『NASH』(ナッシュ)という用語を聞いたことはありますか? 〜脂肪肝との違いは?
「NASH」という用語を聞いたことはおありでしょうか。
「非アルコール性脂肪性肝炎(non alcoholic steato hepatitis:頭文字でNASH)」のことで、これはアルコールによらない脂肪肝が肝炎に進展した状態です。
これまで、普通の肥満や糖尿病などのメタボリック症候群で起こる単純な脂肪肝は、それ以上進行しないとされていましたが、その中で10人に1〜2人はナッシュを引き起こし、さらには肝硬変・肝がんへと進行する例があることが分かってきました。
単純な脂肪肝では肝臓の細胞に中性脂肪が貯まっているだけで、肝細胞の壊死や炎症、線維化は見られず、原因が無くなれば改善し元に戻ります。
一方ナッシュではアルコール性肝炎と同様の肝炎が起き、一部は肝硬変・肝がんへ進行する例も出てくるわけです。
単純な脂肪肝の1〜2割が、どういう場合にナッシュに進展するのか、まだはっきりとは分かっていませんが、脂肪の沈着に続き内蔵脂肪細胞から分泌される「サイトカイン」と呼ばれる因子や肝細胞での活性酸素の発生、さらに鉄蓄積などが加わった場合に発症するのではないかと推測されています。
診療において具体的に単純性脂肪肝からナッシュへの進展を疑うのは、肝機能のAST/ALT比の上昇(AST優位)に加え血小板の減少やヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲンなどの線維化マーカーの上昇があります。
さらに専門的には、超音波により肝臓の硬さ・線維化を測定するエラストグラフィー(硬度画像診断)も開発されています。
治療としてはインスリン抵抗性改善薬や肝庇護剤、坑酸化作用のあるビタミンE、高脂血症治療薬などが試みられています。
日常的には適正体重の維持、メタボリック症候群の是正が重要です。
男性の性(23)
前回はマリー・アントワネットとルイ16世の悲劇の一因・遠因は、ルイ16世の包茎にあったのではないか?という話で終わりました。 包茎には真性包茎と仮性包茎がありますが、包皮を陰茎根部側に引っ張っても、包皮が翻転せず亀頭が露出しないものを真性包茎といいます。
通常、男児は生下時ほとんど全て包茎ですが、3歳までに90%が亀頭の露出が可能になり、残りの10%が真性包茎といえます。
4~5歳までに亀頭が露出しない場合は、副腎皮質ホルモンクリームを狭くなっている包皮に1日3~4回、6週間塗布することで約70~80%は亀頭の露出が可能になると報告されています。 仮性包茎は包皮が過剰で、非勃起時には亀頭の一部または全部が包皮に覆われていますが、勃起時や包皮を翻転すれば亀頭が露出するものをいいます。
米国製アダルトビデオではポルノ男優が皆、非勃起時でも亀頭が露出しており、日本の男優と比較して『ああ、米国人には包茎は少ないんだなあ』と、若い時に誤った人種的劣等感を持った人も多いかもしれませんが、実は米国では包茎手術は常に国内最多の外科手術であり、2005年の統計でも男児の61%が新生児期に包茎手術をしています。 その是非についても長い間多くの議論があり、米国小児科学会は新生児期の包茎手術を推奨しているわけではありませんが、その手術件数は増加傾向にあります(キャンベル&ウォルシュ泌尿器科学第9版3747頁)。 新生児期の包茎手術の利点としては、幼少児における尿路感染の危険を軽減できる、陰茎癌の頻度が低下する、思春期以降の性行為感染症の予防に役立つ、早漏の防止に効果がある、といわれていますが、逆に衛生状況が非常に良好な北欧諸国(おそらく日本も)では幼少児の尿路感染や陰茎癌が極めて少なく包茎とは無関係という意見もあります。
早漏についても、包皮小体(いわゆるカリの部分)にある性感帯を切除してしまうことにより、むしろEDが増加するという意見もあります。(続く)
帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは
幼い頃に水ぼうそうにかかるのは珍しいことではありませんが、この原因となるウイルスは治ったあともその人の身体の神経節に潜んだままでいます。
そして疲労、ストレスや加齢など抵抗力が低下すると、再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に現れ発症します。 症状は初め、身体の左右どちらか片方にピリピリと刺すような痛みや違和感が生じ、4〜5日後にその部分が赤くなり、やがて小さな水ぶくれが帯状に現れます。
それがかさぶたになってから3〜4週間で治ります。痛みは眠れないほどのものから鈍いものまで人によりさまざまで、皮疹が治る頃には消えることが多いのですが、治った後も長期間にわたって続くことがあります。 昔は体を一周したら命にかかわるといわれていましたが、この病気はそのようなことはほとんどありません。
治療はできるだけ早いうちに始めることが大事です。
赤くなっても大丈夫:結膜下出血(けつまくかしゅっけつ)
「少しチクッとした後、鏡で見たら白目が真っ赤になっていましたが、見え方に変化はありませんでした」
皆様こんな経験ありませんか?
目やに等がなく「あかんべ」をしても下まぶたの裏側が充血していなければ、それは結膜下出血と言い、あまり心配いりません。
結膜下出血が起こる原因は完全には解明されていませんが、結膜弛緩(しかん)症といって白目が加齢に伴って弛(ゆる)んできたり、内科で血液を固まり難くするお薬を使用していると出血を起こし易いと言われています。放置しても約1~2週間で出血は吸収され、重大な病気の前駆(ぜんく)症状であることは極めて稀(まれ)です。
一つだけ注意が必要なのは白目の充血との区別です。
充血とは血管の中の血液が滞(とどこお)って血管が太く腫れ上がった状態で、眼に炎症が起きている兆候です。この様な症状は眼科での精査が必要となります。
汗管腫(かんかんしゅ)
汗管腫というのは眼の周りに多発するブツブツとした発疹です。
女性に多く、主に思春期以降にできてきます。
大きさは米粒くらいで、数個からもっとたくさん集まってできることもあります。
色は皮膚と同じ色です。
眼の周り、特に下のまぶたに多く見られますが、額や頬にできることもあります。
特に痛みやかゆみなどの症状はありませんが、自然に治ることもありません。
悪性ではないですし、悪性化することもほとんどないので治療しなくてもよいのですが、多発して細かいブツブツになるため、整容的な面で問題になることもあります。
治療法は、焼いてしまうという方法があります。
ただ、麻酔が必要になりますし、1回で取れないこともあります。
広い範囲の場合には何回かに分けて治療することもあります。
焼いてしまった場合、2週間くらいカサブタになって取れますが、しばらく赤みは残ります。
化粧はできますのである程度隠すことはできます。
汗管腫に似たものとしてエクリン汗嚢腫(のうしゅ)というものがあります。
これは、女性に多く、やはり眼のまわりに米粒くらいの大きさのブツブツがたくさんできます。
でも、汗管腫は一年中変化しませんが、エクリン汗嚢腫は冬は良くなりますが、夏になると出てくるという特徴があります。
エクリン汗嚢腫は、焼いてもまた出てきたりして、汗管腫よりも治療は困難な事が、多いようです。
やはり似たものとして、稗粒腫(はいりゅうしゅ)というものもあります。
これも女性の眼の周りに多く見られますが、単発していることが多いようです。
これは、小さく切開して、中の袋を出してしまうと取れます。
麻酔をしなくてもできます。
産科医のひとりごと
この20年で、産科学は非常に進歩を遂げました。でもまだわからない事も沢山有ります。一つはいつ陣痛が始まるのか、ということです。
よく妊婦検診で10ヶ月に入った妊婦さんにいつ頃生まれますか?と聞かれる事がありますが、診察で、子宮口が開いている。
柔らかくなっている、赤ちゃんが下がっている、等を診て判断しますが、正確にいつという事は解りません。
陣痛が、なぜ、どのように始まるのかが解らないのです。
解れば、ご主人の休みを何時にとるか、お産の手伝いのためお母さんに何時に来てもらうか、予定が立てやすいのですが。もう一つは赤ちゃんの事です。
お母さんのおなかにいるうちに、できるだけ正確に赤ちゃんの事を知りたいということです。突如お腹のなかで死ぬ赤ちゃんがいます。
妊娠中も、お産の時も何も異常がなかったのにハンデキャップを持って生まれてくる赤ちゃんもいます。
超音波による発育の確認、形のチェック、胎児の心拍のモニタリングによるチェックなどで、情報を少しでも多く集め、出来るだけ正確に赤ちゃんの状態をつかもうとしていますが、まだ解らない事、出来ない事があります。今後新しい検査器械の開発。新たな研究により、より正確に子宮内の胎児の状態がわかるようになる事を願っています。
気道過敏性とは…
喘息患者さんは、各々がアレルギーを引き起こす要因であるカビやハウスダスト、花粉以外の日常にあるさまざまな刺激にも敏感に反応し、咳や痰、喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅーすること)などの症状を引き起こします。例えば、線香の煙や冷たく乾いた空気、塩素系の化学物質、急激な運動などが知られています。このような気管支の反応性を、気道過敏性と言います。重症な喘息患者さんほどより敏感になっていて、ちょっとした弱い刺激でも喘息発作を引き起こす事があります。「気管支が弱い」と言われるのはこうした理由からです。
気管支に炎症が起こり続けていると、より一層刺激に敏感になりますので、喘息治療においては「炎症を抑え続けること」が大切です。そのためには、症状が消失した後でも治ったと自己判断せずに、きちんと治療を続ける事が必要です。必ずしも「症状消失」イコール「炎症消失」ではないからです。気管支の炎症が治まったかどうかを、直接簡単に目で確認できればいいのですが、局所麻酔下に気管支内視鏡というカメラを使わなければ気管支の中を見る事ができず、咳や痰が出ている外来患者さんに気軽にできるものではありません。治ったと思って、薬をやめると気管支に残った炎症はいつまでたっても治まらず、くすぶった状態で留まります。これを繰り返すと、気道過敏性が増します。「以前はすぐに治ってたのに、今回はなかなか症状がよくならなくて…」と話されるのはこれが理由の一つのことがあります。
肺機能検査を行うことで現在の気管支の状態をある程度把握することはできますので、気になる方は肺機能検査をしてみるのも一つの方法ではないかと考えます。また、喫煙によっても気管支には多かれ少なかれ炎症が引き起こされます。少しでも症状を軽くし、長引かせないためにも減煙・禁煙を心がけましょう。
新多汗症・ワキガ治療事情
美容形成外科では近年、治療を受けるニーズとして、できるだけ短時間で、傷跡が残らず、創部の固定がなく、日常生活に支障がない治療方法で行われるようになってきました。
治療効果がほどほどで、多汗症や軽度のワキガの方に用いられる方法として、メスを使用しない絶縁針による電気分解法があり、翌日からシャワーも可能で、日常生活に支障をきたしません。
また、最近では注射だけですむ有効期間が6カ月程度の治療方法として、BOTOXなどボツリヌス毒素(ボツリヌス毒素は眼科では斜視の治療に使用され、整形外科では斜頚の治療に使用されている薬剤です)による治療法も行われています。
さらにワキガの強い方や充分な効果をお望みの方は、クアドラカッターを使い数ミリの切開で汗腺を強力に吸引しながら切除する方法が行われています。この治療では10日間程度の患部の固定が必要になりますが、術後の傷が目立ちません。
多汗症とワキガで悩んでいる方は、自分で考えているよりも軽度な症状であることがあります。充分な診察を受けて適切な治療方法を選択することが大切です。
ヒアルロン酸とは? (2)
膝(ひざ)などの関節や皮膚では、加齢や病気により、ヒアルロン酸の濃度が減少します。また大人の皮膚では赤ちゃんの20分の1といわれております。関節液の粘度も低下しますので、ヒアルロン酸の体内での働きはより重要となってきます。 20年前からヒアルロン酸は医療用医薬品として使用されています。関節内に直接注入することで、加齢などにより減少したヒアルロン酸を補い、さらにヒアルロン酸の産生を高めることにより、関節の動きを良くし、関節の痛みを抑えます。通常1週間に1回、連続5回注射します。なお、症状によってはさらに注射を継続することもあります。 注射1回あたりの窓口負担は、約200円です(保険1割負担の場合)。1ケ月800円程度となります。注射時の痛みは、普通の注射と同じくらいの痛みです。 加齢による膝の痛み(変形性膝関節症)にはヒアルロン酸の関節注射、下肢筋力訓練が効果的といわれております。 膝の痛みにお悩みの方は整形外科にご相談ください。
医療被曝(ひばく)について
先日、日本では診断用X線によってガンが3・2%増える可能性があるという論文が発表され、様々なメディアで報道されました。要するに、被曝するとガンが増える。これは広島、長崎、チェルノブイリなどからも明らかで、日本ではX線やCTスキャンでの検査数が世界でも飛び抜けて多いので、ガンが増えるでしょう、ということのようです。我が国ではメディア報道に過剰な反応をすることがしばしばあるので、もし患者さんが治療方針決定に必要なX線検査にまで同意してもらえなかったらどうしよう、と思っていましたが、特にそのようなことはありませんでした。
放射線の影響には、ある線量以上照射されなければ起きないもの(確定的影響と言い、皮膚炎、不妊、白内障などがあります)と、照射される線量に比例して発生確率が増すもの(確率的影響と言い、放射線誘発ガンがあります)があり、確定的影響についてはわかっていて、最も軽い初期紅斑(皮膚がほんのり紅くなること)でも胸のレントゲン写真で連続六千回以上、CTでも連続百回以上とらなければ起こりません(おそらく機械が先に壊れるでしょう)。最初にあげた論文は確率的影響について研究されたもので、それについては残念ながら詳細はわかっていません。しかし、皆さんが受けられるX線検査は病気の早期発見と適切な治療のために必要なもので、例えば1センチの肺ガンはX線検査でなければ発見不可能で、打診聴診触診ではまずわかりません。このように被曝というリスクを払っても治療のために得られる利益が多いという判断のもとに検査は行われているのです。ですが、いくら利益が勝るからといって、被曝線量軽減への努力は怠ってはならず、医療機関のみならず医療機器メーカーも一体となって、質を落とさず線量を落とす工夫をしています。
皆さん、どうぞ主治医の先生を信じて今後もX線検査を受けていただきたいと思います。









