ピロリ菌をやっつけろ!
胃潰瘍(かいよう)・十二指腸潰瘍の原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌が発見され、二〇〇〇年十一月より、ピロリ菌の除菌治療が行われてきました。多くの患者さんが、この治療の恩恵を受け、潰瘍の再発・再燃から解放されました。
しかし、残念なことに二〇%前後の患者さんには効果はありませんでした。原因は、ピロリ菌を除去する抗生物質が効かない、いわゆる耐性菌の出現でした。
日本ヘリコバクター学会では「ヘリコバクター・ピロリ感染が胃癌(がん)を含む様々な疾患の発症に深く関与していることが明らかになってきており、本邦においてヘリコバクター・ピロリ除菌療法の徹底を図り、ヘリコバクター・ピロリ感染を撲滅していくことは、胃癌をはじめとする消化管難治性疾患の発症予防に極めて重要かつ重大なことである」と位置づけ、ピロリ菌を撲滅させる研究がなされていました。その結果、新たな治療が今年の八月に承認され、現在加療できるようになりました。これを「二次除菌治療」と呼んでいます。
以前の治療(一次除菌)が不成功だった方に、この二次除菌を行い、八十五~九十%前後の方々が除菌に成功しています。治療は、一次除菌薬剤のクラリスロマイシンを、メトロニダゾールという薬剤に一種類変更しただけです。
ただし、この二次除菌を行う方は、新たな耐性菌の出現を避けるために一次除菌が不成功だった方のみ限定となります。主な副作用は、一次除菌のときとほぼ同様で下痢・軟便です。また、気をつけなければいけないのは、二次除菌の薬は酒と相性が悪く、除菌治療期間の一週間は禁酒が必要になります。
これからの季節は、忘年会・新年会があると思いますので、二次除菌治療を希望の方は、急がず正月が明けてからじっくりと治療に取り組んではいかがでしょうか?
よくある良性皮膚腫瘍 ~石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)と眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)
■石灰化上皮腫皮膚の下に石灰のような硬いものができる良性の皮下腫瘍です。
毛母腫ともいわれ毛根から発生してくる腫瘍です。
比較的若い人に多く、小児の眼の周囲、腕、頚などによく見られます。
通常は特に症状はなく、皮膚の下にコリコリとした硬いものが触れるだけです。
時に炎症を起こすこともあり、そうなると痛みが出てきます。
この腫瘍は良性で、ゆっくりと大きくなってきますが、自然に治ることはありません。
また、軟膏や内服薬で治ることもありません。
細菌が入って化膿すれば腫れてきます。
治療法は、手術による切除が普通です。
年齢と腫瘍の大きさによりますが、小学生低学年以下では全身麻酔が必要なこともあります。
それ以上でしたら局所麻酔でも可能です。■眼瞼黄色腫まぶたにできる黄色い皮膚腫瘍です。
上のまぶたの内側に出ることが多く、中年以降の年齢に多く見られます。
高脂血症、抗コレステロール血症の方に出やすいといわれています。
炎症を起こしたりすることもないので、痛みなどの症状は特にありませんが、徐々に腫瘍が大きくなってきます。
この腫瘍も良性ですが、薬での治療はできません。
治療は手術による切除です。
まぶたという場所ですのであまりに大きいものはそのまま縫合できなくなり、植皮などが必要になることもあります。
また、良性ですが、再発の多い腫瘍ではあります。
無料送迎バスや食事サービスなど快適で効率のよい医療サービスを提供
JR大中山駅から徒歩約10分、函館新道大川インターにほど近い三木内科泌尿器科クリニックは昨年開設10周年を迎えた。七飯町では初めてとなる人工透析治療施設であり、開設当初からドア・ツー・ドアの無料送迎を実施しており、北斗市や森町、函館西部地区などから通っている患者も多い。現在、送迎バスは10台所有し、身体的、家庭的事情などで通院が困難な患者などが利用している。開設当初は透析ベッド数20床でのスタートであったが、3度の増改築工事を経て、現在は70床まで増床した。院内はバリアフリー対応であり、車いす対応トイレやストレッチャー対応エレベーターなどを設置。人工透析室は大きな窓を施すなど明るい環境となっており、各ベッドには液晶テレビを設置するなど快適で安心して治療が受けられる院内環境を整えている。三木敬也院長並びに渡邊伸一郎副院長は日本泌尿器科学会と日本透析医学会に所属し、泌尿器科、腎臓内科の専門性を生かした診療のほか、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をはじめとする一般内科、湿疹などの皮膚疾患など、日常の疾患に幅広く対応している。
「透析治療では患者さんにやさしい最新鋭の機械を使用し、患者さん一人ひとりに合わせた治療を実施しています。ブラッドアクセス(内シャント)の評価をきちんと行うことにより透析効率を良好に保つことに努めています。また合併症の予防と早期発見、治療に全力を注いでおります」と、三木院長は話されていました。シャント不全に対しては外来でのPTA(血管内に風船付きカテーテルを入れて行う血管拡張術)やシャント再建を積極的に行っており、PTAの手術は年間70~100例実施し良好な治療成績を得ている。デジタルレントゲンシステムをはじめ尿流量測定装置、膀胱鏡、超音波診断装置(腹部エコー・甲状腺エコー・心エコー・血管エコー)、ホルター心電図など各種検査機器を整えている。
また腎機能低下を防ぐ目的から管理栄養士による食事指導を実施しているほか、透析患者には食事サービスも行っている。昨年12月からは柔道整復師による整体マッサージを始めるなど、より快適な医療サービスを提供している。
「今後も、日常生活にさまざまな制約を伴う透析患者さまに、より質が高く、快適で効率のよい医療が提供できるよう努めていきます」と、三木院長は話されていました。
脳波検査の復権
以前、この欄の「脳を鍛える」話で、脳を鍛えるには繰り返すしかないと書きました。
実は、「鍛える」目的でなくても、「繰り返す」ことで「身に付いてしまう」ことがあります。
脳は何億という神経細胞が電気信号を伝える回路の塊です。
脳の神経細胞の回路は、繰り返し電気信号が流れることにより、信号が流れやすくなります。
これが「繰り返す」ことで、知識や技術が身に付く基本原理です。
ところが、厄介なことに都合の悪い事まで身に付いてしまいます。
その代表が「てんかん」です。
「てんかん」の発作は、脳の一部から異常な電気信号が生じ、それが広がることで、けいれんを起こしたり、意識を失ったりします。
発作を繰り返すほどに出やすくなってしまいます。
この広がりを抑えるのが薬の働きです。
「てんかん」には、ネガティブなイメージがついて回りますが、新薬が次々に開発されている上に、一生薬が必要とは限らないことも、これまでの経験で分かっています。
時には、異常な信号の発生源が特定できて手術で完治することもあります。
脳の電気活動を見る目的で行われるのが脳波検査ですが、「てんかん」の異常な電気信号を見るのに、この検査が大変役に立ちます。
しかし、近年は、断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)といった形を見る検査方法が発達してきた一方、脳波は判読が難しく、重症の頭部外傷や脳卒中の後遺症を除けば、成人してからの「てんかん」の発症は少ないと考えられていたため、脳波を検査することが減ってきていました。
ところが最近、脳波計もデジタル化して見やすくなり、再び注目されています。
特に成人、それも高齢者では想像以上に、「てんかん」発作が起きていることが分かってきています。
一時的な意識障害、一過性のまひなど、脳卒中の前触れを疑わせるものの中に「てんかん」が潜んでいるらしく、脳疾患急性期の脳波検査が再び注目されています。
CT、MRIで脳の形は見やすくなりましたが、働きを見るには、古くからの脳波検査がまだまだ必要です。
外用剤は正しく塗りましょう
日常の診療で外用剤の塗り方をできるだけ説明するよう心掛けていますが、うまく伝わっていないことがあります。
今回は、外用法で注意する点について説明します。
①回数:指導された回数を守りましょう。多く外用すれば薬の副作用が、少なければ効果が出ないことがあります。
②部位:場所によって薬の吸収が違います。顔、高齢者、乳幼児の皮膚は薄く、薬の副作用が出やすいので、他の場所に処方された薬を塗ってはいけません。
③量:薬の副作用をおそれて薄く塗れば、効果が出にくくなります。
④用途:処方された薬を、他の発疹に塗ったり、他の人にあげてはいけません。薬によっては効果がないばかりか、発疹が悪化してしまうこともあります。
どんな薬も、もろ刃の剣です。副作用が出ないよう上手に使って、早く治しましょう。
斜視について
さまざまな原因で、両眼で視線を合わせることができず、片眼または両眼がずれてしまうことを斜視といいます。
斜視のタイプで最も多いのは、外にずれる外斜視です。
他には乳幼児に起こる内斜視、高齢者に多い上下斜視などがあります。
斜視の原因は、強い遠視や脳疾患、外傷、バセドウ病などの全身疾患で起こるものなどさまざまです。
自覚症状は、二つに見える、ぶれたりぼやけて見える、眼が疲れるなどがあります。
また、自覚症状がなくても他の人から指摘されて気付くこともあります。
治療法は、眼鏡や訓練、場合によっては手術など、斜視のタイプや大きさによって異なります。
特に乳幼児の斜視は、視力をはじめさまざまな視機能の発達に影響することがあるので、早期発見・早期治療がとても大切です。
「斜視かな?」と思ったら早めに眼科の受診をお勧めします。
40歳を過ぎたら、眼底検査を!!
「目を見ればその人が分かる」と言いますが、これは本当で、眼底は体の中で血管を直接観察できる唯一の場所です。
体がメタボならば、目にも高血圧・高脂血症・糖尿病による合併症が出現する可能性があるのです。
イギリスの若者対象の調査によれば、肺がんや脳卒中よりも失明が一番恐怖という結果が出たそうです。
瞳孔を広げる点眼薬をつけて眼底検査を行えば、目の重要な病気を早めに見つけることができます。
また、40歳以上の日本人の5%は緑内障で、疑いのある人を含めると、さらに多くの方が緑内障と気付かずにいると言われています。
緑内障は進行性で日本の失明原因1位の病気ですが、早めに発見し眼圧を下げる治療を行えば、進行を遅らせることができ、老後も身の回りのことができる視野を保てる可能性があります。
緑内障も眼底検査と視野検査・眼圧測定で見つけることができます。
早期発見のために気軽に眼科を受診しましょう。
タコとウオノメについて
歩くたびに足の裏に痛みを感じることはありませんか? 今回はタコとウオノメのお話です。
タコもウオノメも皮膚が硬くなってしまう状態です。
医学用語ではタコは胼胝腫(べんちしゅ)、ウオノメは鶏眼(けいがん)といいます。わたしたちの皮膚は繰り返し圧力がかかると厚くなっていきます。
これは刺激から皮膚やその下の組織を守るための正常な反応です。
たとえばいつもペンや鉛筆を持っていると利き手の中指などが厚く硬くなります。
この状態がタコで通常痛みは伴いません。
ところが、足の裏の皮膚が硬くなってしまうと、歩くたびに押されるため、次第に奥に入り込んでしまうため、痛みが出てくるのです。
表面から見ると芯の部分が丸く見えるためウオノメ(魚の目)という名前がついています。
一度ウオノメが出来ると、歩行の度に押されて奥に入ってしまい、次第に強い圧力がかかるようになるため、自然にはなかなか良くなりません。
さらに痛みのある側の足をかばって歩くうちに腰まで痛くなってしまうこともあります。
ウオノメの治療は硬く入り込んでしまった皮膚を専用のハサミで取り除いていく方法です。
一見痛そうですが、通常、ウオノメ自体には神経は来ていないため、治療時の痛みはありません。
ウオノメを柔らかくする絆創膏も市販されていますが、奥の方にはまり込んだ芯は取れにくいですし、ご自分でハサミやナイフなどで削っている方もいらっしゃるようですが、足の裏側というのは意外と手が届きにくく、かえって刃物で怪我をしてしまう恐れもあります。
またウオノメやタコと思っていても実はウイルス性のイボである場合もあり、これは治療法も異なりますので、医療機関で一度御相談されることをおすすめします。
人に迷惑をかけないということ
患者さん達との会話で「子供たちに迷惑をかけたくない」というセリフをよく聞きます。
年を取り、病気になると人の手を借りる場面が多くなります。
そんな時、「迷惑をかけて申し訳ない」と思うのでしょう。プライドの問題として、心情は理解できますが、その言葉をそのまま認めてはいけないと思います。
おそらく世界中、どこの国の子供でも「人に迷惑をかけないように」と教えられると思います。
しかし、この場合の「迷惑」とは、例えばバスや電車の座席に靴のまま上がるなとか、場所をわきまえずに大声を出すなとかといった、社会生活のルールを教える言葉だと思います。
子供やお年寄り、あるいは病気やけがで困っている人に手を貸す時、「迷惑した」と思う人はいないでしょう。
子育てをするとき、女性は仕事を諦めることもあるでしょうが、それで子供に迷惑をかけられたとは思わないでしょう。
誰でも、小さい時には年長者に世話をしてもらい、自分が大きくなったら年少者や病者、弱者に手を差し伸べるというのは、自然なサイクルではないでしょうか?
助けてもらって、感謝するのは当たり前ですが、申し訳ないと思う必要はないでしょう。 将来、平均寿命が90歳代まで延びるという話があります。
その時、高齢者における認知症の割合は60%にも及ぶといいます。
独り暮らしの方も増えるでしょう。
その状況では、1人の高齢者を4、5人で支えなければならないともいわれます。
こんな将来を考えた時、年老いて体が弱って助けを借りることが、「迷惑をかける」ことだとしたら、生きることが悲しくなってしまいます。
困った人には喜んで手を貸し、弱った時には助けられて感謝する、そういうことが自然にできる世の中であってほしいと思います。 実は、認知症で大きな問題になる妄想は「人助けはするが、助けられるのは苦手な(プライドが高すぎる)人」に生じやすいといわれています。
「情けは人のためならず」と言いますが、もう一度、考えてみませんか?
ロコモティブシンドロームを知っていますか?
内科での「メタボリックシンドローム」は誰でも一度は聞いたことがあると思います。
その意味は内蔵脂肪型肥満を主因とする様々な成人病の危険性を高める状態といわれています。
それと同様の考え方で、運動器(骨、関節、筋肉)の障害により、自立した生活ができなくなったり、介護が必要となる危険性を高める状態を「ロコモティブシンドローム」といいます。
これは2007年に日本整形外科学会が提唱した新しい概念です。
実際、75歳以上の高齢で介護が必要となる原因の中で、運動器疾患は24%で脳血管障害とほぼ同率となっています。
「ロコモ」(略して)では先ず「起立」や「歩行」の障害として症状が始まります。
歩く為には、先ずバランスよく「起立」しなければなりません。
更に「歩行」という運動は単純な動作に見えますが、実はかなり複雑に、神経系、骨格、筋肉の総合的な機能が関与しています。
特に歩行時には、短時間ですが片脚で立たなければならない動きがあります。
これが不可能になると高齢者によく見られる「ひきづり歩行」となります。
そこで「ロコモ」の予防のために最も有効な運動の一つとして「片脚起立運動」が勧められます。
ふらつきがある場合には何かにつかまっていてもいいのですが、片脚で1分間立ち左右3回繰り返すだけです。
室内で簡単にできますが、転倒には十分注意して下さい。
筋力に自信のある方、40〜50代の方は更に「片脚スクワット」や「片脚つま先立ち」を加えてもいいと思います。
高齢化は、これからもどんどん進み、医療、介護の将来も厳しいものがあります。
40〜50代から「ロコモ」の予防をして、更に親の世代にもアドバイスなどができれば介護の負担が減る可能性もあります。









