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一般社団法人日本口蓋裂学会認定師について

歯科2021/07/13

岩手医科大学 歯学部を、1975年に卒業。直後に札幌医科大学口腔外科に、スキー部の先輩の伝手で、入局。その当時、佐々木元賢教授のもとで晩学に励んでいました。

佐々木教授は、九州大学医学部を卒業し、1950年に九州大学医学部を、1953年に東京医科歯科大学歯学部を卒業され、その当時大変難しかった、小児全身麻酔を研究され九州大学医学部助手、講師、助教授を経て、1961年札幌医科大学口腔外科教授。そのご、長崎大学歯学部部長。になられた方です。そのころ、1歳未満の麻酔ができる方はいなかったようで、手術はもっぱら洗濯板に縛り付押さえつけてしていたとのことでした。笑い話で、げんこつ麻酔という言葉があり、子供をげんこつで殴り気絶している間に手術をしたなどの話を聞きました。したがってそのころは札幌医大でも、小児麻酔ができる方が来られたことは大変スクなかったのではなかったと想像します。佐々木元賢先生が唇顎口蓋裂の手術を手掛けたのは、ながれとしては自然だと思います。

私が、札幌医科大学口腔外科に入局したころは、全道からたくさんの患者さんが来られ、月曜木曜が手術日でしたが、3例、週に6例が、唇顎口蓋裂関係の手術でした。ほとんどすべての手術が、教授が執刀されました。我々新入医局員は、手術介助や外来担当でした。当時の記憶では、新卒の私のような歯科医に、40歳前後のお父さんが、「私の子供をよろしくお願いします。」と手術前に必死にお願いされました。あまり大きな声では言えませんが、手術の順番が早くなるようにいろいろなことをした記憶があります。そのころ、函館からもたくさんの患者さんが来られていました。また、いずれは函館に帰り、開業しようと考えていましたので函館に帰ってからこの子らのために、何かできないかと思っていました。またこのころ、苫小牧の口蓋裂の子供と、親が青函連絡船で身投げ自殺をし、記事になりました。そのころは、手術は健康保険適応でしたが、その後の治療の矯正歯科治療は、保険外で、そのころでも2-30万かかる治療のため、ほとんどの子供が受けることができませんでした。毎日新聞、北海道版で「谷間の口蓋裂児ーこの子らに健保を」のキャンペーン記事が連載されました。そのことが、当時の参議院議員コロンビアトップが取り上げ、矯正歯科治療の保険導入が決まりました。私自身は、口腔外科に4年勤務し、佐々木元賢先生が、長崎大学歯学部創設のため、転出された後東京医科歯科大学より来られた小浜先生の元、口蓋裂児の言語を勉強しました。その当時、言語治療室では、、お茶の水女子大出身の伊藤静代先生が、言語治療室を担当していて、一緒にx線テレビ室で、軟口蓋の動きを自作の装置を用いて、観察したことをなつかしく思い出されます。その際、伊藤先生の知識をもっと新人医局員に理解してもらったいいとお話ししたところ、歯科医ではない自分が、歯科医のみんなに説明しても、興味を持っていくれる方がいないと、私に寂しく話されたことを、記憶しております唇顎口蓋裂児の治療は、多くは1歳6カ月まで形成外科医と一部の口腔外科医が手術を担当しており、発語が始まる1歳半以降に言語治療と、乳歯を含めた歯科治療が始まります。また、生後3カ月頃、口唇の部分の手術が必要ですが、顎裂が大きく変位していると、生後1週より、PNAM(術前鼻歯槽形成)が開始されます。現在では当院が担当しております。また、口蓋裂の言語についても、札幌医科大学で一部手掛けておりました。手掛けていないのは、矯正歯科分野でした。このため、矯正歯科の治療技術を得るため北海道医療大学(旧東日本学園大学)歯学部矯正歯科に入局。5年勤務後、函館市立病院歯科の科長として、先代の山田先生の後釜として勤務しました。その当時山田先生の下で、北海道大学歯学部小児歯科出身の渡辺郁也先生【現在花園町で開業)が勤務されており、函館中央病院小児科の医師から、小児歯科治療のため、口蓋裂患者が函館市立病院歯科に紹介、通院されていました。なお、その小児科医の奥様が、北海道大学歯学部小児歯科で、渡辺先生と一緒に勤務されていたとのことです。札幌医科大学で口唇の修正術を希望して受診した担当した10歳の函館の女の子のお母さんが、「この子が私を責めるんです。」と訴えていました。当時の耳鼻科の科長が、岩手医科大学医学部で同期であった、金子先生から、見てほしい患者さんがいると言われ、耳鼻科外来に行くと札幌医科大学で受け持った患者さんでした。矯正治療を終えたことを記憶しております。またみはら歯科矯正クリニックを開業して10年後くらいに、函館中央病院口腔外科に勤務されている札幌医科大学口腔外科出身の辻先生から、当院に軽度の口唇裂の子の矯正歯科治療を、紹介されて女の子が来院しました。すると、その子のお母さんが、札幌医科大学で担当した女の子でした。おばあちゃんも、元気だとのことで、当時のことを思い出されます。いまでも通院しております。なにか、強い運命を感じております。

私が市立函館病院に勤務したと同時期に口蓋裂矯正歯科治療の保険導入が決まり、また、日本矯正歯科学会での認定医審査も始まりました。この間、米国カナダに短期ですが。口蓋裂関係の7施設の見学をしましたが、まだまだ知識不足で、また、日本の口蓋裂の医療レベルも大変低いものでした。私がみはら歯科矯正クリニックを開業した際に函館中央病院形成外科科長 浜本先生が、北大形成外科助教授からこられました。中央病院で面会した際、浜本先生は以前北海道大学k歯学部口腔外科の助教授の経験があり、札幌医科大学口腔外科、旭川医科大学口腔外科3科で、年に数回合同カンファランスをして、いろいろな症例を検討していました。私も何度かスピーチして、浜本先生とお会いしていました。このため、浜本先生は口蓋裂治療に熱心で、中央病院に言語治療室を開設、早坂先生が担当されました。その際、浜本先生は、形成外科と矯正歯科との連携が口蓋裂治療は、非常に大切で、形成外科医と矯正歯科医は、ある意味で結婚するような付き合いになると話されていました。その時に、まだまだ未熟な私を、チームアプローチのメンバーに認めいただけたことは、この面でのすべての始まりだったと感謝しております。その後中央病院の科長は木村先生に交代し、木村先生は、平成2年から浜本先生の後を引き継ぎ、唇顎口蓋裂の面を深く勉強されました。また当時、日本で最も進んでいた東北大学、形成外科、矯正歯科(幸地先生)の治療法の、顎裂部への腸骨海綿骨移植を、提案し、取り入れていただけ、治療した患者さんについて報告しました。この治療法はそのころは北海道では大学を含めても、函館のチームアプローチだけでした。現在は、この治療法が全国的にもルーティンとなっております。また、私の発想で、骨移植した顎裂部に、日本で初めて下顎前歯を歯牙移植した報告を、日本口蓋裂学会に共同で発表しました。それ以降類似の報告が、他機関より多数され、一般化しております。いままで、大学病院がない函館で、大学より早く優れた治療法を手掛け、函館在住の口蓋裂患者により安心していただこうと努力してきました。医療は、最終的には信頼感だと考えております。このため、全国的に認めていただけるよう、10数年にわたり学会報告をしてきました。また、医学博士も勉強の一つとして授与していただくことができました。
また、日本矯正歯科学会認定医および道南地区で唯一の日本成人矯正歯科学会専門医、指導医と認められました。この度、日本口蓋裂学会が、いろいろな科の認定師の制度を作り、昨年募集しました。私も卒業後、45年、口腔外科を経て、矯正歯科に携わり、41年たち、70歳となりました。症例提出、その他の審査を受け、この4月に認定されました。おそらくは唇顎口蓋裂患者さんのほとんどは、大学病院に通院しており、地方都市では、手掛ける矯正医は全国的には少ないと思います。現時点では、矯正歯科分野では全国で134名、北海道では私1名です。いままで、口蓋裂の児に教えられ、治療を続けることができた勲章かなとおもい、いままでお世話になった方へ深く感謝しております。また、唇顎口蓋裂児は、体表の先天異常ではも頻度が高く、知的な問題を持つ子が少ない障害です。函館の人口は現時点で、26万人ほど、周辺をわせて30万人ほどですので、唇顎口蓋裂児の発生頻度0.0018をかけると540人ほどの方がおられることが予想されます。当院に来ていただいている子は、200名以上ですので、ほとんどの方が当院に来ていることになります。市内で出産された唇顎口蓋裂の赤ちゃんのほとんどは、中央病院形成外科を紹介受診し、多くの方々が、チームアプローチ一員としての当院をこの30年にわたり受診しております。15年前には、形成外科科長木村先生より、PNAM(術前鼻歯槽形成)について相談されました。その患者さんは、重い心臓の障害のため、全身麻酔が受けることが出来なかったため、1歳を過ぎるまで口唇顎口蓋裂の手術を受けることが出来なく経管栄養のみで栄養補給をされていました。CTを撮影し、そのデータをもとに。北海道工業技術センターの協力を頂き、当院の上野技工士長とともに、顎の模型を作成し、全道で初めて患者さんに装着したところ、今まで経管栄養だけでミルクを飲んでいた児が、哺乳瓶を吸い始めたことを、喜んだことを思い出しました。その子は、現在問題なく、高校生活を歩んでいます。口蓋裂による障害は、口唇部。から硬口蓋にかけての、骨及び軟組織の欠損と鼻の変形ですが、遺伝的な問題や知的な障害が少ない疾患です。現在では、治療技術も上がり、外見的にも満足できる結果が得られます。しかし、出生時に、母親が受ける心理的な影響や、治療が長期になる、その他、本人の心の問題が一生続きます。このため、一番最初に手掛けた研究は、親と子供の心理についてでした。その結果、この函館ですべての治療が提供できることは、この面で大きな安心を与えることが出来たことがわかりました。出生時の親の落ち込みを、地元で、生後1週でPNAMの装置を入れることが出来、今後の医療体制に安心を、感じる。大学のような大きな組織であれば、担当の医師が変わり、変わるごとに不安をかんじるが、函館では担当が変わらず、通院も楽で、安心感を与えていた。しかし、地方で継続的に医療を提供するためには、最新の治療技術の習得を、継続的に続けなければ、安心感を与えることはできません、この面でも、学会その他などから、知識の継続的な習得が必須です。従いまして、この疾患について継続するには、担当する医療従事者の継続的な努力が不可欠です。これからも可能な限り、努力をしていきたいと考えております。

また、2006年に「谷間のこう蓋裂児ーこの子ら健保をー 再発行 (2006.0224掲載分)」を、当時の5名の歯科衛生士により、発刊できたことを思い出し、うれしく感じております。函館中央病院の方々には、いろいろな面でご協力いただきました。退職された初代言語治療室の早坂先生には、教えて頂ながら、発音補助装置を作成したり、特に形成外科科長の木村 中先生には30年間にわたり、お世話になりましたことを深く感謝しております。
昭和58年、市立函館病院に勤務したと同時期に口蓋裂矯正歯科治療の保険導入が決まり、また、日本矯正歯科学会での認定医審査も始まりました。市立函館病院に赴任する前に、米国カナダに短期ですが。口蓋裂関係の7施設の見学する機会を得ました。医療技術、システムすべての面で、その素晴らしさに感動し、日本に帰って地方都市函館で実現してみようとの思いを持ちました。私がみはら歯科矯正クリニックを開業した際に函館中央病院形成外科科長 浜本先生が、北大形成外科助教授からこられました。浜本先生は以前北海道大学歯学部口腔外科の助教授の経験もあり、その当時、札幌医科大学口腔外科、旭川医科大学口腔外科3科で、年に数回合同カンファランスをして、いろいろな症例を検討していました。私も何度かスピーチして、浜本先生とすでに面識がありました。このため、浜本先生は口蓋裂治療に熱心で、中央病院に言語治療室を開設、早坂先生が担当されました。中央病院で面会した際、浜本先生は、形成外科と矯正歯科との連携が口蓋裂治療は、非常に大切で、形成外科医と矯正歯科医は、ある意味で結婚するような付き合いになると話され、矯正医の立場を、非常に理解していただいておりました。その時に、まだまだ未熟な私を、チームアプローチのメンバーに認めいただけたことは、この面でのすべての始まりだったと感謝しております。その後中央病院の科長は木村先生に交代し、木村先生は、平成2年から浜本先生の後を引き継ぎ、唇顎口蓋裂の面を深く勉強されました。また当時、日本で最も進んでいた東北大学、形成外科、矯正歯科(幸地省子先生)の治療法の、顎裂部への腸骨海綿骨移植を、提案し、取り入れていただけ、治療した患者さんについて報告しました。この治療法はそのころは北海道では大学を含めても、函館のチームアプローチだけでした。現在は、この治療法が全国的にもルーティンとなっております。また、骨移植した顎裂部に、下顎前歯を歯牙移植した報告を、全国の他の機関に先駆けて日本口蓋裂学会に共同で発表しました。それ以降、類似の報告が、他機関より多数され、一般化しております。いままで、大学病院がない函館で、大学より早く優れた治療法を手掛け、函館在住の口蓋裂患者により安心していただこうと努力してきました。医療は、最終的には信頼感だと考えております。このため、全国的に認めていただけるよう、10数年にわたり学会報告をしてきました。また、勉強の一つとして医学博士も授与していただくことができ、日本矯正歯科学会認定医および道南地区で数少ない日本成人矯正歯科学会専門医、指導医と認められました。私も卒業後、45年、口腔外科を経て、矯正歯科に携わり、41年たち、70歳となりました。昨年、日本口蓋裂学会が、いろいろな科の認定師の制度を初めて設立しましたので、よい機会だと考え、昨年、申請しました。症例提出、その他の審査を受け、この4月に認定されました。おそらくは唇顎口蓋裂患者さんのほとんどは、大学病院に通院しており、地方都市では、手掛ける矯正医は全国的には少ないと思います。現時点では、矯正歯科分野では全国で134名、北海道では私1名です。いままで、口蓋裂の児に教えられ、治療を続けることができた勲章かなとおもい、いままでお世話になった方へ深く感謝しております。

また、唇顎口蓋裂児は、体表の先天異常ではも頻度が高く、知的な問題を持つ子が少ない障害です。函館の人口は現時点で、26万人ほど、周辺をわせて30万人ほどですので、唇顎口蓋裂児の発生頻度0.0018をかけると540人ほどの方がおられることが予想されます。当院に来ていただいている子は、200名以上ですので、ほとんどの方が当院に来ていることになります。市内で出産された唇顎口蓋裂の赤ちゃんのほとんどは、中央病院形成外科を紹介受診し、多くの方々が、チームアプローチ一員としての当院をこの30年にわたり受診しております。15年前には、形成外科科長木村先生より、PNAM(術前鼻歯槽形成)について相談されました。その患者さんは、重い心臓の障害のため、全身麻酔が受けることが出来なかったため、1歳を過ぎるまで口唇顎口蓋裂の手術を受けることが出来なく経管栄養のみで栄養補給をされていました。CTを撮影し、そのデータをもとに。北海道工業技術センターの協力を頂き、当院の上野技工士長とともに、顎の模型を作成し、全道で初めて患者さんに装着したところ、今まで経管栄養だけでミルクを飲んでいた児が、哺乳瓶を吸うことが出来るようになり、喜んだことを思い出しました。その子は、現在問題なく、高校生活を歩んでいます。
また、2006年に「谷間のこう蓋裂児ーこの子ら健保をー 再発行 (2006.0224掲載分)」を、当時の5名の歯科衛生士により、発刊できたことを思い出し、うれしく感じております。函館中央病院の方々には、いろいろな面でご協力いただきました。退職された初代言語治療室の早坂先生には、教えて頂ながら、発音補助装置を作成したり、特に形成外科科長の木村 中先生には30年間にわたり、お世話になりましたことを深く感謝しております。


Text by みはら歯科矯正クリニック 村井 茂( 2021年7月13日 「」掲載)

いま一度感染予防の徹底を

内科2021/07/08

新型コロナウイルスの感染が中国で確認されてからすでに1年以上が経ちました。

いまだに感染収束の兆しも見えず、みなさんも心労の多い日々が続いていると思います。

この1年でわかったことと言えば、「感染がすぐに広がり、いわゆるクラスターを容易に発生させてしまうということ」「感染しても無症状の方がたくさんいるということ」だけです。

日本でも、ようやくワクチンの接種段階にまでこぎつけましたが、いまだ治療法も確率していないのが現状です。

風邪と一緒だから恐れる必要はないとメディアで持論を展開している有識者も多数おりますが、味覚・嗅覚障害や脱毛、全身倦怠感などが長期間にわたって続くといった後遺症に悩まされる方も多く、一般的な風邪とは一線を画す感染症ではないかと思っています。

もちろん高齢者だけではなく、小さなお子さんにも感染してしまいます。

そのため、大切なものは感染予防の継続と徹底です。

1年以上にわたる長期間の感染予防の精神的な疲弊や自粛疲れといわゆる「コロナ慣れ」により感染対策が疎かになってきていないか、いま一度考えてもらいたく、今回このテーマで話しをさせていただきます。

大半の方々が徹底して行っているマスクですが、中には鼻がマスクから出ていたり、顎にマスクをかけていて全く感染予防の意味を成していない方や、嫌がるからという理由なのかもしれませんが、マスクをされていない小さなお子さん、街中でマスクすらせずに談笑している中・高校生などがいまだに見受けられます。

全国的には高校の部活動クラスターや保育園クラスターなども起こっており、いかにお子さんにきちんとマスクをさせ感染予防を行うかも大切なことの1つです。

「自分が無症状の感染者かもしれない」と考え方を切り替えていただき、「感染するのを予防する」だけではなく「、感染させないように予防する」よう心がけてください。

また、ドアノブを介してクラスターが発生したと報道されたこともありました。「商業施設などに入るとき」だけではなく「その場所から出るとき」「ご自宅に戻られたとき」にもきちんとアルコール消毒を行っていただきウイルスを家庭内に持ち帰らないようにしてください。

1日も早い「コロナ感染者ゼロ」を目指し、いま一度感染予防の徹底をお願いいたします。

わたくし自身もみなさまとともに感染予防に努めてまいります。


Text by おの内科呼吸器内科クリニック 院長 小野 貴広( 2021年3月29日 「北海道新聞夕刊」掲載)

生活習慣病、メタボリック症候群

脳神経外科2021/07/08

「生活習慣病」や「メタボリック症候群」という名前は、ご存知でしょう。医療者は病気に色々名前をつけますが、診断された人は気持ちの良いものではありません。診察の際に「メタボですから」と恥ずかしそうに、苦笑いを浮かべる人がいます。どうして苦笑いなのでしょう。

「スティグマ」という言葉があります。ギリシャ語で、奴隷や犯罪者に付けられた「印」の意味です(日本でも「島流し」から戻った犯罪者の腕に入れ墨が入れられました)が、現代では、身体的な障害や宗教など、周りとの違いが好ましくないとして区別する「印」として使われます。さて、「生活習慣病」や「メタボ」と診断されると、自身も、周囲の人間も「乱れた生活から、病気になったダメ人間」のレッテルを貼ってしまいます。この「レッテル」がスティグマです。結局、心配なので毎年、健診は受けますが、健診結果を隠し、医師には相談しません。「ダメ人間」のレッテルを見せたくないのです。

最近、糖尿病学会の偉い方の講演をオンラインで聞きました。糖尿病に対する「スティグマ」を取り除きましょうというお話でした。現在、世界中がコロナウイルス感染で苦しんでいますが、糖尿病などの病気を持っている人の死亡数が多いという報道がされています。そのため、糖尿病患者さんの中には「私なんか、コロナにかかったら、一発でお終いですヨネ」などという人がいます。今回聞いた講演によると、これまでに分かっているデータからは、糖尿病でも血糖コントロールが良好な人達では、糖尿病でない人達と死亡率に差はないということでした。

結局、病気であることが悪いのではなく、それをほったらかしにするのがいけないのです。病気は誰かのせいではなく、まして本人の責任でもありません。恥ずかしがることはありません。「生活習慣の悪い人」のレッテルを剥がしましょう、生活習慣病とは、生活習慣の改善でコントロールできる病気だと考えましょう。


Text by 函館西部脳神経クリニック 院長 小保内 主税( 2021年3月29日 「北海道新聞夕刊」掲載)

新型コロナウイルスワクチン

内科2021/06/03

 いよいよ日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種が始まろうとしています(2月10日現在)。接種するか迷われる方もいらっしゃると思いますが、異例のスピードで開発されたワクチンだけに判断材料となるデータが少ないのはやむをえないところです。

 日本国内のメーカーもワクチン開発を急いでいますが、最初に使用されるのは米国ファイザー社の製品になりそうです。海外データでは有効率は95%(かかる人が20分の1に減ったという意味です)と高く期待がもてますが、一方で気になるのは副反応です。軽微なものが多い中で、アナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー反応は接種直後に蕁麻疹(じんましん)やのどのつまり感などの症状を発現し、さらに重症例では血圧低下・意識障害などをきたします。他のワクチン接種においても100万回に1回程度の発症があるとされてきましたが、今回のワクチンは100万回あたり5例にみられたと1月下旬に報告されています。当面は接種後15分から30分間ほど接種会場での経過観察が推奨されることになります。また日本人における正確な有効性や副反応の頻度は今後の大規模な接種例の蓄積によって初めて明らかになるでしょう。

 2月上旬の北海道の1週間あたりの新規感染者数は人口100万人あたり約120人です。感染者が他の人に感染させるのは2割くらいまでとされており、そのような感染者と出会う確率は数万人に1人くらいとなります。そのため感染した場合の死亡率が高い高齢者については、ワクチンを接種するリスクよりしないリスクの方が高いのではという意見もあります。

 改正予防接種法ではワクチン接種は国民の「努力義務」と位置付けられていますが、原則として接種を受けるのは任意となっています。私たちは、ワクチンのメリットとリスクを天秤(てんびん)にかけて判断しないといけません。


Text by 弥生坂内科クリニック 渡辺 雅男( 2021年2月22日 「北海道新聞夕刊」掲載)

アトピー性皮膚炎

眼科2021/06/03

 眼科の診察では眼とその周囲を重点的に観察しますが、そこでアトピー性皮膚炎に関連した所見がみつかったり、関連がありそうな症状の訴えを聞くことは多々あります。代表的なものとして、まぶたの皮膚の乾燥や赤み、結膜炎による慢性的なかゆみ、擦過や眼瞼内反症に伴う角膜のキズや微生物の感染などが挙げられます。皮膚に慢性的な炎症があると、それに引き続いて眼にもトラブルが波及する場合があるのです。では眼科ではどうするか。まず、まぶたの表側(つまり皮膚)のトラブルは、アトピー性皮膚炎の管理の基本に則ってまず清潔と保湿を意識することを勧めます。それでも不十分ならば副腎皮質ステロイド(いわゆるステロイド)入りの軟膏を使用します。そしてまぶたの内側(結膜)のトラブルには抗ヒスタミン薬やステロイド入りの点眼液を主に使用します(程度によってはさらなる治療が必要な場合もあります)。このように眼科でもまぶたの治療は行うものの、先述のとおりアトピー性皮膚炎においては眼の状態は皮膚のコンディションに大きく影響されますので皮膚科の受診も要検討です。

 過去に色々とアトピー性皮膚炎の治療を試したが奏功せず諦めたという方も少なくないと思いますが、「アトピー性皮膚炎は大人になってからでは治療できない」という誤った認識を捨て、現代の標準的な治療アプローチでもう一度治療に取りかかることも一案です。また、治療のキープレイヤーとなる点眼液や軟膏などの局所投与用ステロイドはその使い方のルールを守り、定期的な監視を怠らなければ有効かつ安全に使用できますので、やみくもに忌避することは有益ではありません。眼の健康を保つためにも、信頼できる皮膚科医をみつけ、地道なケアを根気強く継続することが肝腎と言えます。


Text by 江口眼科病院 佐々木 功( 2021年2月22日 「北海道新聞夕刊」掲載)

寒くなるとトイレが近くなる原因とその対策

泌尿器科2021/02/25

 体が寒さを感じると体内では、寒さに対応するために様々な反応が起こります。

尿量増加

 寒さにより交感神経が刺激されると末梢の血管は収縮します。体温が奪われるのを防ぐ反応です。しかしその結果、体の中心では血液量が増えて腎臓でつくられる尿量が増えます。末消血管が収縮すると汗や水蒸気となって出て行く水分も減るため、さらに尿量が増えます。夏と比べると1日数百ミリリットル以上増えることもあります。

尿意増大

 膀胱には尿がたまった時に尿意を感じる神経があります。また、それとは別に膀胱や前立腺が病気の時に異常を感じる神経があります。寒さは後者の神経を刺激することで尿意を引き起こすことが知られており、膀胱の中にあまり尿がたまっていなくても寒いと尿意を頻繁に感じるようになります。

 ではどのような対策をとったらよいのでしょう。まず尿量を減らすために末梢血管を拡張させるような運動をしてみましょう。毎日つま先立ちをくり返すことでも末梢血流の改善が期待されます。利尿作用のあるカフェインの入った飲み物を控えるのも効果的です。

 尿意を抑えるには、やはり寒さそのものへの対策も必要でしょう。食事はなるべく温かいものをとる。温かいお風呂につかる。暖かい服装を選ぶ。

 時には本当の病気により頻尿が引き起こされることもあるので、対策をしても改善しない場合や寒さに関係なく頻尿が続く時には、医療機関への相談がすすめられます。


Text by たんだ泌尿器科 田崎 雅敬( 2021年1月25日 「北海道新聞夕刊」掲載)

心不全パンデミック

内科2021/02/25

 「心不全パンデミック」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?新型コロナウイルスの影響で「パンデミック」という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃると思います。「パンデミック」とは、世界的に病気が流行することをいいます。

 「心不全パンデミック」とは、文字通り心不全の流行が危惧されるということです。医療の発展に伴い、高齢化社会に突入している昨今、日本は世界でもトップを走る超高齢化社会であります。心不全の患者数は毎年約1万人ずつ増加しており、2030年には130万人になるのではないかと推計されております。

 心不全パンデミック状態になると、入院を必要とする高齢心不全患者さんで病院があふれ、治療が必要な患者さんに対して受け入れ困難となる事態が予想されます。また、入院に伴い莫大な医療費がかかることや介護などの社会的問題が生じる可能性があります。ですから、常日頃から心不全を予防することが重要であると考えます。心不全は病気の名前ではありません。「病態」です。ですから心不全の原因となる疾患があります。心不全の原因で多いものとして、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、次に高血圧症が有名です。そのため前述の疾患を適切に管理することが重要です。さらに心不全を予防するために、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの治療を適切に行い、喫煙者には禁煙を指導することが重要であると考えます。また慢性心不全の患者さんは、繰り返しの入院を回避できるように管理することが重要となります。心不全の初期の自覚症状として、息切れやむくみがあります。また、心不全悪化の指標として体重増加があります。このような症状が気になった場合には、医師に相談することをお勧めします。


Text by 尾崎循環器内科クリニック 院長 尾崎文武( 2021年1月25日 「北海道新聞夕刊」掲載)

ステイホームでスマホ老眼が急増!!

眼科2021/02/25

 人間の目の構造は、カメラに似ています。水晶体は、カメラのレンズにあたり、遠くを見る時は薄くなり、近くを見る時は厚くなるように調節しています。老眼とは、この調節力が衰えてくる状態で40歳前後から始まります。しかし、最近は、近くが見づらい・かすんで見える・夕方になると物が見づらい・頭痛・肩こりなどの老眼の症状が、小学生から30代までの若い方にも出てきているのです。

 去年からのコロナ禍によりステイホーム時間が増え、スマホに触れる時間が増えているようで、若い人の10人に1人は、15時間以上もスマホを見ているとのことです。こんなに長時間スマホを見ていると、調節力が衰えて老眼と同じ症状が出る、いわゆる「スマホ老眼」になってしまいます。また、下向き姿勢で頬やあごもたるみ、老け顔になるとも言われています。ぜひ眼科で正確な視力検査を受けてみましょう。


Text by 藤岡眼科 藤岡 聖子( 2021年1月22日 「北海道新聞みなみ風」掲載)

小児のコロナウイルス感染症について

内科2020/12/14

 現在、函館市内でも感染者が増加傾向にある新型コロナウイルス感染症に不安を感じている方々も多いと思います。子供の感染者数は大人と比べると少ないようですが、感染しやすさは大人と変わらないこともわかってきました。家庭内で感染している例が多く、発熱、乾いた咳を認める一方で、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ないとされています。大人と同じように発熱が続き肺炎になることもあります。一部では、嘔吐・腹痛や下痢などの消化器症状も認め、大人で報告されている嗅覚や味覚の異常は子供では少ないようです。感染していても無症状である可能性も指摘されていますが、いずれにしても子供は正確に症状を訴えられないことに大人が注意しなければなりません。子供が重症化する割合は大人と比べると少ないようですが、2歳未満の子供では、比較的重くなる傾向があり、また一般的に基礎疾患を持っている子供の呼吸器感染症は重症化する可能性があります。その一方で、コロナウイルス感染症患者における喘息患者の割合が少ないこともわかってきています。

 現時点において、国内で新型コロナウイルスに感染した子供の多くは家庭内で保護者からうつったものか、集団の中で感染したものです。子供であっても濃厚接触者や健康観察対象者となった場合、何らかの症状を認めた場合は、まず地域の受診・相談センター(0120-568-019・24時間)にご相談下さい。新型コロナウイルス感染症を疑って一般の医療機関や休日夜間急病診療所などを受診しても、診断を確定するためのPCR検査ができない場合がありますので、お住まいの地域の保健所や市町村のHPで受診可能な医療機関をご確認下さい。お子さんでは原因不明の発熱が続く、呼吸が苦しい、経口摂取ができない、ぐったりしているなどの様子が見られるときは新型コロナウイルス以外にも様々な病気が考えられますので速やかな受診が必要ですが、感染症症状のある患者さんについて、医療機関ごとに受診時間や受付場所を変えるなど感染対策を行っている場合があります。受診前には必ずかかりつけ医や医療機関へのお電話でのご確認を重ねてお願い申し上げます。


Text by 佐藤内科小児科 中里 諭美 副院長( 2020年12月14日 「北海道新聞夕刊」掲載)

かかりつけ医の勧め

内科2020/12/14

 かかりつけ医とは「健康に関することを何でも相談でき 必要な時は専門の医師や医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師」のことです。

 熱がある、体がだるい、食欲がないなど、体調の不調を感じた時、また調子が悪いけれど、どこの診療科目に相談したらよいのかわからないということもよく耳にします。

 かかりつけ医には、既往歴をはじめ、他院でのどのような検査・治療・お薬を処方されているか、また仕事内容や家族構成なども把握してもらえていたら、不調の原因も総合的に判断し、専門医や高度な設備での検査や入院が必要になった場合に 適切な医療機関へ紹介可能となります。

 紹介された場合は、検査結果・診断名・治療方針は、かかりつけ医へも紹介医からの報告があるため、かかりつけ医からまた改めてわかりやすく結果を説明してもらうこともできます。

 診療所と専門病院や総合病院とで役割分担を行い、医療の効率化を図っているのです。

 日本は4人に1人が、高齢者といわれる、超高齢化社会です。65歳以上で介護保険が必要になると、行政に申請をしますが、その場合かかりつけ医が、主治医意見書を提出し、どのような介護が必要な段階にあるのかが判断されます。高齢のご夫婦、ひとり暮らしの方は、ご自身でも不安なこともたくさんおありだと思いますが、離れて暮らされているご家族や近くには住んでいるがなかなか様子を見に行けない、一緒に病院へ付き添って行けないご家族は、かかりつけ医に、電話で状況を確認したり相談したりしてみてはいかがでしょうか。

 かかりつけ医が決まっていない方で、定期通院する理由がない場合は、インフルエンザ等のワクチンの接種や特定検診を受けるとき、また職場の検診結果を持参し 生活のアドバイスをもらう等の利用の仕方も考えられます。

 新型コロナ禍の中、発熱や倦怠感などで感染を疑われた場合も、保健所の負担軽減のため、まずはかかりつけ医への相談が必要となりました。

 ご自身の全身状態を把握し いつでも健康状態を相談可能な「かかりつけ医」を見つけておくことが大切です。


Text by 鈴木内科外科クリニック 大原 眞理子( 2020年12月14日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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