新型インフルエンザ
現在、函館市内近郊では新型インフルエンザが流行しています。
学級閉鎖や学校閉鎖、幼稚園閉鎖など、子供が学校や幼稚園、保育園に行くことを前提にして生活をしている多くの大人にも、さまざまなストレスを与えていると思います。
これまで多くの新型インフルエンザにかかった子供達をみていると、ほとんどは季節性のインフルエンザの症状と強さも期間も変わらない印象です。
ただ、中には嘔吐(おうと)が強く出るなど、消化器症状が強く出るお子さんがいて、他のお子さんに移さないようにして治療をするのは非常に困難です。
多くの医療機関ではインフルエンザを検査するキットが不足しています。
「インフルエンザにかかった人」と、「インフルエンザでないことを確認するために検査を強く希望した人」が一時的に増え、キットが大量に消費されたためです。
それに輪をかけているのが、「検査をしてきてください」という学校、園関係者の一言です。
インフルエンザかどうかははもともと患者さんの状態と地域の流行状態で判断するものであって、検査キットはそれを補うものでしかありません。
検査で陰性で「インフルエンザである」と判断することは実はとても重要で、これまでに検査が陰性でも重症化して死亡や後遺症が残る状態になることが多く報告されています。
状況によっては検査をせずに治療を開始することが子供にとって最良の選択であるということもしばしばです。
「検査キットで陽性でないからインフルエンザでない」などと誤解されてしまうと、治療のためでなく、検査を受けるために受診、その結果で一喜一憂するという間違った行動パターンが形成されることになってしまいます。
この点についてはぜひ御理解ください。
新型インフルエンザに対するワクチンは十一月から基礎疾患(子供の場合はほとんどが喘息)のある人から優先して始まる予定です。
十二月からは一歳から小学校低学年のお子さんへの接種が始まる予定ですが、細目はまだ完全に決まっていません。
現在、季節性インフルエンザワクチン接種の最中だと思いますが、二回目の接種の直前にでも、かかりつけ医療機関にお問い合わせください。
間違ったコンタクトレンズの使い方
最近は多種多様なコンタクトレンズ(CL)が発売され、装用開始する年齢も若くなってきました。
CLはメガネに比べて視界も広く、見た目も自然で大変便利な物ですが、使い方を間違うと大変重症な感染をおこし、失明につながる怖い一面もあります。
以下のNG項目をチェックして安全に装用しましょう。
- NG①:装用時間は適当、使い捨てタイプも期限を守らず使っている
1日10時間位で外しましょう。
CLに覆われている角膜は、酸素不足になりやすいのです。
ましてや期限を過ぎたCLは汚れがいっぱい!
汚れが原因で角膜に傷がついたり、アレルギー性結膜炎になったり、病気になることばかりです。 - NG②:外れたハードCLは、ちょっとなめて目に入れる
口内には色々な雑菌が存在しています。
それを目に入れてしまうことになり、感染のもとです。 - NG③:外すのが面倒でつけっぱなしで寝ている
角膜の酸素不足が続くと角膜がはげたりします。
本当に痛いです。
その傷から感染すると重症な眼内炎となり、急激な視力低下を引き起こします。
失明の危険性もあります。絶対にやめましょう! - NG④:外してすぐにケースに入れている
洗った清潔な手で、ケースの保存液も取替え、CLもよく洗ってからケースにいれます。
つける時に洗うのではなく、外した時に洗うのです。
外した時に洗わないとケースの中は細菌だらけ。細菌まみれの液に浸されたCLをつけていることになります。 - NG⑤:使い捨てコンタクトはもっぱらネットで購入している
CLは心臓に埋め込むペースメーカーと同じ「高度管理医療機器」です。
CL購入時には毎回必ず医師の診察後の処方が必要とされています。
眼鏡との大きな違いは直接目の表面に触れるので色々な危険性も伴います。
眼科医の診察を定期的に受け、自分の目の形、サイズ、度数など適したものを選んでもらって下さい。
黒目に白目がかぶさる? 翼状片(よくじょうへん)
翼状片とは球結膜(白目)が三角状に伸び、角膜(黒目)の上にかぶるようになる病気です。
原因ははっきり分かっていませんが、紫外線やホコリなどによる慢性的な刺激といわれています。自覚症状は、初期にはごろごろとした異物感や充血を伴う程度ですが、少し進行してくると角膜がゆがみ、乱視が出てきます。
さらに進行してくると視力の低下を認めます。初めのうちは経過を観察しますが、進行してくると手術が必要となります。
手術は角膜にかぶった翼状片の切除を行い、さらに再発予防のため、結膜移植や細胞増殖を抑える薬剤の使用、または放射線治療を併せて行います。自覚症状がある、鏡を見て白目がかぶって見える、人によく白目が赤いといわれるなど気になることがありましたら、眼科で相談してみてはいかがでしょうか。
エレクトロポレーション〜瞼のしみ、しわ、乾燥への予防と治療、頭皮の薄毛治療
瞼のしみしわ乾燥に悩んでいる方には朗報です。最近まで瞼のしみ、しわ、そして乾燥への予防と治療は、光治療やレーザー治療で積極的に治療の行うことができない部位でしたが、エレクトロポレーションを使用することで今まで肌から導入が難しかったアミノ酸などの高分子の治療成分も積極的に導入することが可能になりました。 数年前に開発され、安全性が実証されているエレクトロポレーションは、皮膚表面に高い電圧を瞬間的に与えることで細胞機能に障害を起こすことなく、細胞膜や細胞間脂質に小さな孔を開けて高分子成分を導入する画期的な方法です。
従来行われているイオン導入法では薬液の10%程度しか導入できないのに比べ、注射による投与に匹敵する薬剤の導入が可能で、痛みや出血も全くありません。
施術時間は頬、瞼で20~30分、週に1回程度です。 そしてフォトフェイシャルやレーザートーニング、レーザーピーリングなどのしみしわのアンチエイジング治療と同時に瞼のしみしわ乾燥への予防と治療も可能です。 治療成分はビタミンCなど各種ビタミン、上皮化を促進してしみしわを改善させるEGF(上皮化成長因子)など各種成長因子、アミノ酸、ペプチド、補酵素などを含むプラセンタ(胎盤製剤)などの高分子成分を安全に積極的に導入することが可能です。
また、これを応用した女性の頭皮の薄毛予防にも導入されています。予防と治療についての詳細は専門医にご相談ください。
3種混合ワクチンの打ち忘れはありませんか?
3種混合ワクチンは百日ぜき、破傷風、ジフテリアを予防するワクチンです。
現在はそれに不活化ポリオワクチンを加えた4種混合ワクチンとして生後3か月から打つようになっています。
4種混合ワクチンは2年前から接種が始まりました。
不活化ポリオワクチンは2012年9月から接種が始まり、その時期までに3種混合ワクチンをしたお子さんでは、口から飲むポリオワクチンや注射で打つ不活化ポリオワクチンが混在して行われたため、多くの方が混乱したり、分からないまま時が過ぎてしまったりした方もずいぶん多いように感じます。
インフルエンザワクチンを接種するときに母子手帳を見返すと、3種混合ワクチンがちゃんと終わっていなかったり、不活化ポリオワクチンが最後まで終わっていない人がいたりして、その都度勧奨してきました。
しかし、つい先日3種混合ワクチンが供給されないという一報がクリニックに届きがくぜんとしました。
3種混合ワクチンなど不活化ワクチンはきちんと決められた回数を打って初めて効果が出るワクチンです。
特に、1期3回の初回接種の後の追加接種を忘れると、しっかりした免疫ができないといわれています。
母子手帳を見返してお話しする中では、特に1期3回までは行っているけど、追加接種がなされていなかったり、不活化ポリオワクチンが途中で終わったりしている方を多く見かけます。
このようなことがそのまま放置されますと、今ですら問題となっている成人期での百日ぜきの流行が今後増えかねません。
どうかそのようなことが3種混合ワクチンでも起きないように、今一度母子手帳を見直してください。
4種混合で置き換えができる人は4種混合で、できない人は行政機関と相談しながら、わずかに在庫のある3種混合ワクチン供給をお願いするということになるとの予定です。
7歳半までのお子さんは無料で接種できますので、早めにかかりつけ医にご相談ください。
腰痛(ようつう)のお話
整形外科を訪れる方々の20~30%が腰痛症の患者さんです。
腰痛症は様々な病気が原因で生じます。痛みの生じ方から、腰への急激な負担から痛みが生じる「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」や、「脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)」などの急性腰痛、立ったり歩いたりすると徐々に歩くことが困難になる「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」などの慢性腰痛に分けられます。
また、腰痛には腰の骨、椎間板や椎間関節、神経根などによるものだけではなく、内臓(腎臓)や血管(腹部大動脈瘤[りゅう])や血液(白血病)などの原因によって生じるものもあるので正確な診断が欠かせません。
「かぜは万病のもと」とよく言われますが、腰痛症も同じです。
軽い病気と考えずに、「何が原因で、どこがどのように障害されているのか」、整形外科の専門医を受診し、正確な診断のもとに充分な説明と治療を受けることが大事です。まずは医師に相談されるか病院ホームページをご覧になることをおすすめします。
飛蚊症
視覚とは、外界からの光刺激を受容し、対象の形・明るさ・色などの性状が“見える”という感覚です。対象に当たって反射した光がまず角膜と水晶体というレンズを通して眼球内の網膜上に像を結び、光刺激の情報が電気信号に置き換えられ、視神経を伝わります。信号が大脳の視覚野に送られることにより“見える”という感覚が生じます。
今回は飛蚊症についてお話しようと思います。眼には眼球内腔を満たす硝子体という透明なゼリー状の構造があります。役割として、眼球の形態の保持や透明性の維持、外界からの衝撃の緩和などがあります。硝子体に何らかの原因で濁りが生じると、その影が網膜に写り、蚊が飛んで見えたり線あるいは黒い丸が動いて見えるといった現象が起きます。これを飛蚊症と言います。
主な原因は後部硝子体剥離です。詳しく機序を説明しますと、硝子体は元々若い頃はゲル状で硬くてしっかりしていますが、加齢に伴いゲル状だった硝子体が液化します。このため後部硝子体膜と網膜の間が剥離し、硝子体の線維の濁りの影が飛蚊症の症状として現れます。加齢に伴う生理的な見え方であるため、点眼薬や手術で治すことができません。
飛蚊症は年齢とのお付き合いになりますが、液化した後部硝子体膜による網膜の牽引により裂孔原生網膜剥離や硝子体出血、黄斑円孔などの眼底疾患を伴うことがあります。見え方の変化などがあればこのような合併症の初期症状である可能性があるため、すぐ眼科を受診し眼底検査を受けて下さい。
なお、眼底検査の際は瞳孔を拡げる点眼薬を使用ししばらく見づらさが出ますので受診する際はお手数ですが車の運転を控え、ご家族の方に送迎して頂くか、バス・タクシーなどの公共機関のご利用するようお願い致します。
抗生物質~正しく飲んでいますか?
耳鼻咽喉科には中耳炎、風邪、急性鼻炎、副鼻腔炎、咽喉頭炎、気管支炎などの多くの感染症の患者さんがいらっしゃいます。
ほとんどが細菌感染ですので抗生物質を処方することが必要になります。
病状によって原因菌を推定し有効と思われる抗生物質を処方しますが抗生物質にも作用の面で特徴があります。 その特徴は大きく次の2つに分かれます。
例えば①の特徴のあるものは1日量を一度に服用した方が有効ですが1日量を分けて服用してしまうと抗生物質の血中濃度が十分に上がらず同じ1日量を服用しても効かないことになります。
従って、効果を十分に発揮するためには指定された服用回数は変えないことが大切です。
軽度認知障害
何らかの認知機能の低下はあっても、日常生活には特に支障がない、あるいは自立ができているという状態を「軽度認知障害」と言います。認知機能には、注意力、物事をうまく進める能力、学習と記憶、言葉の能力、目で見て認識したり、それと作業を組み合わせたりする能力、他の人の感情の変化に気付く能力があります。認知機能が軽度に低下すると、次のような事が起こる可能性があります。
今まで簡単にできていたことをするのに時間がかかるようになったり、間違いが多くなったりします。異なる作業を並行してすることが難しくなったり、会話の変化について行くためにより多くの努力が必要なって、疲れ易くなることもあります。最近の出来事を思い出すのに苦労し、メモやカレンダーに頼ることが多くなるかも知れません。映画や小説の登場人物を覚えておくためにそのつど手がかりが必要になったりします。言葉が出にくくなったり、微妙な文法の誤りが生じたりすることもあります。
新しい場所にたどり着くために以前よりも多く他人に尋ねたり、集中していないと道に迷ったりすることもあるでしょう。大工仕事、縫い物、編み物などの空間作業に大きな努力を必要とするようになります。顔の表情を読んだりする能力の減少、外向性または内向性の増加、節度の低下、微妙なあるいは一時的な無感情、または落ち着きのなさなどのために、性格が変わったように見えることもあります。
軽度認知障害は認知症に進む場合と、あまり進行しない場合があります。MRIなどの頭部画像や心理検査であまりはっきりとした所見が得られませんが、脳シンチという検査で脳の特定の部位における血流の低下が見られることがあり、このような場合には認知症へ進行する可能性が高いと考えられます。
対応としては、認知症の薬を服用する、半年~1年くらい経過を観る、などの場合があります。
脂肪肝から肝臓がんへ?
肝臓がんはこれまでB型・C型肝炎ウイルス感染者からの発症が約90%と大部分を占めていました。
従ってほとんどの肝臓がんはウイルス感染者を適切に経過観察していれば早期発見・早期治療が可能でした。
しかしその状況が2000年頃から変化してきており、肝炎ウイルス感染のない方の肝臓がんの発症が2倍以上に急増しています。
その中の原因で最も多いのはアルコール性肝疾患(お酒の飲み過ぎ)ですが、注目すべきは、次に多い原因がアルコールを飲まない方の脂肪性肝疾患(非アルコール性脂肪性肝疾患と総称します)だということです。
非アルコール性脂肪性肝疾患とはあまり聞き慣れない病名だと思いますが、分かりやすく言うと「脂肪肝」と、それに炎症が加わった状態の「脂肪性肝炎」を合わせたものです。
「脂肪肝」は人間ドックのエコー検査などで20%前後の方が診断される頻度の高い疾患ですので、耳にしたことのある方や実際に診断された方も多いでしょう。
肝臓がんはもう一方の「脂肪性肝炎」から発症しやすいと考えられていますが、ここで大きな問題は、現時点ではその両者の区別はエコー・CT検査や血液検査のような簡便な方法では難しく、肝生検といって肝組織の一部を採取して顕微鏡で調べるしか手段がないということです。
つまりこれは、人間ドックのエコー検査で「脂肪肝」と診断された方の中にも肝臓がんを発症するリスクのある「脂肪性肝炎」の方が混在している可能性があることを意味します。
一方で肝生検は局所麻酔をかけ体に針を刺して行う侵襲(しんしゅう)性の高い検査で、術後の出血リスクもありますので適用は慎重に考えねばなりません。
「脂肪肝」は従来良性疾患と考えられてきましたが、今後は必要に応じて「脂肪性肝炎」でないか精密検査を受け、もしそうであれば肝臓がん発症の可能性も念頭に入れた定期的なチェックを受けることがますます重要になってくると思われます。









