ピロリ菌を除菌したあなたに
今年の2月より慢性胃炎についてもピロリ菌の除菌治療の保険適用が認められました。
ピロリ菌を除菌すると胃がんの発生は3分の1になるといわれています。
また、若い方が除菌すると、さらに胃がんの発生率が低下することも分かってきました。
胃がんの一次予防は、ピロリ菌の感染予防・除菌です。
2次予防は、早期発見、早期治療です。除菌後の問題点は何でしょうか?
それは除菌しても、胃がんがゼロにならないことです。
除菌して安心した結果、検診を怠り、発見が遅れてしまうこともあります。
ピロリ菌の除菌後の胃がんの発生について、除菌後に新しく出来た癌と除菌後に認識可能になった癌があります。
後者は除菌後2~3年後の早期に発見されるタイプで、除菌するときカメラで見えないくらいの小さな癌があり、その後2~3年でようやく見えるサイズになったものと考えられます。
このようなこともあるので、除菌後も胃カメラによる検査が必要になります。
では、どのくらいの頻度で検査を行うべきでしょうか?
これについては、除菌後も胃粘膜が萎縮(老化)した状態が続いているなら、1年に1度は継続して行うべきです。
また、ピロリ菌の除菌により、胃粘膜が正常になってくるようであれば、癌化の確率は減るはずなので2~3年に1度の検査でよくなると思います。
当院でも、ピロリ菌の除菌後に癌が見つかった方がいます。
毎年受けられている方は1センチ大の早期胃がんで見つかり、おなかにメスを入れることなく、胃カメラで治癒切除ができました。
逆に除菌後5年以上経過して久しぶりに胃カメラを行った方は、残念ながら進行がんになっていました。
ご本人には胃の症状はありませんでした。
このようなことがあるので、除菌後も 主治医の先生に確認して、胃カメラでの経過観察を行ってくださいね!
さて、来年は何月に胃癌検診を行いますか?
今年のインフルエンザワクチン情報
今年も、インフルエンザワクチン接種の季節になりました。 昨年は、例年のような季節性のもの、ではない新たな「新型インフルエンザ」の世界的な大流行があり、新型インフルエンザと季節性インフルインフルエンザの2種類のワクチンがあったうえに、接種対象者の優先順位が決められていたため、大変混乱しました。 しかし、今シーズンのインフルエンザワクチンは、季節性A香港型・季節性B型・新型の3種類の混合ワクチンとなるので、1回のワクチン接種ですむことになります。 また、今シーズンは、国が定めた接種の優先順位もなくなりましたので、どなたでも接種できます。 インフルエンザウイルスは、毎年のように変異しながら流行しますので、ワクチンは、毎年そのシーズンの流行を予測して製造されます。 また、インフルエンザワクチンの発症予防効果は、接種後2週間からおよそ5ヶ月間とされています。 したがって、年齢に関わらず、毎年接種することをお勧めします。
肥大型心筋症
谷啓が、「ガチョ~~ン」と言いながら前に突き出した手を肩もみのように動かすしぐさをしていましたが、あれは心臓の動きかたに良く似ています。心臓は1センチの厚さの筋肉でできていて、三角すいの形をしています。「ガチョ~~ン」で言うと、手のひらから指先の方に血液がピュッと飛ぶと心臓そのものの働きになります。
心臓の壁の一部がひとりでに厚くなるのが、肥大型心筋症です。ただ心筋が厚くなるだけなら問題はないのですが、危険な不整脈の原因になったり、心不全になったりするのが困ったことです。もし、親指の先が2倍くらいの太さにはれ上がっていたら、「ガチョ~~ン」をした時に、他の指の先に親指がくっついて、手の中に雪球を握れるくらいの丸いすきまが出来ると思います。
心臓でこれが起こると、全身へ出ようとしていた血液が心臓から出られなくなります。こんな風に心臓からの出口が閉まる状態のとき、肥大型心筋症のなかでも特殊な「閉塞性肥大型心筋症」と呼んで、通常の心筋症と区別しています。
閉塞性の場合、上の血圧が130だと心臓の中の圧は230くらいになることもあります。こんな人では、胸が痛くなったり、歩くと息切れを感じる心不全になったりします。これまでは、閉塞性の人は肥大型心筋症のうちの3割くらいだろうと考えられていました。最近、運動した後に心臓の中と大動脈の圧を測ってみると、安静なときにはなかった圧の差が、運動後には50以上に増えることもあることがわかってきました。安静時にはあまり症状がないのに、歩行などの運動をすると息切れや動悸が強い人、心不全を繰り返し起こす人は閉塞性なのかもしれないと考えて検査を行う必要がありそうです。
治療としては、心臓の動きを少し抑える薬を使うか、厚くなって血液の流れを邪魔する心筋を削り取るような治療を行うか2つ以上の選択肢があります。どんな治療がよいかは心臓を詳しく調べて、状態を把握してから決定することになります。
あなたの胆石(たんせき)は大丈夫?
食後、2~3時間後にみぞおちやお腹の右側が痛むことがあれば、「胆石症」かもしれません。日本での胆石症は、年々増加傾向にあり、成人の10~20%に達しているといわれています。
胆のうは、肝臓の下にあり、肝臓で作られた消化液の胆汁を溜め込み、胆汁の水分を吸収して濃縮させる臓器です。
胆汁は、脂肪の消化を助ける働きをしています。胃から十二指腸に食べ物が送られると、胆のうがギュッと縮んで、胆汁を腸に排出します。
胆石症になる一番の原因は肥満です。肉や油の多い食事をとっていると、胆汁の中のコレステロールが増えて胆石ができやすくなります。この他、不規則な食生活や無理なダイエット、ストレスも要注意です。体質や遺伝も関係します。
女性は男性の1.5倍多く、60歳以上では、若い人の2~3倍も多いといわれています。
石が動いて胆汁の流れを塞(ふさ)いでしまうとみぞおちやお腹の右側に激しい痛みが起こり、時には背中や右肩にまで痛みが広がる事もあります。
しかし、急激な症状がなく、食後の軽い腹痛や吐き気、食欲不振のみの場合は、「胃が悪い」「胃けいれん」と自己判断している場合も多くあります。
診断は、血液検査や腹部超音波検査、CT検査などで行います。
腹部超音波検査は、お腹にゼリーを塗り、超音波を当てるだけの簡単な検査で、胆石の有無、その大きさ、胆のうの壁の状態をチェックします。
一部の胆石は、飲み薬で溶ける場合もありますが、効果が少ない上、再発も多いといわれています。
胆のうの中の石が動き回り、炎症を繰り返して胆のうの壁が厚くなったり、石が多数ある場合は、手術で胆のうを丸ごと摘出します。
お腹に小さな穴を開けて行う「腹腔鏡手術」が一般的です。傷も小さいため、五日間程度の入院で治療可能です。
時には、石が、胆のうを飛び出して十二指腸までの通路を塞ぐと、胆汁が十二指腸に流れなくなり、それに細菌の感染が加わると全身に細菌の毒素がまわり、大事に至る事もあるのです。
胆のうがんの50%に胆石が合併しているといわれます。
症状のない胆石症では、血液検査だけではほとんど診断がつかない事も多いので、苦痛を伴わず外来でできる簡単な腹部超音波検査を一度受けることをおすすめします。
赤ちゃんがなかなかできません。不妊治療はどのような治療法がありますか?
原因に伴いさまざまな治療法があります。
高度不妊治療は安全性が高く確立された治療法です 不妊治療の現状から見ると、ほとんどの患者さんが、若いうちに子どもができなくても、いつかできると思い、自分が不妊症である現実を自覚せず、その結果治療が遅れ、30代後半になりあわてて診察に訪れる傾向にあります。
早めに不妊症を発見し適切な治療を受けることは、妊娠できる可能性が高まることにつながります。 原因に伴う治療法はさまざまですが、不妊治療の主な内容は、性交タイミング指導と人工授精の一般不妊治療、体外受精や顕微授精などの高度不妊治療に分かれます。 性交タイミング指導は、基礎体温やホルモン検査、超音波検査による卵胞計測などにより、排卵日を予測したり、人工的に排卵させるなどして、排卵に合わせて性交のタイミングを指導する治療法です。
この治療法の重要なポイントは、排卵時期を正確に見極めることです。 人工授精(AIH)は、パートナーの精液を洗浄濃縮した後、細い管で精子を直接子宮の中に注入する治療法です。
AIHの目的は、「受精が行われる場である卵管膨大部に到達する精子の数か少ない場合、子宮の内腔に直接、精子を送り込んであげることで、卵子に到達する精子の数を増やす」ことです。
性交タイミング指導と同様に、排卵時期を正確に特定することが重要です。 これらの一般不妊治療で良い結果が得られなかった場合には、体外受精や顕微授精といった高度不妊治療に移行します。
体外受精は簡単に言うと、卵巣から卵子を体外に取り出し、培養液の中でパートナーの精子と受精させ、その受精卵を子宮に戻し妊娠を試みる方法です。 体外受精や顕微授精というと、理解不十分から人為的に遺伝子を操作するものと誤解する人が少なくありません。
しかしこの過程は、体内で行われる自然受精・妊娠となんら変わりはありません。 国内では、1983年に体外受精第1号赤ちゃんが誕生以来、高度不妊治療の進歩は目覚ましく、2007年には生まれた赤ちゃんの約50人に1人、1万9595人が誕生しています。
日本産婦人科学会生殖内分泌委員会の報告では、体外受精児の奇形発生率は自然妊娠児と差がなく、さらに6~13歳までの追跡調査を行った研究でも、予後に自然妊娠の子と差がないことが明らかになっています。「体外受精で誕生した赤ちゃんは、自然妊娠児となんら変わりません」ということです。
目薬の正しい使い方
このような時期です、手洗いをいつもより念入りに行っていることと思いますが、点眼する前にも手をよく洗い、手指についている雑菌を除去します。
上を向き、指で下まぶたをひき開けて点眼します。薬の汚染を防ぐため、点眼容器の先がまつげやまぶた、目に触れないように注意しましょう。
点眼後約1分間、静かに目を閉じ目頭を軽く押さえます。この時、薬をいきわたらせるためと眼球を動かす必要はありません。
2種類点眼する場合は、5分以上間隔を空けましょう。
まぶたがただれるのを防ぐため、周りにこぼれた点眼液はティッシュペーパー等で取り除きます
最後にキャップをしっかり閉め、付属の保存袋に保管します。容器に記載されている使用期限はあくまで未開封の状態を指しています。開封後は約1カ月を使用期限と考えるとよいでしょう。
緑内障について
緑内障とは徐々に視野欠損の進行が見られる病気です。
近年の中途失明の代表的な原因ですが、早期に治療を開始すれば重症になることを防げる可能性のある病気でもあります。
初期には自覚症状がほとんどなく、診断のためには眼科にて検査をうける必要があります。
緑内障の検査は眼底検査、眼圧検査、視野検査などが代表的なものでしたが、最近はこれに加えて光干渉断層計という眼底画像解析装置が導入されています。
2000年ころから臨床にて使用が開始され、早期診断に非常に有用と、これまでも多く報告されています。
また、緑内障の有病率は40歳以上では5%とも報告されていますが、そのうちの20%程度しか治療がされていないとも報告され、多くの緑内障患者が適切な治療を受けていないと考えられています。
ぜひ一度、緑内障の色々な検査をうけてみましょう。
最新の関節リウマチ(RA)の治療について
RAとは、本来身体を守るべき免疫の異常により発症します。
主として関節に炎症が生じ、軟骨や骨が破壊され、進行すると関節の機能が低下し様々な日常動作が不自由になります。 1998年にメトトレキサート(MTX)という薬が使用可能となり、従来の対症療法から大きく進歩しました。
更に2003年からは生物学的製剤が認可され、免疫の異常を根本から改善する事が可能となりました。
この生物学的製剤には数種類あり、免疫に関連するサイトカインという物質の異常な作用をブロックします。
しかしどちらの薬にも重篤な副作用があり、MTXでは「肝機能障害」「骨髄抑制」など、生物学的製剤では結核や肺炎などの「感染症」に特に注意が必要です。 これらの副作用に注意し、適切な治療を行えば今ではRAは克服可能な病気になったと言えます。
糖尿病がある方の感染症対策 〜インフルエンザを中心に〜
ウイルス感染を防ぐためには、一般の方と同じく
- 石けんを使った手洗い(十分な手洗いができない場合はアルコール消毒液)
- 水でうがいをする
- ドアノブや手すりなどの拭き掃除
心がけましょう。
血糖値が高いとウイルスに対抗する「抗体」が体内で十分に作られなくなってしまいます。
このため症状が長引いたり重症になったりしがちです。
したがって普段の血糖コントロールを十分よくしておくことが重要です。
また、腎臓の機能が低下している人や神経障害を起こしている人は、さらに抵抗力が弱くなってしまいます。
感染してしまった場合、血糖が一時的に上がりやすくなります。
飲み薬(経口血糖降下薬)を安易に中止しない、などの注意点があります。
あらかじめ医師に確認しておきましょう。
予防接種は、もし感染してしまっても重症になることを防ごうとするものです。
今年の新型インフルエンザに関しては国が中心になり対象者を定めて接種が順次進められています。
皮膚症状は全身の鏡 ~発疹から隠された病気を見つける~
皮膚は全身を覆い包む一つの臓器です。その面積は1.6㎡(畳1畳分の大きさ)、重さは9㎏もあり、内臓で最も重い肝臓の2倍に相当します。そして皮膚は免疫機能を持つ細胞(リンパ球と称される細胞)が最も集まってくる臓器でもあります。よって体内で起こる現象(病気)に対して、皮膚の中で免疫反応が生じ、発疹を生じることがあります。ゆえに注意深く皮膚を診察すると、隠された内臓の病気を発見できたりします。
私が30年の臨床の場で経験したケースをいくつか記します。
足底一面にぶ厚い鱗屑がある酷い水虫の方、足底が固くなり深い亀裂がなかなか治らないと受診された方、下肢全体が丸太のように腫れた方(蜂窩織炎)は、重度な糖尿病をみつけました。何度も身体に痛みを伴う発疹が出る帯状疱疹を経験した方には血液のガンである悪性リンパ腫をみつけ、早期治療につながりました。治療にてこずった慢性湿疹の方をよく調べると胃癌が見つかり、胃癌治療後には湿疹が消失したケースも経験しました。
また、脱毛と手の爪がもろくなったことを訴えて受診された方の原因を腸の病気と疑い内科で大腸の内視鏡をしたところ、クロンカイト・カナダ症候群(胃や大腸にポリープが無数に広がって生じる難病)と言う非常に稀な病気をみつける貴重な経験もしました。
このように皮膚症状は、まさに全身の鏡です。
発疹から、その背後に隠されている重大な病気を見つけ出し、それぞれの専門医にコンサルトすることも皮膚科医、特に総合病院に勤務する者としては大切な責務です。
皮膚病でお困りの方、また通院中でも満足な治療効果を得られていない方がいましたら、遠慮なく当科を受診してみて下さい。









