変形性膝関節症と運動療法
膝の痛みと変形は加齢とともに多くの人に起こります。困ることは歩けなくなることばかりでなく、体力や気力までも落ち込んでしまうことです。
治療方法は大筋で決まっていますが、最近強調されていることがあります。“自分の膝は自分自身でも守るもの”として運動療法を理解してもらうということです。その簡便な方法は下肢の筋肉を鍛えること、特に太ももの筋肉「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」を鍛えることです。
あおむけに寝て、軽く片方の膝を曲げ、鍛える膝をできるだけ伸ばして足先が見えるくらいまでゆっくり持ち上げて保持し、ゆっくり下ろします。この動作を左右5回ずつ1日に数度行います。そして3ヵ月以上気長に続けることが大切です。
より具体的な運動療法については整形外科専門医に相談しましょう。
女性と変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
中高年の女性が膝の痛みを感じると、「変形性膝関節症」と診断されることが多い。膝の軟骨などが擦(す)り減ったために生じ、レントゲン写真や関節鏡によって確認できるが、悪化すると「O脚(がにまた)」となる。
膝の痛みの予防は、体重を増やさないこと、体重に見合った筋力を維持することが必要。特に大腿(だいたい)部前面の筋肉の「四頭筋体操」が極めて有効。
治療には、鎮痛剤、理学療法、関節内注射や外側楔足底板(がいそくくさびそくていばん)の装着が行われ、さらに歩行時の痛みが悪化すると、「人工膝関節置換術」(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)が行われる。
現在の人工関節は屈曲角度も改善し、正座は無理なものの、歩行時の痛みと歩行能力は大きく改善され、近年では80歳代で人工膝関節手術を受ける方も増えている。
術後1週目より、起立訓練や椅子への移乗、歩行訓練が行なわれる。変形性膝関節症の予防のため、日々歩くことを心掛け、下肢の筋力を鍛えたい。
スポーツに多い捻挫(ねんざ)と肉離れ
走り回ることが多いスポーツ。「スポーツによる外傷、障害」の部位を見ると、一般的にはコンタクト・スポーツ(サッカー、ラグビーなど)では、膝、腰、肩が多く、テニスなどのスポーツでは、肘、足、手関節が多い。
走る時に生じるケガの多くは、捻挫(ねんざ)や肉離れ。
安易に考えてスポーツを継続すると、選手の将来に暗雲が立ち上る。緩(ゆる)みを生じた関節には、関節軟骨の障害と炎症が発生し、運動時に常に痛みや腫れが生じ、運動能力が大きく阻害される。
子供を一流の選手に育てようとするトレーナーは、「この10年で選手生命を終えたいのか、あと10年やりたいのか、休む勇気も大切」と説く。
肉離れの多くは、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と内転筋(ないてんきん)。小さな肉離れの放置は、次には血腫(けっしゅ)と筋断裂を伴う重大な肉離れや、靭帯(じんたい)損傷を伴う捻挫を生じ、悪くすると選手生命が失われる。
ウォーミング・アップでは、充分なストレッチを行い柔軟な筋肉を保持し、「ケガをしない、ケガをしても軽く済むよう」心掛けたい。
1時間の練習には1時間のウォーミング・アップとの認識が大切とされる。
腰痛(ようつう)のお話
整形外科を訪れる方々の20~30%が腰痛症の患者さんです。
腰痛症は様々な病気が原因で生じます。痛みの生じ方から、腰への急激な負担から痛みが生じる「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」や、「脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)」などの急性腰痛、立ったり歩いたりすると徐々に歩くことが困難になる「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」などの慢性腰痛に分けられます。
また、腰痛には腰の骨、椎間板や椎間関節、神経根などによるものだけではなく、内臓(腎臓)や血管(腹部大動脈瘤[りゅう])や血液(白血病)などの原因によって生じるものもあるので正確な診断が欠かせません。
「かぜは万病のもと」とよく言われますが、腰痛症も同じです。
軽い病気と考えずに、「何が原因で、どこがどのように障害されているのか」、整形外科の専門医を受診し、正確な診断のもとに充分な説明と治療を受けることが大事です。まずは医師に相談されるか病院ホームページをご覧になることをおすすめします。
変形性膝関節症の痛み
歩く時に膝に強い痛みを感じ、正座が困難となり、「O脚」となってはいませんか。
この症状は女性に多く見られ、膝の内側の軟骨とパッキングである半月板が擦り減ったために、強い痛みが生じるもので「変形性膝関節症」といわれます。予防は、体重を増やさないための食生活の改善と、体重に見合った下肢の筋力を維持する必要があります。
エレベーターや車を使わずできるだけ歩いたり、週2・3回の軽い運動(ウォーキングなど)を行い、椅子に座りながら膝を伸ばす「四頭筋体操(しとうきんたいそう)」といわれる大腿(たい)前面の四頭筋の増強運動が有効です。
治療には、鎮痛剤や理学療法、関節注射、人工関節などの手術が行われますが、お勧めしたいのは「外側楔足底板(がいそくくさびそくていばん)」の装着。装具は膝の内側の負担を軽減するもので、日常の装着でも違和感が少なく、使用感も悪いものではありません。
膝の痛みの改善に大いに役立ちますのでご相談ください。
足が痛くなる内科の病気
歩いているうちに足が冷たくなってくる、もっとひどい時は、ふくらはぎが痛くなり、びっこを引く病気があります。血管の動脈硬化により、足先まで血が巡らなくなる病気で、閉塞性動脈硬化症というのが、正式な病名です。
軽症の間は、足の冷感やしびれ感程度の時期もあります。
段々足の皮膚の色が蒼白になり、歩行時に足の筋肉痛を生じますが、休むと改善するので、我慢してしまう人が多いです。
さらに、重症になると安静時にも痛くなり、つま先が黒く炭のようになり、壊疽や潰瘍ができます。
高齢、高血圧、糖尿病、喫煙など動脈硬化の進みやすい状態があると、動脈の内側に、主に脂肪などが張り付き、動脈の中が狭くなります。
狭い血管を通って、血液は足に流れにくくなりますが、狭い場所では、血が固まるような物質が出てきて、ますます、血管が詰まりやすくなったり、炎症が起こって、血管が狭くなったりと悪循環に陥ります。
足の血管でもこのような状態ですから、閉塞性動脈硬化症の人では、頭や心臓の血管にも同様の硬化症があり、脳梗塞や心筋梗塞を生じることが5~6倍増えるのです。
検査としては、両腕と両足の血圧を同時に測って比較する方法で十分発見可能です。
簡便に手足の4箇所で同時血圧を測る装置がありますので、5分もあれば結果が出ます。
この検査で異常が見られたら、循環器の詳しい検査を行います。
必ず、歩行距離で重症度を判定しますので、運動負荷試験などを行います。
「歩いたときに足が痛くないこと」は、第1の治療目標です。
- 運動療法
- 薬物療法
- 風船を使ったカテーテル血管形成術やバイパス手術
の3つの治療方法があります。重症度によくあった治療を選ぶことが大事です。さらに、心筋梗塞・脳梗塞の予防や、病変の再発を予防することも治療目標になります。実際、足の痛みを訴えて受診した人では、心臓や首の動脈が細くて梗塞を起こしそうな所を発見されることが多いのです。
病院は怖い?
「普段は病院に行くなんて言わない子なんですけど、今日は病院に行くと自分から言うので」
「はぁ、よっぽど具合悪いんですね」。
(そんなに病院って、嫌かねぇ。僕は毎日来てるけどなぁ)。
時々、外来である会話です。やっぱり、病院って緊張しますか?
悪い知らせばかりあったり、叱られに来ているわけじゃないのですが。
白衣高血圧っていう病名は、ご存知でしょうか?
病院の玄関を入るとドキドキしてきます。医者に上手く病状を説明できるかしらという不安感、昨日ラーメンのスープを全部飲み干して塩分を大量に摂ったという罪悪感、薬を飲まずに血圧が急上昇していそうな予感など、診察室には、つらい状況を作り出す地雷がたくさん埋まっていそうです。
こんな時に、緊張しやすい性格の人は、白衣を着た医者のせいで血圧が高くなるので、白衣高血圧といいます。同様のことが、日常でも、緊張を強いられる場面が起こります。
高血圧がある人では、頭の血管が切れちゃうんじゃないかと思うほど上がります。
一時的な血圧の上昇なのですが、繰り返していると平素の血圧も次第に高くなってくるため、心筋梗塞や脳梗塞などの発症率が高くなります。
反対に、病院に来ると安心して血圧が正常になったり、起床時には高血圧なのに、日中、正常血圧になる人もいます。まれな病態ではありますが、診察時には正常血圧と思われて見過ごされてしまいます。
比較的、若年の人に起こりやすい現象ですが、これも、脳・心臓病の高い危険因子です。
仮面高血圧と呼びます。
いずれも、家庭血圧の測定を参考に適切な治療を行えば、高血圧から起こる心臓や脳の大病を予防することができるので、気楽に受診してみてください。
大腸検査は苦痛ですか?
大腸の検査というと、ちょと抵抗がありませんか?
今回は大腸カメラの検査について説明しましょう。
検査の前日は、野菜や果物などの繊維質を控えていただきますが、食事は普通にされてもかまいません。職場に検査食を持ち込まなくても大丈夫。当日の朝食は摂らずに腸の中を洗浄する薬を朝から2時間ほどかけてゆっくり飲みます。
この洗浄剤は、以前はとても飲みづらいものでしたが、最近では、レモン味、グレープフルーツ味などに味付けされた液体、又は、お茶などでも飲む事ができる錠剤もあり、好みによって使い分ける事が可能になりました。
腸の中がきれいに洗浄されると、検査が始まります。腸の長さや癒着(ゆちゃく)の程度にもよりますが、20分程で検査は終了し、昼食後、午後の仕事も可能です。
大腸カメラは苦痛と思われがちですが、最近は機械や技術の進歩により、苦痛はかなり軽減されていますよ。
あなたの胆石(たんせき)は大丈夫?
食後、2~3時間後にみぞおちやお腹の右側が痛むことがあれば、「胆石症」かもしれません。日本での胆石症は、年々増加傾向にあり、成人の10~20%に達しているといわれています。
胆のうは、肝臓の下にあり、肝臓で作られた消化液の胆汁を溜め込み、胆汁の水分を吸収して濃縮させる臓器です。
胆汁は、脂肪の消化を助ける働きをしています。胃から十二指腸に食べ物が送られると、胆のうがギュッと縮んで、胆汁を腸に排出します。
胆石症になる一番の原因は肥満です。肉や油の多い食事をとっていると、胆汁の中のコレステロールが増えて胆石ができやすくなります。この他、不規則な食生活や無理なダイエット、ストレスも要注意です。体質や遺伝も関係します。
女性は男性の1.5倍多く、60歳以上では、若い人の2~3倍も多いといわれています。
石が動いて胆汁の流れを塞(ふさ)いでしまうとみぞおちやお腹の右側に激しい痛みが起こり、時には背中や右肩にまで痛みが広がる事もあります。
しかし、急激な症状がなく、食後の軽い腹痛や吐き気、食欲不振のみの場合は、「胃が悪い」「胃けいれん」と自己判断している場合も多くあります。
診断は、血液検査や腹部超音波検査、CT検査などで行います。
腹部超音波検査は、お腹にゼリーを塗り、超音波を当てるだけの簡単な検査で、胆石の有無、その大きさ、胆のうの壁の状態をチェックします。
一部の胆石は、飲み薬で溶ける場合もありますが、効果が少ない上、再発も多いといわれています。
胆のうの中の石が動き回り、炎症を繰り返して胆のうの壁が厚くなったり、石が多数ある場合は、手術で胆のうを丸ごと摘出します。
お腹に小さな穴を開けて行う「腹腔鏡手術」が一般的です。傷も小さいため、五日間程度の入院で治療可能です。
時には、石が、胆のうを飛び出して十二指腸までの通路を塞ぐと、胆汁が十二指腸に流れなくなり、それに細菌の感染が加わると全身に細菌の毒素がまわり、大事に至る事もあるのです。
胆のうがんの50%に胆石が合併しているといわれます。
症状のない胆石症では、血液検査だけではほとんど診断がつかない事も多いので、苦痛を伴わず外来でできる簡単な腹部超音波検査を一度受けることをおすすめします。
メタボじゃなくてもご用心!
昨年の流行語大賞となった「メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)」。危険因子として、肥満・高血圧・高血糖・高脂血症(特に高中性脂肪・低HDLコレステロール)が挙げられ、欧米では、このうち3つ以上があてはまると「メタボリック症候群」と診断されます。
しかし、日本の診断基準では、肥満(ウエストサイズ―男性85cm以上、女性90cm以上)が必須で、更に、高血圧・高血糖・高脂血症のうち2つ以上があてはまる場合となっています。つまり、血糖値がかなり高くても、太っていなければ同症候群には該当しないことになります。しかし、やせた人でも、体質的に高血糖や高血圧を起こしやすい人がいて、そういう人は太っている人よりむしろ心筋梗塞(こうそく)や脳卒中の危険性が高いという報告もあるので、メタボじゃないからと安心する訳にはいきません。
肥満の指標として、ウエストサイズのほかに、BMI(体格指数)という測定の方法があり、
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算定されます。
BMIでは、20未満がやせ、20~24が正常、25以上が肥満と診断されます。この基準を満たしていると、やせや肥満に関係する合併症が少なくなり、最も病気になりにくいといわれる数値を算定したものです(ただし、これはあくまでも指標であって、骨格や筋肉のつき方で異なるため参考程度にしてください)。
もし、「メタボリック症候群」や肥満の傾向がある方は、まず、体重を目安に減らしましょう。
体重のおよそ5%を減らすと、血糖値・血圧・中性脂肪値が改善されることがわかっています。そして、体重の5%を減らすには2~3カ月程度かけて無理のない減量をしましょう。急激なダイエットで体重が減るのは、脂肪ではなく水分が減り、さらに体が飢餓状態を感じると体内のたんぱく質が分解されるため、筋肉が減ることも知られています。
今のこの時期が、季節的にも心地よく運動するには適しています。明日の朝、通勤やお買い物は少し遠回りをして散歩をしてみてはいかがでしょうか。