アニキサスをご存知ですか?
衛生環境がよくなって蟯虫(ぎょうちゅう)や蛔虫(かいちゅう)など、昔はよくいた寄生虫もあまりみられなくなりました。
寄生虫という言葉自体なじみのないものになっていますが、今でも割とよく見る寄生虫がいます。
名前はアニサキス。
聞いたことがあるという人もいるかもしれません。
長さ2cmくらいで半透明の少し太めの糸のような虫で、主に白身の魚や青魚の内蔵にいます。
魚のおなかの中にいるときには渦巻状態になっていることもあって、慣れていないとなかなか見つけにくい寄生虫です。
サバ・サケ・ニシン・ホッケ・タラ・マス・サンマ・スルメイカなどを生で食べた時にアニサキスがついていて、生きたままおなかの中に到達した時に、胃や腸の壁に侵入することがあります。
そうすると、多くの人は大体8時間以内に激しい腹痛が起こります。
じんましんや吐き気などの症状を伴うこともあり、小腸の壁に侵入すると、腸閉塞になることもあります。
人の体の中では育つことはできないので、数日たつと死んで自然に排泄されますが、それまでは症状が続きます。
多くの場合は胃の中にとどまっているので胃カメラで取ることができますが、小腸まで到達して腸閉塞などを起こした場合には入院して治療を受けなければならないこともあります。
予防としては加熱処理が最も効果的ですが、マイナス20度で48時間以上冷凍することでも死滅させることができます。
残念ながら酢や塩では死なないので、しめさばなども注意が必要です。
アニサキスは魚が生きているうちは内蔵の中にいますが魚が死ぬとだんだん身の方に侵入してくるので、刺身で食べるときにはなるべく早くさばいて内蔵を取り出してしまったほうが安全です。
また、白子や卵などについていることもあるので、生のまま塩漬けやしょうゆ漬けにして食べるときには気を付けましょう。
刺身やしめさばなどを食べた後から急激な胃の痛みを感じた時はアニサキスかもしれませんので消化器内科の病院を受診をしてください。
念のためにトイレに行くのは悪い習慣!?
家を出る前に念のためおしっこをしておこう。途中で出たくなったら困るから列車に乗る前にトイレに寄っておこう。
実はこれ、頻尿の原因となる悪い習慣であることが分かってきました。膀胱は主に筋肉でできており、尿を出すのも貯めるのも、この筋肉の運動によって行われます。まだもよおしてもいないのに念のためにトイレに行く、言い換えれば非常に少ないおしっこでトイレに行くということは、膀胱の尿を貯める筋肉運動をさぼっていることになるのです。
それともうひとつ悪い習慣があります。おしっこがしたくなったらすぐにトイレに行く習慣です。念のためトイレに行く場合に比べればまだ少しは貯めていると言えますが、おしっこがしたいと感じる尿量は約200mlです。成人膀胱の最大容量は約500mlですから、この場合もやはり尿を貯める筋肉運動をさぼっていることになります。
このように膀胱の尿を貯める運動をさぼり、少ないおしっこで排尿する習慣が毎日のように繰り返されると、当然のことながら膀胱の尿を貯める筋肉は衰え、やがておしっこが十分に貯められない状態、つまり頻尿になってしまいます。
念のためトイレに行かない、おしっこがしたくてもすぐには行かない、そしておしっこを少し我慢してからトイレに行くようにする。おしっこの我慢は「膀胱訓練」とも呼ばれ膀胱機能障害の治療にも用いられています。頻尿にならないようにするためにも、あるいはすでに頻尿で困っているならなおさらのこと、おしっこの我慢を始めてみましょう。ただし注意も必要です。おしっこの我慢も極端にし過ぎると痛みや排尿困難などトラブルを生じることがあります。余裕のある範囲の我慢から始めてください。また、頻尿の原因はさまざまであり、中には排尿障害や膀胱癌など重大な病気が原因となっていることもあります。我慢を続けても症状が改善しないときや排尿困難や残尿感、痛みや出血など頻尿以外の症状がある場合には泌尿器を受診しましょう。問診と超音波検査などの簡単な検査により診断、治療が可能です。
長生きの秘訣
百歳以上の方を百寿者と呼びますが、日本におけるその数は、1990年には4千人程でした。
当時、老年医学が専門の友人から「百寿者は、生まれつき(遺伝的に)強い人で、長寿の研究には適当でない」と聞きました。
その後2000年にはおよそ1万5千人、2011年9月には、4万7千人に達しました。
たった20年の間に、遺伝的に強い人たちが4万人以上も増えたのでしょうか?
長寿に対する遺伝の関与は30%程度と言われます。
したがって、寿命の伸びは、遺伝子以外の要素の影響が大きいということです。
生活環境として、紛争や戦争がなく平和であること、大きな災害がないことは勿論大切です。
ちなみに、第二次世界大戦直後の百寿者は四百人程でした。
もっとも重要な要素は、国民の保健衛生に対する関心の高まりと、医学・医療技術の進歩の貢献が大きいと考えます。
百寿者の統計データを教えてくださった先生は、長寿を100m走にたとえておられました。
かつて10秒を切ることは夢のようでしたが、10秒の壁を破った後も記録は少しずつ伸び続けています。
この伸びには選手の素質だけでなく、シューズやトラックなどの道具の改良、科学的なトレーニングの成果も大きく貢献しています。
人間の寿命も、まだ伸びると予想されています。
百寿者の研究から長寿の秘訣は見つけられていません。
しかし、105歳以上の方たちの特徴から、「よく食べ、風邪をひかない」という共通点が発見されました。
簡単なようですが、食べるためには、日頃から歯磨きを欠かさず、丈夫な歯を保つことが必要です。
風邪をひかないために、手洗いとうがいの習慣も大事です。
結局、「これをやれば大丈夫」という便利な話はありません。
100m走の選手と同じで、自ら毎日努力することが必要です。
人生は、100m走よりマラソンと言うべきかもしれません。
コーチ(医師)の助言を聞き、道具(先進医療技術)を上手に利用して、人生マラソンを完走しましょう。
『NASH』(ナッシュ)という用語を聞いたことはありますか? 〜脂肪肝との違いは?
「NASH」という用語を聞いたことはおありでしょうか。
「非アルコール性脂肪性肝炎(non alcoholic steato hepatitis:頭文字でNASH)」のことで、これはアルコールによらない脂肪肝が肝炎に進展した状態です。
これまで、普通の肥満や糖尿病などのメタボリック症候群で起こる単純な脂肪肝は、それ以上進行しないとされていましたが、その中で10人に1〜2人はナッシュを引き起こし、さらには肝硬変・肝がんへと進行する例があることが分かってきました。
単純な脂肪肝では肝臓の細胞に中性脂肪が貯まっているだけで、肝細胞の壊死や炎症、線維化は見られず、原因が無くなれば改善し元に戻ります。
一方ナッシュではアルコール性肝炎と同様の肝炎が起き、一部は肝硬変・肝がんへ進行する例も出てくるわけです。
単純な脂肪肝の1〜2割が、どういう場合にナッシュに進展するのか、まだはっきりとは分かっていませんが、脂肪の沈着に続き内蔵脂肪細胞から分泌される「サイトカイン」と呼ばれる因子や肝細胞での活性酸素の発生、さらに鉄蓄積などが加わった場合に発症するのではないかと推測されています。
診療において具体的に単純性脂肪肝からナッシュへの進展を疑うのは、肝機能のAST/ALT比の上昇(AST優位)に加え血小板の減少やヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲンなどの線維化マーカーの上昇があります。
さらに専門的には、超音波により肝臓の硬さ・線維化を測定するエラストグラフィー(硬度画像診断)も開発されています。
治療としてはインスリン抵抗性改善薬や肝庇護剤、坑酸化作用のあるビタミンE、高脂血症治療薬などが試みられています。
日常的には適正体重の維持、メタボリック症候群の是正が重要です。
病気の予防、検査と薬
「雨やんで傘忘れる」とか「喉元過ぎて熱さ忘れる」などと言いますが、多くの人は、痛みなどの症状がある間は真面目に病院へ通いますし、薬もキチンと飲みます。しかし、一旦症状が消えると、病院にいくのは面倒ですし、服薬もさぼりがちになります。また、実際に病気した人なら「二度と、ああいう思いはしたくない」と考えるでしょうが、健康診断で異常を指摘された程度では、なかなか治療する気にはなれないでしょう。
高血圧患者さんから、「肩も凝らないし、頭も病まない。めまいもない。何ともないのに、薬は飲まなきゃダメかい?」「検査は要らない」などと言われます。なるほど、痛くも痒くもないのに薬を飲み続けるのは大変です。経済的にも負担がかかります。でも、困ったことに生活習慣病のほとんど(全てと言ってもいいかもしれません)は、自覚症状がありません。特に脳卒中は、症状が出たときには手遅れです。だから、「隠れてる」病巣(いわゆる“隠れ脳梗塞”など)を見つける努力をするのです。
何とも無いのに健康維持の努力をする動機付け、自らにやる気を引き出すためにお勧めするのが、定期的な健康診断や各種の検査です。MRIなどの目に見える形にする検査や、血液検査など結果を「数値」であらわす検査などをすると目標が出来るので、治療を継続する意欲、意志が持てるようになります。
病気の予防には、薬に頼らず生活習慣を改善することが理想的ですが、長年の生活習慣はなかなか変えられません。また、生活習慣改善の効果が出るまで時間がかかります。病気の不安を少しでも早く軽くしたいとか、病気予防を急ぐ場合には薬の手助けが必要なこともあります。こう言うと「薬には副作用が…。」と心配される方も少なくないでしょう。確かに、どんな薬にも副作用はあります。昔から「毒にも、薬にもならない」などと言いますが、実は毒にならないものは、薬にはならないというのが正しいと考えます。逆に、副作用の心配もあるから、定期的に検査をする意味もあるのです。
口の外傷 ー歯が折れたり、抜けたらー
幼児がハイハイを卒業し、つかまり立ちを始めるのを見ると我が子の成長を実感するものです。
しかし疲れを知らずに自由に走り回るようになると、頭をぶつけたり、膝を擦りむいたりと怪我が多くなります。
そして、顔をぶつけたときに唇を切ったり、歯を折ったり(破折)、歯が抜けたり(脱臼)と口の中にも外傷が見られます。
産まれたての乳児の歯が無い時期から半年くらい経ちますと、下の真ん中の前歯が最初に萌出し、その後1歳までに上下合わせて8本の前歯の乳歯が萌出します。
受傷年齢は1〜3歳が1番多く、前歯の乳歯の萌出した後に転びやすい時期が重なって外傷が多くなりやすいと思われます。
また、前歯が生えかわり、7〜8歳頃にも前歯の永久歯に外傷を受け来院されるケースも多く見られます。
外傷を受けた場合、原因となった事故により頭部、顎顔面等への外傷や全身状態への影響を疑われる場合は、まず医師による緊急処置を優先します。
そして顎の骨折の治療の必要があれば口腔外科などで治療を行います。
そういった緊急性がなく歯の処置を行って差し支えない場合は、損傷を受けた歯の治療をすみやかに受ける必要があります。
歯が抜けた場合は、速やかに抜けた歯を牛乳(ロングライフミルクや低脂肪乳を除く)、生理食塩水等に入れるか、歯茎と唇や頬の間に入れて歯科医院に来院するのがいいと思われます。
その抜けた歯は条件が良ければ再植(歯を顎の中に戻す)し、その後も歯は機能し続ける可能性がありますので、速やかに来院されるのが良いでしょう。
欠けた歯は、これも条件が良ければそれを接着剤で戻すことが可能です。
いずれにせよ、その場合は歯が欠けて神経が露出しているケースもありますので、早期の歯科医院への来院が必要となります。
春、学校健診の季節ですが
新学期を迎え、我々眼科医も学校健診のため小・中学校を訪れます。視力検査を含め、目の病気が疑われれば専門医を受診するようにと、健診の結果用紙を子供達は学校から頂いてきます。その中で特に注意しなければならないのが小学校一年生の視力検査の結果でしょう。小学校一年生にとって視力という検査は初めての経験で、やり方もよく理解出来ないかも知れません。大勢のお友達の中で検査に集中出来ないこともあるでしょう。そのため検査結果が実際より悪くなりA(1.0以上)にならないと言うこともあります。
しかしながらこの年齢では結果が悪い場合、遠視の場合が多く見受けられます。そして、遠視の場合、弱視(じゃくし)や斜視(しゃし)を伴っている場合があり、この1年生の時期を逃すと後でメガネをかけたとしても視力が回復出来なくなってしまうこともある、目にとってラストチャンスの時期だとも言えます。
簡単に言うと、近視は近くは見えて遠くがピントがぼやけてしまう状態です。少なくとも近くを見ている時にはきちんとピントがあった画像が目に入るので弱視になることはありません。
それに対し遠視の場合、もし度数が強ければ近くも遠くもはピントが常にぼやけてしまいます。いつもはっきりしない画像しか見えていないため、視機能(ものを見る力)が発達することができなくなります。そのため放置するとメガネで矯正しても1.0が出ない弱視になってしまうことがあります。また、斜視を来すこともあるのです。子供の視力は生まれたときは0.01しか有りませんが、次第に発達して4~5歳で1.0となり、視力が完成すると言われています。ですから6歳になっている小学校1年生は視力にとって非常に大事な時期といえるのです。
視力の結果が悪いとき、斜視の疑いがある場合には必ず専門医の精密検査を受けましょう。
ピロリ菌をやっつけろ!(慢性胃炎編)
朗報です!
ピロリ菌の除菌治療の対象が拡大して、慢性胃炎の方も健康保険で除菌治療が行えるようになりました。
今までは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・早期胃癌の胃カメラ治療後・他の特殊な病気だけが、除菌治療を保険で行うことができました。
それ以外の方は、ピロリ菌がいても自費で除菌を行っていたのです。
ところが、ピロリ菌と慢性胃炎の発癌の問題が、より明らかになったため、厚生労働省も重い腰を上げて除菌治療を慢性胃炎にも適応拡大したのです。
胃癌とピロリ菌について述べますと、ピロリ菌陰性者からは、ほぼ胃癌は発生しません。
ピロリ菌陽性であるだけで1000人に1人、そして慢性胃萎縮性胃炎の所見があれば400人に1人の割合で胃癌が発見されます。
また、萎縮性胃炎が進行するとついにはピロリ菌も胃の中に住めなくなります。
この時期には、ピロリ菌がいないにもかかわらず80人に1人の割合で胃癌ができます。怖いですね!
そうなる前の除菌治療ということです。
除菌治療とは、抗生物質2種類と胃酸を抑えるお薬を1週間飲むだけです。
初回の治療=1次除菌は約70%の除菌率です。
もしうまくいかなければ、2回目の治療=2次除菌を行います。
2次除菌は約90%の除菌率です。
ともに主な副作用は下痢・軟便です。
1次除菌ではまれに味覚障害が起こりますが、除菌治療後元に戻ります。
2次除菌は、薬の作用でアルコールが分解でピロリ菌の除菌後しばらくして胃酸の逆流症状が強くなる方もいます。
除菌治療により発癌リスクは減りますが、癌にならないわけではありません。
ここを間違わないでください。
除菌後も胃癌検診は必要ですよ!
除菌したので胃癌検診を行わず、残念ながら進行胃癌になっている方もいますので除菌後も胃癌検診は怠らないようにしましょうね!
検査の間隔は除菌後の胃炎の改善状態にもよります。
除菌して安心しきっているあなた! 次の胃癌検診はいつですか?
ちゃんと主治医に確認してくださいね!
オシッコの我慢は、とても優れた膀胱健康法
おしっこが近い。
夜中に何度も起きてしまう。
トイレのことが心配で外へ出歩けない。
歳のせいとあきらめる前に膀胱訓練を試してみましょう。膀胱訓練とは、トイレに行きたくなっても我慢をする訓練のことです。おしっこの我慢は膀胱炎になるとか腎臓に悪いといわれた時代もありました。しかし現在は、さまざまな医学的研究から、排尿の我慢で病気にはならないことが確認されています。我慢を続ける時間は特に決まっていませんが、数分程度の我慢から始めて無理のない範囲で時間を延ばしていきましょう。毎日繰り返すことで徐々に排尿の間隔が開いていきトイレの回数が減少します。ただし膀胱炎や尿路感染症の方は膀胱訓練が禁止されています。明らかな排尿痛や下腹部痛、肉眼的血尿を自覚される方は、膀胱訓練を開始する前に必ず泌尿器科へ相談してください。
我慢しようとするけどすぐに漏れてしまう。
漏れるのが心配で膀胱訓練ができない。
頻尿症状が進むと、ほんのわずかな時間でもトイレの我慢ができなくなります。そのような場合には、一時的におむつを利用して我慢をする、または濡れても大丈夫なようにあらかじめトイレで排尿の準備をした状態で我慢をするのも良いでしょう。肛門を強く締めるようにすると我慢しやすくなります。
困ったときには、気軽に泌尿器科を受診しましょう。
どうしても膀胱訓練ができない場合や症状が強い時には、膀胱訓練に合わせて薬を飲んだ方が良い場合があります。また、頻尿の原因はさまざまであり中には排尿障害や膀胱がんなど重大な病気が原因となっていることもあります。膀胱訓練を続けても症状が改善しない時や、排尿困難や残尿感、痛みや出血など頻尿以外の症状がある場合には、泌尿器科を受診しましょう。問診と超音波検査などの簡単な検査により診断、治療が可能です。お困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
今年こそ治しませんか、あなたの水虫
水虫は白癬菌(はくせんきん)というカビの一種で、皮膚の一番外側の角質層に感染します。今回は水虫を早く、確実に治すコツをお話します。
1.自己診断をしない。皮膚科医は皮膚の角質を顕微鏡で見て、水虫であるかどうか診断し、皮膚の状態に合わせて外用薬を選択します。爪や硬い足底の水虫では内服を処方することもあります。
2.裸足で公共施設を利用した後は自宅で足を洗う。足の裏に白癬菌が24時間以上付着したままでいると感染してしまいます。
3.家族も一緒に治療する。自分だけ治療をしても、水虫の人がいると再感染してしまいます。
4.医師の指示に従い完治と診断されるまで外用を続ける。皮疹(ひしん)よりも広めに、そして症状が消失してから1~2カ月外用しないと完全に白癬菌はいなくなりません。
水虫の心配がある方は、皮膚科専門医を受診してみて下さい。









