痔の基礎知識
| A.痔核(いぼ痔) 肛門を閉じるクッションの役割をしている血管がうっ血していぼ状になったもの。直腸側にできれば内痔核、肛門の外側にできれば外痔核です。B.裂肛(切れ痔) 太くて固い便によって、肛門の出口付近が切れて炎症が起こります。排便時に激しい痛みがあり、便意をがまんして症状を悪化させがち。女性に多い痔です。C.痔ろう(あな痔) 直腸と肛門の小さなくぼみに便が入りこんで細菌感染し、たまったうみを出すあなができる病気です。男性に多く、治療には手術が必要です。 |
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■痔と思っていたら、大腸ガンというケースも。お尻からの出血、痛み、腫れ、いぼなど、肛門周囲の病気を総称して「痔」と言っています。
場所が場所だけに羞恥心から受診をためらう方も多いのですが、自己診断は危険です。切れ痔だと診断を受けていた方がクローン病という炎症性腸疾患だったということもありますし、検査をしたら大腸ガンが隠れていたというケースも私のクリニックでは年間20例ほどみられます。
「赤い血なら痔、黒い血なら大腸ガン」という人もいますが、色では診断できません。
もし出血や痛みがあって、市販の軟膏などを数日使っても症状が緩和しない場合は、安易な自己診断は避けてすぐに医師の診察を受けましょう。■痔の大敵は下痢と便秘。肥満もお尻によくありません。切れ痔の原因は主に便秘症です。排便が3日に1回でもスムーズに出ているのなら問題ありませんが、痛みや出血などの症状があれば治さなければなりません。
反対に、痔ろうの原因は下痢です。1日3回、3日以上下痢をすると炎症が起きて痔ろうになりやすくなります。
便利と下痢、その共通点は排便のときに強くいきむこと。そういう意味では、腹圧がかかる肥満もお尻によくありません。
理想の便は、成人の場合、足の親指よりもちょっと細めで、軟らかさは少し茶色くなったバナナくらい。
毎日の食事に気をつけて、食物繊維と水分をたっぷり摂るように心がけなくてはいけません。■治療の流れ痔は虫歯の次に多い国民病。日本人の成人3人に1人は痔を持っていると言われています。
しかし羞恥心がわざわいしてなかなか人にも相談できず、病院にも行けずに悩んでいるという方が多いのではないでしょうか?病院では医師が診察し、患者さんの症状にあわせた的確な薬を処方します。また、痔を予防したり悪化させないための治療法や日常生活においてのセルフケアなどについてのアドバイスをいたします。痔の治療法も劇的に進化し続けており、昔のような「恥ずかしい」や「痛い」などのイメージではありません。治療を行っていく上で手術をおすすめする場合、急いで手術を要する症状以外は最終的に手術する・しないは患者さんの意志です。当院は手術を行う場合、患者さんに安心して当日にのぞんでいただくために、詳しい入院治療の流れを説明しています。
軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)
軟性線維腫というのは、ポリープ状に皮膚が隆起している良性の皮膚腫瘍です。
30歳代以降にできてきます。原因は摩擦や日光など皮膚の老化によります。
首、ワキ、そけい部(脚の付け根)、大腿の内側など比較的やわらかい部分にできることが多いものです。
初めは小さな皮膚の突起ですが、徐々に大きくなってポリープ状で茎のある、やわらかい皮膚の腫瘤(しゅりゅう)になってきます。
スキンタグといって、頚部(けいぶ)やワキに小さいイボのようなものが多数できることもあります。
肥満した方や中年以降の方に多く見られ、皮膚の老化と考えられています。これも軟性線維腫の一種です。
大きくなってくるとくびれができて、皮膚にぶら下がったような形になってくることもあります。
やわらかい良性の皮膚腫瘍で、悪性化することもありませんから、そのまま様子を見ていても良いのですが、ゆっくりとですが大きくなってきます。
引っかけて出血するなど、邪魔になる場合は治療が必要です。
治療は小さいものでは、ハサミで切ったり、焼いて取ったりすることもできます。
大きいものは、くびれた部分の根元の皮膚を含めて切除します。
そうすると縫合が必要になりますが、きれいに取れます。
白内障って再発するの?
「せっかく白内障の手術をして視力が回復したのに、また見えなくなってきた」という声をよく耳にします。別の病気にかかったために視力が悪くなるケースもありますが、よくあるのは後発(こうはつ)白内障による視力低下です。
聞き慣れない方が多いと思いますが、後発白内障は、白内障手術の時に眼内レンズを入れるために残しておいた水晶体(すいしょうたい)の袋に、術後濁(にご)りが生ずることが原因で発生します。これは、白内障手術を行った人の5~30%で、視力に影響が出るほどに進行します。
しかし治療は簡単で、レーザーで濁りを取ることができます。外来で短時間で行うことができ、入院は全く必要ありません。
白内障術後で、また以前のように見づらくなったと感じている方は、もう一度眼科を受診してみてはいかがでしょうか。
不妊治療には『急いで受診』と『適切な治療法の選択』が大切です
赤ちゃんが欲しいけれどなかなか妊娠できず、「不妊症?」と疑いつつも、不妊外来への受診をためらう方も多いものです。
しかし、女性には年齢の壁があります。不妊治療の進歩は目覚ましく四十代での妊娠も珍しくありませんが、一歳でも若く治療を受けるほど良い結果を得られるのも事実です。「時は金なり」の言葉がありますが、赤ちゃんを望む女性にとって「時は赤ちゃんなり」です。「急いで受診」することが大切です。
不妊治療を受け始めると、すぐに妊娠できると期待するのが人情というものです。実際、適切な治療法を選択した場合、たった一回の治療で妊娠する方も少なくありません。但し、それにはいくつかの条件があります。
詳細な検査
適切な治療法を選択するには不妊原因の特定が前提です。子宮卵管造影検査・超音波検査・ホルモン検査など、不妊原因を詳細に調べる検査が必要です。
男性因子の検査
不妊原因の約半数は男性側にあります。精液検査は必須です。
高度な治療法
体外受精・顕微授精など生殖補助医療に実績のある専門医であれば、排卵障害の治療やタイミング療法、人工授精などの一般療法についても実績が豊富です。
つまり、一日も早い妊娠を実現する第一歩は、不妊治療に詳しい専門医を主治医にもち、「適切な治療法を選択」してもらうことといえるでしょう。
体外受精や顕微授精と聞くと不妊治療のなかでも特殊な治療法と考えがちですが、現在、日本で生まれる赤ちゃんの約二%は体外受精・顕微授精・凍結胚移植(とうけつはいいしょく)で命を授かっています。また、これまで妊娠は難しいとされていた原因不明の不妊症(機能性不妊)や程度の高い男性不妊も、これらの治療法によって妊娠が可能になっています。
十分に情報を収集し、自分たち夫婦に合う主治医と出会っていただきたいと思います。
脳の健康度チェック
要介護状態の最も大きな原因は脳血管障害や認知症であり、脳の健康は極めて重要です。定期的な脳の健康度チェックが望まれますが、脳ドックは健康保険が利かない自費診療で、学会の指針に従った検査を全て行うと高価になります。また、病気の保険診療でも医療費削減が叫ばれる昨今、むやみにMRI検査などを行うことには批判があります。では、どんな人が検査を受けたら良いのでしょうか?
ときに「隠れ脳梗塞(こうそく)」と呼ばれたりする小さな脳梗塞(ラクナ梗塞といいます)の発症・増悪には高血圧が強く影響すると考えられていますが、このラクナ梗塞が認知機能低下の危険を高くすると言われています。実際、高齢男性で血圧正常の人に比べて、高血圧が十分コントロールされていない人では認知機能の低下が確認されています。他に糖尿病と認知機能の低下の相関も示唆されており、このような生活習慣病を持った人たちには脳の健康度チェックが必要でしょう。
また、色々な病気に遺伝が関与していますが、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)も家族性のある病気のひとつです。血縁者にある種の病気があることを「家族歴がある」といいますが、脳動脈瘤の家族歴が二人以上ある場合、家族歴がない人と比べると脳動脈瘤を持っている可能性は五倍になるという報告があります。ごく最近の『国際脳卒中会議二〇〇七』で、脳動脈瘤を持っている人の一〇%に、同じく動脈瘤を持っている一親等の親族がおり、脳動脈瘤を遺伝により受け継ぐと前の世代よりも破裂が早くに見られるという発表がありました。例えば、親の世代でクモ膜下出血が五十歳で生じた場合、子の世代では三十五歳頃からクモ膜下出血が見られたといいます。このことから家族歴がある場合、若い世代から脳動脈瘤の有無を検査するよう勧められています。
全ての人が定期的に検査するのが理想的かもしれませんが、社会全体としての効率を考えるとリスクのある人を優先するべきでしょう。ここに挙げたようなことに思い当たる人は、かかりつけの医師に相談してみましょう。
親知らずについて
一番最後に生えてくる歯、それが親知らずなのですが、歯科医院や病院の口腔外科で抜いたご経験のある方も多いと思います。
できれば、抜くというような外科処置はさけたいものですが、親知らずの生え方が通常の歯とは異なるときは、ブラッシング清掃がしにくくトラブルが起こりがちです。
中途半端に生えることにより歯肉が腫れて痛み出したり、知らぬ間に大きな虫歯になっていてズキズキ痛みが出たり、歯並びに影響を与えるなどのさまざまな症状が出ることがあります。
こういった場合には抜歯が治療の選択肢に入ります。
逆にこれを放置して、親知らずやその手前の歯の歯周病が進行し、骨が吸収し、事態がさらに悪化する場合があります。 一方でこういった悪い状態でなく、正常な歯の向きに生えていて、反対側の歯と咬み合っているのであれば抜歯の必要性は少ないといえるでしょう。 親知らずはただ抜いて無くすだけではなく、抜いた後に活用できる場合があります。
親知らず以外の奥歯が無くなった場合、その部分の骨が十分残っていて、歯肉の状態も健康であるなど条件が整えば、その部分に親知らずを移植する「自家歯牙移植」という方法があります。
また、親知らずを再生医療に応用する動きがあるなど、あらためて新しい話題を提供しています。
まずはご自身の親知らずの状態は虫歯や歯周病になっていないか、残すべきかどうかを、機会がありましたら歯科クリニックで相談してみてはいかがでしょうか?
逃げるが勝ち
皆さんは「率先避難者」という言葉をご存知でしょうか。
災害時などに住民に避難してもらうには、役場の係員がスピーカーで呼びかけるだけでは効果がないそうです。
人は隣近所の様子を見てから行動することが多いからです。
ある海岸の町では、地震直後の津波警報の呼び掛けに避難したのは住民の二割だったそうです。
子供が両親に「逃げよう」と言っても、大人達は近所の様子見を決め込み、動かなかったのです。
この状況を変えるため、地域に「率先避難者」という係を置こうとしているそうです。
この人達は、避難を呼びかけたら誰よりも先に自ら避難することを任務とします。
この人達の逃げる姿を見た人達は、我も我もと逃げるようになったといいます。
また、避難後に津波が来なくても「逃げなくてもよかった」と後悔することはなくて、「何もなくてよかった」と思うそうです。
病気予防に当てはめてみます。
生活習慣病を持った人や、自分の健康状態に不安を持っている人は大勢います。
この人達は生活習慣を変えなきゃいけない、健康診断も受けてみたいとは思っています。
でも、なかなか実行しません。そんな人達に「スピーカーで避難を呼びかけている」のが、保健や医療の仕事をしている人達、夫や子供の体を心配している奥さん、お母さん達です(多くの男性患者さんは、自分の意志よりも奥さんに言われてシブシブ健診を受けています)。
この状況を変える為、奥さんお母さん達が「率先避難者」になってはどうでしょう。
家族や隣人に生活改善を注意するより、まずは自分の健康維持に努める姿を見せるのです。
先の津波避難の例では、現在、子供たちへの指導は、両親に「一緒に逃げよう」というのではなく、まず自分が逃げ出すことを勧めているそうです。
逃げる子供を一人にしておけませんから、大人も避難することになります。
この夏初めて、人間ドックを受けました。
医師も、自らの健康に気をつけなくてはと思ったからです。
幸い、やや太めである以外はほぼ異常なしという結果で安心しました。
肝臓が悪いと言われたら
健診の結果で「肝臓が悪い」と言われたことのある方もいらっしゃると思います。
同時に「精密検査を受けてください」とも言われると思いますが、それにはれっきとした理由があります。
肝臓が悪くなる原因は数多くあります。
脂肪肝、アルコール、薬剤などが代表的な原因ですが、最も問題となるのはB型肝炎・C型肝炎などの肝炎ウイルスが原因の場合です。
わが国ではB型肝炎ウイルスに130万人、C型肝炎ウイルスに180万人が感染しているといわれています。
これらのウイルスが感染して慢性化すると長年にわたって肝臓を痛めつけ、肝炎から肝硬変へと進行した末に肝臓がんが発生します。
肝硬変は肝臓全体ががん発生の予備状態になっているため、がんは1個ではなく複数個できる場合もあります。
したがって、感染していることをできる限り早期に発見して、その一連の進行を食い止めることが極めて重要なのです。
これらのウイルスは主に血液を介して感染します。
母親からの出産時の感染、輸血、入れ墨、薬物乱用、性行為などさまざまな経路がありますが、実際にはいつどこから感染したのか経路がはっきりしない場合も少なくありません。
感染は一過性で終わる場合もありますが、慢性的な感染状態になっても厄介なことに数十年にわたって症状を現わさないため、採血での肝臓の数値異常から偶然発見される場合も多いのです。
精密検査を勧められながら「肝臓が悪いのはお酒のせい」などと自己判断で放置すると、重大な結果を招くことになりかねません。
精密検査は採血で肝臓のより詳しい状態と肝炎ウイルスの有無を確認し、さらにエコー・CT検査で肝臓の形の異常や腫瘍の有無などを評価して総合的に診断します。
万一肝炎ウイルス陽性だった場合はウイルスの種類や肝障害の程度、患者さんの年齢などを勘案して抗ウイルス療法を検討することになります。
精密検査を勧められた時は決して放置せず、必ず消化器内科専門医を受診しましょう。
足がむくむようになったら
足のむくみは、食事で摂った水分や塩分の一部が尿として排出されず下半身にたまってしまう状態です。
原因のひとつは腎臓からの塩分排泄の低下です。塩分は体内で水と一緒に移動します。塩分排泄が低下すると腎臓で作られる尿の量も減少してむくみます。
それに下肢の筋力低下が加わり足のむくみになります。ふくらはぎは第2の心臓とも言われ下半身の血液循環を担います。筋力低下により下半身の水分を上半身へ押し上げることができないので足がむくむのです。
足がむくむようになったら行うべき対処法
塩分の排泄が低下しているので、塩分の摂取を少なくすることでむくみの改善が期待されます。1日食塩量は成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満、高血圧や腎臓病など持病のある方では、6g未満が推奨されています。調味料や食品に表示されている「食塩相当量」を確認する習慣をつけて適正な制限を目指しましょう。
下肢の血液循環を良くするために踵を上げ下げする体操(カーフレイズ)もおすすめです。朝から夕方までまめに行うようにするとむくみが解消することがあります。弾性ストッキングを起床時から夕方まで装着したり、夕食前に下肢を挙上して30分くらい横になるのも効果的ですが、持病によっては禁止されることもあるので、かかりつけ医へ相談しましょう。
足がむくむようになったら注意すること
動脈硬化が潜んでいるかもしれません。動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞、狭心症、腎臓病の原因となることがあります。動脈硬化以外の病気でむくみが生じることもあります。日中に尿が作られない分だけ夜間の尿量が増えて夜間頻尿になることも。
むくみや夜間頻尿が続いている方は、かかりつけ医などへの相談が必要です。
怖い充血
朝起きて、鏡を見たら目が真っ赤に充血していた…誰しも一度は経験があると思います。前の日の夜更かし、目がかゆくてこすっていた、昨日の屋外作業など心あたりがあることも多いでしょう。充血は目の血管が拡張することによって起こりますが、白目の内側、外側、深い部分といった充血の場所ごとに原因が異なり、また白目の細い血管が破裂しての出血も家庭で見る際には強い充血に見えるでしょう(結膜下出血といいます)。
充血の主な原因として細菌・ウイルスによる結膜炎やドライアイ、アレルギーが多いです。しかし中には、ぶどう膜炎といって目の中に強い炎症を生じ、視力が低下する病気もあります。ぶどう膜炎は全身の病気が原因となることもあり、眼科に限らず内科でも詳しく調べてもらう必要があります。多くの病気で出てくる充血は目の不調のサインであり、中には緊急に治療が必要な病気もあるため、おかしいな、と思ったら一度眼科の受診をお勧めします。










