人に迷惑をかけないということ
患者さん達との会話で「子供たちに迷惑をかけたくない」というセリフをよく聞きます。
年を取り、病気になると人の手を借りる場面が多くなります。
そんな時、「迷惑をかけて申し訳ない」と思うのでしょう。プライドの問題として、心情は理解できますが、その言葉をそのまま認めてはいけないと思います。
おそらく世界中、どこの国の子供でも「人に迷惑をかけないように」と教えられると思います。
しかし、この場合の「迷惑」とは、例えばバスや電車の座席に靴のまま上がるなとか、場所をわきまえずに大声を出すなとかといった、社会生活のルールを教える言葉だと思います。
子供やお年寄り、あるいは病気やけがで困っている人に手を貸す時、「迷惑した」と思う人はいないでしょう。
子育てをするとき、女性は仕事を諦めることもあるでしょうが、それで子供に迷惑をかけられたとは思わないでしょう。
誰でも、小さい時には年長者に世話をしてもらい、自分が大きくなったら年少者や病者、弱者に手を差し伸べるというのは、自然なサイクルではないでしょうか?
助けてもらって、感謝するのは当たり前ですが、申し訳ないと思う必要はないでしょう。 将来、平均寿命が90歳代まで延びるという話があります。
その時、高齢者における認知症の割合は60%にも及ぶといいます。
独り暮らしの方も増えるでしょう。
その状況では、1人の高齢者を4、5人で支えなければならないともいわれます。
こんな将来を考えた時、年老いて体が弱って助けを借りることが、「迷惑をかける」ことだとしたら、生きることが悲しくなってしまいます。
困った人には喜んで手を貸し、弱った時には助けられて感謝する、そういうことが自然にできる世の中であってほしいと思います。 実は、認知症で大きな問題になる妄想は「人助けはするが、助けられるのは苦手な(プライドが高すぎる)人」に生じやすいといわれています。
「情けは人のためならず」と言いますが、もう一度、考えてみませんか?
熱傷(やけど)
熱傷(やけど)は日常的に多く見られる外傷の一つです。
熱傷は高温のものが皮膚に一定時間以上付いて起こるものです。
付いたものの温度と付いていた時間によって深さが決まります。
高温のものだと一瞬で深い熱傷になります。
低温のものでも付いている時間が長ければやはり深い熱傷になります。
これは低温熱傷といわれるもので、深い熱傷のことも多いものです。
そして、熱傷はその深さによって1度、2度、3度に分けられます。1度は最も浅いものです。
赤くなるだけで数日で治まります。
日焼けなども1度の熱傷です。2度の熱傷は水疱(水ぶくれ)ができます。
2度の熱傷は深さによって浅いものと深いものとに分けられます。
浅いものは1〜2週間で傷あとにならずに治ります。
2度の熱傷の深いものは治るのにもっと時間がかかり、肥厚性瘢痕というケロイドのように盛り上がった傷あとになることもあります。
2度の浅いものでも炎症が強くなったり、化膿したりすれば深くなることもあります。
3度になるとさらに深くなり皮膚が黒くなったりします。
また、痛みは浅い熱傷の方が強く、深い熱傷になると痛みは弱くなってきます。熱傷を受傷した時は、大切なのは冷やすことです。冷やすことで深いやけどになることを防ぐことができます。
また、痛みも和らげることができます。
水疱(水ぶくれ)がある場合には、できるだけ破らない方が痛みも少なくてすみます。
破れてしまった時には、創傷被覆材といって特殊なシートで覆うことによって痛みを軽減し、早く治すこともできます。
2度の深いもの以上の熱傷になると、治るのに時間がかかりますし、傷あとになったりすることも多く、専門的な治療が必要になります。
シルエットリフト〜フェイスラインをすっきりさせる頬の若返り法
頬の弛みを改善する(フェイスラインをすっきりさせる)治療方法として手術によるシワ取り(フェイスリフト)が美容外科ではよく行われました。
そして、フォトフェイシャルなど光治療(IPL)と高周波(RF)を使用した3~5回の施術ですぐ化粧ができて日常生活に支障がないフォトRFリファームが行われています。 現在では、より早期に自分の目で効果が分かる特殊な糸で頬の弛みを改善させる『シルエットリフト』、自分の血液を利用した細胞成長因子で目の下、口の周囲を改善させる『セルリバイブ・ジータ(皮膚再生治療法)』が行われています。 『シルエットリフト』は施術後1日程度で化粧、洗顔は可能で、日常生活に支障が少なく、すぐに変化を実感できる方法です。この治療法は、特殊な吸収性のコーン構造と生体に吸収される素材の特殊な糸を用いて皮下組織を引き上げて、フェイスラインをすっきりさせる頬の若返り法です。
従来のフェイスリフトより負担が軽く、短時間で優れた引き上げ効果を実現します。
- 術後の随伴症状として
- 軽度の腫れ:2~3日
- 口を開けたときの突っ張り感:1週間
- 随伴症状:刺入点の赤み、青さ、痛み
また、『シルエットリフト』に『セルリバイブ・ジータ(皮膚再生治療法)』を併用する方法は、目の下の弛みやほうれい線を改善させる顔面若返りの優れた方法です。 治療の流れは、治療が効果的であるかを診察させて頂きます。
その上で、ご本人に適した治療方法、その治療経過、注意事項等を説明させて頂きます。
治療方法によって、経過、注意事項等が異なりますが、施術はすべて入院することなく、術後患部を15~30分程度安静ののち帰宅できます。詳しくは専門医にお尋ねください。
エレクトロポレーション〜瞼のしみ、しわ、乾燥への予防と治療、頭皮の薄毛治療
瞼のしみしわ乾燥に悩んでいる方には朗報です。最近まで瞼のしみ、しわ、そして乾燥への予防と治療は、光治療やレーザー治療で積極的に治療の行うことができない部位でしたが、エレクトロポレーションを使用することで今まで肌から導入が難しかったアミノ酸などの高分子の治療成分も積極的に導入することが可能になりました。 数年前に開発され、安全性が実証されているエレクトロポレーションは、皮膚表面に高い電圧を瞬間的に与えることで細胞機能に障害を起こすことなく、細胞膜や細胞間脂質に小さな孔を開けて高分子成分を導入する画期的な方法です。
従来行われているイオン導入法では薬液の10%程度しか導入できないのに比べ、注射による投与に匹敵する薬剤の導入が可能で、痛みや出血も全くありません。
施術時間は頬、瞼で20~30分、週に1回程度です。 そしてフォトフェイシャルやレーザートーニング、レーザーピーリングなどのしみしわのアンチエイジング治療と同時に瞼のしみしわ乾燥への予防と治療も可能です。 治療成分はビタミンCなど各種ビタミン、上皮化を促進してしみしわを改善させるEGF(上皮化成長因子)など各種成長因子、アミノ酸、ペプチド、補酵素などを含むプラセンタ(胎盤製剤)などの高分子成分を安全に積極的に導入することが可能です。
また、これを応用した女性の頭皮の薄毛予防にも導入されています。予防と治療についての詳細は専門医にご相談ください。
男性の性(23)
前回はマリー・アントワネットとルイ16世の悲劇の一因・遠因は、ルイ16世の包茎にあったのではないか?という話で終わりました。 包茎には真性包茎と仮性包茎がありますが、包皮を陰茎根部側に引っ張っても、包皮が翻転せず亀頭が露出しないものを真性包茎といいます。
通常、男児は生下時ほとんど全て包茎ですが、3歳までに90%が亀頭の露出が可能になり、残りの10%が真性包茎といえます。
4~5歳までに亀頭が露出しない場合は、副腎皮質ホルモンクリームを狭くなっている包皮に1日3~4回、6週間塗布することで約70~80%は亀頭の露出が可能になると報告されています。 仮性包茎は包皮が過剰で、非勃起時には亀頭の一部または全部が包皮に覆われていますが、勃起時や包皮を翻転すれば亀頭が露出するものをいいます。
米国製アダルトビデオではポルノ男優が皆、非勃起時でも亀頭が露出しており、日本の男優と比較して『ああ、米国人には包茎は少ないんだなあ』と、若い時に誤った人種的劣等感を持った人も多いかもしれませんが、実は米国では包茎手術は常に国内最多の外科手術であり、2005年の統計でも男児の61%が新生児期に包茎手術をしています。 その是非についても長い間多くの議論があり、米国小児科学会は新生児期の包茎手術を推奨しているわけではありませんが、その手術件数は増加傾向にあります(キャンベル&ウォルシュ泌尿器科学第9版3747頁)。 新生児期の包茎手術の利点としては、幼少児における尿路感染の危険を軽減できる、陰茎癌の頻度が低下する、思春期以降の性行為感染症の予防に役立つ、早漏の防止に効果がある、といわれていますが、逆に衛生状況が非常に良好な北欧諸国(おそらく日本も)では幼少児の尿路感染や陰茎癌が極めて少なく包茎とは無関係という意見もあります。
早漏についても、包皮小体(いわゆるカリの部分)にある性感帯を切除してしまうことにより、むしろEDが増加するという意見もあります。(続く)
最近のコンタクトレンズ
使い捨てタイプのコンタクトレンズが広く普及していますが、最近、付加価値を加えた製品が増えてきました。 レンズの素材では、“シリコーンハイドロゲル”製のものが多く登場しています。
従来の製品よりも角膜に多くの酸素を供給することができ、長時間の装用でも目への負担は軽減されます。
さらに、乾燥感の低下、タンパク汚れがレンズに付着しにくいなどの特徴があります。 紫外線対応(UVカット)している製品もあり、悪影響のある波長をコンタクトレンズで吸収し目に届かないようにします。
紫外線は白内障や翼状片(よくじょうへん)などの疾患に関連があると言われています。 ただ、どんなに優れたコンタクトレンズでも正しいレンズケアと眼科専門医の定期的な診察は必要です。
コンタクトレンズを作るときは眼科専門医に相談し、自分の目に合うものを処方してもらいましょう。
在宅療養支援診療所
僕が医師になったころ、病院の隣に住んでいながら孤独死したご老人がいらっしゃいました。
なぜ亡くなってしまったのでしょうか。
認知症で受診することが分からなかったのか、どこかに痛みがあって動けなかったのか。
いずれにしても定期的にご高齢者をサポートするシステムが機能していなかったのは確かです。
このことは都会にあっても無医村地区と変わりがないことだと思うのです。
高齢化社会を迎え平成12年に介護保険制度がスタートし、介護保険と訪問診療を上手に組み合わせて利用することで、ご高齢の方が長期入院することなく、住み慣れたご自宅などでお暮しになることが可能となりました。
日本人の多くが住み慣れたご自宅の畳の上で亡くなりたいと希望されています。
医療が地域に積極的に出て行かなくては、これらの希望に対応できないと考え、20年前の開業当時から往診に力を入れてきました。
数年前医療保険で「在宅療養支援診療所」の制度が新制され、現在当院では在宅療養支援診療所として届けを出しております。
「在宅療養支援診療所」とはどんな診療所かご存じでしょうか?
通常の外来以外に寝たきり状態の方や癌などの疾患をご自宅で療養されることを希望される方、定期的な通院が困難な方など、患者様ごとの状態に応じて計画を作成して、24時間体制で訪問診療を行っている診療所です。
自宅で酸素療法、経管栄養(胃ろう、腸ろうなど)、気管切開の管理、緩和ケア(疼痛のコントロール)、中心静脈栄養管理、ターミナルケアなど希望される方へ対応させていただいております。
在宅担当看護師は、患者様やご家族様といつでも連絡がとれる体制で身体状況を確認させていただき、緊急時には医師と連携し24時間365日訪問診療をしております。
通院が困難な方や退院後に不安を抱えている方、また介護保険のことなど、どのようなことでもお気軽に当院にご相談ください。
ノンクラスプデンチャーについて(Ⅱ)
失った歯を補う方法としては、従来よりの方法であるブリッジ、デンチャー(入れ歯)、インプラント等ありますが、前回はその中でも審美性(見た目に入れ歯とは分かりにくい)という付加価値をもったノンクラスプデンチャー(金具を使わない入れ歯)についてお話ししました。
今回もこの入れ歯についてのお話しですが、今まで作製してきて感じたことや、前回の記事の補足、別の材料について付け加えたいと思います。 まず、今までいろいろな患者様の希望を聞き、それに対して説明をし、また実際作製してきて感じることは、この入れ歯は保険外のため自由に設計ができ、設計に制約のある保険の入れ歯より食事ができるように思います。
食事ができるというほかに、やはり他人に入れ歯だと気付かれたくないという付加価値を求めた入れ歯だということです。
したがって、残っている歯の治療も必要になる場合もあります。
また、この入れ歯はあくまで部分入れ歯なので、全く歯のない患者様には総入れ歯(金属床等)の扱いなります。
ともあれ金具が見えて気になる患者様、ブリッジのように健康な歯を削りたくない患者様、金属アレルギーのある患者様には適した方法だと思います。 次に材料についてお話しします。
前回は国内で薬事認可されている材料は4種類あるということを書きました。
その中でポリカーボネートという材料を使っていることを書きましたが、最近はポリアミド系(ポリエチレンテレフタレート:略してペット)の材料、ペットボトルの材料を使っています。
この材料の利点は樹脂の特徴として柔らかいため破折がしにくく、そのため厚みも薄くできて違和感が少ないという点にあります。
材料も日進月歩ですが、最近では国外生産のものも出回っていると聞きます。
もしこの入れ歯を希望するようなら、国産の安全な製品を作ってもらって下さい。
良い塩梅の塩加減
脳、心臓や腎臓に重大な障害をもたらす悪い病気としては、特に高血圧が良くないのですが、血圧を上げる原因の1つに食塩の取りすぎがあります。
高血圧が毎日の食事と関連する生活習慣病と言われるゆえんです。 「和食はとても健康的な食事だ」と言われています。
実際その通りなのですが、塩分の取り方が多い食事でもあります。
冷蔵庫がない高度成長期の以前には、食品の保存に塩が防腐剤の役割をしていたのです。
漬物、みそ、しょうゆは明らかにしょっぱいですが、かまぼこもつなぎに塩を使っています。 冷蔵庫が三種の神器として各家庭に普及した後も、1日20g以上の塩を取る生活が続いていました。
塩分の取りすぎから高血圧になり、血圧が高いために脳内の血管が破れたり詰まったりして、脳卒中を発病することが非常に多かったのです。
だから昭和の中期(’60年)までは、脳卒中が死亡原因の1番で、平均寿命は65歳程度でした。
その後の減塩運動が奏功したり、高血圧の治療が普及したりして、脳卒中の死亡は急激に減り、日本の平均寿命は大きく伸びました。
減塩した食事では、下の血圧(拡張期血圧)が特に下がりやすくなります。
日本人の塩分平均摂取量は’85年頃には1日13gが平均でしたが、最近は10.5gに減っています。
ただし、北海道は塩の取り方が多い方の地域になります。
1日の塩分は6~7gが理想的と政界保健機構では勧めますが、日本では、まだ遠い目標と思われます。 梅干し1個1g、カレーライスには3g、ラーメン・とんかつ定食には4g、そば・すき焼き定食には6gの塩が入っています。
だから、そばを汁まで飲んでしまうと1日分の塩を取ることになるので、汁は飲まないようにすることが必要になります。
一般的に外食では塩分が多くなると思って間違いありません。
コンビニ弁当も付いている調味料を使わないようにして1食の塩が4g位になります。
レモンや酢を調味料に多く使うと、また、昆布でだしを濃くとると塩の量を減らすことができます。
いろいろと工夫して減塩するように気を付けてください。
ヒアルロン酸
最近“ヒアルロン酸”という言葉をよく耳にします。
ヒアルロン酸(ヒアルロナン)はN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸が繰り返し連結した構造をして数百万の高分子量をもっています。
保水力に優れ、1gで2~6リットルの水を保持します。
また、非常に強い粘性(ねばりけ)と弾性(元の形に戻ろうとする性質)を持っています。 人体の中では関節、へその緒、皮膚、目の硝子体に多く存在しますが、年齢と共に減少します。関節内の関節液、関節軟骨にはヒアルロン酸が多く含まれています。
潤滑作用(滑りをよくして曲げ伸ばしを楽にする)、緩衝作用(クッション)があり関節の働きを助けます。ヒアルロン酸に関する最近の研究で、①軟骨に直接作用して軟骨の破壊進行の抑制や修復・再生に役立つ ②関節液中の炎症物質や軟骨破壊酵素を抑制して間接的に軟骨を保護するなどの働きが明らかになっています。 これらの性質を利用して、我々整形外科では、変形性膝関節症、五十肩、関節リウマチの関節痛の治療に(厚労省の認可した医薬品として)ヒアルロン酸の関節内注射を行っています。
炎症や痛みを和らげたり、変形の進行を抑制する効果があります。関節内に注射されたヒアルロン酸は約48~72時間で関節内から消失してリンパ・循環系を経て肝臓で分解され呼気中に排出されます。
しかし、関節内の滑膜・軟膏・半月板・靭帯などの組織に長時間残存して効果を発揮します。 最近、“飲むヒアルロン酸”に関する質問をよく受けます。
問題は口から摂取したヒアルロン酸が確実に関節の中まで届いて有効に働くかです。
現時点では、痛みの自覚症状が軽くなったという報告は一部あるものの、X線検査や動物実験などの科学的データーに基づいた有効性は(関節内注射薬と違って)まだ明らかではありません。
そのため現在、飲むヒアルロン酸は薬として認可されず、健康食品、サプリメントとして販売されています。
まだまだ今後の研究が必要で、服用に関しては“ご本人の判断におまかせします”というのが現状です。