胸の痛み、それをどう伝えていますか?
「先生、昨日の夜テレビを見ていたら突然胸が痛くなりました。
すこしの間我慢していたらおさまったので、救急病院へは行かなかったのですが・・・」と、Aさんは不安な表情を浮かべながら今は痛くない胸をさすりました。
このAさんのように診察の時に既に症状が無くなっている胸痛は、しばしばその診断を難しくさせます。
このような一過性の胸痛をおこす疾患で一番重篤なものは狭心症です。
狭心症は心筋梗塞の前兆でもあり、その診断が遅れることは死亡への危険を高めます。
そのため、その胸痛の原因が狭心症であるか否かを鑑別することはとても重要になります。
狭心症は、胸痛が残っている間であれば心電図をとることですぐに確定診断がつくのですが、Aさんのように来院時にすっかり胸痛が消えている場合は、心電図だけでは判らないことが多いのです。
そのため、診断の決め手としてとても重要なのは、どんな性質の胸痛だったのかということです。
何をしていた時に発症したのか、安静時なのか動作時なのか、痛みの場所は胸のどのあたりなのか、背中や肩や下あごの痛みを伴ったのか、痛みは体位によって軽減しなかったのか、痛みの強さは冷や汗が出るほどの強い圧迫されるような痛みか、弱い違和感のようなものだったのか、動悸や眩暈(めまい)や息苦しさも伴ったのか、持続時間は数秒間か、数分間か、数時間か、などの情報が狭心症を強く疑わせるか否かを診断する鍵となります。
また、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、メタボなどの生活習慣病があるかどうかも重要です。
このようにして診断された結果、狭心症を「強く疑われる人」は入院して心臓カテーテル検査(冠動脈造影)を受けることを勧められます。
その結果で冠動脈に高度な狭窄病変が見つかった場合は薬物治療の他にカテーテル(ふうせん、ステント)治療やバイパス手術などを受ける場合があります。
しかし、「強くは疑われない人」の中にも狭心症である可能性は少なからずあるため放置されることはとても危険です。
入院せずにできる冠動脈CT検査や運動負荷検査やホルター心電図などを行い、狭心症を否定してしまう事で大きな安心を得る事ができるでしょう。
不妊症早めの発見・治療が理想
現在、日本では何らかの原因により不妊症で悩んでいるご夫婦が全体の10~15%を占めるといわれています。
妊娠を望み、普通の夫婦生活を営んでいても2年以上妊娠に恵まれない場合を不妊症といいます。2人目以降のお子様に恵まれない方も含まれます。もしこれに該当するようならば、一度受診をお勧めします。できるだけ若いうちに不妊の原因を特定し治療を開始した方が妊娠の可能性が高いと考えられるためです。主な理由は以下の通りです。
・卵巣機能は年齢とともに低下傾向。特に内分泌機能障害がある場合更に強まる。
・卵子の質は年齢とともに低下。卵子の遺伝子異常は加齢により増加。
・受精卵の子宮内膜への着床率が加齢により低下。
・高齢出産を避ける。
不妊治療の現状から見ると、ほとんどの患者さんが、若いうちに子供ができなくてもいつかできると思い、自分が不妊症である現実を自覚せずその結果治療が遅れ、30代後半になりあわてて診察に訪れます。早めに不妊症を発見し適切な治療を受けることは妊娠できる可能性が高まることへつながります。原因に合う治療法は様々ですが不妊治療の主な内容は一般不妊治療の性交タイミング指導、人工授精、また高度不妊治療の体外受精、顕微授精等です。体外受精や顕微授精というと、理解不十分から、人為的に遺伝子を操作するものと理解する方が少なくありません。実はこれによ り生まれた赤ちゃんは自然妊娠の場合と何ら変わりはありません。
不妊というとその原因は全て女性側という古く誤った考えが多いのですが、実はその原因は男女ほぼ半々なのです。従って、不妊の検査は男性の協力も必須です。
社会生活の様々なストレスにより不妊になる方が増えているのが現状です。もし不妊に直面しても、早めに立ち向かうことでいつか赤ちゃんに恵まれることでしょう。
あなたの肺年齢は大丈夫ですか?
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは中年以後に発症し、タバコを吸う方に多くみられる疾患です。
初期症状は、カゼをひいているわけではないのに咳や痰が出る、カゼをひきやすく治りにくい、ちょっとした運動で息切れを起こしやすい、などです。
進行すると平地を歩いても呼吸が苦しくなります。
COPDは肺がんとともにタバコが最も悪さをする肺の病気で、息切れが起こる主な原因は気管支が狭くなるためです。一度狭くなった気管支は元に戻らず、禁煙しなければ徐々に進行していきます。
さらに、肺活量は加齢現象の一つとして徐々に低下していきます。
1秒間に吐き出すことのできる空気の量を1秒量といい、これは非喫煙者の場合でも一つ年をとるごとに30mL前後減りますが、喫煙者では70mL前後減ります。
20歳代で1秒量が同じでも、50歳になると喫煙者と非喫煙者では1000mL近く差が出る計算です。
COPDは放置していると日常生活を送ることも困難になることがあります。
あなたの肺年齢は大丈夫ですか?
前述のような症状がある方は、診察をおすすめします。
慢性腎臓病ってご存じですか?
腎臓とはどういう臓器でしょうか?腰の辺りに左右1個ずつある握りこぶし程度の大きさの臓器です。血液をろ過して、必要なものを再吸収し、不要なものを尿として排せつする臓器です。
それ以外にも、赤血球を作るホルモンや血圧を調整するホルモンを作ります。慢性腎臓病とは、腎臓が何らかの原因によりダメージを受け、血液をろ過する能力が落ちてしまう病気です。
初期に症状は何も無いため、検査を受けなければ分かりません。「ちょっと血圧が高いけど、まあいいや」「コレステロールが高いけど、何も症状が無いので、様子を見よう」などと、生活習慣病を長年見過ごすことにより、腎臓にダメージが蓄積して発症してしまいます。
このように、わが国の慢性腎臓病は、生活習慣の変化や高齢化を背景にして年々増加し、成人の8人に1人が慢性腎臓病と報告され、日本透析医学会の報告では、令和2年末で34万7千人の透析患者さんがいるそうです。※1
また、この慢性腎臓病は、心筋梗塞や脳卒中といった心血管病や認知機能障害とも深く関わっており、健康寿命を脅かす新たな国民病と呼ばれています。 慢性腎臓病は、血液検査や尿検査を行うことで診断できます。
血液検査で、血清クレアチニン値をもとにした推算GFR(eGFR)と呼ばれる検査値が59以下の場合、慢性腎臓病を疑います。それ以外には、高血圧や高脂血症などの疾患に伴いタンパク尿が出ている場合です。
まさか、ちょっと血圧が高いけど、放置しただけで知らないうちに腎臓が悪くなるなんて…しゃれになりませんよね。最悪の場合、高血圧を放置→慢性腎臓病→腎機能の悪化→慢性腎不全→透析という流れもあり得ます。
これを知っていれば、たかが高血圧とは、いえませんよね。 検診を受けていない人は、ちゃんと検診を受ける。検診結果で、生活習慣病に関わる数値が気になるのであれば再検査を受けるなど、症状が無くても自己判断で放置しないように気を付けましょう。
※1日本透析医学会誌54(12):611-657,2021
なかなか良くならない下痢や便秘の改善方法
下痢や便秘の原因として比較的多い「過敏性腸症候群(IBS)」は、日本人の10人に1人が悩まされている病気です。
明らかな原因は、まだ解明されていませんが、主にストレスで、他にも甲状腺や糖尿病などの内分泌疾患、寄生虫などが原因となる場合もあり、複数の要因が組み合わさることで発症すると考えられています。
IBSは①下痢型②便秘型③下痢便秘混合型の3タイプに分かれています。
下痢型の場合、脳で感じたストレスにより、腸の蠕動(ぜんどう)運動を盛んにする信号が伝わりすぎて下痢を起こします。
いつ下痢が起こるか不安になりそれがストレスとなり悪循環になるのです。
香辛料やアルコール、コーヒーなどの刺激物や脂肪分の多い食事を控え、ストレスの軽減を図ることはもちろんですが、おなかにやさしい食事の後でも下痢を起こす人の中には胆汁が悪さをすることもあるため、その場合は、お薬での治療になります。
便秘型は、女性に多いのが特徴です。
女性は食事量が少なく腹筋が弱いためで、出産や過度なダイエットも原因となります。
水分を多く取り、ぬるめのお風呂で、おなかをマッサージしたり、ラジオ体操などの体をひねる運動も効果的です。
また、起床時や就寝前に布団の上で、うつ伏せになったり左右にゴロゴロ回転する運動、このときに枕やクッションをおなかの下に入れて圧迫するとより効果的です。
さらに、1日8時間以上、腸をお休みさせてあげて下さい。
寝ている間に腸が活発に動き便を肛門近くまで運んでくれます。
起床後朝食を摂取することで腸が刺激され排便を促します。
食事も重要です。
実は、野菜の取りすぎにも注意が必要です。
野菜の食物繊維の中には不溶性と水溶性があり、既に便秘になっている状態で不溶性の食物繊維を含むゴボウやイモ、キノコなどを取り過ぎると消化が悪くますます悪化する場合があります。
便秘の状態では水溶性の食物繊維を含む海藻や果物、また、消化の良い炭水化物(ご飯、パン、麺類)が良いでしょう。
不溶性の食物繊維は、便秘の予防には効果的です。
IBSと似た症状が現れる病気は、細菌性・ウイルス性腸炎や潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がん等もあり、レントゲン検査や大腸カメラを行い、他の病気がないかどうか検査をすることが大切です。
糖尿病と診断されたら、すぐに眼科受診を!!
食生活の欧米化により、日本では約950万人の糖尿病患者がいます。
そのうち糖尿病網膜症を発症している人は、約140万人です。
この網膜症は、大変恐ろしい合併症です。
なぜならば、初期では全く自覚症状が無いために、かなりの眼底出血が起きて、視力低下してから初めて気付くからです。
実はそうなるまで、眼科を受診しない方がほとんどです。
視力低下してから受診して、治療方法がある方もいますが、「時すでに遅し!」と眼科医が思うほど悪化している方も多いのが現実です。
そうなると、レーザー光凝固術や手術などで治療をしてみても、網膜症の悪化がすでに進行していて、治療のかいなく失明の一途をたどる方もいます。
糖尿病網膜症は中途失明3大原因の一つです。
糖尿病と診断されたら、すぐに眼科を受診して、一度眼底検査を受けて下さい!
早期発見、早期治療は、あなたの目を救います!!
歯並びは変化し続けています
不正咬合(悪い歯並び、かみ合わせ)は、治療する必要があるのでしょうか?
放っておいてはいけないのでしょうか?
不正咬合は、つぎのような問題を引き起こすキッカケとなります。
①虫歯や歯周病、②口臭、③顎関節症(あごの病気)、④歯ぐき・粘膜・舌を傷つける、⑤発音不明瞭、⑥肩こり、腰痛、頭痛⑦コンプレックス、など・・・。
一方、歯並び、かみ合わせは悪いが虫歯もないし、今のところ不便は感じていないmという方もおられます。
しかし、油断は禁物です。
歯並びも人間の体の一部、一生を通じて変化しています。
お子さんの時期は成長、そして大人になると老化という変化が生じます。
不正咬合は不安定で、年齢を重ねていくうちにさらに崩れていく傾向にあります。
中高年以降は歯周病にもかかりやすくなり、不正咬合の悪化が歯周病を悪化させるという悪循環におちいり、体調不良や全身の病気の引き金となったりもします。
また、不正咬合がヒドイとしっかりした歯科治療が受けられないことも多く、歯の寿命を短くしてしまう可能性が増すので注意が必要です。
若い頃はあまり気にならない不正咬合でも、年齢とともに悪化し、虫歯や歯周病など、お口の中の病気だけではなく、全身の病気のキッカケとなりうることも知っておく必要があります。
「生活の質」を向上させ、健康で快適な人生を送るためには、整った“歯並び”、バランスの取れた”かみ合わせ”であるということは非常に重要なことです。
健康には気を付けている方でも、正しい知識をもって、歯やお口の中の健康増進に取り組んでいない方がおられると思われます。
今現在、歯並びやかみ合わせがあまりきにならない方でも、お口の中に関心を払い、できれば歯科医院へ定期的に通院し、虫歯・歯周病予防に努め、歯並び、かみ合わせの維持に努めることが望ましいです。
歯並び、かみ合わせに不安や疑問を抱いている方は、1度、矯正歯科医にご相談されることをお勧めします。
マイボーム腺機能不全
よくならない異物感、目の周囲のかゆみ、ドライアイ、その症状「マイボーム腺機能不全」かもしれません。
マイボーム腺は、まぶたの縁にある油の工場で、涙の成分に油を加えて、涙の蒸発を防いでいます。
ですので、この機能が落ちると涙が蒸発しやすくなり、ドライアイになります。
また、油の出口が詰まると、ばい菌がついたり、ただれがおきて目の不快な症状を引き起こす可能性があります。
このようなことを防ぐためには、マイボーム腺を日頃からケアする必要があります。
簡単な方法として、やけどしない程度に電子レンジなどで1分ほど温めた蒸しタオルをまぶたの上から数分間あてる方法があります。
この際に軽くまぶたをマッサージするとなお効果的です。
眼の健康のために、お肌だけでなくマイボーム腺のケアもしてみませんか。
矯正歯科治療のQOL
以前私が勤務していた市立函館病院では、交通事故などで顔面に外傷を負った患者さんの治療を、脳神経外科や関係する科の医師が一つのチームとなって担当していました。 その頃は患者さんの家族は、命が助かっただけで一緒に喜んでくれたものですが、現在では、当然のことですが、できるだけ治療中の侵襲をおさえ、回復を早め、治療後もよい状態を得ることが要求されています。
このように医学の進歩が進み、質の点、QOL(Quality Of Life)が、重要とされてきております。
「歯が顎の中で動く仕組み」
歯並びを治すマルチブラケットという普通用いられている矯正歯科治療法について考えてみましょう。
歯は歯ぐきの中にある骨に埋まっております。
骨と歯の根は、歯根膜という骨膜に似た軟組織で着いています。
歯に力を加えると、力がかかった側の骨は減り、その反対側では骨ができてきて、結果的に歯は、押された方向に移動します。
これが矯正治療で歯並びが治っていく仕組みですが、月に1㎜動くことがさまざまな研究により知られております。
著しく歯並びが悪くても、小さな口の中ですので、矯正治療で良い歯並びになるための一本の歯の根の移動距離は、5㎜以内です。
従って効率的に歯の移動が起きれば、5ヶ月で良い歯並びが得られると考えられます。
しかし、一般的には2年あるいはそれ以上治療期間が必要とされています。「矯正歯科のQOLについて」
矯正歯科の分野においては、治療結果は当然のことですが、快適な治療経過を得るために、歯の裏側に装着するリンガルオルソドンティックスなどの矯正装置、痛みを軽減するための滑りのよい装置、患者さんの協力や努力の量を低減し、目標の位置まで歯を動かす期間を出来るだけ短くするインプラントアンカー治療法などにおいて改良が進んでおります。
このように現在の矯正歯科における進歩は、治療中のQOLの向上という方向に進んでおります。
5年前と比較してみると、大きく進歩し、より患者さんにとって「よりやさしい」環境となってきております。
エレクトロポレーション〜瞼のしみ、しわ、乾燥への予防と治療、頭皮の薄毛治療
瞼のしみしわ乾燥に悩んでいる方には朗報です。最近まで瞼のしみ、しわ、そして乾燥への予防と治療は、光治療やレーザー治療で積極的に治療の行うことができない部位でしたが、エレクトロポレーションを使用することで今まで肌から導入が難しかったアミノ酸などの高分子の治療成分も積極的に導入することが可能になりました。 数年前に開発され、安全性が実証されているエレクトロポレーションは、皮膚表面に高い電圧を瞬間的に与えることで細胞機能に障害を起こすことなく、細胞膜や細胞間脂質に小さな孔を開けて高分子成分を導入する画期的な方法です。
従来行われているイオン導入法では薬液の10%程度しか導入できないのに比べ、注射による投与に匹敵する薬剤の導入が可能で、痛みや出血も全くありません。
施術時間は頬、瞼で20~30分、週に1回程度です。 そしてフォトフェイシャルやレーザートーニング、レーザーピーリングなどのしみしわのアンチエイジング治療と同時に瞼のしみしわ乾燥への予防と治療も可能です。 治療成分はビタミンCなど各種ビタミン、上皮化を促進してしみしわを改善させるEGF(上皮化成長因子)など各種成長因子、アミノ酸、ペプチド、補酵素などを含むプラセンタ(胎盤製剤)などの高分子成分を安全に積極的に導入することが可能です。
また、これを応用した女性の頭皮の薄毛予防にも導入されています。予防と治療についての詳細は専門医にご相談ください。









