糖尿病と飲酒
年末が近づき、宴会でお酒を飲む機会が増えているかと思います。今回は、アルコールと糖尿病について、お話ししたいと思います。
アルコール(エタノール)は、少量では健康にいいとされていますが、成人男性で1日平均30g(日本酒1.5合相当)以上では死亡率が急上昇します。
また、アルコールは1gあたり、7kcalのエネルギーがあるため、糖尿病の血糖コントロールに悪影響を与えます。そのため、血糖コントロールの悪い方は原則禁酒とする、良い方(ヘモグロビン A1c 6.5%以下)は、一日2単位(ビール500ミリリットル、日本酒1合、ワイン200ミリリットル)以下の飲酒は可能です。外食では、飲み過ぎ、食べ過ぎないことが大切です。外食時ウーロンハイならウーロン茶をたくさん入れる、カロリーの低いものからたくさん食べるなどの工夫をしてみましょう。
休肝日も週2、3回設けてください。では楽しい年末ライフをお過ごしください。
男性の性(19)
「日本人は元々、草食系男子が多かったのでは?」ということは、以前(2006年)このコラムで、W杯サッカー日本チームが予選リーグでオーストラリアに負けた試合を観て『精子時代まで遡っても勝てないのではないか?』などという珍説を披露しましたが(この説は今年のW杯日本チームの活躍で一部覆されました)、原始時代から食生活が穀物中心で他人との争いごとや収奪を嫌う草食系が日本人には多いということならば、仕方ないかな、と思います。 ところで、草食系にも良いこともあって、例えば前立腺癌は欧米人に多くアジア系では少なく、10万人あたりの前立腺癌の患者数は日本、中国(北京、香港)、台湾と欧米を比べると5〜20倍欧米で多く、人種的には同じ日本人のハワイ在住日系人でも日本人とハワイ在住白人の中間の患者数で約5倍でした。(Cancer Incidence in Five Continents Vol.IIIより) 米国では男性癌患者数の1位、死亡者数は肺癌に次いで2位が前立腺癌ですが、日本では近年患者数が増加しているものの、それでも米国のほぼ10分の1です。
また、世界癌研究機関・米国癌研究協会より発表された栄養と癌に関するレビューによると、前立腺癌の危険因子として可能性のあるものとして、総脂肪・動物性脂肪・肉類・牛乳・乳製品が挙げられています。
生活習慣(特に食生活、性生活)や人種、近親者に前立腺癌に罹った人がいるかどうかは前立腺癌の発生率と関連が深いといわれていますが、草食系男子はこの点で有利といえます。 ただ高度成長期〜バブル期を経てこれから高齢者になろうとしている年齢層の、日本人には稀有な肉食系男子(筆者の年代がそれに当たります)が今後どうなるか、自分自身も含め注意深く見て行きたいと思っています。(続く)
多汗症・ワキガの治療
多汗症の治療で、日常生活に支障をきたさない方法として2つの方法があります。
ひとつは麻酔の要らない注射だけで済む有効期間が6ヶ月程度の治療方法で、『BOTOXなどボツリヌスA毒素』(ボツリヌス毒素は眼科では斜視の治療に使用され、整形外科では斜頚の治療に使用されている薬剤です。)による治療法です。
この治療方法の特徴は2〜3日で効果が著明に現れることです。
もうひとつの治療方法は『絶縁針による電気分解法』で麻酔をする必要はありますが、有効期間が長く、同様の方法を繰り返し行うことにより効果が増していく方法です。
これらの方法はメスを使用しないため、傷跡もなく、翌日からシャワーも可能で、日常生活に支障をきたしません。
多汗症とワキガで強く悩んでいる方や一回でワキガや多汗症を治療したい方には、数ミリ切開で行う『クアドラカッターによる汗腺を強力に吸引しながら切除する方法』をお勧めします。
この治療では、デスクワーク程度の仕事は翌日から可能ですが、10日間程度のわきの固定が必要になります。
キズは小さいので、術後の傷跡は目立ちません。
また、保険適応のワキガ治療の方法もありますが、固定期間が10〜14日で安静が必要で、傷跡は医療施設によって異なります。
ワキガ・多汗症は自分で考えているよりも軽度な症状であることがあります。
自分だけで悩まずに専門医に相談、診察を受けて適切な治療方法を選択することが大切です。
胃・大腸内視鏡検査に豊富な実績。入院治療も可能な安心の有床診療所。
産業道路沿い、東山団地バス停前に位置する「やま内科胃腸科医院」。1978年の開院以来、東山地区を中心に函館及び道南の地域医療に貢献している。 山英仁院長は“地域に根ざした医療”をモットーに、「患者さんが抱えている問題の解決に、できる限り早く応えてあげられるよう、迅速かつ的確な診断と治療、さらにその後の健康管理にも努めていきたいと考えています」と話す。 同医院は、山院長の専門である消化器内科をはじめ循環器、呼吸器、内分泌疾患、糖尿病治療にも力を入れるなど、内科全般に幅広く対応。
また、食事や運動の管理が必要な糖尿病患者など、19床の有床診療所として入院治療が可能なことも特徴のひとつ。
特に上部・下部内視鏡検査には豊富な経験を持ち、必要に応じてポリープなどの切除術も施行。
入院施設を完備するため、より安心して治療が受けられると評判だ。
さらに口からの内視鏡が苦手な方でも検査が受けられるよう、直径4以下の経鼻内視鏡も導入し、最新の各種検査機器も整えている。「開院から30年来の患者さんも多く、地域の皆さんに支えられ今日の当院があると思っています。
その恩返しの意味でも、今後とも地域医療に貢献し続けたい」と話す山院長。
通院が困難な患者を対象に無料送迎を開始するなど、頼れる存在となっている。
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)
- ものや景色がゆがんだり小さく見えたりする(変視症・小視症)
- 最近視力が落ちた気がする
- 色の感じ方が以前と違う、色の違いがわかりづらい(色覚異常)
このような症状を自覚したことはありませんか?
もしかしたらそれは「加齢黄斑変性」の初期症状かもしれません。
加齢黄斑変性とは網膜の中心部に異常が起きる疾患で、加齢や酸化ストレス、喫煙などさまざまな因子が発症に関わっていると考えられています。
放っておくと視力低下することもある怖い病気で、世界的には視覚障害の上位に位置します。
実際に視力が低下するまで進行した人の割合は人口の約1%程度ですが、網膜に前駆病変を持つ予備群は人口の実に約10%に及ぶと報告されています。
検査は視力検査、眼底検査、視野検査、光干渉断層計検査、蛍光眼底造影検査等、個々の患者の状態に合わせて検査を行います。
眼底検査は瞳孔を広げる薬を点眼するため、薬の効果で数時間程度見づらさが出現します。
そのため来院時は車の運転を控え、他の交通手段で受診することをお勧めします。
外来での治療は眼の中に薬剤を注射したり(硝子体注射)、病変部にレーザー治療を行ったりします。
タバコは病気を悪化させるため、禁煙をお勧めしています。
また加齢黄斑変性の予備群と考えられる方には、予防のための薬(サプリメント)の内服を勧めることもあります。
少し前までは有効な治療が少なかった疾患ですが、現在はいい薬が日本でも導入されたため薬剤のみで病気の進行を抑制し、失明を予防できる機会も増えてきました。
しかし早期発見、早期治療が大事なのはどの疾患も共通ですので、冒頭に挙げた症状に心当たりがある方はお近くの医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
こどもの皮膚病
皮膚は外部の刺激から身を守る防御壁の役割を担ったり、汗を分泌して体温調節を行ったり、内臓で起こっている異常を映し出す鏡の役割を果たしたりと、様々な機能を持った生命にとって欠かすことの出来ない重要な臓器の一つです。そして年齢によりその特徴には違いがあります。今回は子供の皮膚の特徴についてお話します。
皮膚には、一面に穴があります。汗が出る穴(汗孔: カンコウ)と毛の生えてくる穴(毛孔: モウコウ)です。この穴の数は生まれてから一生変わることがなく、ずっと同じで、成長とともに皮膚の面積は増えても穴の数は変わりません。ということは、子供の皮膚には汗孔や毛孔が過密に存在していることになります。このことは、毛孔や汗孔が関わる皮膚のトラブルが子供には起こりやすいことを示しています。一方、皮膚の厚さは子供の頃の方が薄く、成長とともに厚くなっていきます。低年齢の時ほど皮膚が薄いため、皮膚疾患も多いのです。また皮膚の表面は毛孔から分泌される皮脂(ヒシ)で覆われていますが、この量を大人と比較すると、子供はとても少ないのです。生後2~3ヵ月頃までは、母体からのホルモンの影響などで皮脂を作る脂腺機能は活発ですが、それ以降の幼少時期になると機能は低下します。そのため子供の皮膚はカサカサと乾燥しやすいことになります。つまり子供の皮膚はかなりデリケートなものと言えるでしょう。
例えば脂漏性湿疹(シロウセイシッシン)という病気がありますが、これは、乳児期前半に好発します。頭頂部に始まることが多く、顔にも見られ、黄色っぽい色をした厚い鱗屑(リンセツ: かさぶた)と紅斑(コウハン: 赤み)、痒みがその症状です。先ほど述べました皮脂腺と関連があります。その一方でもう少し成長した子供に多いのが、乾燥性の湿疹です。これからの季節は気温や湿度が低下し、皮膚の血管は収縮します。更に汗や皮脂も少なくなり、皮膚の表面はカサカサになりがちです。そのため乾燥から皮膚を守る対策が必要です。皮膚を清潔に保つことは必須ですが、保湿のためのケアも行うとなおいいでしょう。
リウマチに対する誤解
リウマチは正式には関節リウマチと言い、手足の関節が腫れて痛み、進行すると関節に障害を残し、時には肺や腎臓などもむしばみます。異常をきたした免疫システムが、誤って自分自身の組織を攻撃してしまうために起きると考えられています。
世間ではリウマチに関して、間違った認識もあるようです。例えば、高齢者の病気、女性の病気、遺伝する、治療法がない、など・・・。
実際には、リウマチの発症時期は30~40歳代にピークがあり、20歳代の患者も珍しくありません。逆に、70歳以降での発病はむしろまれです。男性の患者は女性の3分の1くらいいます。親子でリウマチになることもありますが、糖尿病や高血圧にくらべればはるかに低い確率です。
最近は良い薬が次々と開発され、早期に診断すれば進行を抑えることも可能になってきました。
疥癬(かいせん)はこわくない
疥癬はヒゼンダニが皮膚の最外層である角質に寄生する疾患です。
主に指間や脇の下、陰部などの軟らかい皮膚に感染し、その後アレルギー反応により他の部位にも皮疹が出現し、夜間強いかゆみを感じるようになります。
ほとんどが病院や高齢者施設で発生し、看護や介護する人に感染してしまうことがあります。
診断のために、皮疹をとって顕微鏡で虫・卵・糞を確認しますが、どこに虫がいるのかを考えて検査をすることがとても重要です。
他の病気を媒介することはありませんが、肌が触れると感染することがあり、知らないうちに家族に感染させてしまうこともあります。
現在、内服での治療ができるようになり、簡単に治るようになりましたが、治療が遅れると虫がいなくなっても、痒みだけが長期間残ってしまうこともあります。
早目の治療をお勧めします。
近視のレーザー手術
最近、テレビや雑誌などの特集で目にする機会も多くなりましたが、数年前、タイガー・ウッズやブラッド・ピット、日本の芸能人なども受けて話題になった屈折矯正手術(近視のレーザー手術)について今回お話しいたします。
エキシマレーザーを用いて角膜を削るというレーザー手術は、大きく分けて2種類の方法があります。一つはPRKと呼ばれるもので、角膜表面の角膜上皮をレーザーで蒸発させた後、近視の度数に合わせてレーザーを照射する方法です。もう一つはレーシック(LASIK)という方法で、PRKの欠点である手術後の痛みや、視力回復に数日かかってしまう点を改善するために考えられた方法です。レーシックはケラトームという器具を用いて知覚神経のある角膜上皮に影響を与えないようにフラップを作り、その下の角膜実質にレーザーを照射します。そのため手術後の痛みがほとんど無く、視力の回復も早く、当院でも手術翌日に1.0前後の視力が得られる方が多いようです。
気になる費用ですが、残念ながら自由診療のため健康保険の適用が認められておらず、全額自費となってしまいます。医療機関によっても違いますが、函館では片眼10万円~15万円位で受けることが出来ます。
対象は、一般に20歳前後から50歳代ぐらいの近視をはじめ遠視や乱視の方も適用となります。但し、術前に眼科専門医による精密検査を行い、適用となる条件を満たして初めて手術となります。興味のある方は、手術をできるかどうか検査をしてから考える事をお勧めいたします。
視力の悪い人であれば、一度は眼鏡・コンタクトレンズのわずらわしさから開放されたいと夢見たことありますね。その夢をかなえてみませんか?
諦めない胃がんの治療
以前と比べて減少傾向にはあるものの、年間12万人以上発症、毎年4万人が亡くなっている胃がん。20代の若さで発症する方もいますが、50代で急増、70〜80歳で発見される方も年々増えてきています。
平均寿命が延び高齢者人口が増えていることもあり、70歳以上の胃がん患者数は、以前の2倍まで増えています。
以前は年齢で治療を諦めていた胃がんの治療も胃カメラ検査機器の進歩による苦しくない胃カメラで、早期の段階での胃がんの発見もできるようになりました。また、身体に負担のかかりにくい手術や新薬の開発などにより、高齢者でも新しい治療の選択肢が増えてきています。
粘膜にできた胃がんは、進行すると深く潜りリンパ管や血管を通ってリンパ管や肝臓・腹膜など他臓器へ転移します。粘膜にとどまっている早期の胃がんは、手術でお腹を切らなくても胃カメラで粘膜内のがんを切除する「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」で治療できます。
リンパ節転移が疑われる場合でも腹腔鏡やロボット手術など術後の身体への負担も大幅に軽減されています。 がん治療の薬も、ここ数年で目覚ましい進歩を遂げています。
「HER2タンパク質」を持っていると抗がん剤の他、がん細胞だけを狙い撃ちする「分子標的治療薬」を使用できます。
既に手術できない状態で発見された約2割の方がこのタンパク質を持っているといわれており、この薬が著効できれば手術で病巣を切除することも可能となる場合もあるのです。
このタンパク質を持っていなくても、多種の抗がん剤の組み合わせや最近胃がんへの適用も拡大した「免疫チェックポイント阻害薬」の使用より、治療効果は確実に上がっています。 抗がん剤の副作用を軽減する薬も開発されており、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬は、効果が高いだけではなく副作用も起きにくいメリットがあります。 ただし、胃がんは予防も大切です。
胃がんの主な原因はピロリ菌ですが、喫煙や過剰な塩分摂取も発生のリスク要因とされています。
ピロリ菌は 採血・検尿・検便・呼気検査・胃カメラでの病理検査でチェックすることができます。
ピロリ菌がいる場合は1週間の内服薬で除菌しますが、除菌後も安心してはいけません。
除菌前に胃がんにつながる胃炎に進行していると除菌後にも胃がんになることもあるため、除菌後も定期的な胃カメラ検査を受けることが大切です。









