網膜剥離(もうまくはくり)
急いで治療しなければならない目の病気の中に、網膜剥離があります。
網膜とは、神経線維があつまって膜状になった組織で、眼球の内壁に壁紙のようにはられており、目に入ってきた光の情報を脳に伝える大切な役割を担っています。
この網膜が、内壁からはがれるのが網膜剥離です。
網膜は眼球の内壁から栄養を受け取っているため、はがれた状態では栄養が途絶え正常に機能できなくなります。
その期間が長くなると最終的に、治療しても光を感じることができなくなってしまいます。
はがれた網膜は自然に元の位置に戻ることはありません。
そのため、神経線維がダメになる前に手術で眼球の内壁にくっつける必要があるのです。
網膜がはがれる原因は何でしょうか?
はがれる前にまず、網膜にきれつ(裂孔)ができ、その裂孔が網膜剥離に進行します。
進行するスピードは目の条件によりさまざまです。
網膜剥離に進行する前の裂孔の段階では網膜光凝固術といって、裂孔の周囲にレーザー光線を照射することで網膜と眼球内壁との接着を強化して網膜剥離に進行するのを食い止める治療が行われます。
この治療は、入院の必要がなく外来通院でできるため、できれば網膜剥離に進行する前にぜひ行いたい治療です。
それでは、網膜裂孔にはどのような自覚症状があるのでしょうか?
裂孔が形成される際、網膜がひっぱられることが刺激になり、光がみえることがあります。
また、網膜が切れる際少量の出血があると、この出血が細かな点や蚊のような虫、ススのように見えることがあります。
出血量が多いと視界の中に墨汁がたれたようにみえることもあります。
いったん網膜剥離を引き起こすと、入院手術が必要ですし、手術が成功したとしてもはがれた網膜は多少なりともダメージを受けますから、網膜裂孔の段階で治療できるよう、見え方に変化が見られたときには放置せず、できるだけ早く診察を受けることをお勧めします。
私、納豆食べてもいいですか?
「先生、私は納豆が大好きなのに一生食べられないのですか?」と、Aさんは不満そうに聞いてきました。
どうやら診察前の待合室で「あなたも血液をさらさらにする薬をのんでいるんだから、納豆はダメよ」と世話好きな友人から言われたとのことでした。
このAさんのように血液をさらさらにする薬=抗血栓症薬をのんでいる人で、食事内容の事で悩んでいたり、また誤解をしている人は決して少なくないようです。
現代の医療において抗血栓症薬は最も有用な薬剤の一つであり、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾病の治療や予防に欠かすことのできない薬剤となっています。
抗血栓症薬には大きく二種類あり、抗凝固薬と抗血小板薬とがあります。
抗凝固薬の代表的なものにはワルファリンがありますが、それを服用している人が、ビタミンKの豊富な食材、たとえば納豆、青汁、クロレラ、海草、濃い緑色の緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草など)を食べてしまうと、服用したワルファリンの血液中濃度を低下させ薬効を減弱させてしまいます。
このことを心配しすぎて全ての野菜をほとんど食べなくなる人がいますが、それではかえって健康によくありません。普通の野菜は問題ありませんし、緑黄色野菜でも量を控えめに食べるのであれば大丈夫です。
しかし、納豆は腸内でビタミンKを産生する働きがあリ少量でも影響は大きいので食べてはいけません。
もう一方の抗血小板薬にはいくつかの種類があります。最も代表的なものにアスピリンがありますが、その他の抗血小板薬も近年有効性が証明されるようになりたくさんの人に処方されています。
これらの抗血小板薬の作用はビタミンKに影響されないので、納豆や緑黄色野菜などをたくさん食べても全く問題ありません。
このように「血液をさらさらにする薬」には、大きく二種類があり、基礎疾患の違いによって有効な方の薬が選択されます。
Aさんのように、何を食べてはいけないのか悩んでいる人は、自主判断せずに主治医の先生に一度聞いてみることが大事です。
インフルエンザが流行中です
秋口からの例年にない手足口病や伝染性紅斑の流行の後、インフルエンザの流行が早々とやってきました。12月にこれだけの規模で流行がみられるのは、2009年の新型インフルエンザが流行して以来のことです。
感染症情報センターや札幌市衛生研究所などの情報を見ると、現在、北海道の多くのところで流行しているのはA型H1pdmといういわゆる新型インフルエンザと同じタイプのウイルスです。簡易的に調べるものを使っても、函館近郊では流行の始まりから一貫して同じタイプのものがはやっているようです。
今年のインフルエンザの症状の特徴は? とよく言われますが、実際にはあまり違いを見ることは少ないものです。急な発熱とぐったりした様子、発熱のあとに咳や鼻水が出てくるのが一般的なインフルエンザの経過です。今年は、12月になってから胃腸炎の症状を伴う方がちらほら見えていますが、型が違ってそのような症状が出ているというわけでもないようです。
ワクチンに勝る予防法はありません。今年はワクチンを1回接種したり、ワクチン接種ができないでいたりする間にインフルエンザに罹(かか)ったお子さんが多くいます。インフルエンザワクチンには4つのタイプのインフルエンザに効く成分が入っていますので、たとえ1回罹ったとしても、予定しているワクチンはそのまま受けるようにお願いします。インフルエンザに罹った後、すぐにはワクチン接種ができないことが多いので、予定している病院とよく相談の上、ワクチンを続けるようにしてください。
流行を止めるためには熱が出た日から5日間(熱が出た日に5を足した日まで)は仮に熱が下がったとしても家にとどまっていることです。保育園・幼稚園の登園は熱がない日を3日間、小学生以上の登校は熱がない日が2日間ないとできません。この期間は必ず守ってください。
認知症にもいろいろあります
認知症(にんちしょう)というと、アルツハイマー病を思い浮かべる方が多いと思いますが、これに負けず劣らず多いのが、脳血管性の認知症(血管性痴呆)です。
アルツハイマー型認知症に、いわゆる生活習慣病の一面があることは知られていますが、血管性痴呆はまさしく生活習慣病ですから、逆に生活習慣の改善がその予防にとても有効です。
さらにその名の通り「血管の病気」ですから、脳だけでなく全身の病気の一部なのです。そのため、単に認知症状をきたすだけではなく、心臓病など生命に対する危険が迫っていることも示しています。
血管性痴呆の有無はMRIなどの画像検査でふるいに掛けられますが、検査で血管性痴呆の疑いが持たれたとき、認知症状ばかりを気にするのではなく、生活習慣全体を振り返ってみましょう。
メタボリックシンドローム・・・あなたのウエストは何センチですか?
日本人の三大死因として、がん・心疾患・脳血管疾患という三つの疾患が挙げられます。
これらの疾患は、毎日の食事や睡眠、運動不足などの生活習慣の積み重ねによって起こります。なかでも心疾患と脳血管疾患は、全体の三分の一を占め動脈硬化が原因といっても過言ではありません。
メタボリックシンドローム(以下 Mets)とは、内臓脂肪肥満(りんご型肥満)を背景にして、複数の生活習慣病(糖尿病、高脂血症、高血圧などの動脈硬化危険因子)が合併している状態を言い、動脈硬化や日本でも急増している糖尿病と深く関係しています。ウエストが男性で85cm、女性で90cm以上であることに加え、次の三項目のうち二つ以上が該当する場合がMetsとされます。
- 収縮期血圧が130mmHg以上か拡張期血圧が85mmHg以上
- 空腹時の血糖値が110mg/dl以上
- 中性脂肪が150mg/dl以上かHDLコレステロール(善玉コレステロール)が、40mg/dl未満(糖尿病、高血圧、高脂血症などで治療薬を服用しているときは、それぞれ一項目に該当)
―このようにMetsでは一つ一つの症状は深刻でなくとも重複して持つと動脈硬化性疾患のリスクを有している事になり、3~4個重なれば心血管の病気の発症頻度が30倍にもなるという報告もあります。メジャーを用意しウエストを測ってみてください。
次に血圧を計りましょう。
最後に最近お受けになった健康診断や病院からもらった血液検査の結果を見直してみましょう。いかがですか? あなたはMetsの範疇に入りますか? Metsに該当する場合は、まずは生活習慣の見直しをかけて、ウエスト周囲径を一cmでも減らす事が重要です。
- まずは過食や運動不足などの悪い生活習慣を改め、肥満を解消しましょう
- 食事は健康の要。適切な摂取エネルギーの範囲内でバランスよく栄養をとり、一日三食、規則正しく食べることが基本です。またタバコはやめましょう
- 有酸素運動は体力の維持増進のほか、肥満防止、内臓機能の活性化、ストレス解消にも効果大です。
病気になってから治すのではなく、病気にならないよう生活習慣に気をつけましょう。
顎関節症(がくかんせつしょう)?
最近、あごが痛くて口が開けられないという方が増えています。口が開けにくい、開けたり閉じたりすると耳の前が痛い、あごの関節が音をたてる。こんな症状を総称して顎関節症と言います。原因として、歯並びや噛(か)み合わせの悪さが考えられます。
しかし、歯並びや噛み合わせは良くてもその使い方が悪くて顎関節症になってしまう事があるのです。
例えば、食事の時にテレビを見ながら横を向いて食べたり、あまり噛まない早食いや、片噛みすることも原因の一つになってしまいます。悪い姿勢やストレスや緊張による首や肩の凝りが常に続くとそれが原因になる事があります。
顎関節症を治すには原因を一つ一つ解消していくことが大切です。
しかし、こんな症状のある方は、まずお口の中に原因が無いかどうか一度かかりつけの歯医者さんに相談してみて下さい。
ロービジョンケアについて
皆さんは「ロービジョン」という言葉をご存知でしょうか?
さまざまな原因で通常のメガネやコンタクトレンズによる矯正、手術などの治療を行っても見え方の改善が難しい状態を言います。
私たちの眼は、視力や視野などのさまざまな視機能で物を見ています。
先天的あるいは後天的に角膜や水晶体、網膜、視神経から脳に至るどの部分が障害されても物が見えにくくなり、日常生活に不自由を生じてしまいます。
具体的には角膜疾患や白内障、糖尿病網膜などによりまぶしくて歩きにくい、かすんで字が読めない、テレビが見にくい、人の顔が判別出来ないなどの症状があります。
また加齢黄斑変性などの網膜中心部の疾患では視野の中心が暗い、ゆがむなどにより読み書きができにくくなります。
緑内障や網膜色素変性などでは視野が狭くなり歩きにくい、物を探せない、人や物にぶつかるなどの症状で生活しづらくなります。
このような治療の困難なつらい症状をさまざまな方法で少しでも緩和させる事を「ロービジョンケア」といいます。
まぶしさには遮光眼鏡、字の読みにくさにはルーペや拡大読書器、視野の狭さにはアイムーブメントトレーニングなど患者さん一人一人のニーズに合わせてケアを行います。
これらは全て健康保険で受けることが出来ます。
また、さらに視覚障害の強い患者さんに対するケア方法として音声時計、音声パソコン、音声図書などの音声を使ったケアもあります。
場合によっては見えにくい眼を酷使し疲弊するよりも音声を使う方が良い事もあります。
今後日本は超高齢化社会を迎え、医療の進歩によって見えやすくなる患者さんばかりではなく、残念ながら「ロービジョンの方」も増加すると言われています。
既に前記の症状などでご本人やご家族にお困りの方がいらっしゃいましたらぜひ「ロービジョンケア」を受けて下さい。
日常生活の改善や諦めていた趣味や生きがいが再び見つかるかもしれません。
色覚異常について
先天色覚異常の割合は男子で約20人に1人、女子では約500人に1人といわれております。
日本眼科医会の平成24年の調査によると、色覚異常の中高生の2人に1人が異常に気がつかないまま進学や就職時期を迎え、6人に1人がなんらかのトラブルを経験していました。
小学校では、平成15年度から色覚検査が全員にではなく、希望者にのみ行われるようになっているためです。
色覚異常があるからといって、決して白黒や灰色の世界を見ているのではありません。
いくつか区別しにくい色の組合せ(たとえば赤と緑)があるというだけですから、通常は運転免許も問題なく持てるし、日常生活でもほとんど困ることはありません。
5月に入り、学校健診が行われる時期になりました。
色覚異常の場合は、それを自覚することで色の間違いを減らすことができ、また、トラブルを防ぐことが可能になりますので、学校健診では検査を受けることをおすすめします。
眼瞼下垂(がんけんかすい)
眼瞼下垂という病気をご存じですか?
まぶたが垂れ下がって眼が開きにくくなり、視界が狭くなったり物が見えにくくなったりする病気です。
眼瞼下垂の原因は大きく先天性と後天性、偽眼瞼下垂に分けることができます。
先天性の眼瞼下垂は生まれた直後からみられるもので、乳幼児の視力発達の妨げになる場合があります。
後天性の眼瞼下垂は、もともとは症状がなかった方のまぶたが下がってきたもので加齢によるものが多くを占めますが、ある日急にまぶたが下がった場合は脳梗塞や脳動脈瘤による動眼神経麻痺などが疑われますのでCTやMRIでの頭蓋内検査や血液検査が必要な場合があります。
後天性の眼瞼下垂の患者さんは視界を確保するために、眉を吊り上げ眼を見開いたり、常に顎を上げながら物を見るようになることで慢性的な額の筋肉の緊張が頭痛や肩凝りなど一見まぶたとは関係のない症状を引き起こしてしまう場合があります。
偽眼瞼下垂は本当は眼瞼下垂ではないのにまぶたのけいれんやまぶたの皮膚が垂れ下がってくることによって眼瞼下垂のように見えてしまう状態です。
眼瞼下垂の治療は先天性のものや加齢性のものではまぶたを挙げる手術を行います。
顔面神経麻痺などの神経の病気による眼瞼下垂には、まずは原因となった病気の治療を行い、改善がみられない場合に手術を行う場合があります。
まぶたを挙げる手術にはさまざまな方法があり、患者さんの原因に応じて専門的な判断に基づいた手術が必要です。
眼瞼下垂の簡単な特徴を載せておきますので、同じような症状でお悩みの方は眼科を受診してみてはどうでしょうか?
①左右の眼の大きさが違う
②以前より眼が小さくなった
③一重まぶたが二重になった。二重まぶたの幅が広がった
④額にしわを寄せて物を見る
⑤顎を上げて物を見ている
⑥まぶたが重いと感じる
[手術は程度により保険適用外の場合もあるので、医師にご相談ください]
人工歯根(デジタルインプラント)について
インプラントとは医療目的として体に埋め込む器具のことをインプラントとよびます。
体の骨にひびが入ったり、骨折をした際に骨を支えるため使用するボルトやリウマチなどで曲がった骨を正常の位置に戻す際に使用するボルトがあります。
歯科で使用されるデンタルインプラントの素材としては、ほとんどのメーカーでチタンが採用され、チタンの性質として金属アレルギーがでにくく、身体に対して有害な作用を及ぼしにくく海水や酸に対して高い耐蝕性を示しているため、心臓のペースメーカーや、人工関節などで使用されている素材なのです。
デンタルインプラントの特徴としては、失った歯の部分にチタン製のデンタルインプラントを埋め入れて、歯本来の機能や見た目を取り戻す治療法のことをいいます。
失った歯の部分を治療しますので、周囲の歯に負担をかけることがなくこれまであった歯と同じような役割を果たしますので噛む力を分散させ、残っている自分の歯を守ることにもなります。
入れ歯のように噛む力が健康な状態に比べて20%程度に落ちたり、ブリッジの様に健康な歯を削る必要もありません。
しかしデンタルインプラントもデメリットがあり、インプラントを埋め入れる外科手術を伴うことや、他の治療に比べて治療期間が長いこと、保険が適用されないため費用の負担が大きいなどがあります。
また手術を受けるのに困難な方もいて、インプラントを埋め込んだ部分は骨の成長が妨げられるため、成長過程にあるかたはインプラント治療が出来ません。
また免疫力が著しく低下している方や、高度の糖尿病の方、一部の骨粗鬆症の薬を服用している方も困難な場合があります。
インプラント治療の利点と欠点を理解した上で治療法を選択することをおすすめします。
インプラント治療にご興味がある方は歯科医院にて相談を受けてみることをお勧めします。









