生涯で食道がんにかかるリスクは、男性で52人に1人、食道がんで死亡するリスクは、84人に1人とされています。
食道がんは、同じ消化器の胃がんや大腸がんなどに比べると、手ごわいがんといわざるを得ません。
食道は、長さ25cmほどの薄い管で、食道の周りには、肺や心臓など重要な臓器が隣接し、すぐ前には気管や気管支があり、後ろには大動脈が走っています。
そのため、早い時期からリンパ節に転移を起こしやすく、また周囲の臓器にがんが食い込んでいく(浸潤)ことが多いのです。
さらに、声を出したり、食べ物を飲み込んだりすることをつかさどる反回神経も近くにあります。
このように傷つけては大変な臓器や血管、神経がひしめく中で神経の周りにあるリンパ節の切除まで同時に行うので、食道がんの手術は、高度な技術を要する手術です。
また、粘膜下層にとどまる早期のがんでも、胃がんならば90~95%が治るといわれていますが、食道がんの場合は、5年生存率は70~80%にとどまっているといわれています。
そのため食道がんは、早期発見が非常に重要ながんのひとつといわれています。
初期では自覚症状はほとんどなく、食道の粘膜に傷がつくと食べ物を飲み込んだ時チクチクしたり、熱いものがしみたりする程度です。
しかし、こうした違和感も、がんが少し大きくなると消えてしまうことがほとんどです。
そのため、自然と放置してしまうことが多いのです。
さらにがんが大きくなると、のどがつまる、声がかすれるといった自覚症状が出てきます。
この段階で見つかった場合、ほとんどが、がんはかなり進行しています。
早期の食道がんは、検診の胃バリウム検査で発見されることは、ほとんどありません。
定期的な胃カメラ検査は、胃がんの発見はもちろん食道がんの発見にも役立っています。
目の検診を受けましょう!
眼科を受診すると、視力検査により近視、遠視、乱視、老視などがわかります。
皆さんは視力が悪いというのは、メガネなしの視力(らがん視力)が悪いことと思っているかもしれませんが、メガネやコンタクトレンズで視力(矯正視力)が良ければ視力は良いと言えるのです。
矯正視力が悪い場合には、何か他に目の病気がないのか、別の検査に進む手がかりになります。
視力検査は白内障をはじめ、色々な疾患の進行度合いを評価するのにとても重要な診断材料のひとつです。
矯正視力が悪化していれば、必要な検査を色々加えて総合的に診断をします。
「目が痒い」などの主訴で受診した方が、視力検査で他の病気が発見されることはよくあることです。
子供の場合6〜8歳くらいまでに視力の発達が完成するので、それ以前に是非一度視力検査を受けることをおすすめします。
視力検査は3〜4歳くらいから可能になります。
幼児には絵の指標なども使って測る事もできます。
また、成人も白内障、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などは、「視力検査、眼圧検査、眼底検査」の基本検査の他に、視野検査や他の検査の組み合わせで発見できます。
早期発見により早期治療ができれば、急激な視力低下を防げることが多いのです。
ふつうに見えることは当たり前のようですが、日常生活を安全・快適に過ごす上でとても大事なことです。
眼科の基本の検査はひとつも痛い検査はありませんので、小児から高齢者まで受けることができます。
目の病気がなくても、年に1〜2回検診を受けるつもりでお気軽に眼科を受診して下さい。
コンタクトレンズでも眼鏡は必要
この言葉を聴いて、眼鏡の煩わしさから解放されたのになぜ? と思うかも知れません。
コンタクトレンズ(CL)は“外見の良さ、視野が広い、スポーツ時に安全”など眼鏡より優れている点がありますが、正しい扱い方をしていないと目のトラブルにつながります。
“決められた装用時間やきちんとしたレンズケア”これらを怠ると目への負担となり、充血や角膜(黒目)へ傷をつけてしまう原因になります。
CL装用していると角膜に傷がついても痛みを感じづらく、重篤な状態になってから眼科受診する場合が多々あります。
ただしこれらは定期的な眼科受診で早期発見できます。
目に傷やトラブルがある場合CL装用はできないので、代わりに眼鏡が必要となります。
快適なCLライフを送るために、定期的な眼科受診と“備え”としての眼鏡は不可欠だといえます。
歯列矯正を行うタイミング
歯列矯正を行うタイミングは、乳歯と永久歯が混在している時期(1期治療)と永久歯が生えそろってからの時期(2期治療)に大きく分けられます。
症状が軽度であれば、1期治療で済みますし、症状が重ければ1期・2期とも治療が必要となります。
しかし、乳歯列期でも治療を開始できる場合や永久歯列が完成してから一気に行った方が良い場合など、治療開始のタイミングは症状によって様々です。
お子さんでも、大人でも治療の時期を逃すと問題をこじらせてしまうことがありますので、歯並び・かみ合わせが気になるようでしたら、お早めに矯正歯科医にご相談ください。
理想的には小学校低学年頃までに一度みてもらうのがベストです。
気づかない問題が隠れていることもあり、それに対する早期の対応や心構えができるなどメリットは大きいです。
Vビームによるレーザーフェイシャル なかなか治らない赤ら顔・ニキビの赤みや傷跡の赤みの治療
レーザーは単一波長の高いエネルギー密度を持った光の束です。
この光の束を波長、照射時間、照射間隔、強さなど精密に疾患に対応するように加工したものがレーザー医療機器です。
現在、たくさんのレーザーと光束を応用した医療機器はあります。
ただ、魔法の方法ではないので色を消しゴムのようにすぐに消すことはできません。
では、どのようなレーザーで、『なかなか治らない赤ら顔・ニキビの赤み・傷跡の赤みの治療』を行うのでしょうか。
現在、皮膚領域で用いられているこれらの症状を治療するレーザー医療機器は、Vビーム(色素レーザー)でこのオレンジ色の光は血管の中の血液の赤い色素(酸化ヘモグロビン)に大変よく反応する波長のレーザーです。
このレーザーは肌に当てると肌を通り抜けて血管を流れる血にあたり熱を持ち、その熱を利用して血管をふさいでいきます。
一回ではすべての血管をふさぐことはできませんので期間をあけて繰り返しレーザーをあてることで血管がだんだん目立たなくなります。
一般にレーザーと言われているものと大きな違いは、医療用レーザー・光治療機器は強力なエネルギー密度を制御する非常に緻密構造の医療治療機器であるということです。
老化は最初に血管から始まると言われています。
Vビームによるレーザーフェイシャルは『目の周囲の小しわ、手のしみ・しわ』にも効果があり、従来のしみしわの若返り医療機器とは違い、肌にレーザーを照射して血管の内壁の内皮細胞に働きかけサイトカインを産生させ周辺の細胞に刺激を与え組織の若返りを図るものです。
施術後すぐに化粧ができ、表面麻酔を行うので痛みも少なく、施術時間も顔の場合は5〜10分と短時間です。
今までのレーザー、RFなどのしみしわの若返り医療機器は、メラニンやコラーゲンに『喝』でしたが、Vビームによるレーザーフェイシャルは、血管に『喝』ということです。
男性の性(27)
勃起機能改善薬(ED治療薬)として世界で最も頻用されているPDE5阻害薬は、現在本邦ではバイアグラ・レビトラ・シアリスの3種が使用可能であると、前回までに書きました。
3種の薬剤とも、特に持病のない人が服用する場合は、ほとんど副作用のない良い薬ですが、安全かつ効果的に利用するためには注意する点もいくつかあります。
まずこれらの薬は、自然な勃起を促す薬で、服用すれば必ず勃起するわけではなく、勃起するためには性的刺激と興奮が必要です。
服用しても性的刺激がなければ勃起しません。
服用後約1時間後から、性的刺激を受け性的興奮すると勃起し、性的刺激・興奮が終了すると勃起は収まります(きわめて稀ですが勃起が4時間以上続き収まらない場合~持続勃起症~は不可逆的なEDとなってしまうことがあるので直ちに医師に連絡することが必要です)。
頭痛や顔のほてり、視覚障害(色が変化して見える)等の症状が現れることもありますがほとんどが軽度で一過性です。
最も重要な注意点は、狭心症などで硝酸剤(ニトログリセリンなど)を服用している人は絶対にこれらの5PDE阻害薬を服用してはいけないことです。
急激に血圧が下がって場合によっては死に至ることもあります。
日本では医師が処方する際にこの重要な注意点を強調するので事故は少ないと思われますが、医師の処方箋なしで購入できる国や直輸入で購入した人、他人から譲り受けた人、などで死亡事故が報告されています。
硝酸剤には飲み薬だけでなく、舌下錠、貼り薬、吸入薬、塗り薬、スプレー薬、注射薬などもあり、また、薬の名前に硝酸とかニトログリセリンとか書いていないものも多数あります。
医師によっては患者さんに、病名も硝酸剤ということも伝えずに投与していることがあり、自分が狭心症で硝酸剤を服用していることを知らない患者さんも多くいますので注意が必要です。
硝酸剤に関連した注意点はもう一つあります。(続く)
百日咳(ひゃくにちぜき)の予防は大切です
今年、子供たちにとって、ワクチン接種で2度新しいことが起きました。
ひとつは、口から飲んでいた生ポリオワクチンが不活化ワクチンになり注射になったこと。
もう一つは、不活化ポリオワクチンと従来の三種混合(百日咳・破傷風・ジフテリア)ワクチンが一緒になって、四種混合ワクチンができたことです。
不活化ポリオワクチンは子供たちから生ワクチンによるポリオ関連麻痺の恐怖を取り去ってくれました。
四種混合ワクチンは三種混合ワクチンと不活化ポリオワクチンを混ぜたワクチンですが、接種の痛みが一回減るという福音を与えてくれました。
二つのワクチンは順調に供給され、滞りなく接種が進むはずでしたが、四種混合ワクチンは11月の開始早々に、不活化ポリオワクチンは11月の中旬から入手が困難なケースが発生しました。
このような状態で一番恐れるのは、三種混合ワクチンの接種すらも控えられ、百日咳が流行するのではないかということです。
百日咳は最近では国内で2008年頃に爆発的に流行したあとその後も年間五千件程度の報告があり、2008年には1名が百日咳により亡くなっています。2000年台に入ってから大人の百日咳の報告が増えています。
大人の流行の状態から考えれば、百日咳の感染の機会は決して減っているということではなく、むしろ増えていると言っても過言ではないでしょう。
赤ちゃんは生まれるときに、お母さんから多くの免疫を受け継いで来ますが、百日咳の免疫はお母さんから受け継ぐことができません。
ワクチンをすることによってのみ、百日咳からあなたのお子さんを守ることができるのです。
四種混合ワクチンや不活化ポリオワクチンの供給が不足していても、従来の三種混合ワクチンは潤沢に供給されています。
四種混合ワクチンにこだわらずに、百日咳の流行を起こさないためにも、生後三ケ月からの三種混合ワクチンの接種と、単独の不活化ポリオワクチンの接種が望ましいといえます。