目もメタボ!? 太っていなくてもメタボ!?
近年欧米諸国と同じく、過栄養や運動不足の生活になったため、わが国では高血圧・高脂血症・糖尿病などのメタボリックシンドローム(メタボ)が急増しています。
しかしながら検診を受けていない方も多く、視力低下で眼科を受診してはじめてメタボがみつかる方もいます。
目薬で瞳を広げて眼底検査をすれば、眼科医は網膜の血管の様子を直接のぞくことができます。
眼は身体のなかで唯一、血管を直接観察できる臓器なので、実は眼底検査から動脈硬化、高血圧や糖尿病が発見されることも多いのです。
また、視界が狭くなったと受診した方の中には、視野検査などで頭の中の動脈瘤や腫瘍が発見され、即、脳神経外科で手術となり一命を取り留めた方もいます。
意外にも眼科受診がきっかけで全身の病気が発見されることは多いのです。 目のメタボは主に『糖尿病網膜症』と『加齢黄斑変性』ですが、いずれも失明原因になる病気です。
メタボと聞くと肥満をイメージしますが、アジア人は極端な体重増加がなくても糖尿病になりやすい人種です。
身長170cmで体重87kgのアメリカ人と体重72kgの日本人が同じ割合で糖尿病を発症するということで、太っていなくても油断はできないのです。
『糖尿病網膜症』も発見さえ早ければ、網膜光凝固などの治療で進行予防ができますが、糖尿病とわかっていても一度も眼底検査を受けていないために網膜症がすでに悪化してしまって、視力が戻らない方も多くいるのが現実です。
また、『加齢黄斑変性』はタバコを吸う人が吸わない人に比べて、3倍もかかりやすくなっています。
わが国の加齢黄斑変性は10年前に比べ確実に増えていますが、眼底検査をしないとわからないため放置され、視力が下がったまま固定してしまいます。 人間は80%以上の情報を目から取り入れているのです。
目は2つあるために片方の視力低下に気付かないようですが、一生見える人生を送るために早期発見が必要です。
眼科の検査は痛い検査はひとつもなく、目のメタボから身体のメタボも発見できるのですから、40歳以上の方は検診と考えてぜひ一度眼科を受診してみてください。
光老化(ひかりろうか)
お年を重ねると、次第にお顔やお首にシミやシワが増えてきます。これは長い年月にわたって日光に当たり続けることによって起こってくる変化で、光老化といいます。
皮膚は日光を浴びると、褐色のメラニンという色素を作って有害な紫外線が体内に入ってくるのを防ごうとします。真夏の日射しを1時間浴びると、皮膚の細胞の遺伝子に百万個もの傷がつくといわれています。数日で大方の傷は元に戻りますが、治らないまま残った傷が増えると必要以上にメラニン色素が作られ続けてしまうようになります。35歳前後から目立ってくるシミなどは、このようにして出来ます。深部まで達する紫外線の作用が加わると、皮膚全体の張りが失われシワも出てきます。また、発ガンに関係する遺伝子に突然変異が起こると、皮膚ガンなどに発展する心配があります。
光老化を起こした皮膚は完全には元に戻りませんが、シミの種類によってはレーザー機器などで目立たなくすることが出来ます。レーザー機器には皮膚の中の特定の色を削っていく作用があるため、シミに対して有効なのです。さらにお顔全体が褐色調にくすんでいる方や、ニキビ痕が残っている方に有効なタイプの機器もあります。また皮膚ガンが疑われる場合には細胞検査を行い、適切な治療を速やかに行う必要があります。
これまで長年にわたり健康増進のための日光浴が勧められてきました。しかし現在では、紫外線による悪影響が皮膚の老化を早めることが分かってきました。光老化は毎日の生活の中でも、ちょっとした注意で随分と防ぐことができます。まず紫外線に当たる時間をなるべく少なくすることです。日中の外出時には日傘、帽子を着用し、短時間の外出でも日焼け止めを使用されることをお勧めします。これからの季節、陽気は良くなりますが、紫外線も増えてきます。屋外を散歩したりスポーツで汗を流すことは気持ちが良く、健康にもよいことですが、光老化には御注意下さい。
肺炎に気をつけましょう
今ちまたでは新型インフルエンザが問題になっていますね。
日本国内でも発病した人が多数報告されていますが、皆さんが快方に向かってくれることを願っています。
またメキシコではかなりの死者が出たとのことですが、その理由は何だったのでしょうか。
記事を見ると、多くの人が重症肺炎にかかっていたとのこと、さらに免疫力の低下した人も相当含まれていたそうです。
これらのことから新型インフルエンザに感染した後、重い肺炎になってしまったことが死亡の原因だったのかもしれません。
二十世紀初頭に『スペインかぜ』が流行し、日本でも約五十万人が亡くなったと言われています。
亡くなった方の多くが細菌性肺炎を併発していたとの報告もあるようです。
つまりインフルエンザウィルスで弱ったところに細菌が入り込んで肺炎を引き起こすことが問題ということです。
日本人の病気による死因の第一位は「がん」ですが、肺炎も高位を占めており、油断できない病気です。
慢性の呼吸器疾患を持っている方は肺炎にかかりやすく、さらに重症化もしやすいと言われています。
また高齢者では嚥下(えんげ)機能(ものを飲み込む機能)が低下しており、食物が食道ではなく、気管支に入り込むことによっておこる、嚥下性肺炎にも注意が必要です。
肺炎を予防するためには肺炎ワクチンをうつことも有効といわれています。
ただし肺炎の原因菌すべてに効くわけではないので注意が必要です。
さらに嚥下性肺炎を予防するコツは、食事をとるときの姿勢です。
背もたれに寄りかからずに座り、あごを引いた状態で飲み込むようにします。
また、のどにつまりやすいものは避けましょう。
トロミがあると飲み込みやすいので、片栗粉やトロミ剤を使うのもひとつの方法でしょう。
また食後すぐに口の中をキレイにしましょう。食後すぐ横にならないことも重要です。
以上を実行すると嚥下性肺炎もかなりの確率で予防できるようになるでしょう。
糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)
事実、年間約3,000人が糖尿病が原因で視覚障害の認定を受けています。
また、厚労省によると「糖尿病が強く疑われる人」は890万人、「糖尿病の可能性を否定できない人」は全国に1320万人いると推測されています。
糖尿病による眼の合併症は糖尿病網膜症ですが、急に悪くなるのではなく、初期の単純網膜症から、中期の増殖前網膜症を経て、末期の増殖網膜症に段階的に進んでいきます。
ただ、自覚症状は増殖網膜症まで進行しないと現れ難いので注意が必要です。
単純網膜症とは、高血糖により目の中の細い血管が障害された病期です。
壁が膨らんでコブ状になった血管や、小出血が眼底検査で発見されます。
この段階では、血糖を良好に維持することで網膜症を悪化させないことが可能ですから、眼科で定期的に眼底検査を受けながら、内科治療を継続してください。
血管の損傷がさらに進み血流が途絶え、網膜内に酸素不足の場所ができると、増殖前網膜症です。
まだ自覚症状に乏しい時期ですが、この酸素不足状態を放置すると末期の増殖網膜症に確実に進行します。
至急、レーザー光線による網膜光凝固術を行い網膜の酸素不足を解消する必要があります。
最終段階の増殖網膜症は、正常眼では存在しない新生血管が発生した網膜症です。
この新生血管は壁がもろいため容易に破綻し、眼のなかで出血、視力低下や飛蚊症をひき起こします。
また、網膜がひっぱられ、網膜剥離を起こすこともあります。
失明をまぬがれるためには多くの場合、手術が必要です。
糖尿病網膜症を生涯にわたって悪化させないことは、特に働いている世代にとって容易なことではありませんが、網膜症による視覚障害は日常生活を大きく制限します。
医師のアドバイスに耳を傾け内科の治療をしっかり行い、定期的に精密な眼底検査を受けることが大切です。眼底検査の間隔は個人個人により異なります。
眼科で受け取る『糖尿病眼手帳』に次回来院日が記載されていますので、是非参考にしてください。
飛蚊症(ひぶんしょう)
日常生活で「虫が飛んで見える」、「ゴミが見える」というようなことはありませんか?
これは「飛蚊症(ひぶんしょう)」といわれる症状です。
この「飛蚊症」は大きく分けると、「生理的なもの」と、「病気からくるもの」に分けられます。
「生理的なもの」では、「後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)」といって目の中に入っている「硝子体」というゼリー状のものが年齢とともに濁ってきたり、縮んだりすることで虫が飛んでいるように見えることがあります。
「病気からくるもの」では、目の奥の「網膜(もうまく)」に孔(あな)が空いてしまう「網膜裂孔(もうまくれっこう)」や、その網膜がはがれてしまう「網膜剥離(もうまくはくり)」など、レーザー治療や手術が必要なものまでさまざまあります。
飛蚊症の症状がある場合は自分で判断せずに早めに近くの眼科を受診しましょう。
冬になると肌がカサカサに乾燥します。良い対処法はありますか?
強い垢こすりや長湯も皮膚の機能低下に影響。
スキンケアにはバランスの良い食生活が何より重要
全身を覆う皮膚は、外敵から身を守る防御機構の最前線に位置し、新陳代謝を活発に繰り返しています。
皮膚がカサカサに乾燥すると、その機能は低下してしまいます。
皮膚の潤いを決める要素には、皮脂、角質細胞間脂質、天然保湿因子の3つがあります。
皮膚は角質で覆われ、一つひとつの角質細胞はレンガを積み上げたような構造をしています。
毛穴から分泌される皮脂が角質表面を包み込んでおり、角質細胞の間にはセラミドという物質を中心として脂質が充満しています。
また、角質細胞の中にはアミノ酸を中心に天然保湿因子が存在しています。
これらの働きによって皮膚の潤いが保たれているのです。 お風呂で行うことが多い「垢こすり」は、かつての1カ月に数回しか入らないような入浴習慣だと、実際に垢が皮膚の表面にたまり、強くこすることに意味があったでしょうが、ほぼ毎日入る現在の入浴習慣では、こするという行為は、皮脂を洗い流し、いたずらに皮膚をそぎ落とす行為でしかないのです。
このことにより、皮膚のバリア機能は著しく阻害されます。
また、長湯を続け、皮膚がお湯と接触し続けると、潤いを決定する要素の一つ、天然保湿因子が流れ出てしまいます。
お風呂に入ってきれいにしているつもりの行為が、実は外からの刺激が侵入しやすいような状態にしてしまっているのです。 皮膚の健康を保つうえでは食事も重要です。
皮膚は網目状に張り巡らされたコラーゲンの線維によってその弾力が保たれています。
コラーゲンの主な原料はプロリン、アルギニン、システインなどのアミノ酸です。
コラーゲンを合成するには良質なタンパク質とビタミンCが不可欠です。
またアミノ酸のひとつであるタウリンも肝臓の機能を高め、皮膚に有害な物質を除去するのに有効な成分とされており、それを多く含む魚介類の摂取がお勧めです。
またビタミンCはメラニン色素の変化を防いだり、コラーゲンの形成と維持を調節したりする効果を持ち、鉄分の吸収を助ける働きもあります。
通常の食事をしていればビタミンCが不足することはまずありませんが、偏食している場合や抗生物質を服用している場合、腸内細菌が変化しビタミンCの合成が低下する場合があります。
ビタミンCが低下・欠乏すると皮膚の内出血や粘膜からの出血が起こることがあります。
このほかにもビタミンAやEは抗酸化ビタミンと呼ばれ、保湿成分の生成に関与し、皮膚の老化を防ぐ働きがあります。
亜鉛やセレンといったミネラルも皮膚の増殖や機能の維持に必要不可欠な栄養成分です。 細胞を正常に働かせるには、必須アミノ酸を含むタンパク質を十分摂取しビタミンやミネラルも摂る必要があります。
バランスの良い食事を心がけること、これが皮膚にとって一番です。
クリニックのシェイプアップダイエット
日本人は太っていても極端に肥満の方はいませんが、ダイエットに挫折する方はたくさんいます。
ダイエット(食事制限)だけで、体重減少はできますが、必ずリバンド(ダイエット後の体重増加)が起こります。
そのため、この現象を予防してバランスの整った姿にするにはエクスササイズ(筋力トレーニング)が必要です。
しかし、この食事制限やエクスササイズを維持したり、習慣づけることは大変です。 また、中高年になると、お腹が出てきてお尻が下がってきます。リバウンド(ダイエット後の体重増加)を予防して、腰・ヒップ周りをシェイプアップダイエットして、目的を持ちながらダイエットをすることが、理論のない闇雲な挫折しやすいダイエットとの違いです。 クリニックによるシェイプアップダイエットはマイクロダイエットの管理栄養士と連絡を取りながら目標を決め、現状の把握『今までできなかったこと、うまくいっていたこと』目標を達成するために自分でできることやプランを決めて、『クリニックがサポートできることは何か』を聞きながらダイエットを進めていきます。 そして、シェイプアップのための筋力トレーニングは筋肉を維持するか増強するかは、その方の年齢、体力、生活環境によって筋力トレーニングの方法、ダイエットメニューなど医学的に説明します。
また、どうしてもより効果的な部分痩せを希望する方は点滴療法やメソセラピー、部分的脂肪吸引も合わせて行なうことも可能です。
まだまだ、しもやけの季節です
しもやけは寒さによる末端の血行障害で、厳冬期よりも昼夜の温度差が10度以上ある初冬と初春に多いといわれています。
特に足指や耳、頬が赤く腫れ、時に水疱(すいほう)となり、温めると痛みや痒(かゆ)みが強くなります。
治療は血行を促す外用剤を優しくマッサージしながら、1日に数回塗布します。
炎症が強い場合には、ステロイド剤を使用することもあります。
重症の場合はビタミンEや漢方薬を内服することもありますが、症状が出る前の秋から始めると、予防効果があるといわれています。
手洗いや発汗後の水分が蒸発することで熱が奪われ、しもやけになりやすくなりますので、タオルで水分をしっかり拭き取ったり、靴下を交換することが大切です。
発熱や関節痛を伴ったり暖かい時期でも症状が続く場合には、他の疾患のこともありますので、その時は皮膚科受診をお勧めします。
胸の痛み、それをどう伝えていますか?
「先生、昨日の夜テレビを見ていたら突然胸が痛くなりました。
すこしの間我慢していたらおさまったので、救急病院へは行かなかったのですが・・・」と、Aさんは不安な表情を浮かべながら今は痛くない胸をさすりました。
このAさんのように診察の時に既に症状が無くなっている胸痛は、しばしばその診断を難しくさせます。
このような一過性の胸痛をおこす疾患で一番重篤なものは狭心症です。
狭心症は心筋梗塞の前兆でもあり、その診断が遅れることは死亡への危険を高めます。
そのため、その胸痛の原因が狭心症であるか否かを鑑別することはとても重要になります。
狭心症は、胸痛が残っている間であれば心電図をとることですぐに確定診断がつくのですが、Aさんのように来院時にすっかり胸痛が消えている場合は、心電図だけでは判らないことが多いのです。
そのため、診断の決め手としてとても重要なのは、どんな性質の胸痛だったのかということです。
何をしていた時に発症したのか、安静時なのか動作時なのか、痛みの場所は胸のどのあたりなのか、背中や肩や下あごの痛みを伴ったのか、痛みは体位によって軽減しなかったのか、痛みの強さは冷や汗が出るほどの強い圧迫されるような痛みか、弱い違和感のようなものだったのか、動悸や眩暈(めまい)や息苦しさも伴ったのか、持続時間は数秒間か、数分間か、数時間か、などの情報が狭心症を強く疑わせるか否かを診断する鍵となります。
また、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、メタボなどの生活習慣病があるかどうかも重要です。
このようにして診断された結果、狭心症を「強く疑われる人」は入院して心臓カテーテル検査(冠動脈造影)を受けることを勧められます。
その結果で冠動脈に高度な狭窄病変が見つかった場合は薬物治療の他にカテーテル(ふうせん、ステント)治療やバイパス手術などを受ける場合があります。
しかし、「強くは疑われない人」の中にも狭心症である可能性は少なからずあるため放置されることはとても危険です。
入院せずにできる冠動脈CT検査や運動負荷検査やホルター心電図などを行い、狭心症を否定してしまう事で大きな安心を得る事ができるでしょう。
脳動脈瘤の自然歴
病気の「自然歴」とは、その病気を放っておいたらどうなるかということです。
病気は、何でもかんでも治療するわけではなく、自然に治るものや、治らなくても生活に支障なく、寿命を全うできると思われるものもあります。
一方、治療にも危険が伴うことがありますので、放っておいた場合の危険と、治療に伴う危険とを天秤にかけて治療するかどうかの判断をします。
脳動脈瘤は破れると半数の方が命を落とすとも言われる恐ろしい病気です。
また命が助かっても、多くの方が障害を残します。
その恐ろしさ故に、かつては検査で偶然見つけた動脈瘤に対して、積極的に手術する傾向がありました。
しかし、治療には危険が伴いますから、そのような姿勢に対する批判の声も多数ありました。
また、MRIなどの診断機器の発達に伴い、動脈瘤が発見されることが増えてくる一方で、昔から動脈瘤の自然歴が不明でした。
そうした中、1998年に発表された欧米の研究結果では、脳動脈瘤の破裂の危険性が、年率0.05%と予想外に低かったため、大変な議論となりました。
そこで日本脳神経外科学会が中心となって、2001年から新しく研究を開始しました。
その研究結果が、つい最近発表されました。
全体としての破裂リスクは年率1%程度と、実際に破裂脳動脈瘤を扱っている脳外科医の実感と一致する結果でした。
さらに動脈瘤の場所や大きさ、形による危険性の違いも示されました。
これまで脳ドックなどで動脈瘤が見つかった場合、治療をどうするか相談するのに、しっかりした根拠に基づくデータがなかったために、脳外科医も困っていました。
今回の研究方法には、まだまだ議論の余地があります。
しかし、その判断を下すための材料として、今までの研究報告よりもしっかりとした根拠が示されたものと考えます。
個々の患者さんについては、個別の状況から治療方針を決めなければなりませんが、医師として、患者さんに説明するとき、これまでよりも自信をもってお話ができるようになりました。









