血液内科をご存知でしょうか?
馴染みの少ない診療科目ですが、1番よく耳にする「貧血」についてのお話を伺いました。
症状としては動悸、息切れ、めまいなどが一般的ですが、それ以外にも舌の痛み、知覚異常、歩行障害、異食、不眠、食欲不振といった一見貧血症状とは違う形で現れることもあります。
貧血の原因により症状も異なります。鉄不足による鉄欠乏性貧血の他にもビタミン不足による悪性貧血、造血障害による再生不良性貧血などです。
悪性貧血は胃の術後菜食主義、アルコール多飲の人に起きる可能性があります。
貧血=鉄不足という訳はでなく、原因は多種多様であり、その原因を見極めて治療することが重要です。
また、貧血が良くなっても、その原因改善のための長期的な治療が必要な場合もあります。
逆に漫然とした治療の継続により、内蔵に負担をかける場合もあるため定期的な診察が必要になります。
また、単なる貧血だけでなく、血液悪性疾患が隠れていることもあります。
その場合は貧血だけでなく正常な免疫力が低下し、感染症状を繰り返すようになります。血液疾患を疑う具体的な症状として
①ぶつけた覚えがないのに身体にいくつもあざができる
②歯肉の出血が止まらない
③毎日のように鼻血がでる
④首のまわり、脇の下、鼠径部に腫れものができだんだん大きくなる
⑤検診などで白血球数、赤血球数、血小板数の異常を指摘された
⑥身体のタンパク質が多いと言われたなど
が挙げられます。
血液疾患をはっきりした自覚症状がない場合も多いので、思い当たる事があれば迷わず血液内科を受診することをおすすめしたいと伊達院長。
『飯田内科クリニックいしかわ』では血液専門治療の一方で在宅療養支援診療所として24時間365日の往診体制を実施しています。
併設しているデイケア・ショートステイでは医療依存度の高い人の利用もあるようです。
本稿は本紙記者が『医療法人社団善智寿会飯田内科クリニックいしかわ』に取材し執筆しました。
季節性アレルギーと喘息の話
ここ数年積雪量が多くなってきた函館ですがようやく雪解けの季節を迎え、春が近づいてきているのを実感します。
しかしながらこの時期から徐々に花粉症(鼻炎や結膜炎)に悩まされる方が増えてきます。
また、喘息をお持ちの方も季節の変わり目になると症状がひどくなる方が多く認められます。
春・秋の季節の変わり目や、気候の不安定な時期に喘息発作が出やすいことは古くからよく知られています(季節の変わり目に喘息が悪化する原因は、気温、湿度、気圧などの物理的要因と、気候・気象の変化に伴うダニ、カビ、花粉などのアレルゲン、および大気汚染物質を始めとする大気成分の量的・質的変化などが考えられています)。
この季節の道南地区のアレルギー症状はスギ・ハンノキ・シラカバなどの花粉によっておこされることが多いです(道南地区は北海道内で唯一スギが自生しています)。
以前スギ花粉症はアレルギー性鼻炎や結膜炎の原因にはなっても、喘息を起こすことはあまり多くないと言われていましたが必ずしもそうとは言い切れないことがわかってきています。
実は喘息の方でアレルギー性鼻炎を合併している頻度が約50~70%と非常に高率です。
アレルギー性鼻炎の方から見ても、喘息を合併している頻度が約10~20%あるといわれています。
従って、スギ花粉症の患者が喘息になるのはもともと喘息体質があって、気管支が過敏な人がスギ花紛やそれ以外のアレルゲン(ダニ、ペット、カビ)に対して喘息になると考えられます(喘息の主たる原因はダニとハウスダウトといわれています)。
春が過ぎ夏になるとカモガヤ、秋にはブタクサ・ヨモギの花粉が飛散します。
季節性アレルギーをお持ちの患者さんはその時期に合わせて適切な治療を受けることが必要です。
大腸カプセル内視鏡
年輩の方なら1966年公開のSF映画「ミクロの決死圏」をご存知の方も多いと思います。
医療チームを乗せた潜航艇を縮小して体内に注入し、脳の内部から治療を行うという当時大変話題となった米国の傑作映画です。
しかし今、実際に人間は乗っていないなどの大きな違いこそあるものの、当時は夢物語であった技術が現実のものとなりつつあります。
カプセル内視鏡といって、薬のような形をした小型のカプセルを飲み、便と共に排泄されるまでの間に胃腸の中をくまなく撮影し、体表に装着した装置に送信するものです。
送信された画像をモニターで確認して診断します。
小腸用には2007年に実用化され保険認可もされていましたが、今年1月に大腸でも保険適用となりました。
適用症例に条件がついているためすべての方に使えるわけではありませんが、小腸と比べると大腸は疾患人口が大変多いため、日常の大腸診療は大きく変貌すると思われます。
これまでの肛門からの大腸内視鏡検査は痛みを伴うこともあり、また恥ずかしいなどの理由で進んで受けたいと思う方 が少ないのが現状でしたが、カプセル内視鏡の場合はそのような問題を克服できることになり、大腸がん死亡率の低下を目指して検診への応用なども期待されています。
もちろんまだ開発されて日の浅い検査法なので、洗浄機能がないので下剤の量が多く必要となる、国内の治験では6%ほどの見落としがある、カプセルは使い捨てなので検査費用が高くなる、などの問題点もあります。
また何か病変が発見された場合はまだ映画のように治療はできませんので、ポリープの切除などは、これまで通り肛門から内視鏡を挿入して治療する必要があります。
SF映画もいつの日かは現実のものとなるという見本のような技術といえますが、今後はさらに診断も治療も可能な超小型医療ロボットへ進化していくことでしょう。
医療は日進月歩で患者さんの体の負担の少ない方向へと進んでいるのです。
高齢者の家庭血圧降圧目標値
「先生、いったい血圧はどのくらいまで下がれば安心なのですか?」と、高血圧で通院中の80才のAさんはとても不安な顔をして聞いてきました。
どうやら、家庭血圧計を買って家族で測ってみたら、息子や嫁よりいつも高いので心配になったとのことでした。
血圧を何処まで下げるべきか…とは、高血圧の治療において最も重要なテーマです。
脳卒中や心臓疾患などを予防できて健康的な生活を送るために丁度良い血圧値を知ることは患者さんにとってもとても大事なことです。
日本高血圧学会は過去から現在までの様々な高血圧研究を十分に解析検討し、「高血圧治療ガイドライン」としてまとめ、5年毎に改訂しています。
今年の4月にも、改訂された新しいガイドラインが発表される予定です。
今回の改訂案では、高齢者の家庭血圧降圧目標値にも大きな変更があります。
①前期高齢者(65~74歳)は今までと同様に135/85mmHg未満ですが、②後期高齢者(75歳以上)は145/85mmHg未満に緩和され、降圧による悪影響が無ければさらに積極的に135/85mmHg未満を目指すこととなります。
また、糖尿病や慢性腎臓病(蛋白尿陽性)のある高齢者は、まずは上述の値①②を第1目標とし、降圧による悪影響が無ければさらに積極的に125/75mmHg未満を目指すこととなります。
しかしながら、高齢者はひとり一人が様々な病態を呈していますので、とくに持病を多くもった虚弱高齢者や85歳以上の超高齢者などは、主治医が個別に判断して降圧目標値を慎重に設定しなければならない場合もあります。
一方、65才未満の中年若年者にも変更があります。今までは125/80mmHg未満でしたが、新ガイドラインでは135/85mmHg未満(前期高齢者と同値)へ緩和されます。
このように、家庭血圧降圧目標値は一様ではなく年齢や個々の病態によって違いがありますので、Aさんのように若い人達と比べて不安に思わずにもう一度主治医から説明を受けてみることがよいでしょう。
ただいま流行中! 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌の感染が原因となって、吐き気や嘔吐、腹痛・下痢などの急性の胃腸炎症状を引き起こす、いわゆる「お腹にくる風邪」です。
主に、冬場にみられる胃腸炎は、ノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスなどが原因となります。
特に、大人の感染性胃腸炎の大半を占めるノロウイルスは、比較的熱に弱いため、食品の中心まで十分に熱を通す(中心温度85℃で1分間が目安)ことが大切です。
予防には、うがい・手洗いはもちろんですが、まな板、包丁、ふきんなども熱湯や塩素系漂白剤で殺菌しましょう。
感染している可能性のある方の便や嘔吐物は直接触れず、汚れた衣類は他の衣類と区別して85℃以上の熱湯に10分以上浸すか、塩素系漂白剤に30分以上浸して下さい。
症状がなくなった後も、2週間は便中にウイルスを放出し続けるとされているため、周囲への感染は要注意です。
ウイルス性胃腸炎は、インフルエンザ等と異なり、有効な抗ウイルス薬はありません。
腹痛・下痢症状があるうちは、食事を控え、十分な水分の補給が必要です。
飲水が困難な時は、点滴治療が必要となることもありますので、その時は、医療機関の受診をお勧めします。
肺炎の原因? 逆流性食道炎
日本人の死亡原因は2年前、3位の脳卒中が4位に下がり肺炎が3位に上がりました。
脳卒中の治療が進歩し死亡率も減少しましたが、一度は脳卒中等から救命されてもその後免疫力の低下やおう吐時に吐いた物が気管に入ってしまうこと等で肺炎を繰り返し、悪化することによって、肺炎の死亡率が増加したとも考えられます。
初回の肺炎は、抗生剤などにより治癒することが多いのですが、他の病気を合併している肺炎は、一度治癒しても肺炎を繰り返して寿命を縮めることがあり、逆流性食道炎もその原因となります。
逆流性食道炎とは、強い酸性の胃液や、胃で消化途中の食物が食道に逆流しておう吐等をするため、食道が炎症を起こし、びらん(粘膜がただれること)や潰瘍を生じる病気です。
若くて元気なうちは、逆流性食道炎があっても酸分泌抑制剤を毎日内服し続けることでほとんどの症状は改善しますが、一度症状が消失しても再発が多くみられます。
それは、内服だけでは逆流性食道炎を起こしやすい状態を治すことは難しいため服薬を中止すると症状が再び悪化するのです。
また、逆流性食道炎が重症であれば、もちろん長期間薬を飲み続けなければなりません。
しかし、薬でも治らず、再発が繰り返される場合には、手術が必要になります。
以前は開腹手術が中心でしたが、最近はお腹を開けない、腹腔鏡による手術が普及しています。
この方法では腹部に開けた小さい穴から腹腔鏡を入れ、モニターに映し出された映像を見ながら、食道と胃のつなぎ目を逆流しないように閉めなおすのです。
この方法であれば、一週間ほどの入院で完治し、長期間服用していた薬を中止しても症状の再発を防ぐことも可能になります。
逆流の重症度は、胃カメラだけでは正確に判定できない場合が多く、その場合、食道内の酸性度(pH)や食道に胃酸が逆流しているときの時間や、頻度を測定することが大切になります。
治療が遅れて重症になる前に、今後肺炎を繰り返すことになる前に、胃カメラ検査を行い食道のpHで重症度を判定し、適切な治療を行いましょう。
睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に何度も呼吸が止まった状態(無呼吸)が繰り返される病気です。
本人の自覚がなく周りの人から大きないびきや無呼吸を指摘され本人が気付くことが多いといわれています。
多くの場合は空気の通り道である気道が部分的あるいは完全に閉塞してしまうことにより起こります。
SASの代表的な症状はいびきです。
また、良質な睡眠がとれず日中の眠気や物覚えが悪くなるなどの精神的な症状も出てきます。
高血圧や心筋梗塞や脳卒中などを併発することもあります。
SASの検査はご自宅にて行っていただくことが可能です。
SASの治療法はいくつかあり、個々の患者さんにあった治療法を決定することになります。
心当たりの症状がある方は是非医療機関を受診してください。
ピロリ菌を知っていますか?
ピロリ菌という名前を聞いたことがありますか?正式な名前はヘリコバクターピロリといって、人の胃の中に住み着いて悪さをする細菌です。
胃の中には、強い酸性の胃酸がありますが、ピロリ菌は酸から胃を守っている粘液層の中に住みつくことで胃酸の影響を避け、更に自らウレアーゼという酵素を出して胃液の中の尿素を分解し、アルカリ性のアンモニアを作り出して自分の周りの胃酸を中和して生き延びています。
この、ピロリ菌が作り出すアンモニアや、人側のピロリ菌をやっつけようとする免疫の働きで胃の中に炎症が起こります。
ピロリ菌は、多くは5歳以下の子供のときに感染して、治療しない限り胃の中に住み続けて炎症を起こすのがほとんどですが、最初のうちあまり症状はありません。
炎症が長く続くと胃の表面が薄くなってきて、(萎縮といいます)萎縮が進むと胃もたれや胃痛の原因になったり、癌の原因になったりするといわれています。
大人になってからピロリ菌に感染した場合、激しい胃の痛みなどの症状が出ることがあります。
ピロリ菌の感染については衛生環境が大きく影響していると考えられており、現在の40代よりも上の年代では感染率が高く、その下の年代では感染率が下がってきています。
胃カメラなどでピロリ菌に感染している疑いがある場合は、検査をして陽性であれば内服薬による治療が出来ます。
抗生物質を2種類と胃酸を抑える薬を1週間内服するのですが、きちんと飲まないとうまく治療できないことがあります。
また、抗生物質に対して抵抗性の菌であった場合、きちんと薬を飲んでもピロリ菌がうまく消えないこともあります。
そのときは薬の種類を変えてもう一度、治療にチャレンジすることが出来ます。
ピロリ菌の検査方法は、胃カメラで調べる方法や、血液や便で検査する方法、呼吸中の尿素を調べる方法などがありますが、人によって出来ない検査もあるので、お近くの病院で相談してみてください。
ピロリ菌を除菌したあなたに
今年の2月より慢性胃炎についてもピロリ菌の除菌治療の保険適用が認められました。
ピロリ菌を除菌すると胃がんの発生は3分の1になるといわれています。
また、若い方が除菌すると、さらに胃がんの発生率が低下することも分かってきました。
胃がんの一次予防は、ピロリ菌の感染予防・除菌です。
2次予防は、早期発見、早期治療です。除菌後の問題点は何でしょうか?
それは除菌しても、胃がんがゼロにならないことです。
除菌して安心した結果、検診を怠り、発見が遅れてしまうこともあります。
ピロリ菌の除菌後の胃がんの発生について、除菌後に新しく出来た癌と除菌後に認識可能になった癌があります。
後者は除菌後2~3年後の早期に発見されるタイプで、除菌するときカメラで見えないくらいの小さな癌があり、その後2~3年でようやく見えるサイズになったものと考えられます。
このようなこともあるので、除菌後も胃カメラによる検査が必要になります。
では、どのくらいの頻度で検査を行うべきでしょうか?
これについては、除菌後も胃粘膜が萎縮(老化)した状態が続いているなら、1年に1度は継続して行うべきです。
また、ピロリ菌の除菌により、胃粘膜が正常になってくるようであれば、癌化の確率は減るはずなので2~3年に1度の検査でよくなると思います。
当院でも、ピロリ菌の除菌後に癌が見つかった方がいます。
毎年受けられている方は1センチ大の早期胃がんで見つかり、おなかにメスを入れることなく、胃カメラで治癒切除ができました。
逆に除菌後5年以上経過して久しぶりに胃カメラを行った方は、残念ながら進行がんになっていました。
ご本人には胃の症状はありませんでした。
このようなことがあるので、除菌後も 主治医の先生に確認して、胃カメラでの経過観察を行ってくださいね!
さて、来年は何月に胃癌検診を行いますか?
隠れたサインに早めの治療を
血液内科をご存知でしょうか? 馴染みの少ない診療科目ですが、1番よく耳にする『貧血』についてのお話をさせていただきます。
症状としては動悸、息切れ、眩暈、ふらつきなどがありますが、その原因は様々です。
鉄不足による鉄欠乏症貧血、ビタミン不足による悪性貧血、造血障害による再生不良性貧血などが代表的です。
また一方で白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫といったような血液悪性疾患が隠れている場合もあります。
疾患によっては化学療法、造血幹細胞移植を行うことによって治癒の可能性が高くなります。
血液疾患を疑う具体的な症状として
①特にぶつけた覚えがないのに身体にいくつもあざができる
②歯ぐきの出血が止まらない
③毎日のように鼻血がでる
④首のまわり、脇のした、鼠径部に腫れもの、グリグリがいくつも出来てきてだんだん大きくなる
⑤検診などで白血球が多い、あるいは少ないと言われた
⑥貧血、多血症と言われた
⑦血小板が少ない、あるいは多いと言われた
⑧身体のたんぱく質が多いと言われた等々。
思い当たることがあれば迷わず血液内科を受診することをお勧めします。
どんな疾患でも早期発見や早期治療がその後のお身体を大きく左右します。
また、慢性的な疾患等により長期にわたって治療をしなくてはならない場合や退院後などの経過の観察、さらにはその間のご家族のご負担を軽減することも当院では大切な要素と考えております。
当院は血液専門治療の一方で、在宅療養支援診療所として24時間365日の往診体制を実施しています。
併設しているデイケア・ショートステイでは当院の特性を活かして医療依存度の高い方もご利用いただいております。
診療、往診はもちろん専門的なリハビリはデイケア、ご本人・ご家族の互いの息抜きや経過観察ができるショートステイ等々、各専門スタッフを配置しておりますのでお気軽にお問い合わせ・ご相談お待ちしております。