疥癬(かいせん)はこわくない
疥癬はヒゼンダニが皮膚の最外層である角質に寄生する疾患です。
主に指間や脇の下、陰部などの軟らかい皮膚に感染し、その後アレルギー反応により他の部位にも皮疹が出現し、夜間強いかゆみを感じるようになります。
ほとんどが病院や高齢者施設で発生し、看護や介護する人に感染してしまうことがあります。
診断のために、皮疹をとって顕微鏡で虫・卵・糞を確認しますが、どこに虫がいるのかを考えて検査をすることがとても重要です。
他の病気を媒介することはありませんが、肌が触れると感染することがあり、知らないうちに家族に感染させてしまうこともあります。
現在、内服での治療ができるようになり、簡単に治るようになりましたが、治療が遅れると虫がいなくなっても、痒みだけが長期間残ってしまうこともあります。
早目の治療をお勧めします。
40歳を過ぎたら、眼底検査を!!
「目を見ればその人が分かる」と言いますが、これは本当で、目は体の中で血管を直接観察できる唯一の臓器です。身体がメタボならば、目にも高血圧・高脂血症・糖尿病による合併症が出現する可能性があるのです。 イギリスの若者対象の調査によれば、肺がんや脳卒中よりも失明が一番恐怖という結果が出たそうです。瞳孔を広げる点眼薬をつけて眼底検査を行えば、目の重要な病気を早めに見つけることができます。
また、40歳以上の日本人の5%は緑内障で、疑いの人を含めると100人中13人もいることが分かっています。緑内障は進行性で日本の失明原因1位の病気ですが、早めに発見し眼圧を下げる治療を行えば、進行を遅くすることができ、老後も身の回りのことができる視野を保てます。緑内障も眼底検査と視野検査・眼圧測定で見つけることができます。早期発見のために気軽に眼科を受診しましょう。
長生きの秘訣
百歳以上の方を百寿者と呼びますが、日本におけるその数は、1990年には4千人程でした。
当時、老年医学が専門の友人から「百寿者は、生まれつき(遺伝的に)強い人で、長寿の研究には適当でない」と聞きました。
その後2000年にはおよそ1万5千人、2011年9月には、4万7千人に達しました。
たった20年の間に、遺伝的に強い人たちが4万人以上も増えたのでしょうか?
長寿に対する遺伝の関与は30%程度と言われます。
したがって、寿命の伸びは、遺伝子以外の要素の影響が大きいということです。
生活環境として、紛争や戦争がなく平和であること、大きな災害がないことは勿論大切です。
ちなみに、第二次世界大戦直後の百寿者は四百人程でした。
もっとも重要な要素は、国民の保健衛生に対する関心の高まりと、医学・医療技術の進歩の貢献が大きいと考えます。
百寿者の統計データを教えてくださった先生は、長寿を100m走にたとえておられました。
かつて10秒を切ることは夢のようでしたが、10秒の壁を破った後も記録は少しずつ伸び続けています。
この伸びには選手の素質だけでなく、シューズやトラックなどの道具の改良、科学的なトレーニングの成果も大きく貢献しています。
人間の寿命も、まだ伸びると予想されています。
百寿者の研究から長寿の秘訣は見つけられていません。
しかし、105歳以上の方たちの特徴から、「よく食べ、風邪をひかない」という共通点が発見されました。
簡単なようですが、食べるためには、日頃から歯磨きを欠かさず、丈夫な歯を保つことが必要です。
風邪をひかないために、手洗いとうがいの習慣も大事です。
結局、「これをやれば大丈夫」という便利な話はありません。
100m走の選手と同じで、自ら毎日努力することが必要です。
人生は、100m走よりマラソンと言うべきかもしれません。
コーチ(医師)の助言を聞き、道具(先進医療技術)を上手に利用して、人生マラソンを完走しましょう。
C型肝炎の治療は新時代へ
肝臓病の原因は数多くありますが、B型肝炎・C型肝炎に代表されるウイルス性の慢性肝炎は特に気を付けなければならない病気です。
これらは主に輸血など血液を介して感染しますが、感染ルートが不明の場合も少なくありません。
この病気の怖いところは、感染後長年症状のないまま肝硬変や肝臓がんになっていくことです。
今から30年ほど前までは有効な治療法がなく、肝機能をできるだけ維持する治療を行うのが精一杯の時代が続きました。
1980年代にウイルスの排除(追い出すこと)を目的とするインターフェロン治療が始まりました。
しかしインターフェロンは長期間頻回の注射を必要とする上に副作用も多く、その上ウイルス排除の成功率も低かったため満足できる状況とは言えませんでした。
B型肝炎については2000年頃よりウイルスの増殖を抑える内服治療が登場し現在も多く使われていますが、C型肝炎の方はインターフェロンを必要とする時代が長く続きました。
しかし昨年その状況に風穴があくことになりました。
C型肝炎に対して副作用も少なくウイルス排除の成功率が85%から100%という内服治療薬が登場したのです。
インターフェロン時代の苦労を考えるとまさに夢のような数字といえます。
C型肝炎ウイルスにはいくつかの型があり、発売当初は日本人に最も多い1型に対する薬でしたが、今年に入って2型に対する治療薬も登場し日本のC型肝炎のウイルス型をほぼ網羅できるようになりました。
さらに治療期間も当初の6カ月間から3カ月間に短縮されつつあるなど、次々に新薬が登場しています。
C型肝炎はまさに治る時代に入ったといえるでしょう。
医療の進歩というよりメーカーの開発競争の成果としての側面も大きいわけですが、結果として多くの患者さんがその恩恵をうけ健康を取り戻せるようになります。
治療には国や道の医療費助成を受けることができますので、消化器病・肝臓病の専門医によく相談しましょう。
仮面高血圧・白衣高血圧って知っていますか?
春の健診で高血圧が見つかり、治療している方も多いのではないでしょうか?
いつも病院で血圧測定し、血圧良好ですといわれて安心していませんか? 実は病院での血圧は正常血圧なのですが、自宅で高血圧となる患者さんがいます。
これを仮面高血圧と呼びます(医師の目から隠されているという意味です)。
ヘビースモーカー・ストレスを感じやすい人・仕事や家事でハードワークをしている方に多く、高血圧患者の20%程度いるのではないかとも言われています。
皮肉なことに病院では正常血圧にもかかわらず、仮面高血圧患者は、通常の2〜3倍程度心筋梗塞等の心血管系の合併症が起こると言われています。
逆に、病院では血圧が高いのに自宅で測ると正常の患者さんもいます。
これが白衣高血圧です。
白衣高血圧は病院で高くなるだけで自宅では正常ですので仮面高血圧の様な心配はありません。
いずれの場合も、自宅で血圧測定をして初めてわかるのです。
まずは自宅で血圧を測定しましょう! 測定器は、腕巻きタイプの血圧計でオシロメトリック法という測定方法がお勧めです。
測定するタイミングは、朝は起床後・排尿を済ませてから、夜は寝る前です。自宅での血圧は、高齢者は135/85未満、若年・中年者は125/80未満、糖尿病・心筋梗塞後・腎機能障害のある方は125/75未満が目標になります(あくまで目標値です。ゆっくりこれに近づけば良いのです)。
しかしながら血圧測定には変動がつきものです。
前の晩に眠れなかったり、ストレスを感じただけでもすぐに高くなります。
なかには血圧計を見ただけで高くなってしまう方もいます。
また、普通の方でも24時間血圧を測定すると入浴直前やストレス時には200近くに血圧が上昇することもあります。
高い数字が出ても一喜一憂せず心配があればかかりつけの医師にご相談ください。 まずは、自分の血圧を測定することからはじめてみませんか?
不妊治療ではカウンセリング療法が有効なケースがあります
お子さんができにくい不妊症の女性は、強い精神的ストレスを抱えがちです。赤ちゃんに恵まれないのが最大の悩みであり、ストレスですが、さらに追い討ちをかけるのが周囲のプレッシャーです。
同じ年頃の女友達が次々妊娠した、自分より後に結婚した妹夫婦にコウノトリがやってきた、義妹も妊娠して姑が「あなたのところはまだ?」と聞いてくる・・・。
困ったことにこのような悩みやストレスは、女性の体をより妊娠しにくい体にしてしまいます。女性の卵子と男性の精子が出会い、受精するのが妊娠の第一歩ですが、その卵子を排卵させるホルモンの働きを乱し、排卵障害を進行させるからです。何故なら、排卵をコントロールするホルモンの中枢は精神的ストレスの受け皿のすぐ隣にあって、心の悩みやストレスの影響を受けやすいのです。
こうした排卵障害にはホルモン療法と合わせたカウンセリング療法が有効です。主治医に心の悩みを吐き出し、受け入れてもらうと心が軽くなり、ホルモン環境も整うことが多いのです。テレビに赤ちゃんが映るとポロポロ涙ぐむ、月経がきて今度も妊娠できなかったとわかるとヒステリーが起きる、赤ちゃんのいる友人夫婦は顔も見たくないなど、心の症状がある場合は、ぜひ早めにカウンセリング療法を受けるようにお勧めします。
男性も精神的ストレスの影響を受け、性欲減退によるセックスレスや心因性のED(勃起障害)などが起こってきます。とくに、仕事や職場の人間関係などで強いストレスを感じている男性の場合は、これらの症状に悩まされがちです。赤ちゃんを作る最初の段階でつまずいてしまうのは困りものですが、治療にはカウンセリング療法と併せて、EDの治療薬(バイアグラ)の服用が有効です。
最近は、心の問題を重視してカウンセリング療法を積極的に行う不妊治療施設が増えています。積極的に相談するといいでしょう。
コンタクトレンズ(CL)の装用で注意すべきことは何ですか?
コンタクトレンズ(CL)はペースメーカーと同じ高度管理医療機器です!
現在CL装用人口は2000万人を超え、日本人の6人に1人はCLを使用していることになります。
わが国にCLが普及して50年がたち、近視用のほかに、遠視・乱視・老視用のCLも種類が豊富になったため、若い人ばかりではなく、すべての年齢層で増加しています。 実は、CLは心臓に入れるペースメーカーと同じ高度管理医療機器なのですが、簡単な物と同様に扱っている人が多いのが現実です。
インターネット購入や、無認可のカラーCLを洋服屋で購入している人などは重症な角膜障害を起こして痛みが出てから初めて眼科受診をする人もいます。 CLと眼鏡の大きな違いは、CLは目の中に入り、角膜に直接触れているということです。
角膜が必要とする酸素は涙を介して空気中から供給されます。
ですからCLを装用すると涙が角膜とCLに挟まれることになり、眼鏡の人に比べて、角膜は酸素不足になりやすいのです。
さらに、自分の角膜の形にあっていないCLや、つけっぱなしで期間を守らず使用したりすると、角膜に取り込まれる酸素が不足して角膜障害が発症します。
角膜上皮がはがれると大変な痛みを感じます。
また、傷から細菌が入ると重症の眼内炎になり、ひいては失明にいたることさえあります。
CL使用者はこれらのことを知って正しい使い方を守ってほしいと思います。 眼鏡店の中では、眼科医ではなく他科の医師の免許を使い診療ブースを開設している所もありますので、CLの診療は正確な知識がある眼科医のもとで受けてください。 正しい使い方をすれば、CLは大変便利なものです。
特にソフトCLでは、激しい運動でもずれにくく、くもらず、視野が広いという利点があり、スポーツ時には最適です。
近年はシリコンハイドロゲルという新しい素材のソフトCLが発売され、涙からでなくても酸素が通る素材なのでより安全に使用できるようになりました。
ほかにも、乱視や老眼にも対応できる色々な種類のソフトCLがあります。 また、強い乱視や円錐角膜などで角膜の形に強いゆがみがある場合はハードCLで角膜表面の形をしっかり覆い矯正することによりはっきり見えるようになります。 現在のCLは素晴らしい品質で、あらゆる人に対応できるほど種類も豊富です。
レーシック手術を受けてしまうと老眼年齢(40代後半)になってから辛い思いをします。
流行のレーシック手術を受ける前に、年齢に合わせてCLを着替えていくことも考えましょう。
痔核(ぢかく)~簡単知識~
痔核は、肛門(こうもん)疾患の多くを占め、人類が立位歩行を始めてから、ヒトを悩ませている疾患のひとつです。主症状は出血、痛み、腫脹(はれ)、脱出です。
肛門縁の皮膚にできる外痔核(イボ痔)と、肛門内粘膜にできる内痔核(デ痔)の二つに大きく分けられます。
外痔核の治療は、軟こうや座薬治療が主体です。急性で腫れが大きい時、痛みが強く生活に支障がある時は血栓除去術を行います。
内痔核は、
1度―出血はあるが脱出しない。
2度―脱出するが自然に戻る。
3度―脱出するが押すと戻る。
4度―脱出したままで押しても戻らない。
以上の4つの病期に分類されます。治療は症状の鎮静を含め、全病期で薬物療法が適応となり、局所冷却法も併用されます。手術の適応は病期1~4度で結紮(けっさつ)切除術が主になされますが、様々な工夫により術後の痛みも少なくなっています。また、特殊な器械吻合(ふんごう)器を使うPPH法も痛みが少ない手術法として普及してきています。
医学生から医者になるまで
医療過誤の報道が多く、研修医制度が変化していくなか、白い巨塔が再度放送され、相変わらず権力闘争に明け暮れる医局を描いています。研修医のマンガをドラマ化した番組もありましたが、テレビみたいに暇じゃなかったなって―あたりまえですが・・・。
医学部は一般学部の一・五倍の期間教育を受けるように法律で決まっているので、六年間の学生生活になります。六年生の九月から医局説明会が開かれ、どんな病気を診るか、どんな進んだ治療法を学べるかといった勧誘をするわけです。僕は循環器内科の医局に入ることにしたのですが、入局申し込みにサインをして、ニコニコした教授と握手をしたので、親切な先生たちがやさしくわかりやすい指導をしてくれると思っていました。
循環器の病気というと簡単には、心臓と血管の病気になるのですが、血圧が高くなる関係で腎臓の病気も、動脈硬化が強くなるので糖尿病も、脈が速くなるので甲状腺の病気まで診られるようにと指導されます。心不全で風邪を引きやすくなっても、すぐ呼吸器にとは言えませんし、不整脈ではめまいや失神がおこるので、色々な病気の人を診ることになります。
病名が額に書いてあればと思ったことが本当にあります。
最初の出張病院では、動脈硬化の疑いがあるために発症する脳梗塞も診るように言われ、リハビリテーションの仕方も学ぶことになりました。病気については教科書には書いてないことを本や論文で調べます。指導医に許可をもらって検査して、治療法を調べたら処方箋をチェックされてと、患者さんと指導医の間を行ったり来たりします。こうしていると、二時に届いたラーメンを四時ころ食べるようなはめになります。
週に一度、午後八時から机に座って指導医とディスカッションになるのですが、答えられない質問を矢継ぎ早に受けるので朝までに調べるように言われると、もう午前四時になっています。
時間がない、教授回診まであと五時間だ!
歯科における院内感染対策
最近、歯科での院内感染拡大を懸念する報道がありました。
「一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針」(厚生労働省)を基に衛生管理のチェック項目を考えてみました。
1.患者さんごとにグローブを交換していたか?(スタッフを含む)
2.患者さんごとに治療用イスを清掃していたか?
3.患者さんごとに口腔(こうくう)内に入る器具を滅菌していたか?
4.滅菌できない物、コップやエプロンなどは使い捨ての物を使用していたか?
歯科は血液や唾液に触れる機会が多く、院内感染のリスクが高いと言われ、特にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルスなどの感染が危惧されます。
衛生管理は患者さんから見えづらいですが、医療の根幹とも言うべき重要な仕事の一つです。
何か疑問点などがあれば、先生やスタッフに尋ねるなど、安心して治療を受けることをお勧めします。









